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    千歳烏山駅前広場南側地区再開発事業の概要と最新進捗

    世田谷区ホームページより引用

    千歳烏山駅南側の駅前広場周辺で、大規模な市街地再開発事業が計画されています。本事業では地上34階・地下2階、高さ約140メートルの超高層複合ビル建設を中心とした駅前再開発が予定されており、低層部に商業施設、高層部に住宅を配置する計画です。都市計画決定は2026年度、竣工は2034年度を目標としており、地域のランドマークとなる新施設の実現に向け準備が進んでいます。

    再開発事業の正式名称と所在地・区域概要

    本プロジェクトの正式名称は「千歳烏山駅前広場南側地区市街地再開発事業」です。計画地は東京都世田谷区南烏山五丁目、京王線「千歳烏山」駅南口の東側一帯で、東側を都市計画道路補助216号線(計画道路)、南西側を駅前通り、北側を現在計画中の駅前広場に囲まれたエリアに位置します。対象区域面積は約1.5ヘクタールに及び、駅前広場用地を含む駅南側区画全体が再開発の範囲となっています。

    再開発の背景と目的

    千歳烏山駅周辺では、京王線の連続立体交差化(笹塚駅~仙川駅間約7.2km)に伴い、駅前広場整備や都市計画道路(補助第216号線)の事業が進行中で、街の構造が大きく変わろうとしています。こうした動きを受け、当地権者らは平成27年(2015年)に「まちづくり勉強会」を発足し、令和2年(2020年)に「まちづくり準備会」へ移行、令和4年(2022年)12月には市街地再開発準備組合を設立して、本再開発事業の検討を本格化させました。再開発の目的は、老朽化した駅前市街地の刷新と公共空間の充実にあります。具体的には、安全に乗り換えできる駅前広場の新設、歩行者が歩きやすい動線確保のための建物セットバック、駅前における滞留空間や緑地の創出、防災性向上(耐震・不燃化建物と防災広場整備)などが掲げられています。これらにより、地域のにぎわい向上と安全・快適な駅前環境の実現を図る計画です。

    事業主体と協力事業者

    本事業は、地元権利者で構成する「千歳烏山駅前広場南側地区市街地再開発準備組合」が中心となり推進されています。将来的には都市再開発法に基づく第一種市街地再開発事業(組合施行)として正式に組合を設立し、事業施行者となる見込みです。事業協力者(デベロッパー)には大手不動産会社の三井不動産レジデンシャル株式会社および三井不動産株式会社が参画しており、コンサルタント業務は株式会社タカハ都市科学研究所が担当しています。官民連携のもと、地権者の合意形成や権利調整、行政手続きなどが進められています。

    計画建物の規模・構造と施設構成

    世田谷区ホームページより引用

    計画中の再開発ビルは、駅前広場南側エリアに建設される超高層複合施設です。その主な計画概要は以下の通りです。

    • 建物規模:地上34階・地下2階、高さ約140m

    • 用途構成:共同住宅(高層部:4階~34階)、商業施設(低層部:地下1階~地上3階)を中心に、駐車場・機械室(地下2階~地上3階)など

    • 延床面積:約78,700㎡(2023年時点の計画案)

    • 敷地面積:約1.5ha(駅前広場用地等含む全区域)

    低層部には駅利用者や地域住民の利便性を高める商業施設が入る計画で、物販店や飲食店など多様なテナント誘致が想定されています。住宅部は数百戸規模のタワーマンションとなる見込みで、最新の免震構造を採用し安全性にも配慮した設計となります。地下および低層部には来街者・居住者向けの駐車場も整備され、商業利用約120台、住宅利用約200台の収容を計画しています。なお駅前広場が再開発区域内に含まれているため、建物は敷地北側に寄せて配置される見通しで、広場部分と一体的な空間デザインが図られています。

    駅前広場・公開空地の整備計画

    本再開発では建物と併せて、周辺の公共空間整備も大きな柱となっています。計画区域の北側に、新設される駅前広場と一体化した「北側広場」を配置し、低層部商業テナントのオープンカフェやマルシェ(市場)等のイベントが開催できるにぎわい空間とする方針です。一方、南側には緑豊かで落ち着きのある「南側広場」を整備し、歩行者が休憩できる憩いの場を提供するとともに、災害時には一時避難や救護に活用できる防災広場として機能させる計画です。建物周辺の歩道も拡幅し、安全で快適な歩行者動線を確保します。これら広場・公開空地の整備により、駅北側に比べ広場が少なかった南口エリアに新たな滞留スペースを創出し、地域の回遊性と魅力向上が図られます。

    工期と現在の進捗状況

    現在、本再開発事業は都市計画決定に向けた計画段階にあります。2025年1月には世田谷区と再開発準備組合の共催で地域住民向けの報告会が開催され、基本計画案や今後のスケジュールについて説明が行われました。事業スケジュール(目安)としては、2026年度に都市計画決定を目指し、その後正式な再開発組合設立認可や権利変換計画の策定を経て着工へ進み、2034年度の建物完成・供用開始を目標としています。現在は行政との協議や都市計画素案の作成、権利者間の合意形成など準備作業が進行中です。また、再開発準備組合は地域交流拠点「ちとからプラザ」を設置して情報発信や意見交換を継続しており、地元商店街のイベントへ出展するなど周知活動にも取り組んでいます。

    特徴的な設計・展望とテナント計画

    本計画の建築デザインは、駅前という立地にふさわしく低層部と高層部で分節された構成となっており、大規模ながら周囲の景観に配慮したものとなる見込みです。低層部外装は歩行者目線で親しみやすいデザインとし、ガラス面の多い開放的なファサードや緑化テラスの導入なども検討されています(現段階のイメージパースより)。高層部は円滑な日照・通風に配慮しつつ、遠方からも視認性の高いランドマークとなるよう計画されています。構造面では免震技術の採用により超高層住宅としての安全性を確保し、非常用発電設備や防災備蓄倉庫の設置など災害対策も盛り込まれる予定です。テナント計画について具体的な発表はまだありませんが、駅前立地を活かして食料品スーパーや飲食店、サービス業態など地域の需要に合致した店舗の誘致が期待されます。事業協力者である三井不動産グループの豊富な実績を背景に、商業環境の魅力向上と利便性の高い施設構成が図られる見通しです。

    今後、本再開発事業は都市計画の決定・事業認可を経て詳細計画の策定や権利変換手続きへと進み、実現段階へ移行していきます。千歳烏山駅周辺における最大規模の再開発プロジェクトとして、完成後は地域の暮らしとビジネス環境に大きなインパクトを与えることが期待されています。地元関係者や事業者からも注目が集まっており、今後公表される詳細設計やテナント情報、工事着手の動向に引き続き注目が寄せられます。今回の再開発によって千歳烏山駅南側エリアは大きく様変わりし、にぎわいと利便性の向上した新たな駅前空間へと生まれ変わる見通しです。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。