図:石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業の完成予想図(南東側から見たところ。中央が北街区の26階建て高層棟、左が南街区の9階建て低層棟)。東京・練馬区の西武池袋線石神井公園駅南口西地区で、老朽化した建物が密集する駅前エリアの再開発事業が進行中です。本事業では駅前に地上26階建て・高さ約100m級の高層ビルを中核とした大規模複合施設を建設し、住宅・商業・公共サービス・業務機能を備えた新たな地域拠点を創出する計画です。2024年には既存建物の解体工事が始まり、今後本体工事へと移行していく予定で、2027年度内の竣工(2028年初頭ごろ)を目指しています。
再開発事業の概要
本再開発事業の施行区域は、石神井公園駅南口に隣接する練馬区石神井町三丁目の約0.6ヘクタールのエリアです。駅から徒歩1分という立地に、北街区(きたがいく)と南街区(みなみがいく)の2棟の建物を建設します。北街区には地下2階・地上26階建て、高さ約100mの超高層棟が建てられ、南街区には地上9階建て、高さ約35mの中層棟が整備されます。両棟あわせた延べ床面積は約3万4千平方メートル(北街区:約31,260㎡、南街区:約2,800㎡)で、総戸数は約230戸規模(北街区:約210戸、南街区:約20戸)を予定しています。主要な用途は住宅(共同住宅)のほか、駅前立地を生かした商業施設や事務所、行政サービスなどの公益施設も含む複合構成です。北街区の低層部(1~5階)に商業施設や公共サービス施設を配置し、6階以上を住宅フロアとする計画で、約220戸の住宅が供給される予定です。南街区は1~2階が店舗、3~5階が事務所フロア、6~9階が住宅(約20戸)となり、小規模ながら商業・業務・居住が一体となったビルになります。駅前広場に面した敷地北側には歩行者通路や広場も設けられ、地区内の既存神社は北街区の建物上の人工地盤上に移設・再整備される計画です。再開発に伴い、駅前を通る都市計画道路補助第232号線の新設(幅16m・延長約90m)や周辺区画道路の拡幅整備、駅前広場の拡充も同時に実施されます。総事業費は約230億円規模と見込まれており、老朽市街地の刷新と都市インフラ整備を一体的に進める大型プロジェクトとなっています。
北街区・南街区スペック比較
仕様 | 北街区 | 南街区 |
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敷地面積(㎡) | 3,182.12 | 525.76 |
建築面積(㎡) | 2,137.97 | 381.10 |
延床面積(㎡) | 30,133.75 | 2,694.54 |
階数 | 地上26階・地下2階 | 地上9階 |
高さ(m) | 99.90 | 34.96 |
住宅戸数(戸) | 約220 | 約20 |
用途構成(予定)
街区 | 用途 | フロア構成 |
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北街区 | 商業施設 | 1–2階 |
公益施設 | 3–5階 | |
住宅 | 6–26階(約220戸) | |
南街区 | 商業施設 | 1–2階 |
事務所 | 3–5階 | |
住宅 | 6–9階(約20戸) |
関係事業者と体制
本事業は、地権者らで構成される石神井公園駅南口西地区市街地再開発組合(事業施行者)によって推進されています。再開発組合の参加組合員(事業パートナー)として大手デベロッパーの野村不動産株式会社が参画しており、住宅部分の保留床取得や事業推進の協力を担っています。建物の設計は建築設計事務所の株式会社アール・アイ・エー(RIA)が手掛け、施工はゼネコン大手の前田建設工業株式会社が担当する予定です。行政側では、東京都が都市再開発法に基づく都市計画決定・組合設立認可などの手続きを所管し、練馬区も地元自治体としてまちづくり計画の策定や公共施設整備で協力しています。官民協働の再開発事業として、地域の権利者とデベロッパー、行政が一体となった体制で進められています。
スケジュールの経緯
再開発実現までの経緯は長期にわたります。以下に主なスケジュールをまとめます。
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2014年3月: 地元権利者らによる準備組合が設立し、事業化検討を開始。この段階で野村不動産・前田建設工業が事業協力者に決定しました。
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2020年12月: 都市計画決定告示。再開発計画が東京都により都市計画として正式決定。
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2022年9月: 東京都知事が市街地再開発組合の設立を認可。同年10月に組合設立総会が開催され、本格的な事業施行体制が発足。
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2023年~2024年: 権利変換計画の認可(2024年1月)を経て、2024年2月より既存建物の解体工事に着手。解体完了後、2024年度内にも新築工事に着工予定。
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2027年度: 再開発ビル竣工予定。事業計画では2027年度末(2028年2~3月頃)までの完成を目指しています。当初計画では2027年3月竣工予定とされていましたが、現在は2028年初頭の竣工見込みとなっています。
再開発スケジュール
マイルストーン | 年月 |
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都市計画決定 | 2020年12月 |
組合設立認可 | 2022年9月 |
権利変換計画認可 | 2024年1月 |
既存建物解体着手 | 2024年2月 |
本体工事着工(予定) | 2025年1月 |
竣工(予定) | 2028年3月〜4月 |
事業の目的と地域への影響
石神井公園駅南口西地区の再開発事業は、老朽化した木造建物が密集し道路が狭隘だった駅前市街地を安全で快適な空間へ再生することを目的としています。具体的には、歩行者空間の改善と防災性の向上、駅前機能の強化という三点が大きな柱です。まず、駅の改札口から南口商店街や石神井公園へとスムーズにつながる歩行者ネットワークを形成し、歩車分離を徹底することで歩行者の安全・快適性を確保します。再開発ビルの1階部分には駅西口から敷地を貫通する歩行者通路が設けられ、南口広場や商店街入口まで人の流れを誘導する計画で、駅と周辺エリアを回遊できる賑わいの動線が生まれる見込みです。次に、駅前に公共サービス施設を集約して整備することで行政サービス等へのアクセスを向上させ、商業施設やオフィスの充実によって地域住民の利便性向上と地域経済の活性化を図ります。あわせて、住宅についても駅近接の都市型住宅を約230戸供給することで良質な居住環境を提供し、駅周辺の定住人口増加による街の賑わい創出が期待されます。さらに、本事業では耐火建築物への建替えと土地の一体利用により、防災面で脆弱だった木造密集市街地の安全性を高める狙いがあります。道路拡幅や歩道整備といった基盤整備と相まって、地域全体の防災性・安全性が向上し、災害時の避難経路確保や平常時の交通混雑緩和にも寄与するでしょう。
このように石神井公園駅南口西地区第一種市街地再開発事業は、駅前の利便性向上と安全安心なまちづくり、そして地域の活性化を目的として官民連携で進められているプロジェクトです。完成後は、石神井公園駅前に新たなランドマークとなる高層複合施設が誕生し、練馬区西部の拠点地域としての機能強化が期待されます。再開発により創出される商業空間や広場は周辺の既存商店街とも相まって賑わいを生み、徒歩圏にある石神井公園への来訪者増加も見込まれるなど、地域全体へポジティブな波及効果をもたらすでしょう。