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    新しい時代のホスピタリティを体現「lyf渋谷東京」で考える不動産の価値創造

    2024年12月19日に開業した「lyf渋谷東京」は、不動産業界にも大きな示唆を与える施設です。世界40ヵ国230都市以上で展開するグローバルホスピタリティグループ「The Ascott Limited」によって運営されるこのホテルは、単なる宿泊施設ではなく、人と人、人と街をつなぐ新しいコミュニティの形を提案しています。今回は不動産業界に身を置く者として、この施設が持つ価値と今後の不動産開発への示唆について考察してみたいと思います。

    lyf渋谷東京の概要

    lyf渋谷東京は、渋谷駅から徒歩約7分、渋谷PARCOの向かい側という絶好のロケーションに位置しています。全200室の客室を有し、1名様からファミリーやグループでの利用に適した4名様利用の客室まで、多様なニーズに対応した5タイプの客室を提供しています。

    客室タイプは以下の通りです:

    • One of a Kind(ワンオブアカインド):スタジオダブル(シャワーのみ)
    • One of a Kind Plus(ワンオブアカインド+):スタジオダブル+(バスタブ付)
    • Side by Side(サイドバイサイド):スタジオツイン
    • All Together(オールトゥギャザー):クアッド
    • Two of a Kind(トゥーオブアカインド):2ベッドルーム

    客室は機能的にデザインされ、スーツケースやセーフティボックスをベッド下に収納できるなど、限られたスペースを効率的に活用する工夫が施されています。

    コミュニティ形成を促す空間設計

    lyf渋谷東京の最大の特徴は、コミュニティ形成を促進するソーシャルスペースの充実です。館内には以下のような特色ある共有施設が設けられています:

    1. CONNECT(コネクト):コワーキングラウンジとして機能し、Wi-Fiやコンセント付きのデスクを完備
    2. BOND(ボンド):シェアキッチンとして、簡単な調理に便利な道具や食器、IHコンロを完備
    3. BURN(バーン):24時間利用可能なジムで、ランニングマシンやヨガマット、卓球台を設置
    4. WASH & HANG(ウォッシュ&ハング):ランドリールーム
    5. COLLAB(コラボ):ミーティングスペース

    これらの空間は、「A New Way to Belong(新しいコミュニティの形)」というコンセプトを体現するために設計されており、人と人、人と地域をつなげる体験を提供しています。

    不動産業界への示唆

    lyf渋谷東京の事例から、不動産業界に携わる私たちが学べることは多岐にわたります。

    1. 人財重視の施設運営

    lyf渋谷東京では、「Ambassador of Buzz(アンバサダー・オブ・バズ)」と呼ばれるコミュニティマネージャーが、イベントの企画・実施を通じてゲスト同士や地域とのつながりを促進しています。

    2. 空間の機能的再定義

    従来のホテルでは、客室の広さや設備の豪華さが重視される傾向がありました。しかしlyfでは、限られた客室スペースを機能的に設計する一方で、共有スペースを充実させることで、新しい価値を創出しています。

    3. コミュニティ価値の創出

    lyf渋谷東京が行っている「#ShibuyaDive」プロジェクトは、宿泊者と地域を結びつける試みです。この取り組みからは、不動産が単なる「場所」ではなく、コミュニティの形成と発展に寄与するプラットフォームになりうることを学べます。

    4. サステナビリティへの配慮

    館内に設置されている、廃棄されたビーチサンダルを再利用して制作されたアート作品は、環境への配慮を表現しています。今後の不動産開発・管理においては、こうしたサステナビリティの視点が一層重要になるでしょう。

    超富裕層向け不動産サービスへの応用

    INA&Associates株式会社は個人の超富裕層をメインクライアントとしていますが、lyf渋谷東京の事例は富裕層向けの不動産サービスにも多くの示唆を与えます。

    特に注目したいのは「非日常ではなく、ちょっと質のいい日常を提供する」というコンセプトです。超富裕層のクライアントであっても、単に豪華な空間を求めているわけではありません。日常生活に小さな贅沢や楽しみを加えた「質の高い日常」を実現できる住空間こそが、真の価値を持つと言えるでしょう。

    また、lyf渋谷東京が大切にしている「Live Your Freedom(自分らしく自由に生きる)」という理念は、私たちが提供すべき不動産サービスの本質を表していると感じます。クライアントが真に自分らしく生きるための空間と体験をどう提供できるか。これが今後の不動産ビジネスの核心になるのではないでしょうか。

    終わりに

    lyf渋谷東京は、単なるホテルを超えた「体験」を提供する場として、不動産業界に新たな視点をもたらしています。「ビジネスで関わる全ての方が幸せになるように努力すべき」という私の経営理念に照らしても、このような施設のあり方は多くの示唆に富んでいます。

    不動産業はただ「場所」を提供するだけではなく、そこで生まれる「体験」や「つながり」を通じて、人々の生活をより豊かにする使命があります。短期的な利益追求ではなく、長期的視野に立った「人財投資」と「体験価値の創造」が、これからの不動産ビジネスの核心になると確信しています。

    私たちINA&Associates株式会社は今後も、人財を中心に据え、単なる不動産の売買や管理を超えた価値創造に挑戦し続けます。そして関わる全ての方々に、真の豊かさをもたらす不動産サービスを提供していく所存です。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。