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    ニュージーランドと日本の不動産市場を徹底比較|中古物件の価値観・税制・購入規制の違いを解説

    近年、資産形成の一環として海外不動産投資への関心が高まっています。特に、安定した経済成長と豊かな自然環境を誇るニュージーランドは、多くの投資家から注目を集める国の一つです。しかし、海外不動産への投資を成功させるためには、現地の市場特性や法制度、そして文化的背景を深く理解することが不可欠です。

    本記事では、INA&Associates株式会社が、不動産の専門家として、ニュージーランドと日本の不動産市場における根本的な違いを解説します。特に、中古物件に対する価値観、不動産取得時の税制、そして外国人による購入規制といった重要なポイントに焦点を当て、ご説明します。この記事が、皆様の国際的な不動産投資戦略の一助となれば幸いです。

    ニュージーランドと日本の不動産市場における根本的な違い

    ニュージーランドと日本の不動産市場には、一見しただけでは分かりにくい、いくつかの根本的な違いが存在します。これらの違いを理解することは、両国での不動産取引を検討する上で極めて重要です。以下では、主要な4つの相違点について、具体的なデータを交えながら詳しく解説します。

    中古物件に対する価値観の違い

    最も顕著な違いの一つが、中古物件に対する価値観です。この価値観の違いが、両国の市場構造そのものを大きく規定しています。

    日本では、新築物件を好む「新築志向」が根強く、中古物件の流通比率は限定的です。建物の価値は築年数と共に大きく下落し、資産価値の中心は土地が担うという考え方が一般的です。これは、住宅を一種の「消耗品」と捉える文化的背景が影響していると考えられます。

    一方、ニュージーランドでは、大半が中古住宅で、新築取引は相対的に少ない。建物は「住み継ぐもの」という意識が強く、適切なメンテナンスやリノベーションを施すことで、その価値は維持、あるいは向上することさえあります。築年数が経過しても価値が下がりにくいため、長期的な資産形成に適した市場環境と言えるでしょう。

    項目 日本 ニュージーランド
    中古物件の割合 新築志向が強く、中古物件の流通比率は比較的低い。 市場全体の大半を中古物件が占め、中古市場が非常に活発。
    築年数の影響 築年数に応じて建物の価値は下落し、土地の価値が資産の中心となる。 適切な維持管理により価値が維持・向上しやすく、築年数の影響は比較的小さい。
    賃貸価格 築年数が経過すると家賃も下落する傾向がある。 日本と比べると築年による賃料差が小さい傾向がある。

    このように、ニュージーランドでは不動産を長期的な資産と捉え、その価値を維持・向上させることに重きを置く文化が根付いています。この点は、日本の不動産市場との大きな違いとして認識しておくべき重要なポイントです。

    不動産取得時の税制・費用の違い

    不動産を取得する際に発生する税金や手数料も、両国間で大きく異なります。特に、購入者側の初期費用に直接影響するため、資金計画を立てる上で注意が必要です。

    日本では、新築物件の購入や仲介手数料、リフォーム費用などに対して10%の消費税が課されます。また、売買価格に応じて、買主と売主の双方が不動産仲介業者へ手数料を支払うのが一般的です。これらの費用は、物件価格に加えて考慮すべき重要なコストとなります。

    対照的に、ニュージーランドでは、多くの自用・中古住宅取引では、買主が追加でGSTを負担することはないが、開発業者からの新築購入などでは価格にGSTが含まれます。さらに、不動産仲介手数料は、原則として売主側のみが負担します。これにより、買主側の初期費用は日本に比べて大幅に抑えられる傾向にあります。この税制の違いは、ニュージーランド不動産投資の大きな魅力の一つと言えるでしょう。

    項目 日本 ニュージーランド
    不動産仲介手数料 売主・買主の双方が、売買価格に応じた手数料を支払う。 原則として売主のみが支払い、買主の負担はないことが多い。
    消費税(GST/消費税) 新築物件や仲介手数料などに消費税(10%)が課される。 居住用住宅の購入には消費税(GST)がかからない。

    不動産の利用目的と立地選定の違い

    不動産を購入する目的や、その際の立地選定の基準にも、国民性の違いが表れています。

    日本では、特に都心部において、通勤の利便性や駅からの距離といった交通アクセスが極めて重視されます。投資の観点からも、流動性が高く安定した賃貸需要が見込める都市圏、特に東京に人気が集中する傾向があります。

    一方、ニュージーランドでは、ライフスタイルの変化に合わせて住み替えを行う文化が根付いています。例えば、結婚、子供の誕生、リタイアメントといったライフステージの変化が、住み替えの主な動機となります。特に重要なのが「スクールゾーン」と呼ばれる学区の存在です。評判の良い公立学校の校区内にある物件は、資産価値が落ちにくく、賃貸需要も高いため、将来の売却や賃貸運用を見越して、良い学区の物件を選ぶ傾向が強く見られます。

    外国人による不動産購入規制の違い

    海外不動産投資を検討する上で、最も重要な確認事項の一つが、外国人による購入規制の有無です。

    ニュージーランドでは、2018年の法改正により、非居住者である外国人による既存の居住用不動産(中古住宅など)の購入が原則として禁止されました。ただし、ニュージーランドの居住ビザを所有している日本人など、現地に居住している場合は購入が可能です。この規制は、国内の住宅価格高騰を抑制し、自国民の住宅購入機会を確保することを目的としています。(一部の投資ビザ保持者には高額物件に限り例外がある)

    これに対し、日本は世界的に見ても外国人による不動産購入の規制が緩やかな国の一つです。非居住者の外国人であっても、土地や建物の完全な所有権を取得することが可能です。この開かれた市場環境は、海外の投資家にとって大きな魅力となっており、近年、日本の不動産市場に海外からの資金が流入する一因となっています。

    不動産投資における実務上の留意点

    両国の不動産市場の違いを理解した上で、実際に投資を進める際には、いくつかの実務上の留意点があります。

    まず、ニュージーランドでの不動産購入を検討する場合、現地の法律や規制に精通した専門家のサポートが不可欠です。特に、居住ビザの取得状況や購入可能な物件の種類については、事前に十分な確認が必要です。また、物件の状態を正確に把握するため、BuildingInspection(建物検査)を専門業者に依頼することが一般的で、購入前インスペクションが広く行われており、買主は構造上の問題や修繕箇所を把握しやすい。

    日本国内での不動産投資においては、立地選定が成功の鍵を握ります。特に、人口動態や再開発計画、交通インフラの整備状況などを総合的に分析し、将来的な資産価値の維持・向上が見込める物件を選定することが重要です。また、賃貸運用を前提とする場合は、ターゲットとなる入居者層のニーズを的確に捉え、適切なリノベーションや設備投資を行うことで、競争力のある物件として市場に提供することが可能となります。

    為替リスクの管理も、国際的な不動産投資において忘れてはならない要素です。ニュージーランドドルと日本円の為替レートの変動は、投資収益に直接的な影響を及ぼします。長期的な視点で投資を行う場合でも、為替ヘッジの手法や、複数通貨での資産分散といったリスク管理策を検討することが推奨されます。

    まとめ:グローバルな視点で最適な不動産投資戦略を

    本記事では、ニュージーランドと日本の不動産市場における4つの主要な違い、すなわち中古物件への価値観税制立地選定の基準、そして外国人購入規制について解説しました。

    ニュージーランドは、中古物件の価値が維持されやすく、買主側の初期費用も抑えられるため、長期的な資産形成を目指す投資に適した市場です。一方、日本は、都市部の高い流動性と、外国人でも所有権を取得しやすいという利点があります。

    比較項目 ニュージーランド市場の特色 日本市場の特色
    価値観 「住み継ぐ」文化。中古でも価値が維持・向上しやすい。 「消耗品」という側面。新築時の価値が最も高い。
    税制・費用 買主の消費税・仲介手数料負担が少ない。 消費税や仲介手数料など、買主の初期費用負担が大きい。
    立地選定 ライフスタイルや学区(スクールゾーン)を重視。 通勤の利便性や都心へのアクセスを最優先。
    外国人規制 非居住者の既存住宅購入は原則禁止。 規制が緩やかで、外国人も土地・建物の所有権取得が可能。

    これらの違いを正しく理解し、ご自身の投資目的やライフプランと照らし合わせることが、国境を越えた不動産投資を成功に導く鍵となります。どちらの市場が一方的に優れているということではなく、それぞれの特性を活かした戦略を立てることが重要です。

    INA&Associates株式会社では、国内外の不動産市場に精通した専門家が、お客様一人ひとりの状況に合わせた最適な不動産投資ポートフォリオの構築をサポートいたします。海外不動産投資に関するご相談や、より詳細な情報をご希望の方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

    よくある質問

    Q1:ニュージーランドの不動産は日本人でも購入できますか?

    A1:はい、購入可能です。ただし、非居住者の場合は、既存の居住用物件の購入は原則禁止されています。ニュージーランドの居住ビザをお持ちであるなど、現地に居住している日本人であれば、中古住宅を含めて購入することができます。大規模な新規開発物件など、一部例外的に購入が許可されるケースもありますので、専門家にご相談ください。

    Q2:ニュージーランドの不動産投資のメリットは何ですか?

    A2:主なメリットとして、1)中古物件でも資産価値が落ちにくく、長期的に安定したリターンが期待できること、2)居住用物件購入時に消費税がかからず、仲介手数料も買主負担がないため初期費用を抑えられること、3)安定した経済と政治情勢、そして高い生活の質が挙げられます。特に、適切な管理を行えば不動産価値の維持・向上が見込める点は大きな魅力です。

    Q3:日本の不動産が外国人投資家に人気の理由は?

    A3:世界的に見ても外国人による不動産購入への規制が非常に緩やかで、土地を含めた完全な所有権を取得できる点が最大の理由です。また、政治的な安定性、円という国際通貨の信頼性、そして東京をはじめとする大都市の高い流動性と安定した賃貸需要も、海外投資家にとって魅力的な要因となっています。

    Q4:中古物件の価値が維持されるニュージーランドの秘訣は?

    A4:「家は住み継ぐもの」という文化が根底にあります。人々は定期的なメンテナンスやリノベーションを当然のことと考えており、住宅の品質を高く保つ努力を惜しみません。また、しっかりとした造りの住宅が多く、住宅検査(BuildingInspection)も一般的に行われるため、欠陥のある物件が市場に出回りにくいことも、市場全体の信頼性と資産価値の維持に繋がっています。

    Q5:不動産購入時の税制面で最も大きな違いは何ですか?

    A5:買主が負担する費用の違いが最も大きいと言えます。日本では新築物件や仲介手数料に10%の消費税がかかりますが、ニュージーランドでは居住用物件の購入に消費税(GST)はかかりません。また、不動産仲介手数料も、日本では買主・売主双方が負担しますが、ニュージーランドでは一般的に売主のみが負担します。このため、買主の初期投資額を大きく抑えることが可能です。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター