横浜駅周辺では、国際都市の玄関口にふさわしいまちづくりを目指す大規模再開発計画「エキサイトよこはま22」が進行しており、その中でも特に注目を集めているのが「(仮称)横浜駅みなみ東口地区第一種市街地再開発事業」です。横浜中央郵便局を含むエリアに、高さ約231mの超高層複合ビルを建設するこの計画は、横浜の新たなランドマークとして、また未来の都市機能のモデルケースとして大きな期待が寄せられています。本事業は、不動産投資家や周辺の不動産オーナー、そして横浜に暮らす全ての方々にとって、資産価値や生活環境にどのような影響をもたらすのでしょうか。
本記事では、INA&Associates株式会社が、不動産の専門家として、この横浜駅みなみ東口地区再開発事業の全貌を、一般の方にも分かりやすく解説いたします。事業の概要から、第一種市街地再開発事業の仕組み、そして周辺の不動産市場に与える影響まで、最新の情報を基に多角的に分析し、皆様の疑問にお答えします。この記事が、皆様の不動産に関する意思決定の一助となれば幸いです。
横浜駅みなみ東口地区第一種市街地再開発事業とは
本事業は、横浜の交通結節点である横浜駅の東口に、新たな賑わいと国際競争力を創出することを目的とした、極めて重要なプロジェクトです。ここでは、その具体的な計画内容について詳しく見ていきましょう。
事業の基本概要
本事業は、横浜市西区高島二丁目に位置する横浜中央郵便局を含む約1.3ヘクタールの区域を対象としています。事業主体は、地権者で構成される「横浜駅みなみ東口地区市街地再開発準備組合」であり、株式会社崎陽軒の野並晃社長が理事長を務めています。日本郵政グループや東日本旅客鉄道(JR東日本)、京浜急行電鉄(京急)といった、横浜の発展を支えてきた企業が参画しており、官民一体となって国際都市横浜の玄関口にふさわしいまちづくりを目指しています。
施設規模と計画内容
計画の中心となるのは、高さ約231m 、地上45階、地下3階建て、延床面積約21万5,000㎡に及ぶ超高層複合ビルです。このビルには、国際的な企業活動を支える高機能オフィス、上質な滞在を可能にするホテルやサービスアパートメント、そして新たな消費体験を提供する商業施設が入居する予定です。特筆すべきは、屋上に「空飛ぶクルマ」の離着陸場(Vertiport) の設置が計画されている点です。これは、次世代の交通インフラをいち早く導入する試みであり、国内外からのアクセスを飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 事業名称 | (仮称)横浜駅みなみ東口地区第一種市街地再開発事業 |
| 所在地 | 横浜市西区高島二丁目14、15、16の各一部 |
| 事業者 | 横浜駅みなみ東口地区市街地再開発準備組合 |
| 敷地面積 | 約13,000㎡ |
| 延床面積 | 約215,000㎡ |
| 建物高さ | 約231m |
| 階数 | 地上45階、地下3階 |
| 主要用途 | オフィス、ホテル、サービスアパートメント、商業施設、Vertiport |
事業スケジュール
本事業は、長期的な視点に立った壮大なプロジェクトです。2025年11月より環境影響評価の手続きが開始され、2028年度の工事着手を目指しています。全体の竣工は2037年度を予定しており、今後十数年にわたり横浜の風景を大きく変えていくことになります。
| 年月 | 内容 |
|---|---|
| 2025年11月 | 環境影響評価方法書 縦覧開始 |
| 2028年度(予定) | 全体工事着手 |
| 2032年度(予定) | 新築工事着工 |
| 2037年度(予定) | 竣工・供用開始 |
第一種市街地再開発事業の仕組みとメリット
本事業で採用されている「第一種市街地再開発事業」は、都市再開発法に基づく手法であり、複雑な権利関係を調整しながら、都市機能の更新と土地の高度利用を実現するための有効な仕組みです。不動産を所有されている方、また投資を検討されている方にとって、そのメリットを理解することは非常に重要です。
市街地再開発事業とは
市街地再開発事業は、老朽化した木造建築物が密集している、あるいは公共施設が不足しているといった課題を抱える市街地において、土地の利用を共同化し、耐火建築物への建て替えと公共施設の整備を一体的に行う事業です。特に「第一種」は、権利変換方式 を用いるのが特徴です。これは、事業前の土地や建物の権利(所有権、借地権、借家権など)を、事業後に完成する新しいビルの床(権利床)に、それぞれの資産価値に応じて置き換える手法です。これにより、地権者は地域を離れることなく、再開発の恩恵を享受することができます。
事業の推進は、まず地権者による「再開発準備組合」の設立から始まります。ここで事業計画の骨子を固め、都市計画決定を経て、正式な「市街地再開発組合」を設立し、事業を本格的に進めていきます。
不動産所有者にとってのメリット
権利者として再開発事業に参加することには、多くのメリットが存在します。これらは、単なる資産価値の向上に留まらず、長期的な安定経営にも繋がります。
| メリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 資産価値の向上 | 老朽化した建物が最新の耐震・防災性能を備えた近代的なビルに生まれ変わることで、資産価値が飛躍的に向上します。 |
| 権利の保全 | 権利変換方式により、事業後も新しいビルの区分所有権という形で権利が保全され、安定した賃料収入などが期待できます。 |
| 税制上の優遇措置 | 権利変換に伴う譲渡所得税の課税繰り延べや、固定資産税・都市計画税の減免など、様々な税制優遇が受けられます。 |
| 容積率の緩和 | 特定の条件を満たすことで、都市計画で定められた容積率の割増が適用され、より多くの床面積を確保できる場合があります。 |
| 補助金の活用 | 事業費の一部について、国や地方公共団体からの補助金が交付されるため、個人の負担を軽減することができます。 |
投資家にとっての魅力
市街地再開発事業は、直接の権利者だけでなく、不動産投資家にとっても大きな魅力を持つ投資対象です。再開発エリアおよびその周辺の不動産は、将来的な価値上昇が大いに期待できます。
再開発によって、インフラが整備され利便性が向上 します。駅直結のペデストリアンデッキや交通広場の整備は、人の流れを呼び込み、商業施設の収益性を高めます。また、先進的なデザインのビル群は、エリア全体のブランドイメージを刷新 し、「住みたい街」「働きたい街」としての評価を高め、賃貸需要を安定させます。さらに、最新の技術で建設される建物は防災性や安全性が高く 、自然災害リスクの低減にも繋がり、長期的な資産保全の観点からも有利です。これらの要因が複合的に作用し、投資需要を喚起 することで、不動産価格の上昇に繋がるのです。
エキサイトよこはま22と周辺再開発の相乗効果
横浜駅みなみ東口地区の再開発は、単独のプロジェクトとしてではなく、横浜駅全体の価値を向上させる壮大なまちづくり計画「エキサイトよこはま22」の一部として捉えることが重要です。複数のプロジェクトが連携することで生まれる相乗効果は、不動産価値に計り知れない影響を与えます。
エキサイトよこはま22の概要
「エキサイトよこはま22」は、2009年に策定された横浜駅周辺の総合的なまちづくりガイドラインです。横浜駅を「国際都市の玄関口」と位置づけ、駅周辺を7つのエリアに区分し、それぞれの特性に応じた開発目標を定めています。この計画に基づき、これまでにも多くの再開発事業が実現し、横浜駅の機能と魅力は着実に向上してきました。
| エリア区分 | 将来像(計画で設定された主な役割) |
|---|---|
| センターゾーン | 世界と横浜をつなぐ玄関口(ターミナル機能とホスピタリティの強化) |
| 南幸地区 | 商業・文化・エンタメが集積する賑わい拠点 |
| 北幸地区 | 成長企業が集まるビジネス街区 |
| 鶴屋町地区 | 交流・宿泊・居住が混在する拠点 |
| ヨコハマポートサイド地区 | アート&デザインをテーマにした都心居住地 |
| 高島地区 | 業務・MICE・ホテルなど多機能複合市街地 |
| 平沼地区 | 駅・MM21双方にアクセスしやすい住宅・業務拠点 |
周辺の主要再開発プロジェクト
現在、横浜駅周辺では、みなみ東口地区以外にも複数の大規模再開発が同時進行しています。これらのプロジェクトが連携し、互いに価値を高め合うことで、横浜駅エリア全体のポテンシャルが飛躍的に向上します。
| 地区 | 主なプロジェクト | 概要 |
|---|---|---|
| 南幸地区 | 横浜南幸地区共同建替事業 | 商業施設「CeeU Yokohama」と住宅棟からなる複合施設。2023年12月に商業棟が開業。 |
| 北幸地区 | ステーションオアシス再開発 | 横浜中央郵便局周辺の再開発計画と連携し、超高層複合ビルの建設を検討中。 |
| 鶴屋町地区 | THE YOKOHAMA FRONT | 地上43階建ての住宅・ホテル・商業複合タワー。2024年春より入居開始。 |
| 高島地区(MM21) | HARBOR EDGE PROJECT | ラグジュアリーホテルとデジタル水族館を中核とする複合施設。2028年竣工予定。 |
| 高島地区(MM21) | Linkage Terrace Project | オフィス、ホテル、専門学校などからなる大規模複合開発。2028年以降順次竣工予定。 |
相乗効果による資産価値向上
これらの複数の大規模プロジェクトが完成に近づくにつれて、横浜駅周辺の不動産市場には大きな変化が訪れるでしょう。実際に、横浜市の2025年公示地価は、西区で前年比9.84%の上昇 を記録するなど、再開発への期待がすでに価格に反映され始めています。交通インフラの拡充、オフィスや商業施設の集積による就業・交流人口の増加、そして国際的なイベントを誘致するMICE機能の強化は、エリア全体のブランド価値を確立し、不動産の資産価値を長期的に押し上げる強力な要因となります。
横浜駅周辺の不動産市場動向と投資の可能性
これまでの解説を踏まえ、不動産投資の観点から横浜駅周辺エリアの市場動向と将来性について、さらに深く掘り下げて分析します。
地価推移と市場動向
横浜市の不動産市場は、都心へのアクセスの良さと、独自の都市ブランドを背景に、堅調な需要を維持してきました。特に、みなとみらい21地区や横浜駅周辺などの再開発エリアでは、地価の上昇が顕著です。2025年の地価公示によれば、横浜市全体の住宅地の平均価格は1平方メートルあたり25万7,000円に達し、商業地においても前年比で7%を超える高い上昇率を記録しています。これは、再開発による将来性への期待が、実需だけでなく投資需要をも強力に牽引している証左と言えるでしょう。
| エリア | 2024年地価(円/㎡) | 2025年地価(円/㎡) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| 横浜市西区(商業地平均) | 2,890,000 | 3,170,000 | +9.69% |
| 横浜市中区(商業地平均) | 1,850,000 | 1,980,000 | +7.03% |
| 横浜市神奈川区(商業地平均) | 880,000 | 940,000 | +6.82% |
| 横浜市全体(住宅地平均) | 245,800 | 257,000 | +4.56% |
(注)上記は平均値であり、実際の取引価格とは異なります。
再開発が不動産価値に与える影響
横浜駅みなみ東口地区再開発事業をはじめとする一連のプロジェクトは、不動産価値に対して多岐にわたるプラスの影響をもたらします。交通インフラの劇的な向上 は、人々の移動をスムーズにし、ビジネスや商業の活性化に直結します。また、国際会議や展示会が開催可能なMICE機能の強化 は、国内外から多くのビジネスパーソンや観光客を呼び込み、ホテルやサービスアパートメントの需要を高めます。さらに、防災機能の強化 は、万が一の災害時にも事業継続を可能にし、企業の立地選択において重要な要素となります。これらの要素が組み合わさることで、横浜駅周辺は唯一無二のエリアブランドを確立 し、不動産価値の持続的な上昇が期待されるのです。
投資家が注目すべきポイント
横浜駅周辺エリアへの不動産投資を検討する際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、これらの再開発は2030年代後半まで続く長期的なプロジェクト であるという点です。短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、横浜の都市構造が大きく変貌を遂げる中で、資産価値がどのように形成されていくかを長期的な視点で捉える必要があります。
また、オフィスや商業施設の集積は、安定した賃貸需要 を生み出します。特に、交通利便性と生活利便性を兼ね備えたエリアの住宅は、単身者からファミリー層まで幅広い需要が見込めるでしょう。一方で、工事期間中の騒音や交通規制、そして日本全体の経済情勢の変化といったリスク要因 も存在します。これらのリスクを十分に理解し、専門家のアドバイスを参考にしながら、慎重な投資判断を行うことが成功の鍵となります。
まとめ
本記事では、「(仮称)横浜駅みなみ東口地区第一種市街地再開発事業」を中心に、横浜駅周辺で進行する壮大なまちづくりの全貌と、それが不動産市場に与える影響について解説いたしました。
この再開発は、単なるビルの建て替えに留まらず、交通インフラの革新、国際競争力の強化、そして防災機能の向上といった、都市の未来を形作る重要な要素を含んでいます。特に、権利変換方式を用いた第一種市街地再開発事業は、地権者の権利を守りながら、街全体の価値を最大化する有効な手法です。エキサイトよこはま22構想のもと、複数のプロジェクトが連携することで生まれる相乗効果は、横浜駅周辺の不動産価値を、今後長期にわたって押し上げていくことでしょう。
不動産投資は、未来への投資です。そして、その価値は、街の成長と共に育まれていきます。横浜というポテンシャルの高い都市で、今まさに始まろうとしている大きな変革の波を捉えることは、皆様の資産形成において、またとない機会となるかもしれません。
INA&Associates株式会社は、お客様一人ひとりの目標に寄り添い、不動産という「人財」への投資を通じて、皆様の豊かな未来を創造するお手伝いをいたします。横浜駅周辺の不動産に関するご相談はもちろん、あらゆる不動産のお悩みについて、どうぞお気軽にお問い合わせください。私たち専門家が、皆様の最良のパートナーとなることをお約束いたします。
よくある質問
Q1: 横浜駅みなみ東口地区再開発事業はいつ完成しますか?
A1: 本事業の全体の竣工は、2037年度を予定しています。ただし、工事の進捗状況により変更となる可能性があります。
Q2: 第一種市街地再開発事業とはどのような事業ですか?
A2: 都市再開発法に基づき、老朽化した市街地を整備する事業です。特に「第一種」は、地権者が持つ土地や建物の権利を、新しく完成するビルの床(権利床)に資産価値に応じて置き換える「権利変換方式」を用いるのが特徴です。
Q3: 周辺の不動産価値はどの程度上昇していますか?
A3: 横浜市西区の商業地は、2025年の公示地価で前年比9.84%の上昇を記録するなど、再開発への期待から顕著な価格上昇が見られます。今後もプロジェクトの進捗に伴い、堅調な推移が予測されます。
Q4: 空飛ぶクルマの離着陸場(Vertiport)とは何ですか?
A4: 「空飛ぶクルマ」と呼ばれる電動垂直離着陸機(eVTOL)が離着陸するための施設です。次世代の都市交通システムとして期待されており、都心部や空港へのアクセスを大幅に短縮する可能性があります。
Q5: 不動産投資を検討する際の注意点は何ですか?
A5: 再開発事業は長期にわたるため、短期的な視点だけでなく、都市の成長性や将来の賃貸需要を長期的に見極めることが重要です。また、工事期間中の影響や経済全体の動向など、リスク要因も十分に考慮し、専門家のアドバイスを参考にすることをお勧めします。
稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター