Press ESC to close

    【2025年4月】首都圏中古マンション市場のサマリー

    首都圏は2020年代に急騰し、2023年には4,802万円(70㎡換算平均)を記録した。近畿圏・中部圏に比べて上昇幅が突出しており、2024年はわずかに下落に転じたものの4,747万円と依然高水準にある。この通り、東京都心部を中心に価格・取引は高騰する一方で、郊外・近郊では上昇一服・調整局面が顕著となり、市場の二極化が進んでいる。

    2025年4月首都圏中古マンション市場サマリー

    1. 市場概況

    • 取引活況

      • 成約件数は 3,950件。前年同月比 +21.5% で 6 か月連続の増加となり、需要の強さが継続しています。

    • 価格動向

      • 成約㎡単価は 81.11万円/㎡。前年同月比 +3.9%、前月比 +2.7% と 60 か月連続で上昇しました。

      • 成約平均価格は 5,047万円。前年同月比では +0.6% と横ばいながら、前月比 +2.1% で堅調に推移しています。

    • 物件規模の変化

      • 成約物件の平均専有面積は 62.22㎡ で、前年同月比 -3.2%。面積がやや小型化する傾向がみられます。

    • 在庫・供給状況

      • 在庫件数は 44,008件。前年同月比 -4.4% と 12 か月連続で減少しました。

      • 在庫㎡単価は 87.16万円/㎡(前年同月比 +21.5%)と高水準で推移し、売主の価格強気姿勢が続いています。

    2. 主要指標一覧

    指標 2025年4月 前年同月比 前月比 コメント
    成約件数 3,950件 +21.5% —* 需要の拡大が明確
    成約㎡単価 81.11万円/㎡ +3.9% +2.7% 60 か月連続上昇
    成約平均価格 5,047万円 +0.6% +2.1% 価格は横ばい圏で堅調
    平均専有面積 62.22㎡ -3.2% -0.6% コンパクト化が進行
    在庫件数 44,008件 -4.4% —* 供給タイト化継続
    在庫㎡単価 87.16万円/㎡ +21.5% +2.8% 売主は強気姿勢

    3. インプリケーション

    • 取引量の増加と在庫縮小の同時進行により、需給は依然タイトです。

    • ㎡単価は上昇基調を維持していますが、専有面積の縮小 が平均価格の伸びを抑制している構図が読み取れます。

    • 売主側の価格交渉余地は限定的である一方、買主は物件選択肢が減少しているため、早期の意思決定 が求められる状況です。

    (出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「Monthly Market Watch Summary Report 2025.4」)

    東京都心部(23区・城南・城西)の価格高騰要因と今後

    東京都の中古マンション価格は近年右肩上がりで上昇傾向が続いてとなった。特に東京23区平均は7,720万円(前年+9.4%)と上昇率が拡大し、千代田・中央・港区などの都心部は前年比+20%超の高騰となっている。このような急騰の背景には、東京経済圏の強い実需に加え富裕層や海外投資マネーの旺盛な購買需要がある。実際、マンション相場では3A地区(麻布・赤坂・青山)等のタワーマンションが二番底となるほど上昇を牽引しており、23区では築11~15年でも新築時価格比で126%、築16~20年で122%と、実に「2倍以上」の水準で取引されている。低金利の金融環境下で購買力が高まり、供給希少な高額物件に資金が集中する結果と言える。

    短期的な見通しでも都心高額帯は堅調に推移する見込みだ。INA&Associatesの分析では、都心エリアは国内外から需要が集まりやすく景気変動に左右されにくい傾向があるため、供給不足と相まって都心高額帯の価格は高止まりまたは上昇継続する可能性が高いと考えている。現に2025年1~3月期の東京23区平均価格は1億3448万円と前年同期比+42.6%の急騰を示し、前期比でも+10.8%上昇した。こうした価格帯では固定買いが厚く、一時的な景気悪化でも下げにくいとの見方が多い。

    郊外・近郊圏(多摩・埼玉・千葉・神奈川)の価格調整背景

    一方、多摩地域や埼玉・千葉・神奈川などの近郊エリアでは、2024年末から2025年にかけて価格が頭打ち・下落に転じる傾向が目立つ。東京都多摩地域は23区外では例外的に底堅く、2025年3月時点で平均㎡単価58.07万円(前年+5.2%)と上昇した。新築供給が少ない郊外ベッドタウンとして堅実な需要があるが、駅から遠い築古物件には販売遅延も見られる状況だ。これに対し、埼玉県方面ではアクセスの良い沿線物件が人気を保つ一方で郊外の築古在庫増加に伴い価格調整が進んでおり、平均㎡単価は42.09万円(前年比-4.8%)とやや下落に転じた。近年の急騰局面からの反動で供給増・買い控えが顕在化し、エリア内でも需要の格差が生じている。

    千葉県(首都圏東部)は、2024年まで価格上昇が続いていたが2025年3月度には前年割れ(平均37.26万円/㎡、前年比-7.5%)となった。特に東京から遠いエリアでは「値ごろ感重視」の動きが強まり、品川直通の利便性がない地域では売れ残りも散見される。とはいえ取引件数自体は増加基調で、都心直結エリアは依然高い需要がある。神奈川県では、横浜・川崎市エリアでも平均61.64万円/㎡(前年比-4.3%)と2ヶ月連続下落し、横浜・川崎以外の湘南・横須賀など遠隔部は39.67万円/㎡(同-9.2%)の大幅下落となっている。これはコロナ禍で人気化した郊外・リゾートエリアの反動と考えられる。いずれの地域でも「価格調整しないと売れない」局面に入り、横浜・川崎市内は成約数が増加(同+33%)しているほか、相鉄線沿線や藤沢・鎌倉等では売主側が条件妥協するケースも見られる。一方、川崎市(特に武蔵小杉周辺)は都心に準じる利便性で需要が根強いものの、23区外とはいえ実質的に東京需要圏であり、その高価格帯はやや足踏みしつつも中長期的には堅調と言われる。

    総じて近郊・郊外では、2024年以前の高騰局面から「実需主導の適正価格」への移行が進んでいる。アットホーム社の調査でも「埼玉県(さいたま市/その他)、千葉県(西部/その他)は前年同月比割れが続く」一方、「東京都(23区/都下)、神奈川県他は2017年1月以降の最高値を更新」していると報告されている。要するに、「東京都心や川崎市などの主要都心回帰エリアは極めて旺盛だが、遠隔地や築古物件中心のマーケットは熱が冷めつつある」という状況である。

    マクロ要因:需給動向・人口・金利の影響

    首都圏各都市の需要動向は人口移動にも左右される。直近の統計では、東京都(特に23区)への若年層の流入が加速しており、2024年は東京圏全体で約13.6万人の転入超過、そのうち東京23区だけで5.88万人の転入超過を記録した。コロナ前の水準を回復し、20~30代の若年層が東京に集まっている。一方、同年齢層の多い近郊県(神奈川・埼玉・千葉)もそれぞれ数万人規模の転入超過があり、通勤利便性の高い沿線で世帯が増えている。これに対し地方圏では高齢者の転入超過が多く、若者の東京集中が進む構図となっている。人口面でのこうした「若年層の首都圏集中」は、特に都心部の住宅需要を押し上げる要因となっている。

    金融面では、これまでの超低金利政策により変動金利型ローンは歴史的な低水準にあるが、2025年4月以降、メガバンク各行が住宅ローン固定金利を順次引き上げ始め、上昇局面入りの様相を呈している。一方で日銀は依然緩和姿勢を維持しており、いきなり需要が冷え込む可能性は低いと見られる。ただし郊外の若年層や低所得者向け市場では、金利上昇の影響で予算縮小や買い控えが出始める恐れが指摘されている。つまり、現状は供給不足で売り手市場だが、今後の金利・景気動向によっては軟着陸的な調整に向かう可能性もあると考えられる。

    首都圏全体の主要指標

    直近の市況では、取引量は再び活発化している。2025年3月度の首都圏中古マンション成約件数は4,991件で前年同月比+31.0%の大幅増となり、5カ月連続で前年超えとなった。新年度に向けた需要期が取引増に拍車をかけたようだ。地区別では、東京23区2,217件(+28.4%)や神奈川横浜・川崎843件(+33.2%)などほぼ全域で件数増が見られ、市場全体が活況を呈している。
    価格面では、首都圏平均の成約価格は1戸当たり約4,945万円(前年同月比+2.6%)となり、㎡単価も79.01万円(同+4.1%)と5年超続く上昇トレンドを維持している。しかし地区別には明確な差が出ており、23区内では成約㎡単価が大きく上昇する一方、郊外部では下落しているのが特徴だ。

    在庫状況は引き続き引き締まっている。2025年3月の新規登録件数は16,844件と前年同月比ほぼ横ばいだったが、在庫総数は43,941件で前年から▲5.2%減少し11ヵ月連続で在庫が減少している。新規登録㎡単価(売り出し価格基準)は90.21万円(前年同月比+22.2%)と急騰しており、売り出し段階で高価格設定が目立つ状況だ。総じて流通物件は減少傾向で、人気物件は早期成約・価格上昇しやすく、販売期間は短期化しているものとみられる。

    都心オフィス賃貸市況の現状

    三鬼商事およびザイマックス総研の最新データによれば、都心5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)のオフィス賃貸市場は需給が引き締まっている。2025年4月時点の三鬼商事データでは平均空室率は3.73%(前月比-0.13ポイント)と2カ月連続で低下し、竣工1年未満の大型ビルでも成約が進んだことで東京ビジネス地区全体の空室面積は減少した。新築ビル空室率は26.26%(同-0.28)まで低下しており、一部大型案件を除けば市況は引き締まりつつある。平均賃料は坪当たり20,755円で、前年同月比+4.7%(前月比+0.55%)と15カ月連続で上昇基調を維持している。

    これと整合的に、ザイマックス総研の四半期レポート(2025年Q1)でも東京23区全体の空室率は2.33%(前期比-0.44ポイント)と7四半期連続で低下し、募集面積率も3.50%(同-0.49)まで下がっている。新規契約賃料についても上昇した物件の割合が多く成約賃料DIは+26(前期比+4)で4四半期連続プラスとなり、市場全体で賃料上昇の動きが広がりつつある。一方、付帯サービスでは依然としてフリーレント付与が多く、全契約の52.9%にフリーレント(平均2.7ヵ月)が付与されており、仲介側は引き続き条件面で調整しながら賃貸供給を進めている状況だ。

    総括すると、オフィス市況も含め首都圏では都心部を中心に需要が堅調で供給タイト、賃料や価格が上昇しやすい環境が続いている。新築供給の少ない都心高額物件には引き続き投資マネーが流入しやすく、一方で郊外部や供給過剰エリアでは調整の動きが出始めている。投資家・業界関係者は、市場ごとの需給バランスやマクロ要因(金利・人口動態)を踏まえたエリア戦略の重要性が増しているといえよう。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。