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    不動産投資でペット可物件の需要はある? メリット・デメリットを解説

     

    近年、不動産投資市場においてペット可物件への注目度が急激に高まっています。一般社団法人ペットフード協会の最新調査によると、2024年時点で犬の飼育頭数は約679万6千頭、猫の飼育頭数は約915万5千頭となり、合計で約1,595万頭のペットが日本国内で飼育されています。

    この数字は15歳未満の子どもの人口を大幅に上回っており、ペットが現代社会において重要な家族の一員として位置づけられていることを示しています。

    しかしながら、ペットを飼育したいという強いニーズがある一方で、ペット可物件の供給は依然として不足している状況です。LIFULLHOME'Sの調査では、不動産事業者の67.2%が「ペット可物件のニーズが増えている」と回答しており、市場の需要拡大は明確な傾向として現れています。

    本記事では、INA&Associates株式会社として長年不動産投資に携わってきた経験を基に、ペット可物件への投資における具体的なメリット・デメリット、そして成功のポイントについて詳しく解説いたします。

    ペット可物件の市場動向と需要の実態

    ペット飼育世帯の急速な拡大

    現在の日本におけるペット飼育の実態を正確に把握することは、投資判断において極めて重要です。一般社団法人ペットフード協会の統計データによると、全国でペットを飼育している世帯は約5世帯に1世帯の割合に達しており、この比率は年々増加傾向にあります。

    特に注目すべきは、コロナ禍以降のペット飼育ニーズの高まりです。在宅時間の増加に伴い、ペットとの共生を求める世帯が急激に増加しました。この傾向は一時的なものではなく、ライフスタイルの根本的な変化として定着しつつあります。

    需要と供給の深刻なギャップ

    一方で、ペット可物件の供給状況を見ると、需要の高まりに対して供給が大幅に不足している現実があります。不動産ポータルサイト「SUUMO」の調査データでは、ペット可物件の掲載割合は2019年1月時点で10%程度でしたが、2024年1月には18%まで増加しています。

    しかし、この18%という数字は、実際の需要に対してはまだまだ不十分な水準です。ペットを飼育できない理由として、約3割の方が「集合住宅で禁止されているから」と回答しており、住宅供給側の制約が需要を抑制している構造が明確に見て取れます。

    家賃相場と収益性の実態

    ペット可物件の収益性を示す具体的なデータとして、家賃相場の比較が非常に参考になります。旭化成ホームズの調査によると、ペット不可物件の平均掲載賃料が78,253円であるのに対し、ペット可物件は112,771円と、実に34,518円(約44%)も高い水準となっています。

    物件タイプ 平均家賃 差額 上乗せ率
    ペット不可物件 78,253円 - -
    ペット可物件 112,771円 +34,518円 +44%

    さらに注目すべきは入居期間の短さです。ペット可物件はペット不可物件と比較して16.6日早く入居者が決まるという調査結果があります。これは、ペット可物件の希少性と入居希望者の切実なニーズを反映した数字といえます。

    不動産投資におけるペット可物件の5つのメリット

    1.競合物件との明確な差別化効果

    現在の賃貸市場では、立地条件や築年数、間取りなどの基本的な条件が類似した物件が数多く存在しています。このような競争環境において、ペット可という条件は強力な差別化要素となります。

    特に、一般的には不利とされる条件の物件であっても、ペット可という付加価値により競争力を大幅に向上させることが可能です。例えば、駅から徒歩15分以上の立地や築20年を超える物件であっても、ペット飼育者にとっては「ペットと暮らせる」という条件が最優先事項となるため、他の条件の優先度が相対的に下がります。

    2.長期入居による経営安定化

    ペット可物件の最大のメリットの一つは、入居者の長期定着率の高さです。これには複数の理由があります。

    まず、ペット自身にとって住環境の変化は大きなストレス要因となります。慣れ親しんだ環境から新しい場所への移転は、ペットの健康面や精神面に悪影響を与える可能性があるため、飼い主は可能な限り引っ越しを避けたいと考えます。

    また、ペット可物件を探すこと自体が非常に困難であることも、長期入居を促進する要因となっています。入居者は「次にいつペット可物件が見つかるかわからない」という不安から、現在の住環境に満足している限り、積極的に引っ越しを検討することは少なくなります。

    3.空室リスクの大幅な軽減

    ペット可物件は、一般的な賃貸物件と比較して空室リスクが低いという特徴があります。これは需要と供給のバランスが大きく需要側に傾いているためです。

    ペット飼育者は常に「より良いペット可物件はないか」という視点で物件情報をチェックしており、条件の良い物件が市場に出ると短期間で多数の問い合わせが集中します。実際の調査データでも、ペット可物件は一般物件より16.6日早く入居が決まることが確認されています。

    4.プレミアム家賃の設定が可能

    ペット可物件では、周辺の同条件物件と比較して高い家賃設定が可能です。前述の調査データでは平均44%の家賃上乗せが実現されており、これは投資収益率の大幅な改善につながります。

    この家賃プレミアムが成立する理由は、ペット飼育者にとって「ペットと暮らせる」という価値が金銭的な負担を上回る重要性を持つためです。

    5.初期収入の増加機会

    ペット可物件では、将来的なリスクに備えるため、敷金や礼金を通常より高く設定することが一般的です。多くの場合、1~2ヶ月分の追加設定が行われており、これにより契約時の初期収入を増加させることができます。

    費用項目 一般物件 ペット可物件 差額
    敷金 1~2ヶ月 2~3ヶ月 +1ヶ月
    礼金 1~2ヶ月 2~3ヶ月 +1ヶ月
    ペット保証金 なし 1~2ヶ月 +1~2ヶ月

    ペット可物件投資の4つのデメリットとリスク

    1.ターゲット層の限定による機会損失

    ペット可物件の最も大きなデメリットは、入居対象者が限定されることです。ペットを飼育しない方、特に動物アレルギーを持つ方や動物が苦手な方からは、物件の候補から除外される可能性が高くなります。

    統計的に見ると、ペット飼育世帯は全体の約20%程度であり、残りの80%の世帯は潜在的な入居候補から外れることになります。

    2.近隣トラブルの発生リスク

    ペット可物件では、近隣住民とのトラブルが発生するリスクが一般物件より高くなります。不動産会社が受けるトラブル相談の内容を分析すると、以下のような問題が頻繁に報告されています。

    トラブル内容 発生率 主な原因
    ペットの鳴き声 64.9% 犬の吠え声、猫の夜鳴き
    飼育禁止ペットの飼育 43.2% 契約違反、規約の理解不足
    共用部でのマナー違反 37.8% 排泄物の処理、リードなし

    3.維持管理コストの増加

    ペット可物件では、一般物件と比較して維持管理にかかるコストが増加する傾向があります。これは、ペットの存在による特有の汚れや損耗に対応する必要があるためです。

    共用部の清掃費用増加、設備メンテナンス費用、専用設備の維持費用など、これらの追加コストは事前に収支計画に織り込み、家賃や管理費に適切に反映させることが重要です。

    4.原状回復費用の大幅増加リスク

    ペット可物件における最も深刻なリスクの一つが、原状回復費用の増加です。ペットによる室内の損傷は、通常の経年劣化とは性質が異なり、修繕費用が高額になる傾向があります。

    損傷箇所 一般的な修繕費用 ペット損傷時の費用 差額
    壁紙張替え(6畳) 3~5万円 5~8万円 +2~3万円
    フローリング張替え 8~12万円 12~20万円 +4~8万円
    特殊清掃・消臭 なし 5~15万円 +5~15万円

    ペット可物件投資を成功させる3つのポイント

    1.原状回復条件の明確化と契約書の整備

    ペット可物件投資の成功において最も重要なのは、原状回復に関する条件を契約書で明確に定めることです。曖昧な契約条件は、退去時のトラブルの原因となり、予期せぬ費用負担を招く可能性があります。

    国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、ペットによる損傷は原則として入居者負担とされていますが、具体的な費用や範囲については契約当事者間での合意が重要となります。

    2.詳細なペット飼育規定の策定

    すべての入居者が快適に暮らせる住環境を維持するためには、明確で実効性のあるペット飼育規定を策定することが不可欠です。

    飼育可能なペットの条件設定、飼育マナーの詳細規定、規定の実効性確保など、包括的なルール作りが成功の鍵となります。

    3.ペット専用設備の戦略的導入

    ペット可物件の付加価値を最大化し、競合物件との差別化を図るためには、ペット専用設備の導入が効果的です。ただし、すべての設備を一度に導入する必要はなく、物件の特性や予算に応じて戦略的に選択することが重要です。

    ペット共生型賃貸住宅への発展

    単なる「ペット可」から「ペット共生型」への進化は、より高い付加価値と安定した収益を実現する可能性があります。入居者の統一性、専門的な管理体制、コミュニティの形成など、多くのメリットが期待できます。

    まとめ:ペット可物件投資の判断ポイントと今後の展望

    投資判断における重要な要素

    ペット可物件への投資を検討する際は、以下の要素を総合的に評価することが重要です。

    現在の市場環境は、ペット可物件投資にとって非常に有利な状況にあります。ペット飼育世帯の継続的な増加、供給不足による希少性、そして業界関係者の将来予測すべてが、投資機会の存在を示しています。

    平均44%の家賃プレミアム、16.6日短い空室期間、長期入居による安定収益など、数値で示される収益性の高さは、投資対象として十分な魅力を持っています。

    成功のための実践的アプローチ

    ペット可物件投資は、いきなり大規模な投資を行うのではなく、小規模な物件から始めて経験を積むことをお勧めします。管理ノウハウの蓄積、地域特性の理解、入居者ニーズの把握など、実践を通じて学ぶべき要素が多数あります。

    今後の市場展望と投資機会

    少子高齢化、単身世帯の増加、ライフスタイルの多様化など、ペット需要を支える社会構造の変化は今後も継続すると予想されます。特に、高齢者のペット飼育や、単身者のペット需要は今後さらに拡大する可能性があります。

    ペット可物件投資のご相談はINA&Associates株式会社へ

    INA&Associates株式会社では、ペット可物件投資に関する総合的なコンサルティングサービスを提供しています。市場分析から物件選定、管理体制の構築まで、投資家の皆様の成功をサポートいたします。

    ペット可物件投資にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の投資目標に応じた最適なソリューションをご提案いたします。

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    よくある質問

    Q1.ペット可物件にするための初期投資はどの程度必要ですか?

    ペット可物件への転換に必要な初期投資は、物件の現状と導入する設備によって大きく異なります。最小限の対応であれば10~30万円、標準的な設備導入で50~150万円、本格的なペット共生型で200~500万円程度となります。投資額の回収期間は、家賃上乗せ効果により通常3~5年程度となります。

    Q2.どのような立地がペット可物件投資に適していますか?

    ペット可物件投資に適した立地には、近隣に公園や散歩コースがある、動物病院やペットショップが近い、ペット同伴可能な施設が充実しているなどの特徴があります。また、ペット可物件の供給が少ない地域や、一般賃貸物件の空室率が高い地域も投資機会となります。

    Q3.ペット可物件の管理で最も注意すべき点は何ですか?

    ペット可物件管理において最も重要なのは、予防的な対応です。入居時の徹底した説明、定期的なコミュニケーション、迅速なトラブル対応など、問題が小さいうちに対処することで、大きなトラブルを防ぐことができます。

    Q4.ペット可物件の空室が発生した場合の対策は?

    ペット可物件で空室が発生した場合は、募集条件の見直し、募集方法の多様化、物件の魅力向上などの対策が効果的です。ペット可物件は一般的に空室期間が短いため、適切な対策により早期の入居者確保が期待できます。

    Q5.将来的にペット不可に戻すことは可能ですか?

    ペット可物件をペット不可に戻すことは技術的には可能ですが、現入居者への対応、物件の原状回復、市場価値への影響などを考慮する必要があります。ただし、ペット可物件としての実績と設備があることは、将来再びペット可にする際の強みとなります。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター