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    東京都の空き家はどれくらいか

    東京都の空き家数が過去最高を記録し、今後も増加傾向にあることをご存知でしょうか。令和5年住宅・土地統計調査によると、東京都の空き家数は約90万戸、空き家率は10.9%に達しています。人口が集中する首都東京でさえこの状況であり、地域や物件タイプによって空き家の分布は大きく異なっています。本記事では東京都の空き家の現状から、23区別のランキング、増加の背景要因、そして対策まで、最新データをもとに詳しく解説します。不動産投資や相続対策、また空き家問題に関心をお持ちの方にとって、重要な情報源となるでしょう。

    東京都の空き家の現状

    令和5年(2023年)住宅・土地統計調査(総務省)の結果によれば、東京都内の空き家数は約90万戸(89.8万戸)、空き家率は10.9%となっています。この数値は平成30年(2018年)の約81万戸、10.6%から増加しており、過去最多を更新しました。

    実に東京都では10軒に1軒以上が 空き家の状態 にあるということになります。東京都の総住宅数は820.1万戸(2023年)であり、5年前の2018年と比べて53.0万戸(6.9%)増加していますが、それを上回るペースで空き家が増加している状況です

    長期的な推移を見ると、東京都の空き家数は1993年の52.7万戸から2023年の89.7万戸へと、30年間で 約1.7倍に増加 しています。特に注目すべきは、長期不在や取壊し予定の空き家(その他の住宅)が約21万戸あり、こちらも平成30年(2018年)の約18万戸から増加していることです。

    全国との比較

    全国的に見ると、2023年時点の空き家数は9,000,000戸、空き家率は13.8%に達し、いずれも過去最高を記録しています。

    都道府県別の空き家率ランキングでは、東京都は10.9%で全国で44位と低い位置にありますが、空き家数では約90万戸と全国最多となっています。空き家率が最も高い都道府県は徳島県の21.3%です。

    以下の表は主要都道府県の空き家状況を比較したものです。

    都道府県 空き家数(万戸) 空き家率(%) 全国順位(空き家率)
    東京都 89.8 10.9 44位
    大阪府 70.3 - -
    神奈川県 46.6 - -
    全国平均 - 13.8 -
    徳島県(最高) - 21.3 1位

    空き家の種類と特徴

    空き家は、その状態や用途によって大きく4つの種類に分けられます。

    1. 賃貸用の空き家:賃貸のために空き家になっている住宅
    2. 売却用の空き家:売却のために空き家になっている住宅
    3. 二次的住宅(別荘など):週末や休暇時に使用され、普段は人が住んでいない住宅
    4. その他の空き家:上記以外の理由で空き家になっている住宅(長期不在、取壊し予定など)

    2023年の東京都の空き家の内訳を見ると、「賃貸用の空き家」が大多数を占めていますが、「その他の空き家」(長期不在や取壊し予定)が約21万戸あり、管理不全になるリスクが高い物件 も少なくありません。

    特筆すべきは東京都の空き家の建て方です。全国では「その他空き家」の70%以上が一戸建てであるのに対し、東京都では「その他空き家」の約35%が一戸建て、約63%が共同住宅(マンション等)となっています。これは東京特有の住宅事情を反映しています。

    以下の表は全国と東京都の空き家の建て方比較です。

    空き家の種類 全国の一戸建て比率(%) 東京の一戸建て比率(%) 全国の共同住宅比率(%) 東京の共同住宅比率(%)
    賃貸用の空き家 約10 約10 約90 約90
    その他の空き家 70以上 約35 約30 約63

    23区別の空き家状況

    23区空き家数ランキング

    東京23区内の空き家数を区別に見ると、人口や住宅数の多い周辺区で多くなっています。空き家数の多い上位区は以下の通りです。

    1. 世田谷区:50,250戸
    2. 大田区:48,000戸
    3. 足立区:40,000戸

    これらの区は面積が広く、住宅数も多いことから空き家数も多くなっています。

    23区空き家率ランキング

    一方、空き家率で見ると、都心部の区が上位に入っています。

    1. 豊島区:13.3%
    2. 港区:12.4%
    3. 中央区:11.9%

    豊島区は2018年調査時も空き家率が15.8%と23区で最も高く、改善は見られたものの依然として 高水準の空き家率 を示しています

    空き家の種類別に見ると、「その他空き家」(長期不在等)の率は文京区、台東区、世田谷区、荒川区、江戸川区、中央区で大きく上昇しています。また「賃貸用の空き家」率は港区、墨田区、渋谷区、中野区、豊島区で上昇傾向にあります。

    空き家増加の要因と背景

    東京都で空き家が増加している主な要因は以下の通りです。

    高齢化と相続問題

    東京都では、65歳以上の単身または夫婦のみの高齢者世帯が所有する住宅が約90万戸存在し、これらは将来的に 「空き家予備軍」 となる可能性が高いとされています。

    相続時に子どもたちが遠方に住んでいる場合や、相続人間での意見調整ができない場合、また相続税対策で実家を賃貸に出せないケースなど、相続を契機に空き家化するケースが増加しています。

    新築供給過剰と既存住宅市場の停滞

    東京では新築住宅の供給が継続的に行われており、2018年から2023年の5年間で総住宅数が53万戸も増加しています。一方で、既存住宅の市場価値評価や流通システムが十分に整備されていないため、中古住宅が市場で流通しにくい状況があります。

    維持管理・リノベーションのハードル

    築年数が経過した住宅のメンテナンスやリノベーションには費用がかかり、所有者にとって大きな負担となります。特に相続した物件の場合、感情的な価値と市場価値のギャップがあり、適正価格での売却に踏み切れないケースも多くなっています。

    東京都の空き家対策と施策

    「東京における空き家施策実施方針」の概要

    東京都は2023年3月に「東京における空き家施策実施方針」を策定し、2030年度末までに全区市町村が空家等対策計画を策定することを目標に掲げています。この方針では、以下の3つの視点から施策を展開しています

    1. 既存住宅市場での流通促進
    2. 地域資源としての空き家の利活用
    3. 利活用見込みがない空き家の除却等

    具体的な支援策

    東京都の具体的な空き家対策支援として、以下のような施策が実施されています。

    既存住宅市場の整備・活性化支援

    • 良質な中古住宅のリノベーションを行う民間事業者への補助
    • インスペクション(建物状況調査)、既存住宅売買瑕疵保険の普及促進
    • リノベーションモデルハウスを活用した情報発信
    • 相続した空き家の売却に関する情報提供

    地域資源としての空き家利活用支援

    • 区市町村と連携したエリアリノベーションの推進
    • 東京モデル支援事業 による先端技術活用
    • 東京空き家ガイドブック、既存住宅ガイドブックの発行
    • 空き家バンク運営・マッチング支援

    除却・適正管理支援

    • 家財整理・除却方法相談業者への補助
    • "住まいの片付けガイドブック"の作成・啓発
    • 区市町村による除却・跡地活用費補助
    • 空き家実態調査・対策計画策定への財政支援

    税制上の措置

    国レベルでは、空き家対策を促進するための税制措置も導入されています。

    1. 固定資産税等の特例措置:空家の除却や改修を促進するため、土地に係る固定資産税等の優遇措置
    2. 空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除:相続した空き家を売却した際の譲渡所得から最高3,000万円を控除する特例措置

    まとめ

    東京都の空き家の現状と対策について、主要なポイントをまとめます。

    • 東京都の空き家数は約90万戸、空き家率は10.9%で増加傾向にあります。
    • 空き家の中でも「その他空き家」は約21万戸あり、管理不全になるリスクが高い物件が増えています。
    • 23区では世田谷区、大田区、足立区が空き家数で上位、豊島区、港区、中央区が空き家率で上位となっています。
    • 高齢化と相続問題、新築供給過剰、既存住宅市場の停滞などが空き家増加の要因です。
    • 東京都は「東京における空き家施策実施方針」を策定し、流通促進、利活用、除却支援など多角的な取り組みを進めています。
    • 国レベルでは固定資産税の特例措置や譲渡所得の特別控除など税制面での支援策があります。

    今後も東京都の人口動態や住宅市場の変化により、空き家問題は変化していくことが予想されます。空き家所有者は自治体の支援策を活用しつつ、早めの対策を検討することが重要です。また、潜在的な「空き家予備軍」も含めて、計画的な住まいの管理や将来設計を行うことが求められています。

    よくある質問

    Q1. 東京都で空き家が最も多い区はどこですか?

    A1. 空き家数が最も多いのは世田谷区で約5万戸です。続いて大田区(約4.8万戸)、足立区(約4万戸)となっています。これらの区は面積や人口も多いため、必然的に空き家数も多くなっています。

    Q2. 空き家率が高い区の特徴は何ですか?

    A2. 空き家率が高い区は豊島区(13.3%)、港区(12.4%)、中央区(11.9%)となっています。これらの区では賃貸用マンションやワンルームの供給が多く、入居率の変動が空き家率に影響していると考えられます。

    Q3. 空き家を相続したらどうすればよいですか?

    A3. 空き家を相続した場合は、①活用する(自己使用・賃貸)、②売却する、③解体する、という3つの選択肢があります。まずは自治体の空き家相談窓口に相談するとともに、税理士や不動産会社など専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。譲渡所得の3,000万円特別控除など税制優遇を活用できる可能性もあります。

    Q4. 空き家の管理を怠るとどうなりますか?

    A4. 管理不全の状態が続くと、「特定空家等」に指定される可能性があります。指定されると固定資産税の優遇措置が適用されなくなるほか、行政から修繕や除却などの勧告・命令が出され、最終的には行政代執行による強制解体も行われ得ます。また、周辺環境への悪影響や防犯上の問題もあります。

    Q5. 東京都の空き家バンクとは何ですか?

    A5. 東京都の空き家バンクは、各区市町村が運営する空き家の売買・賃貸情報を提供するシステムです。所有者と利用希望者をマッチングする役割を果たしています。東京都は区市町村の空き家バンク運営を支援しており、空き家の有効活用を促進しています。

    参考情報

    INA&Associatesでは空き家に関する相談や売買のサポートを行っております。空き家でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。