「なぜINAは不動産メディアをやるのか」というテーマについて、私たちの経営理念と想いをお伝えしたいと思います。私たちINA&Associatesは、不動産業界に身を置く企業として単に物件を仲介・管理するだけでなく、自ら情報発信を行う“メディア事業”に取り組んでいます。それはなぜなのか――その背景には、業界の課題に真正面から向き合い、顧客や社会に長期的な価値を提供したいという強い信念があります。本記事では、その信念に基づく取り組みの理由を、順を追ってご説明します。
情報格差の解消が目指す業界改革
まず最初に強調したいのは、不動産業界に根深い情報格差の問題です。長年、不動産取引では「業者だけが詳しい情報を握り、一般の消費者には十分な情報が届かない」という非対称性が存在してきました。消費者(買い手)が自由に物件情報へアクセスできないことをいいことに、情報格差を利用したビジネスがいまだに横行しているのが実情です。例えば業者専用の物件データベース(REINS)にはあらゆる情報が集約されていますが、それを一般には公開せず、自社だけで抱え込むことで利益を得る――そんな構造が業界に残っているのです。
しかし、私たちはこの古い体質を変えたいと考えています。不動産は人生で最も高額な取引の一つです。それにも関わらず情報が偏っていれば、お客様は不安を抱えたまま意思決定を迫られることになります。その不安は疑心暗鬼を生み、業界全体への不信感にもつながりかねません。実際、「不動産業者と一般人には情報格差があり、疑心暗鬼も生まれやすい」と言われるほどで、日本では不動産業者の社会的地位が欧米ほど高くない現状すらあります。
INAがメディア事業に取り組む大きな理由の一つが、この情報格差を解消し業界の透明性を高めることです。幸い当社には、不動産オーナー向けコンサルや富裕層向け仲介を通じて蓄積した膨大な知見があります。事実、当社は賃貸管理事業への参入に際し、数多くの不動産オーナー様と対話する中で「賃貸管理の分野は不動産業界の中でも情報の非対称性が激しい」と痛感しました。だからこそ、その業界知識やノウハウを社外にも積極的に開示し共有することで、不動産に関する正確で有益な情報を一人でも多くの方に届けたいのです。それは単なるマーケティング以上に、業界をより良い方向へ導く社会的責任だと考えています。
情報発信を通じて透明性を高めることは、長期的な信頼の構築にも直結します。私たちは「誠実で正直な情報提供の積み重ねによってしか、長期的な信頼は生まれない」と信じています。業界に蔓延る不透明さを打破し、正しい知識を広めていくこと。それがINAがメディアを運営する根本動機であり、まず実現したい理念なのです。
顧客との長期的な関係構築
不動産ビジネスは、一度物件を売買・賃貸すれば取引が完了し、そこで関係が途切れがち――従来はそう思われてきました。しかし私たちは、お客様との関係は契約書に署名した後からが本当のスタートだと考えています。住宅の購入や賃貸は人生の節目に訪れるイベントですが、その合間にも暮らしや資産運用に関するニーズや疑問は常に生じるものです。そこで当社は、メディアという形で継続的な情報提供を行い、お客様と長期にわたる関係を築く場を設けています。
具体的には、自社メディア上で不動産市場のトレンドや役立つ暮らしの情報、資産に関する知識などを発信し続けることで、「物件を探しているとき以外」でもお客様との接点を保つよう努めています。こうした取り組みは、お客様がすぐに物件購入・売却を検討していないタイミングでも当社を思い出していただくきっかけとなります。実際にマーケティングの観点からも、不動産取引を検討していない時期にこそ情報発信で接点を作ることが有効だと言われています。例えば今は引越しや購入の予定がない方でも、ライフステージの変化で将来ニーズが生まれる可能性があります。その際、以前から当社の発信する有益な情報に触れていれば、「いざというときに真っ先にINAを想起してもらえる」わけです。
継続的な情報提供によって、私たちはお客様と伴走するパートナーであり続けたいと願っています。地元の生活情報や不動産に関係する周辺知識まで幅広く提供するのは、「人生の様々な局面で頼れる存在でいたい」という想いからです。その積み重ねにより、お客様との絆が深まり、単発の取引を超えた生涯にわたる信頼関係へと発展していくと信じています。メディア運営は、そのような長期的関係を育む上で欠かせない戦略的手段なのです。
超富裕層への価値ある情報発信
INA&Associatesが携わる不動産領域の中でも、特に特徴的なのが超富裕層のクライアントとのお取引です。富裕層のお客様は、高額で希少な不動産を資産ポートフォリオの一部としてお持ちになるケースも多く、求める情報の質や視点も一段と高度になります。当社はそのような超富裕層の方々に対して、単なる物件情報に留まらない付加価値の高いインサイトを提供することを使命の一つとしています。
富裕層のお客様ほど、日々様々な情報に触れられています。その中で真に有益なものは何かを見極める目も肥えています。そのため私たちのメディアでは、そうした目の肥えた読者に一読の価値がある専門的なコンテンツを届けることを心がけています。具体的には、国内外の高級不動産マーケットの動向分析、資産保全のための法制度の解説、さらには富裕層ならではのライフスタイル提案など、多角的なテーマを扱っています。いずれも信頼性の高いデータや専門知見に基づいた内容であり、「ステータスや資産価値を重視する富裕層が本当に知りたい情報とは何か」を突き詰めています。例えば、近隣の高級物件の価格推移や将来的な投資価値に関するレポート、あるいは購入後の暮らしを豊かにするための一流レストラン・国際学校・医療施設の紹介など、富裕層にとって有益で信頼できる情報提供に努めています。
このようなコンテンツを蓄積することで、当社は富裕層の方々にとって「価値ある情報の源泉」となることを目指しています。情報発信を通じて築かれる信頼は、資産規模の大きなお客様ほど重視されます。実際、富裕層マーケティングの観点でも彼らは「信頼性」を重要な判断基準にしています。当社メディアでの発信を積み重ね、「INAが提供する情報なら信頼できる」と感じていただけるなら、これ以上嬉しいことはありません。
また、社内には富裕層向けのコンサルティング業務で培った知見が多数あります。その知見をメディアを通じて発信することは、お客様へのサービスの一環であると同時に、当社の専門性を示すものでもあります。このように富裕層に特化した良質なコンテンツには大きな反響が期待できるのです。当社も自らのメディアを通じ、富裕層のお客様にとって「読むだけで得をする」ような価値ある情報提供を行い、ひいては当社への信頼とブランド価値の向上につなげていきたいと考えています。
ブランドの信頼性と透明性の追求
メディア運営によって得られる恩恵は、直接の顧客関係だけではありません。長期的に見れば、会社のブランド力の強化という効果も非常に大きいと考えています。私たちINA&Associatesは、不動産業界で信頼されるブランドであり続けるために、情報発信を通じてブランドの透明性と一貫性を確立することを重視しています。
繰り返しになりますが、不動産業界には「隠す」文化が残っている部分があります。だからこそ私たちは「開かれた情報発信」を行うことで、逆に透明でクリーンなブランドイメージを築きたいのです。定期的に有益な情報を提供し続ける企業は、顧客から見て「誠実で信頼できる」という印象を持っていただけます。私たちが目指すのは、発信するコンテンツ一つひとつに当社の価値観を映し出し、「INA=信頼と専門性のブランド」という認識を広く浸透させることです。
「高級不動産のことならINA」「不動産投資の情報はINA」と言っていただけるようなブランド想起を目指しています。そのためには、自社メディアを通じて専門性の高いコンテンツを発信し続けることが不可欠です。
また、ブランドの透明性という意味では、良い情報も悪い情報も正直に伝える姿勢を貫くことも大切にしています。たとえば市場が下落傾向にある時には無理に楽観的なことは書かず、リスク情報や注意点も含めてお伝えします。そうすることで読者であるお客様は当社に対し「都合の悪いことも包み隠さず教えてくれる」と感じてくださるはずです。それこそが信頼の礎であり、長期的に見ればブランド価値を高めると確信しています。
情報発信とはすなわち、常に自社の考えやノウハウを世に問う行為です。そこに責任と一貫性を持ち続けることで、ブランドに対する信頼を着実に積み上げていきたいと考えています。
社員と関係者の学びと成長の場
当社がメディア事業に取り組む理由には、社内的な効果も見逃せません。実は自社メディアは、社員やパートナーにとって学びと成長の場として機能する一面があります。単に情報を外部に発信するだけでなく、そのプロセスを通じて組織内の知識共有や人材育成にも役立てているのです。
社員が自ら記事を執筆したり、取材・調査を行ったりすることで、その分野の知識が深まります。専門的なテーマであればあるほど、正確な情報発信のために社内で議論したり専門家に確認をとったりします。その過程自体が社員教育の機会となっています。実際、多くの企業でオウンドメディアが社内研修ツールとして活用できることが指摘されています。入社時に自社メディアの記事を読むことで会社のビジョンや業界知識を学べたり、全社員がコンテンツ制作に関わることで企業文化や方向性の共有が図れたりするのです。当社も、新しく加わったメンバーにはまず過去のメディア記事を読んでもらい、INAの理念や専門知識に触れてもらうようにしています。これは新入社員研修の負担軽減にもつながり、入社後スムーズに戦力化できる効果もあります。
さらに、社員のアウトプットの場としてメディアを位置づけることで、社内に自主的な学習と情報共有のカルチャーが醸成されます。自社の最新の取り組みや成功事例を記事にまとめ社内外に共有することで、社員同士がお互いの成果を知り、刺激を受け合うこともできます。たとえば「○○支店でこんなユニークな契約事例があった」という内容を記事化すれば、他の社員もそれを読み知見を得られるわけです。こうした社内ナレッジの蓄積と共有は、企業全体のスキルアップやサービス品質向上にも直結します。
当社のメディアは、社外向けには不動産の専門情報サイトですが、社内から見ればオープンな社内報のような役割も果たしています。社員が記事を書くたびに学び、そして読めばまた新たな学びがある。社内の誰もがコンテンツ制作に携わることで自社理解が深まり、組織として同じベクトルを持つことにもつながっています。
加えて、「関係者」としては取引先や業界のパートナーの方々も含まれます。当社のメディアは幸い多くの方に読まれており、中には他社の不動産事業者の方や金融機関の方が参考にしてくださるケースもあります。「御社の記事を社内勉強会で共有しました」といったお声をいただくこともあり、大変光栄に思います。こうした業界内での知識共有が進めば、不動産業界全体のレベルアップにも貢献できるでしょうし、それは巡り巡って当社自身の成長にもつながると考えています。
このように、メディア運営は社外への情報発信であると同時に、社内外の人材育成と知識循環のプラットフォームでもあるのです。当社がメディア事業に注力する理由には、「社員一人ひとりが学び続け、成長し続ける会社でありたい」という思いも込められています。
持続可能な企業価値の創造
短期的な視点ではなく、長期的な視点で見たときにもメディア事業の意義は明確です。それは、持続可能な企業価値を創造するという観点です。私たちはメディアへの投資を、将来にわたり当社にもたらす資産形成と捉えています。
広告宣伝は一度出稿してしまえば効果も一過性ですが、質の高いコンテンツというものは半永久的に価値を生み続ける資産になり得ます。一度公開した有益な記事は、検索エンジン経由で継続的に新たな読者を呼び込み、当社との新しい接点を生み出し続けます。オウンドメディアは運営を継続することで企業の資産となり、長期的な効果や利益を生み出すツールになり得る──まさにその通りで、当社も創刊以来の記事が蓄積されるにつれて、毎月安定したアクセスや問い合わせを獲得できるようになってきました。これは広告費をかけて流入を買うのとは異なり、時間と共に雪だるま式に資産価値が増していく取り組みです。
また、自社メディアを持つことで将来的にビジネスの多角化も視野に入れられます。現時点では当社メディアは純粋に自社ブランディング・集客目的ですが、ゆくゆくは蓄積した読者基盤やコンテンツを活かし、新規事業(例えば有料のマーケットレポート提供やオンラインセミナー事業など)への展開も可能かもしれません。これは現段階の具体的計画ではありませんが、メディア自体が一つの事業価値を持つポテンシャルを秘めている点は非常に大きいです。
さらに言えば、メディアで掲げている理念や発信しているメッセージがぶれずに蓄積されていくことで、社内外に対して当社の経営ビジョンが強く刻み込まれていきます。5年先、10年先を見据えたとき、コンテンツの一貫した蓄積は企業文化そのものの資産にもなるでしょう。仮に市場環境が大きく変わっても、私たちが発信してきた内容が信頼のアーカイブとして残ることは、困難な局面での支えにもなるはずです。
昨今「企業はメディア化せよ」とも言われます。自ら発信力を持ちファン(支持者)を囲い込んでいる企業は、経営の安定感が違います。当社もメディアを育て、揺るぎない支持基盤を築くことで、景気変動にも左右されにくい持続的成長を実現したいと考えています。こうした取り組みは一朝一夕に結果が出るものではありません。しかし、地道な努力を積み重ねていけば将来的に大きなメリットを得られると確信しています。だからこそ、短期的な成果だけで判断せず、腰を据えてメディア運営に取り組んでいるのです。
他業界・他社事例に学ぶ
当社のこのようなメディア戦略は決して特異なものではなく、世の中の様々な企業が同様の取り組みを行い成功を収めています。
私たちINA&Associatesも、そうした先行事例に学びつつ、不動産というフィールドで独自のメディア価値を創造したいと考えています。幸い当社には富裕層向け投資から地域密着の暮らし情報まで、多彩なテーマで発信できる強みがあります。他社の成功事例は参考にしつつも、当社ならではの切り口で情報発信を行い、「INAのメディアには他にはない発見がある」と評価される存在になること。それが目標です。
おわりに
最後になりますが、以上述べてきたようにINA&Associatesが不動産メディア事業に取り組む理由は、多方面にわたります。情報格差の是正を通じた業界の健全化、お客様との長期的な関係構築、超富裕層への価値提供、ブランド信頼性の向上、社員の成長機会創出、そして企業としての持続的価値の蓄積。それらすべてが重なり合い、私たちのメディアには単なる集客ツール以上の意義が込められています。
もちろん、メディア運営は決して平坦な道ではありません。日々良質なコンテンツを生み出し続けるには労力も時間も要しますし、成果が数字に現れるまでに時間がかかることもあります。しかし私たちは誠実な情報発信を継続することこそが、遠回りのようで最も確実にお客様と社会の信頼を得る道だと信じています。幸い、「記事を読んで問い合わせました」「御社の考え方に共感しました」といった声が徐々に増えており、手応えを感じる場面も増えてまいりました。この積み重ねを大切にし、ブレることなく続けていくことが何より重要だと肝に銘じています。
私としても、不動産業界に新しい風を起こしたい、業界のイメージを向上させたいという思いがあります。そのために、まずは自分たちが率先して情報を開示し、オープンでフェアな姿勢を示すことが不可欠だと考えます。メディア事業への挑戦は、まさにその姿勢を体現する取り組みです。
これからもINA&Associates株式会社は、不動産メディアを通じて「役立つ情報」「正直な情報」を発信し続けます。それがお客様の利益につながり、ひいては当社の信頼につながることを固く信じているからです。そして将来的には、「INAのメディアがあるおかげで不動産のことがよく分かる」「INAのおかげで安心して不動産取引ができる」という声を日本中から頂戴できるよう、社員一同研鑽を積んでまいります。
長文となりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。これからもINA&Associatesのメディア、そして当社の挑戦にぜひご注目いただければ幸いです。今後ともよろしくお願いいたします。