不動産売却をお考えの皆様にとって、最適な売却方法を選択することは、売却価格や期間に大きく影響する重要な決断です。家やマンションの売却には複数の方法があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。
本記事では、INA&Associates株式会社として、数多くの不動産売却をサポートしてきた経験を基に、2025年最新の不動産売却方法について詳しく解説いたします。仲介、買取、任意売却、リースバックという4つの主要な売却方法を徹底比較し、皆様の状況に最適な選択肢をご提案いたします。
不動産売却は人生における重要な決断の一つです。適切な知識と準備により、より良い結果を得ることができます。ぜひ最後までお読みいただき、皆様の不動産売却成功にお役立てください。
不動産売却の4つの方法とその特徴
不動産売却には主に4つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の状況に最適な方法を選択することが成功への第一歩です。
1.仲介による売却
仲介は最も一般的な不動産売却方法です。不動産会社が売主と買主の間に入り、売買契約の成立をサポートします。
仲介のメリット
仲介による売却の最大のメリットは、市場価格に近い価格での売却が期待できることです。不動産会社が広く買主を募集するため、複数の購入希望者から最適な条件を選択できる可能性があります。
また、不動産のプロフェッショナルが売却活動を代行するため、売主様の負担を軽減できます。物件の魅力を最大限にアピールする販売戦略の立案、内覧対応のサポート、契約書類の作成など、専門的な業務を任せることができます。
仲介のデメリット
一方で、仲介による売却には時間がかかるというデメリットがあります。一般的に売却完了まで3ヶ月から6ヶ月程度を要し、市場状況によってはさらに長期化する場合もあります。
また、仲介手数料が発生します。売買価格が400万円を超える場合、「(売買価格×3%+6万円)+消費税」が上限となります。例えば、3,000万円で売却した場合、仲介手数料は105万6,000円(税込)となります。
媒介契約の種類
仲介を依頼する際は、媒介契約を締結する必要があります。媒介契約には以下の3種類があります。
契約種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | 報告義務 | 契約期間 |
---|---|---|---|---|
専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 1週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
専任媒介 | 不可 | 可能 | 2週間に1回以上 | 3ヶ月以内 |
一般媒介 | 可能 | 可能 | 法的義務なし | 3ヶ月以内 |
2.買取による売却
買取は不動産会社が直接物件を購入する方法です。仲介とは異なり、一般の買主を探す必要がありません。
買取のメリット
買取の最大のメリットは売却期間の短さです。査定から売却完了まで、早ければ1週間程度で完了することも可能です。急な転勤や資金調達が必要な場合など、スピードを重視する売主様に適しています。
また、仲介手数料が不要であることも大きなメリットです。不動産会社が直接購入するため、仲介業務が発生せず、手数料を支払う必要がありません。
さらに、契約不適合責任が免除される場合が多く、売却後のトラブルリスクを軽減できます。
買取のデメリット
買取の主なデメリットは、売却価格が市場価格より低くなることです。一般的に市場価格の70%~80%程度となることが多く、仲介による売却と比較すると売却価格が下がります。
3.任意売却
任意売却は住宅ローンの返済が困難になった場合に、金融機関の合意を得て行う売却方法です。
任意売却のメリット
任意売却の最大のメリットは、競売を回避できることです。競売と比較して、より高い価格での売却が期待でき、残債務を減らすことができます。
また、売却時期や条件について、ある程度の調整が可能です。引越し時期の相談や、場合によっては引越し費用の捻出も期待できます。
任意売却のデメリット
任意売却を行うためには、金融機関の同意が必要です。また、信用情報に影響を与える可能性があり、将来の借入に制限が生じる場合があります。
4.リースバック
リースバックは物件を売却した後、買主から賃貸として借り続ける方法です。
リースバックのメリット
リースバックの最大のメリットは、住み続けながら資金調達ができることです。売却により現金を得ながら、同じ物件に居住を続けることができます。
また、将来的に買い戻すことも可能な場合があり、一時的な資金調達手段として活用できます。
リースバックのデメリット
リースバックのデメリットは、家賃の支払いが発生することです。また、買取価格が市場価格より低くなる傾向があり、長期的には経済的負担が大きくなる可能性があります。
売却方法の比較表
項目 | 仲介 | 買取 | 任意売却 | リースバック |
---|---|---|---|---|
売却価格 | 高い(市場価格) | 低い(市場価格の70-80%) | 中程度 | 低い |
売却期間 | 3-6ヶ月 | 1週間-1ヶ月 | 3-6ヶ月 | 1-2ヶ月 |
仲介手数料 | 必要 | 不要 | 必要 | 不要 |
適用条件 | 一般的 | 一般的 | ローン滞納時 | 特殊な事情 |
居住継続 | 不可 | 不可 | 不可 | 可能 |
最適な売却方法の選び方
不動産売却方法の選択は、売主様の状況や優先事項によって決まります。以下のポイントを参考に、最適な方法をお選びください。
時間的余裕がある場合
売却に十分な時間をかけられる場合は、仲介による売却をお勧めします。市場価格に近い価格での売却が期待でき、複数の購入希望者から最適な条件を選択できます。
特に、立地条件が良い物件や築年数が浅い物件の場合、仲介による売却で高い価格を実現できる可能性があります。
急いで売却したい場合
転勤や資金調達の必要性など、急いで売却したい場合は買取が適しています。査定から売却完了まで短期間で完了し、確実に現金化できます。
ただし、売却価格が市場価格より低くなることを理解した上で選択することが重要です。
住宅ローンの返済が困難な場合
住宅ローンの返済が困難になった場合は、任意売却を検討してください。競売を回避し、より良い条件での売却が可能です。
早めに専門家に相談し、金融機関との交渉を開始することが重要です。
住み続けたい場合
売却により資金調達したいが、住み続けたい場合はリースバックを検討してください。ただし、長期的な経済性を十分に検討することが必要です。
不動産売却にかかる費用と税金
不動産売却には様々な費用と税金が発生します。事前に把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。
主な費用
仲介手数料
仲介による売却の場合、不動産会社に仲介手数料を支払います。法律で定められた上限額は以下の通りです。
売買価格 | 仲介手数料上限 |
---|---|
200万円以下 | 売買価格×5%+消費税 |
200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買価格×3%+6万円+消費税 |
その他の費用
- 印紙税:売買契約書に貼付する印紙代(売買価格により異なる)
- 登録免許税:抵当権抹消登記費用(1,000円/1筆)
- 司法書士報酬:登記手続きの代行費用(1万円~3万円程度)
- 測量費用:境界確定が必要な場合(30万円~80万円程度)
- ハウスクリーニング費用:物件の清掃費用(5万円~15万円程度)
税金
譲渡所得税
不動産売却により利益(譲渡所得)が発生した場合、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得の計算式
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
税率
譲渡所得税の税率は、物件の所有期間により異なります。
所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 復興特別所得税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年以下(短期) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
5年超(長期) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
特別控除
居住用財産の売却の場合、3,000万円の特別控除を適用できます。この控除により、譲渡所得から3,000万円を差し引くことができ、多くの場合で税負担を軽減できます。
軽減税率の特例
所有期間が10年を超える居住用財産の場合、軽減税率の特例を適用できます。
- 譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%
- 譲渡所得6,000万円超の部分:20.315%
不動産売却を成功させるポイント
1.適切な価格設定
市場相場を正確に把握し、適切な売り出し価格を設定することが重要です。高すぎる価格設定は売却期間の長期化を招き、安すぎる価格設定は損失につながります。
複数の不動産会社から査定を取得し、市場動向を踏まえた価格設定を行ってください。
2.物件の魅力向上
内覧時の印象を良くするため、以下の点に注意してください。
- 清掃の徹底:室内外の清掃を行い、清潔感を演出
- 整理整頓:不要な物を片付け、広々とした印象を作る
- 修繕の実施:明らかな不具合は事前に修繕
- 照明の確保:明るい印象を与えるため、照明を十分に確保
3.信頼できる不動産会社の選択
不動産売却の成功は、パートナーとなる不動産会社の選択にかかっています。以下の点を確認して選択してください。
- 実績と経験:地域での売却実績や経験年数
- マーケティング力:広告戦略や集客力
- コミュニケーション:報告の頻度や対応の質
- 専門知識:税務や法務に関する知識
4.必要書類の準備
売却をスムーズに進めるため、以下の書類を事前に準備してください。
- 権利証(登記識別情報):所有権を証明する書類
- 固定資産税納税通知書:税額の確認用
- 建築確認済証・検査済証:建物の適法性を証明
- 設計図書:建物の詳細情報
- 管理規約・重要事項説明書:マンションの場合
- 測量図:土地の境界確認用
まとめ
不動産売却には仲介、買取、任意売却、リースバックという4つの主要な方法があります。それぞれに特徴があり、売主様の状況や優先事項に応じて最適な方法を選択することが重要です。
仲介は時間をかけて高い価格での売却を目指す場合に適しており、買取は急いで確実に売却したい場合に有効です。任意売却は住宅ローンの返済が困難な場合の選択肢であり、リースバックは住み続けながら資金調達したい場合に検討できます。
成功する不動産売却のためには、適切な価格設定、物件の魅力向上、信頼できる不動産会社の選択、必要書類の準備が重要です。また、売却にかかる費用や税金を事前に把握し、適切な資金計画を立てることも欠かせません。
不動産売却は人生における重要な決断です。十分な情報収集と準備を行い、専門家のアドバイスを受けながら進めることをお勧めします。
次のステップとして、まずは複数の不動産会社から査定を取得し、現在の市場価値を把握することから始めてください。適切な準備と戦略により、満足のいく売却結果を実現できるはずです。
よくある質問
Q1.不動産売却にはどのくらいの期間がかかりますか?
A1.売却方法により大きく異なります。仲介による売却の場合、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度を要します。買取の場合は1週間から1ヶ月程度で完了することが可能です。市場状況や物件の条件により期間は変動するため、余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。
Q2.仲介手数料以外にどのような費用がかかりますか?
A2.主な費用として、印紙税、登録免許税、司法書士報酬、測量費用、ハウスクリーニング費用などがあります。また、譲渡所得が発生した場合は譲渡所得税も課税されます。売却価格の5%~10%程度を諸費用として見込んでおくことをお勧めします。
Q3.住宅ローンが残っている物件でも売却できますか?
A3.はい、売却可能です。売却代金でローンを完済できる場合は通常の売却手続きを行います。売却代金でローンを完済できない場合は、不足分を自己資金で補うか、任意売却を検討することになります。事前に金融機関に相談することをお勧めします。
Q4.売却時期はいつが良いですか?
A4.一般的に春(2月~4月)と秋(9月~11月)が不動産の取引が活発になる時期とされています。ただし、市場状況や個人の事情により最適な時期は異なります。税制上の特例の適用条件なども考慮して、総合的に判断することが重要です。
Q5.複数の不動産会社に査定を依頼しても良いですか?
A5.はい、複数の不動産会社に査定を依頼することをお勧めします。査定価格や提案内容を比較することで、より適切な判断ができます。ただし、あまり多くの会社に依頼すると対応が大変になるため、3社~5社程度に絞ることが実用的です。

稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター