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    西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業~六本木エリアに新たな価値を創出する複合再開発の可能性~

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    東京都港区を代表する国際色豊かな西麻布・六本木エリア。この地域に新たな都市景観と価値を創出する「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」が進行しています。本記事では、私たちINA&Associatesが注目する本事業の概要と不動産市場への影響について考察します。事業の概要

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    本事業は、東京メトロ日比谷線および都営大江戸線「六本木」駅から西へ約300m、「六本木ヒルズ」に隣接する約1.6haの区域で実施されている第一種市街地再開発事業です。施行者は西麻布三丁目北東地区市街地再開発組合、参加組合員として野村不動産株式会社と株式会社ケン・コーポレーションが参画しています。

    現状のエリアは、緊急輸送道路に指定されている補助10号線(テレビ朝日通り)が未整備であり、耐震性不足の建物の存在、緑や公園等のオープンスペースの不足など、複数の都市課題を抱えています。

    この再開発により、地上54階・地下4階建て、高さ約200mの超高層複合ビルを中心とした、周辺環境と調和した緑豊かな複合市街地を形成することを目指しています。総事業費は約804億円と発表されています。

    施設計画の特徴

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    本事業の中核となる超高層ビル(A街区)は、制震構造を採用し、以下の機能が導入されます:

    1. 住宅機能:地上6~45階に約500戸の住宅
    2. オフィス機能:地上1~3階にオフィススペース
    3. 商業機能:地上1~3階に商業施設
    4. ホテル機能:4、5階がホテルロビー、46階がスパ・フィットネス、47~52階が客室という構成で、外資系ラグジュアリーホテルブランドを誘致予定

    また、敷地内に存在する長幸寺、妙善寺、櫻田神社の3つの寺社も再配置され、地域の歴史的・文化的資産を継承します。

    都市環境の整備

    当事業では建築物の整備だけでなく、都市環境の質的向上にも重点が置かれています:

    1. 道路インフラの改善:テレビ朝日通りを現状の幅員約10mから15mに拡幅
    2. オープンスペースの創出:敷地の北側と南側に計約3000㎡の広場を整備し、一部を緑化
    3. 歩行者ネットワークの強化:歩行者デッキを介して「六本木ヒルズクロスポイント」と接続
    4. 防災機能の強化:マンホールトイレや防災シェルターなどの災害時対応施設を整備

    プロジェクトの進捗状況

    現在(2025年5月時点)、既存建築物の解体工事が進行中です。六本木安田ビル、北信ビルなどの解体工事が行われており、石綿除去、外部足場組立、埋蔵文化財調査などが実施されています。

    2024年9月に本体工事着工、2028年4月に竣工予定とされており、2029年度までに組合解散の見込みです。

    不動産市場への影響

    この再開発事業が不動産市場に与える影響として、私は以下の点に注目しています。

    1. 資産価値の上昇

    再開発により地区全体の都市機能が向上することで、周辺エリアの不動産価値の上昇が見込まれます。特に六本木・西麻布エリアは既に高い資産価値を有していますが、本事業によってさらなる価値向上が期待できます。

    2. 超富裕層向け住宅の新たな選択肢

    本事業で供給される約500戸の住宅は、立地条件と施設水準から超富裕層向けの高級住宅となることが予想されます。ラグジュアリーホテルが併設される点も、国際的な富裕層にとって魅力的な要素となるでしょう。

    3. オフィス・商業市場の活性化

    国際色豊かな西麻布・六本木エリアに新たなオフィス・商業空間が創出されることで、グローバル企業や高感度な店舗の進出が期待されます。これにより地域のビジネス環境がさらに充実し、経済活動の活性化につながるでしょう。

    4. 都市防災機能の強化

    耐震性に課題のあった既存建物が最新の制震構造を持つ建物に建て替えられ、オープンスペースや防災設備が整備されることで、地区全体の防災性能が大幅に向上します。これは長期的な不動産価値の安定化にも寄与する重要な要素です。

    私たちの視点

    INA&Associatesの観点から本事業を考察すると、以下の点が重要だと考えます。

    1. 地域コミュニティとの共生

    寺社の再配置など、地域の歴史・文化を尊重した計画となっている点は高く評価できます。持続可能な都市開発には、経済的価値だけでなく文化的・社会的価値の継承も不可欠だからです。

    2. 多様な人財の交流を促進する場の創出

    国際水準のホテルやオフィス、商業施設の導入は、多様なバックグラウンドを持つ人々が集い、新たな価値を創造する場となる可能性を秘めています。多様な人財の交流こそが、イノベーションの源泉となります。

    3. 長期的視点からの価値創造

    本事業は計画から完成まで約10年という長期プロジェクトです。短期的な利益ではなく、長期的な視点で都市の価値を高めていく姿勢は、私たちが目指す「持続可能な企業価値の創造」と通じるものがあります。

    まとめ:未来を見据えた都市づくりの意義

    西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業は、単なる建物の更新ではなく、都市の質的向上を目指す総合的な取り組みです。課題を抱えた地区が、最先端の都市機能と地域の歴史・文化が融合した魅力的な場所へと生まれ変わろうとしています。

    不動産業に携わる私たちにとって、このようなプロジェクトから学ぶべきことは多くあります。短期的な利益追求ではなく、地域の価値を高め、人々の生活の質を向上させる—それこそが真の都市再生であると考えます。

    この再開発事業が完成する2028年以降、西麻布・六本木エリアがどのように変化していくのか。私たちは引き続き注目し、そこから得られる知見を自社の事業活動に活かしていきたいと考えています。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。