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    超富裕層が注目する国内不動産投資の有望エリア

    日本の超富裕層が追加の不動産投資先を検討する際、高い収益性や資産価値、将来性を持つエリアに関心が集まります。本記事では、高利回り・安定収入が期待できる地域や、都市再開発・インフラ整備による価値向上が見込まれる地域、さらには立地の希少性やブランド性が高く資産保全にも適した地域を紹介します。また、超富裕層が物件を選ぶ際に重視する共通ポイントについても解説します。

    地域 主な魅力 期待されるイベント・開発
    東京 安定収益性、高級エリアの希少性 虎ノ門・麻布台プロジェクト、渋谷再開発、品川リニア新幹線開業
    大阪 成長性、利回りの高さ 大阪・関西万博、IR(統合型リゾート)開業
    名古屋 東京との一体化、資産価値の上昇余地 リニア中央新幹線開業、栄・金城ふ頭再開発
    福岡 コンパクトシティ、高い地価上昇率 天神ビッグバン、博多コネクティッド
    札幌 都市成長、割安感と高利回り 北海道新幹線札幌延伸、札幌駅周辺再開発
    軽井沢 高級避暑地としての希少価値 リモートワーク普及による別荘需要増
    葉山 海辺の絶好ロケーション、歴史的ブランド 開発制限による希少価値
    芦屋 高級住宅街、資産保全に優れる 景観保全と豪邸条例による価値維持

    東京:都心プレミアムエリアの安定収益と資産価値

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    日本の首都・東京は、超富裕層にとって不動産投資の最有力エリアです。東京の都心物件は想定利回りが約3.5~4%程度とされ、北京や上海など中国主要都市の利回り(約2%弱)に比べて高く、安定した賃料収入源となっています。特に近年の円安により海外投資家からも「割安で安定した資産」として注目を集め、多額の資金流入が続いています。

    超富裕層に人気のエリアは、やはり東京23区でも「都心の一等地」です。具体的には港区(赤坂・六本木・青山など)、渋谷区(広尾・恵比寿・代官山など)、千代田区(番町・霞が関周辺など)が代表的な高級住宅エリアとして挙げられます。これらの地域には富裕層向け超高層タワーマンションが林立しており、東京タワーや都心の夜景を一望できる眺望や、その土地ならではのブランド力に優れた物件が多いことが特徴です。例えば都心主要3区のペントハウス(最上階住戸)は希少性が高く、供給が限られるため資産価値が維持されやすいことから、超富裕層による長期保有目的の購入が目立ちます。

    さらに東京では、大規模な都市再開発プロジェクトが次々と進行し、都心エリアの価値を押し上げています。近年竣工した虎ノ門・麻布台プロジェクト(虎ノ門ヒルズ周辺)や渋谷駅周辺再開発などにより、最新設備を備えた高級レジデンスの供給が進みました。また品川駅周辺ではリニア中央新幹線の開業(予定)に向けた再開発も控えており、都市機能のさらなる充実が期待されます。こうした再開発により誕生した都心の新築高級マンションには海外富裕層からの需要も高く、ブランドエリアとしての地位が一層強固になっています。

    大阪:成長著しい都市圏と万博・IRによる将来性

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    日本第二の経済都市である大阪も、富裕層にとって注目の投資先です。大阪市内の地価は近年上昇基調を強めており、2024年時点の大阪市住宅地公示地価は前年比+5.8%と大幅な上昇を示しました。これは前年の+3.7%から上昇率が拡大したもので、特に2025年開催の大阪・関西万博や、2030年開業予定のIR(統合型リゾート)への期待感が市場を押し上げています。万博会場となる夢洲への地下鉄延伸や新駅開業などインフラ整備も進み、開催前から大阪湾岸エリアの地価上昇が顕著です。実際、大阪中心部では訪日観光客に人気のミナミ(難波・心斎橋)周辺で商業地価が急騰しており、道頓堀の商業地は前年比+22.6%という突出した上昇率を記録しました。インバウンド需要の回復と万博効果によって、大阪は中期的にも明るい材料が揃っていると言えるでしょう。

    投資エリアとしては、大阪駅周辺の梅田エリアが安定した人気を誇ります。梅田では「うめきた2期」と呼ばれる再開発プロジェクトにより、新たな高層ビル群や大規模な緑地空間「グラングリーン大阪」が整備され、ビジネス・居住両面で注目が集まっています。賃貸需要も根強く、高額賃料を設定できる高級マンションへのニーズが高いエリアです。また中之島本町といった都心部のオフィス街近隣では、富裕層向けのタワーマンション開発が相次ぎました。これにより「職住近接」で利便性を享受できる物件が増え、長期的な資産価値向上が見込まれています。

    大阪は東京に比べ不動産価格が割安で、表面利回りもやや高めな傾向にあります。そのため「高騰した都心部よりも、成長余地のある地方都市」に目を向ける富裕層もおり、実際に関西在住の富裕層が札幌など他都市の物件を購入する動きも見られます(後述)。もっとも、大阪市内でも北摂エリア(豊中市・吹田市など)や阪神間の高級住宅街には資産価値の安定した物件が多く、相続や資産保全の観点で検討されるケースが増えています。全体として大阪圏は、万博とIR開業というビッグイベントを控え、不動産市場の将来性に期待が持てるエリアです。

    名古屋:リニア新幹線で注目の中部経済圏

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    中部地方の中核都市名古屋も、今後の発展が見逃せないエリアです。世界的企業トヨタの本拠地を擁し堅調な経済基盤を持つ名古屋市は、2027年開業予定のリニア中央新幹線により東京〜名古屋間が約40分で結ばれる計画です。このリニア開業は名古屋の都市価値を飛躍的に高めると期待され、全国の富裕層投資家から熱視線を浴びています。実際、名古屋市内では分譲価格1億円を超えるような高級マンション開発が相次ぎ、いずれも好調な売れ行きを見せています。建設コスト高騰で物件価格が上昇する中、「資産価値を重視する富裕層」が中心市街地や駅近物件を積極的に購入しており、デベロッパー各社が用地確保にしのぎを削る状況です。地価の上昇地点も都心から市内各地の駅周辺へと広がりつつあり、名古屋全体が活気づいています。

    名古屋駅周辺の名駅エリアでは近年超高層ビルが林立し、新たなランドマークが次々誕生しています。JRゲートタワー(2017年開業)に続き、大名古屋ビルヂングの建替えや笹島ライブ地区の再開発など、駅直結・徒歩圏に最新の商業施設やオフィス、住宅が集積しました。加えて名古屋市内では栄エリアの再開発(久屋大通公園の再整備など)や金城ふ頭のIR誘致構想もあり、将来的な集客力向上が期待されています。こうした要素から、名古屋は「今後値上がりが見込める都市」として不動産投資家に再評価されています。

    名古屋圏の不動産は、東京・大阪と比べ割安感がありながら安定した需要があります。人口減少が課題となる地方都市が多い中で、名古屋市の人口規模は約230万人と大都市圏を維持しており、賃貸市場も堅調です。加えてリニア効果による東京圏との一体化が進めば、名古屋の資産価値は今後一段と向上する可能性があります。不動産ポートフォリオの分散投資先としても、名古屋は有力な選択肢と言えるでしょう。

    福岡:地価上昇率トップクラスの成長都市

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    九州最大の都市福岡市は、「若くて元気な街」として国内外から注目される投資先です。国土交通省の調査によれば、福岡市は近年住宅地・商業地ともに地価上昇が続いており、主要都市中トップクラスの成長率を示しています。47都道府県庁所在地の中で、福岡市の2021年公示地価の前年比上昇率は住宅地+4.4%(札幌市に次ぐ全国2位)、商業地+7.7%(全国トップ)と突出しています。また商業地上昇率ランキングでも福岡市中央区・博多区内の地点が上位を独占し、日本で最も成長力のあるエリアとなっています。

    こうした背景には、福岡市の高い生活環境と独自の都市政策があります。福岡は「コンパクトシティ」で知られ、都市機能が中心部に集約され交通の便が良い一方、自然や食文化にも恵まれ「住みやすい街」として定評があります。さらに市主導の大型プロジェクト「天神ビッグバン」(天神地区の大規模再開発)や「博多コネクティッド」(博多駅周辺再整備)により、オフィス・商業ビルの建替えが進み街の景観と機能が向上しています。これら再開発による雇用拡大や交流人口の増加が地価を押し上げ、将来的な不動産価値の向上に寄与すると期待されています。

    富裕層向けの高級住宅も福岡市内で存在感を増しています。赤坂・警固エリアから大濠公園に抜けるけやき通り沿いや、浄水通り周辺、海浜地区の百道などには、積水ハウスや三菱地所などによる高級ブランドマンションや大型邸宅が立ち並びます。これらの物件は都心アクセスの良さと閑静な住環境を兼ね備え、地元の経営者層だけでなく東京など他地域の富裕層からも「セカンドハウス」として注目されています。福岡市は今後も人口増(東京圏からの移住促進やアジアからの留学生・労働力の流入)による発展が予想されており、不動産投資の観点でも魅力的な成長都市です。

    札幌:再開発とインバウンドで脚光を浴びる北の拠点

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    北海道の県庁所在地札幌市は、人口約197万人を抱える北日本の拠点都市です。近年、札幌は全国有数の地価上昇率を記録し、不動産市場が活況を呈しています。2022年には札幌市の新築マンション平均価格がバブル期を超えて過去最高に達しましたが、それでもなお北海道新幹線の札幌延伸(2030年開業予定)や都心部再開発を控え、資産価値上昇の余地を残していると指摘されています。実際、大阪の富裕層が「割安な地方都市」として札幌に熱視線を注ぎ、大型タワーマンションを購入するケースも出ています。背景には、東京・大阪など大都市圏の高額物件価格に対し、札幌の物件価格は相対的に手頃で利回りも確保しやすい点があります。加えて将来の新幹線開業によるアクセス向上や、札幌自身の都市成長力が評価されているのです。

    札幌都心では札幌駅周辺で大規模な再開発計画が進行中です。札幌駅北側では再開発事業により超高層タワーマンション「ONE札幌ステーションタワー」などが建設され、駅直結の新たなランドマークとなる予定です。またオフィス面でも、札幌駅前通や大通公園周辺で新築ビルが相次ぎ、企業の札幌進出が活発化しています。札幌のオフィス賃料は東京丸の内の半分以下、大阪梅田の7割程度と割安で、人材豊富なこともあり道外企業の進出ラッシュにつながっています。こうした企業進出や再開発は雇用を生み出し、住宅需要も下支えしています。

    さらに北海道全体に目を向けると、世界的なリゾート地として知られるニセコの存在も札幌の不動産市場にプラスの影響を与えています。ニセコは外国人超富裕層が別荘を構える国際的避暑地・スキーリゾートで、その高級コンドミニアム価格は東京・港区並みとも言われます。2020年代に入り円安も追い風となって海外投資マネーが北海道に流入し、札幌も富裕層の長期滞在拠点として高級ホテル誘致が進むなど注目されています。新幹線開業後は札幌~ニセコ間が30分弱で結ばれる計画であり、将来的には札幌が道内リゾート観光のハブとして一層価値を高める可能性もあります。

    総じて札幌は、「生活インフラが整った政令市」でありながら「成長期待の高いマーケット」という二面性を持ちます。地元の実需と外部からの投資需要が交錯し、今後も不動産価格の上昇が見込まれるでしょう。賃貸利回りの観点でも、物件価格に比して賃料水準が堅調なため、一定の利回りを確保しやすいエリアといえます。札幌市は超富裕層のポートフォリオにおいて、収益性と将来性を兼ね備えた魅力的な投資先となっています。

    軽井沢:伝統ある高級避暑地の希少価値

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    東京の主要都市圏以外で超富裕層に人気の高級住宅地として真っ先に挙がるのが長野県軽井沢です。軽井沢は明治期以来、日本有数の避暑地・別荘地として発展し、政財界人や海外セレブに愛されてきました。現在も「日本第一等の別荘地」として不動の地位を占め、軽井沢ブランドは100年以上にわたり保たれ、バブル崩壊後、その資産価値が下がることはありません。実際、近年の公示地価でも軽井沢町は上昇傾向を示し、2023年の平均公示地価は前年比+6.93%、基準地価は前年比+7.92%の上昇となりました。これはリモートワーク普及や観光需要増による別荘需要の高まりに加え、供給地の限られた希少エリアであることが背景にあります。

    軽井沢の魅力は何と言っても首都圏からのアクセスと豊かな自然環境の両立です。東京から新幹線でわずか1時間強という利便性により、「週末は軽井沢で過ごすデュアルライフ」が可能です。実際、東京に拠点を置く富裕層がコロナ禍を契機に軽井沢に長期滞在・移住する動きが加速し、2020~2022年の3年間で約300件もの別荘売買が成立しました。軽井沢の土地価格上昇は東京の富裕層による需要が支えており、東京都心の地価が大きく下落しない限り軽井沢も上昇基調が続くと専門家は分析しています。

    軽井沢には旧軽井沢、南軽井沢、千ヶ滝、星野エリアなど複数の人気別荘エリアがあり、それぞれ趣の異なる別荘文化があります。例えば由緒ある別荘が多い旧軽井沢周辺や、森に囲まれた南ヶ丘・南原エリア、高級リゾートホテルやゴルフ場が点在する中軽井沢星野エリアなどが挙げられます。いずれのエリアも大きな区画にゆったりと邸宅が建ち並び、景観や環境が厳しく守られている点が特徴です。自然環境そのものが最大の資産価値と評価され、「豊かな自然こそ何よりの贅沢」という価値観を富裕層に再認識させています。軽井沢は今後も別荘市場の王者として、その希少性とブランド力で富裕層を惹きつけ続けるでしょう。

    葉山:由緒ある海辺の邸宅地と唯一無二のロケーション

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    神奈川県葉山町は、三浦半島西岸に位置する高級住宅地・別荘地です。葉山には明治以来の別荘文化が根づいており、中でも「葉山御用邸」(天皇陛下のご静養用別邸)がある地として知られます。海と山に囲まれた自然豊かな環境でありながら、単なる観光地とは一線を画す落ち着きと品格を備えたエリアです。

    葉山最大の魅力は、そのロケーションの希少性にあります。三浦半島の西側という地理特性上、相模湾に沈む夕日や富士山シルエットが望める“西向き”の丘陵地が多く、「ダイヤモンド富士」を臨める絶好の眺望が得られます。西向きの海景色はリゾート地において理想的な方角とされ、葉山はまさに「西海岸のゴールデン・ポジション」と評されます。穏やかな入江と緑の丘が織りなす景観は唯一無二で、海辺の別荘から夕陽を眺める贅沢は葉山ならではの体験です。

    また葉山は古くから皇族や政財界人、文化人の別荘が集まってきた土地柄であり、その歴史が地域の洗練された雰囲気を形作っています。町内には老舗の高級旅館「葉山ホテル音羽ノ森」や料亭「日影茶屋」などが存在し、ハイエンドなサービスや美食を提供してきました。地元で採れる野菜や魚介は「葉山ブランド」と称され、皇室や名士を唸らせてきた上質な食材として知られています。このように生活インフラから食文化に至るまで高いクオリティを保っている点も、葉山に別荘を構える大きなメリットです。

    葉山の代表的な邸宅街としては、海沿いの森戸海岸一色海岸周辺や、高台の湘南国際村エリアなどが挙げられます。海派・山派それぞれの富裕層の好みに応じ、オーシャンビューを満喫できる物件もあれば、緑深い丘陵地にプライバシー性の高い隠れ家邸宅を構えることもできます。いずれにせよ葉山は開発が限られた小さな町であり、空き地がほとんど出ないため不動産の希少価値が極めて高いのが実情です。相続で代々受け継がれる資産も多く、市場に出れば高値が付くケースがほとんどです。資産保全や承継の観点からも、葉山の不動産は超富裕層にとって魅力的なポートフォリオの一部となっています。

    芦屋:日本屈指の高級住宅街が持つ安定資産価値

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    関西圏で伝統的に富裕層が集まる高級住宅街として有名なのが兵庫県芦屋市です。中でも芦屋市東北部の六麓荘町(ろくろくそうちょう)は「日本最後の高級住宅街」と称される別格の存在で、38ヘクタールにおよぶ美しい山麓の邸宅街には全国から注目が集まります。芦屋市は「国際文化住宅都市」として景観保全に力を入れてきた歴史があり、六麓荘町では独自に日本一厳しいとも言われる景観・建築規制が敷かれています。例えば六麓荘町内で新築を建てる場合、「一戸建てのみ・敷地面積400㎡以上・建物高さ10m以下」といった条件が課されており、俗に「豪邸条例」とも呼ばれるこの条例によって豪邸以外は建てられない街並みが維持されています。区画の細分化(分筆)も原則禁止されているため、広大な敷地に贅沢な低層邸宅が並ぶ景観は圧巻で、観光客が見学に訪れるほどです。

    芦屋市全体としても地価水準は非常に高く推移しています。芦屋で地価の高いエリアでは1㎡あたり81万5千円(=約2,694万円/坪)にも達し、その安定した資産価値の高さを目当てに不動産を購入する富裕層が後を絶ちません。六麓荘町の坪単価も2021年時点で約68万7千円/坪(≒約210万円/㎡)と兵庫県内トップクラスであり、築年数が経っても下落幅が小さいことが確認されています。実際、芦屋の不動産購入者には資産性を重視する層が多く、「資産を守り、増やし、そして次世代に残す」目的で邸宅を構えるケースもあります。芦屋の邸宅は長期保有される傾向が強く、市場に出る物件数自体が限られるため、需給の観点でも資産価値が下支えされています。

    芦屋市内の高級住宅エリアは六麓荘町以外にもいくつか存在します。例えばJR芦屋駅周辺の山手町東山町、阪急沿線の夙川苦楽園(西宮市との境界付近)などは緑豊かで閑静な邸宅街が広がります。また海側にはヨットハーバーを有する芦屋浜もあり、こちらは埋立による計画都市ながら高級マンションが並ぶ人気エリアです。いずれの地域も治安が良く教育水準が高いことから、富裕層世帯の定住率が高い傾向にあります。芦屋という街の持つ「ステータス」は不動産そのものの付加価値となっており、住所がブランドになる典型的な例と言えるでしょう。

    超富裕層が物件選びで重視するポイント

    最後に、上述の各エリアにも通じる超富裕層の物件選定における共通点を整理します。彼らは物件の収益性や将来性だけでなく、居住空間としての質や希少性にも強くこだわります。その傾向として、以下のようなポイントが挙げられます。

    • 立地の希少性・ブランド力:住所自体が一種のステータスとなるエリアを好む傾向があります。都心一等地や由緒ある高級住宅街など、限られた人しか住めない希少なロケーションに価値を見出します。また、富裕層向けマンションの人気が衰えないのは立地の良さも大きな理由です。

    • 低層住宅・ゆとりある空間:近年「真の富裕層はタワマンより低層マンションを選ぶ」とも言われるように、周囲が静かで環境変化の少ない低層住宅を好むケースが増えています。例えば東京では白金台や元麻布、広尾などの閑静なエリアに建つ低層マンションは希少で、周辺環境が良好なため資産価値も安定しやすいとされています。戸建て志向の場合も、広大な敷地にプライバシーが保たれた邸宅を求める傾向があります(六麓荘町のように最低敷地面積を定める例もあります)。

    • 眺望や開放感:都心部でタワーマンションを選ぶ富裕層の場合、圧倒的な眺望の良さや開放感を重要視します。東京湾岸や高層ビル群を一望できる最上階のペントハウスなど、眺望に優れた物件には相場以上の価値が認められることも多く、価格を大幅に上乗せしても売れるケースが見られます。一方、郊外や別荘地では庭越しに四季折々の自然を楽しめることや、海・山などその土地ならではの景色が望めることが好まれます。

    • セキュリティと私的空間:富裕層にとって安全・安心な暮らしは不可欠です。24時間有人管理やコンシェルジュサービス、防犯設備が充実したマンションは「ホテルライクなホスピタリティ」と相まって高い人気を保っています。戸建てでも門扉や塀で外界と隔てられた私邸空間が確保され、防犯システムが導入されていることが重視されます。要人・著名人の場合はパパラッチ対策も必要なため、人目に触れにくい立地や高度なセキュリティ体制が重要です。

    • 物件規模・仕様のハイグレード化:超富裕層は居住空間そのもののグレードにも妥協しません。都心マンションであれば200㎡近い広さのメゾネットやワンフロア住戸、天井高のあるペントハウスなどを好み、内装もデザイナーズ仕様や最高級の設備・素材であることを求めます。近年はブランデッドレジデンス(高級ホテルブランドと提携した分譲マンション)への注目も高まっており、そうした物件は富裕層に即日完売する例もあります。別荘においても暖炉やホームシアター、ワインセラーなど趣味嗜好に合った設備を備えた邸宅を選ぶ傾向があります。

    以上のように、超富裕層の不動産投資は単なる収益追求だけではなく、「自らのライフスタイルやステータスに見合った資産を持つ」という側面があります。そのため投資対象となるエリアも、賃貸利回りが高いだけでなくブランド性や将来的な価値維持が期待できる地域に集中する傾向があります。東京・大阪・名古屋・福岡・札幌といった主要都市の中心エリアや、軽井沢・葉山・芦屋など歴史的に富裕層に支持されてきた高級住宅地は、まさにそうした条件を満たす代表例と言えるでしょう。超富裕層が選び抜いた不動産ポートフォリオには、日本各地の優良なエリアが網羅されており、それらの資産は次代へと受け継がれていきます。今回取り上げたエリアは、そのような「富裕層に選ばれる街」として今後も高い価値を保ち続けると予想されます。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。