東金町一丁目西地区第一種市街地再開発事業(以下、本事業)は、JR常磐線「金町」駅北口西側の約3ヘクタールにおよぶ大規模再開発計画です。老朽化した商業施設(イトーヨーカドー金町店跡地)等のエリアを一体的に再開発し、地域の安全性・利便性向上とにぎわい創出を図ることを目的としています。計画されている建築物は、地上40階・高さ約150メートルの超高層タワーを中心とした複合施設で、約900戸の分譲住宅(高層マンション)をはじめ、低層部には商業施設や公共施設が配置されます。また、本事業の特色として、低層部屋上に金町自動車教習所のコース(屋上自動車教習所)を再整備し、子育て世代から高齢者まで多世代が利用できる地域拠点を創出する計画です。
参加事業者
本事業の施行者は地権者で構成される「東金町一丁目西地区市街地再開発組合」であり、再開発事業の推進にあたり大手デベロッパー各社が参加組合員(参画企業)として協力しています。具体的には、三菱地所株式会社、三菱地所レジデンス株式会社、および三井不動産レジデンシャル株式会社の3社が事業協力者として参画しています。設計は株式会社佐藤総合計画が担当し、施工(特定業務代行者)には株式会社フジタが起用されており、官民連携でプロジェクトが推進されています。再開発組合の設立認可は東京都により令和3年4月28日に行われており、以降、事業協力者・行政・地権者が協力して事業を進めています。
開発スケジュール
東金町一丁目西地区再開発は、既存施設の営業継続に配慮して工事を2段階に分ける計画です。令和4年10月より第Ⅰ期工事(一期)が着工し、令和7年5月(2025年5月)までの工期で進められています。第Ⅰ期として建設中の低層商業棟は令和7年7月(2025年7月)に竣工し、同年8月に一部商業施設が先行オープンする予定です。その後、跡地となる旧イトーヨーカドー建物の解体に着手し、令和8年度(2026年度)より第Ⅱ期工事(二期)に移行します。第Ⅱ期では超高層住宅棟等の本体工事を進め、令和12年11月(2030年11月)に全体竣工・グランドオープンを迎える計画です。最終的に令和13年度(2031年度)には再開発組合の解散が認可される見通しで、約10年超にわたるプロジェクトが完了する予定です。なお、2025年2月14日付で本事業計画の第2回変更が認可されており、総事業費は約753億円と見込まれています。これは物価高騰等の情勢変化を踏まえた見直しであり、最新の資金計画に沿って事業が推進されています。
都市計画の詳細
本事業は葛飾区・東京都による都市計画決定(令和元年11月)に基づき進められており、同地区の地区計画も定められています。計画段階では地元説明会が開催され、金町駅北口地区全体の将来ビジョンとも整合させながらプラン策定が行われました。周辺では人口増加に対して歩行空間の狭さや回遊性の低下が課題となっていたため、本事業では道路・広場等の公共空間整備が重視されています。具体的には、計画地が面する「理科大学通り」について歩道を含めた道路拡幅が計画され、敷地外周には歩道状空地を設けて歩行者ネットワークを形成します。また、理科大学通りと直交する通りの交差部には公開空地(広場)を整備し、地域のにぎわい拠点となる空間を創出する計画です。これら都市基盤の整備により、安全で魅力ある都市環境の実現と駅周辺の回遊性向上が図られます。都市計画上は第一種市街地再開発事業として位置付けられ、用途地域や容積率の緩和等の支援措置を受けつつ、地域防災機能の強化や公共施設充実も図る包括的な計画となっています。
施設構成と用途計画
本再開発事業で建設される施設は、大きく第Ⅰ期の低層棟(商業棟)と第Ⅱ期の高層棟(住宅棟および商業・公共棟)に分かれます。第Ⅰ期工事では、地上5階・地下1階建て、高さ約28メートルの低層商業施設が先行して建設されています。この建物には地域の生活利便を担う商業施設(物販店やサービス店舗)が入り、屋上部分に金町自動車教習所の教習コースが併設されます。また、併設施設として地域向けの公共駐輪場や駐車場も整備され、駅周辺の交通環境改善に寄与します。第Ⅱ期工事では、本計画の中核となる超高層タワー棟が建設されます。タワー棟は地上40階・地下1階・塔屋2階、高さ約150メートルの規模で、約900戸の住宅(分譲マンション)が中高層部に配置されます。住宅は1LDK~4LDKの多様なプランで平均専有面積約67㎡を予定しており、ファミリーから単身者、高齢者まで幅広いニーズに対応します。タワー棟低層部(地上~4階部分)には商業施設に加え、葛飾区の区民事務所(行政サービス窓口)やバンケットホール等の公益施設が設置される計画で、行政サービスと地域交流の拠点機能も担います。これら商業・公共フロアの下部および地下には駐車場が整備され、自家用車や来客の受け入れにも対応します。全体として、本事業により「住宅(約900戸)+商業+公共(行政・防災)+特殊用途(教習所)」が一体となった複合市街地が創出されることになります。
行政・地域社会の動き
行政(東京都および葛飾区)は本事業を積極的に支援しており、各種許認可や財政面でのバックアップを行っています。東京都知事による事業計画認可(令和3年)や権利変換計画認可(令和4年8月18日)といった重要局面を経て事業は法的に成立し、最新の令和7年2月の計画変更認可まで適宜行政手続きがなされています。葛飾区も、本事業のために区有のまちづくり用地を提供して段階施工を可能にするなど物心両面で協力しています。さらに区は再開発組合に対し、国庫補助金等も活用しながら地盤調査・設計、既存建物の除却補償、共同施設整備、用地取得、電線類地中化等に係る費用の一部を補助金として交付してきました。これら行政支援策により、民間だけでは困難な大規模複合開発の実現が後押しされています。加えて、本事業は葛飾区が策定した「金町駅周辺地区まちづくりプラン」の中核プロジェクトとして位置付けられており、駅前広場整備や周辺の他の開発計画とも連携しながら地域全体の再生を図る取り組みの一環となっています。
一方、地域住民や地元社会も本事業に高い関心を寄せています。計画段階では地元説明会や意見交換会が行われ、将来像に対する意見が交わされました。また、工事期間中の地域貢献策として暫定駐輪場(自転車139台・バイク10台収容)が整備され、住民の利便性に配慮した措置が取られています。2022年9月に長年親しまれたイトーヨーカドー金町店が閉店して以降、一時的に大型スーパー不在となった金町地区ですが、本事業による新商業施設への期待は非常に大きいものがあります。実際、新施設に入居するテナント第1号として「ヨークフーズ新金町店(仮称)」(食品スーパー)が出店予定であることが明らかになり、2025年初秋の開業に向けて動き出しています。地元住民からは「イトーヨーカドーの復活」を望む声もありましたが、同店を傘下にもつヨーク社の食品スーパーがその役割を担う形です。大規模な建物にはこの他にも複数の専門店テナントが入る見込みで、衣料品店やドラッグストアなど、かつての総合スーパーに代わる多彩な店舗展開が予想されています。地域メディアでも「街のランドマークが生まれ変わる」として連日話題に上っており、2025年夏の一部開業から2030年末の全体完成まで、地元の期待と注目は今後さらに高まっていくことでしょう。