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    外資が評価する日本の不動産市場|法制度と透明性が投資を呼び込む理由

    近年、世界の投資家たちが日本の不動産市場に強い関心を寄せています。特に、外資系ファンドをはじめとする海外の投資マネーが、かつてない規模で流入していることは、皆さまも報道などでご存知かもしれません。2025年上半期には、海外投資家による国内不動産の購入額が過去最高の1兆円超を記録しました。

    なぜ今、日本の不動産がこれほどまでに外資を惹きつけるのでしょうか。その背景には、円安による割安感や金融緩和といった経済的な要因に加え、より本質的な理由が存在します。それは、日本の法制度とその透明性に対する国際的な評価の高さです。

    本稿では、INA&Associates株式会社が、不動産のプロフェッショナルとして、なぜ日本の法制度と透明性が外国人投資家から高く評価されているのか、その具体的な理由をデータと共に平易に解説いたします。この記事を通じて、皆様が日本の不動産市場の持つ真の価値と、その国際的な優位性について、より深いご理解を得られる一助となれば幸いです。

    外資を惹きつける日本の法制度:信頼性の高い「登記制度」

    外国人投資家が日本の不動産を評価する最も大きな理由の一つが、その法制度の信頼性です。特に、不動産の権利関係を公示する「登記制度」は、世界でもトップクラスの正確性と信頼性を誇ります。

    不動産取引において、誰がその不動産の真の所有者であるかを法的に確定させることは、取引の安全性そのものを左右する極めて重要な要素です。日本の登記制度は、法務局という国家機関が管理・運営しており、一度登記された権利は、第三者に対して法的に主張することができます(対抗力)。これにより、外国人投資家は、権利関係が不明確であるリスクや、後から所有権を覆されるといった不測の事態を心配することなく、安心して多額の資金を投じることが可能なのです。

    所有権の強固さ:外国人も日本人と同等の権利を享受

    さらに、日本では外国籍であることを理由に不動産の所有権に制限が設けられていない点も、特筆すべき優位性です。土地・建物ともに、外国人も日本人と全く同じ条件で所有権を完全に取得できます。これは世界的に見ても非常に寛容な制度であり、多くの国では安全保障上の理由などから、外国人の土地所有に厳しい制限を設けています。

    以下のテーブルは、日本と主要国の外国人による不動産購入規制を比較したものです。

    国・地域 外国人による土地所有の可否と主な規制内容
    日本 原則として制限なし。一部の重要土地(防衛施設周辺など)を除き、日本人とほぼ同等に所有権を取得可能。
    アメリカ 軍事施設周辺など、安全保障に関わる特定エリアでの取引を厳しく制限。対米外国投資委員会(CFIUS)による審査あり。
    中国 土地は国家所有のため、外国人は土地の所有権を取得不可。建物の所有は可能だが、居住期間や物件数に制限あり。
    韓国 投機目的の取引を抑制するため、事前承認や居住義務など、近年規制を強化。
    フィリピン 原則として外国人の土地所有は不可。コンドミニアムなど一部の建物の区分所有のみ可能。

    このように、他国と比較して参入障壁が極めて低いことが、日本の不動産投資環境の魅力を一層高めています。法的に権利が強固に守られ、かつ国籍による差別がない。この公平で安定した法的枠組みこそが、世界中の投資家から信頼を獲得している根源と言えるでしょう。

    世界が認める市場の透明性:データが裏付ける日本の強み

    法制度の充実に加え、日本の不動産市場が持つもう一つの大きな強みが、その市場の透明性です。不動産サービス大手のJLLが2年に一度発表する「グローバル不動産透明度インデックス」の2024年版において、日本は調査対象となった世界89の国・地域の中で11位、アジアでは最高位にランクされました。

    このインデックスは、「規制の法制度」「市場データ」「取引プロセス」など6つの項目を評価するものですが、日本は特に規制の法制度市場データの可用性といった点で高い評価を得ています。これは、投資家が客観的なデータに基づいて合理的な投資判断を下すための環境が、国際的に見ても高いレベルで整備されていることを意味します。

    評価カテゴリ 2024年グローバル不動産透明度インデックストップ5 日本の順位
    総合 1.イギリス2.フランス3.アメリカ4.オーストラリア5.カナダ 11位
    サブインデックス:取引プロセス - 20位圏外

    一方で、報告書は日本の課題として「取引プロセス」の透明性を指摘しています。具体的には、賃貸借契約の内容や共益費の内訳、あるいは実際の取引価格といった情報が、欧米の先進的な市場と比較して開示が不十分である点が挙げられています。こうした商慣行の改善は、日本の市場が今後さらに高い評価を得るための重要な鍵となるでしょう。

    しかし、こうした課題を差し引いても、日本の市場の全体的な透明性は、海外の投資家にとって十分に魅力的です。海外投資家は、信頼できるデータにアクセスできることで、リスクを正確に評価し、将来のキャッシュフローを予測しやすくなります。この「予測可能性の高さ」が、長期的な視点で安定したリターンを求める機関投資家や外資ファンドにとって、日本を魅力的な投資先たらしめているのです。

    データが示す旺盛な対日投資意欲

    こうした法制度と市場の透明性を背景に、近年、海外からの不動産投資は活況を呈しています。その牽引役となっているのが、まさしく海外投資家です。

    期間 海外投資家による国内不動産投資の動向
    2024年通年 取引総額約5兆円。海外投資家による大型取得が相次ぐ。
    2025年上半期 購入額は前年同期比2倍の1兆円超を記録し、過去最高を更新。
    投資セクター インバウンド需要を背景に「ホテル」への投資が急増。オフィスや商業施設への評価も回復傾向。

    特に、コロナ禍を経て経済活動が正常化に向かう中で、インバウンド需要の回復を見込んだ「ホテル」セクターへの投資や、安定したキャッシュフローが期待できる「物流施設」「住宅」への関心が高まっています。また、これまで一時的に評価が低下していた都心部の「オフィス」や「商業施設」に関しても、数千億円規模の超大型取引が見られるなど、外資からの評価が完全に回復したことを示唆しています。

    これらのデータは、日本の不動産市場が、単なる短期的な投機対象としてではなく、長期的かつ安定的な資産運用の場として、世界の投資家から確固たる信頼を得ていることの何よりの証左と言えるでしょう。

    まとめ:日本の不動産市場が持つ、揺るぎない価値

    本稿では、なぜ今、世界の投資家たちが日本の不動産市場に注目しているのか、その根幹にある法制度透明性という観点から解説いたしました。

    要点を整理すると、以下のようになります。

    1.強固な法制度

    日本の信頼性の高い「登記制度」は、不動産の所有権を法的に明確にし、外国人投資家であっても日本人と変わらない強固な権利保護を保証しています。これは、世界的に見ても非常に参入障壁の低い、開かれた投資環境を提供しています。

    2.高い市場透明性

    JLLの調査でアジア最高位と評価された通り、日本の不動産市場は客観的なデータへのアクセスが容易であり、投資家が合理的な意思決定を下すための土壌が整っています。これにより、投資リスクの正確な評価と、将来リターンの予測可能性が高まります。

    3.データが示す投資実績

    これらの強固な基盤に支えられ、海外からの投資は過去最高水準で推移しており、特にホテルや物流施設、さらには都心部のオフィスに至るまで、幅広いセクターで旺盛な投資意欲が確認されています。

    経済のグローバル化が進む現代において、資産をどこに投じるべきかという問いは、個人・法人を問わず、すべての方にとって重要なテーマです。その中で、日本の不動産市場が提供する安定性信頼性は、不確実性の高い世界経済の中にあって、ひときわ輝きを放つ価値であると、私どもは確信しております。

    この記事が、皆様の資産戦略を考える上での新たな視点となれば、これに勝る喜びはありません。

    よくある質問(FAQ)

    Q1.外国人が日本の不動産を購入する際に、税金面で注意すべき点は何ですか?

    A1.はい、いくつかの重要な点がございます。まず、日本に居住していない非居住者の場合、不動産に関する税金(固定資産税、不動産取得税、所得税など)の納税手続きを代行する「納税管理人」を選任し、税務署に届け出る必要があります。また、日本国内の不動産から得た賃料収入や売却益は「国内源泉所得」と見なされ、日本の税法に基づき所得税(原則20.42%の分離課税)を申告・納税する義務が生じます。購入後の税務についても、事前に専門家へご相談されることを強くお勧めします。

    Q2.日本の不動産市場の透明性について、「取引プロセス」が課題とされていますが、具体的にはどのようなことですか?

    A2.ご指摘の通り、JLLのレポートでは日本の「取引プロセス」の透明度が相対的に低いと評価されています。これは主に、欧米市場では一般的である取引価格の完全な公開や、賃貸契約における詳細な条件(共益費の内訳など)の開示が、日本では商慣行として必ずしも徹底されていない点を指しています。とはいえ、信頼できる不動産会社をパートナーとすることで、これらの情報は十分に補完可能であり、取引の安全性に大きな支障をきたすものではございません。

    Q3.最近、外資による日本の土地購入に関して法改正があったと聞きましたが、どのような内容ですか?

    A3.2022年9月に施行された「重要土地等調査法」のことかと存じます。この法律は、国の安全保障上重要な施設(自衛隊基地や原子力発電所など)の周囲や国境離島などを「注視区域」「特別注視区域」として指定し、その区域内の土地・建物を売買する際に、当事者の氏名や国籍などを事前に届け出ることを義務付けるものです。全ての不動産取引が対象となるわけではなく、あくまで国の安全を脅かすような土地利用を防ぐことを目的とした、限定的な規制となります。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター