Press ESC to close

    大宮駅西口で大型複合開発「桜木PPJ」が着工、2027年春に完成予定

    大宮駅西口の旧市営桜木駐車場跡地で建設が進む大型複合施設「(仮称)桜木PPJ」の完成予想図。JR大宮駅から少し離れた場所に新たなランドマークとなる建物群が誕生する見込みです。

    プロジェクト概要

    JR大宮駅西口エリアで、市営「桜木駐車場」跡地を活用した大規模開発プロジェクト「(仮称)桜木PPJ」の建設工事が2025年4月15日に始まりました。同事業は商業・業務・交流機能を備えた延床面積約3万1,800㎡超の大型複合施設で、商業棟、オフィス棟、駐車場棟、フィットネス棟、MICE対応の結婚式場棟の5棟で構成されます。場所は大宮駅西口から徒歩約10分、敷地面積約1.8万㎡の市有地で、2027年春の竣工・開業を目指しています。さいたま市はこの開発地を、人やモノ・情報が集い新たな価値を創造・発信する拠点と位置付け、「東日本の対流拠点」形成に資する機能導入を図る方針です。

    開発主体と行政の連携

    本プロジェクトの事業主体には、大手デベロッパーの大和ハウス工業株式会社および大和ハウスリアルティマネジメント株式会社(大和ハウスグループ)と、鉄道事業者の東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)が参画しています。さらに、結婚式場棟の運営予定企業である株式会社ブラスも共同事業者に名を連ねています。同計画はさいたま市が公募型プロポーザル(企画提案)方式で事業者を募集したもので、2023年10月に上述のコンソーシアムが優先交渉権者に選定され、翌2024年3月に市と基本協定を締結しています。行政と民間が連携する公民連携事業として位置づけられており、都市計画段階からさいたま市と事業者が協力して計画を進めています。

    開発規模と施設計画

    計画地は大宮区桜木町三丁目の敷地約18,043㎡で、そこに地上2~5階建ての建物5棟を配置する構成です。総延床面積は約31,847㎡にもおよぶ大規模開発で、商業棟(物販・サービス施設)、オフィス棟(業務施設)、駐車場棟(自動車向け駐車施設)、フィットネス棟(運動・健康施設)、そしてMICE・結婚式場棟(ホール・イベント施設)の五つの棟から成ります。建物はいずれも鉄骨造の低層棟で、最も高いオフィス棟でも地上5階建て程度の高さに抑えられています。設計・施工は大和ハウス工業が担当し、2025年3月下旬には起工式(鍬入れ式)も執り行われました。広場や歩行者空間も敷地内に設けられ、周囲の街並みとの調和と回遊性にも配慮した配置計画となっています。

    コンセプトと主な用途

    事業コンセプトは「Omiya Well-being Station」です。健康・文化・コミュニティの観点からウェルビーイング(幸福・快適さ)を追求し、大宮駅西口の街の魅力向上につなげる狙いがあります。具体的には次の3つのテーマで施設機能を充実させます。

    1. 暮らす・働く “Well-being LIFE” – 商業棟に地域住民の健康づくりに資するスーパーマーケットやクリニックモールを設置し、オフィス棟にはシェアオフィスや地域交流スペースを設けます。日常の利便性を高めるとともに、新たな事業創出やコミュニティ活性化を図る計画です。

    2. 触れる “Well-being CULTURE” – 敷地内に鉄道車両を展示する「電車ひろば」を新設し、“鉄道のまち大宮”を象徴する車両を公開します。地域住民や来街者が集い、鉄道イベントやフードマルシェなど各種催しを楽しめる空間とします。また、大宮駅が新幹線停車駅である利点を活かし、JR東日本の新幹線荷物輸送サービス「はこビュン」を活用して東日本各地の食文化をつなぐ取組みも実施される予定です。

    3. つながる “Well-being COMMUNITY” – 多目的に利用できる結婚式場棟(ホール)を中心に、地域のライフイベント(冠婚葬祭等)を支援する場を提供します。さらに、万一災害が発生した際には駐車場棟を帰宅困難者の一時避難場所として開放し、非常用トイレやかまどベンチを備えることで防災拠点として機能させます。施設内のテナントとも連携し、被災時には食料提供を行うなど地域の安全・安心にも貢献します。

    地域への影響と期待

    「桜木PPJ」の開発により、大宮駅西口エリアには日常生活の利便施設からビジネス拠点、地域交流の場まで多彩な機能が新設されます。地域住民にとっては買い物環境や医療サービスの充実、働く場の創出といった直接的な利点が期待できるほか、イベント広場やスポーツ施設を通じた賑わい創出も見込まれています。鉄道車両の展示や各種イベント開催により、大宮ならではの地域文化発信が促進され、鉄道の町としてのアイデンティティ強化にもつながるでしょう。加えて、防災機能の整備により災害時の地域の安全網が強化され、安心して暮らせるまちづくりに寄与する計画です。総じて、本プロジェクトは西口地域にもたらす経済波及効果と生活環境の向上が大きく、市民から新たなランドマーク誕生への期待が高まっています。

    今後のスケジュール

    今後の予定について、事業開始から竣工までの主なスケジュールは次の通りです。

    1. 2023年1月 - さいたま市が桜木駐車場用地活用事業の公募型プロポーザルを実施(事業提案の募集開始)。

    2. 2023年10月 - 提案審査の結果、大和ハウスグループ・JR東日本グループのコンソーシアムを優先交渉権者に選定。

    3. 2024年3月 - さいたま市と事業者コンソーシアムとの間で基本協定を締結(事業化に向けた合意)。

    4. 2025年4月 - 建設工事着手。4月15日に起工(着工)し、本格的な工事がスタート。

    5. 2027年春 - 全施設の竣工および開業を予定。完成後、順次施設の供用開始を目指す。

    今後建設が進む中で、テナント誘致や具体的な施設名称の決定、地域との協議なども進められていく見通しです。開業に向けては広報イベントや地域説明会の開催も想定され、街の新陳代謝に対する注目が集まっています。

    周辺再開発との関係

    大宮駅西口エリアでは近年、多くの再開発事業や都市基盤整備が進行しています。駅前では既に「大宮サクラスクエア」(第3-B地区再開発事業)など公共施設・商業施設の整備が完了し、大型スーパーや行政施設が供用を開始しました。今回の桜木PPJ計画地は駅前広場から約500m離れた場所に位置しますが、周辺では道路整備を含む「第4土地区画整理事業」(2028年度末完成予定)が進められるなど、西口一帯のアクセス改善と街並み向上が図られています。また、さいたま市は「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」を掲げ、駅周辺街区の高度利用と交通結節機能の強化、一体的なまちづくりに取り組んでいます。桜木PPJプロジェクトは、こうした広域的なまちづくり構想の一翼を担うものとして位置づけられており、新施設の完成により大宮の都市拠点性がさらに高まることが期待されています。隣接するJR東日本大宮総合車両センター(車両基地)との景観調和やシナジー効果も考慮されており、鉄道の街・大宮ならではの新名所となるでしょう。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。