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    不動産買取再販とは?仲介との違いからメリット・デメリットまで専門家が徹底解説

    近年、不動産業界で注目を集めている「買取再販」というビジネスモデルについて、皆様はどの程度ご存知でしょうか。空き家の増加や中古住宅市場の活性化を背景に、この手法は不動産の売却や購入を検討されている方々にとって、新たな、そして有力な選択肢となりつつあります。しかし、その仕組みやメリット・デメリットについては、まだ十分に理解されていないのが現状かもしれません。

    本記事では、不動産買取再販事業の全貌を徹底解説いたします。売主様、買主様それぞれの視点から、従来の仲介との違い、具体的なメリット・デメリット、さらには事業者のビジネスモデルに至るまで、紐解いていきます。この記事が、皆様の大切な資産である不動産を、より良い条件で、そして安心して取引するための一助となれば幸いです。

    不動産買取再販事業の仕組み

    不動産買取再販事業は、中古不動産市場に新たな価値を創造するビジネスモデルです。その根幹は、不動産会社が売主様から物件を直接買い取り、リフォームやリノベーションを通じて物件の価値を高めた上で、新たな買主様へ販売(再販)することにあります。この一連の流れを理解することが、本事業を正しく活用するための第一歩となります。

    買取再販とは何か?

    買取再販とは、端的に言えば、不動産会社が中古物件の「仕入れ」から「加工」、そして「販売」までを一貫して手掛ける事業です。個人の売主様が所有するマンションや戸建てを、不動産会社が直接買主となって購入します。その後、老朽化した設備を更新したり、現代のライフスタイルに合わせた間取りに変更したりといった付加価値向上のための工事を実施します。美しく、そして機能的に生まれ変わった物件は、新たな住宅を探している買主様に向けて販売されます。このプロセスにより、単なる中古物件の流通に留まらない、新たな住宅価値の創出が実現されるのです。

    従来の「仲介」との決定的な違い

    不動産の売却と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、不動産会社が売主様と買主様の間を取り持つ「仲介」ではないでしょうか。買取再販と仲介は、似ているようでその性質が大きく異なります。両者の最も決定的な違いは、取引の当事者取引完了までのスピードです。以下の表で、その違いを明確に比較してみましょう。

    比較項目 不動産買取再販 不動産仲介
    取引の相手方 不動産会社 個人の買主様
    売却までの期間 短期間(数日~1ヶ月程度) 長期間(3ヶ月~半年以上)
    売却価格 市場価格より低い傾向 市場価格に近い価格
    仲介手数料 不要 必要
    契約不適合責任 免責されることが多い 売主様が負う
    内覧対応 不要 必要

    仲介の場合、不動産会社はあくまで売主様の代理人として買主様を探す役割を担います。そのため、いつ、どのような条件で売却できるかは、市場の動向や買主様の意向に大きく左右されます。一方、買取再販では不動産会社自身が買主となるため、価格の合意さえできれば、迅速かつ確実に売却を進めることが可能です。このスピード感こそが、買取再販の最大の特徴と言えるでしょう。

    買取再販事業者のビジネスモデル

    買取再販事業者の収益は、物件の「再販価格」から「買取価格」と「リノベーション費用等の経費」を差し引いた差額、つまり売却益によって成り立っています。このビジネスモデルは、「安く仕入れて、付加価値を付けて高く売る」という商売の原則に基づいています。事業者は、長年の経験とデータに基づき、物件の潜在的な価値を正確に見極め、どの程度の費用をかければ、いくらで再販できるかを精密に計算します。利益を確保するためには、適切な価格での仕入れ、効率的かつ効果的なリノベーション、そして的確な販売戦略が不可欠です。私たちのような専門業者は、市場のニーズを的確に捉え、物件の価値を最大化することで、売主様、買主様、そして事業者自身の三者が利益を享受できる関係を構築することを目指しています。

    売主様にとってのメリット・デメリット

    不動産を売却する際、買取再販を選択することは、売主様にとって多くの利点をもたらす一方で、考慮すべき点も存在します。ご自身の状況や優先順位と照らし合わせ、最適な売却方法を判断することが重要です。

    メリット:なぜ買取再販は選ばれるのか

    買取再販が多くの売主様に選ばれる理由は、その利便性と確実性にあります。特に、時間的な制約がある場合や、煩雑な手続きを避けたい場合に、その真価を発揮します。

    1.迅速な現金化が可能

    最大のメリットは、売却活動にかかる時間が圧倒的に短いことです。仲介では買主様が見つかるまで数ヶ月を要することも珍しくありませんが、買取再販では不動産会社との合意に至れば、最短で数日から数週間で決済、現金化が完了します。急な転勤や住み替え、相続などで早期に資金が必要な場合に非常に有効な手段です。

    2.仲介手数料が不要

    仲介を利用して不動産を売却した場合、一般的に「売買価格の3%+6万円+消費税」の仲介手数料が発生します。しかし、買取再販は不動産会社が直接の買主となるため、この仲介手数料が一切かかりません。諸費用を大幅に削減できる点は、大きな経済的メリットと言えるでしょう。

    3.契約不適合責任の免責

    個人間で不動産を売買した場合、売主様は引き渡し後も一定期間、物件に隠れた欠陥(雨漏りやシロアリ被害など)が見つかった際に修繕などの責任を負う「契約不適合責任」を負います。しかし、買主が宅地建物取引業者である買取再販の場合、この責任が免責される特約を設けることが一般的です。将来的なリスクや不安から解放される点は、精神的な負担を大きく軽減します。

    4.内覧対応や交渉の手間がない

    仲介では、購入希望者の内覧に何度も立ち会ったり、価格交渉に応じたりする必要があります。買取再販では、不動産会社の担当者による査定時の現地調査のみで完結するため、週末の予定を空けたり、室内の清掃に気を使ったりといった煩わしさから解放されます。

    メリット 具体的な内容
    迅速性 買主を探す必要がなく、スピーディーに現金化できる
    経済性 高額になりがちな仲介手数料が不要
    安心感 引き渡し後の契約不適合責任が免責され、将来的な不安が少ない
    簡便性 内覧対応や買主との交渉といった手間や精神的負担がない

    デメリット:知っておくべき注意点

    多くのメリットがある一方で、買取再販にはデメリットも存在します。最も重要な点は、売却価格に関するものです。

    デメリットは、売却価格が仲介市場の相場よりも低くなる傾向にあることです。一般的に、市場価格の7割~8割程度が目安とされています。これは、買取再販業者がリフォーム費用や販売経費、そして自社の利益を確保する必要があるためです。したがって、「少しでも高く売りたい」というご要望を最優先される場合には、時間をかけて仲介で売却活動を行う方が適している可能性があります。ただし、仲介手数料や売却までにかかる時間、契約不適合責任のリスクなどを総合的に考慮すると、買取再販の方が最終的な手残りが多くなるケースや、トータルでの満足度が高くなることも少なくありません。どちらの選択がご自身にとって最適か、専門家と相談しながら慎重に判断することが肝要です。

    買主様にとってのメリット・デメリット

    一方で、リノベーションを経て市場に提供される買取再販物件は、住宅購入を検討されている買主様にとっても魅力的な選択肢です。新築でもなく、従来の中古でもない、第三の選択肢としての価値を理解することが、理想の住まい選びに繋がります。

    メリット:新築同様の物件を、より賢く手に入れる

    買取再販物件の最大の魅力は、品質と価格のバランスに優れている点です。買主様は、新築物件に比べて手頃な価格で、質の高い住環境を手に入れることができます。

    1.リノベーション済みで美しい室内

    買取再販物件は、販売前にプロの視点でリノベーションが施されています。壁紙や床材の張り替えはもちろん、キッチンやバスルームといった水回り設備も最新のものに交換されていることが多く、まるで新築物件のような美しい室内です。購入後にリフォーム費用や手間をかけることなく、すぐに快適な生活をスタートできます。

    2.新築物件よりも割安な価格設定

    立地や広さが同程度の新築物件と比較して、買取再販物件は価格が抑えられているのが一般的です。特に近年、建築費の高騰により新築物件の価格は上昇傾向にありますが、買取再販物件は中古市場をベースにしているため、より現実的な予算で理想の住まいを見つけられる可能性が高まります。

    3.物件の状態を把握しやすい安心感

    買取再販業者は、物件を買い取る際に建物の状態を詳細に調査しています。また、リノベーションの過程で構造上の問題などが発見されれば、適切に補修が行われます。さらに、多くの物件で「既存住宅売買瑕疵保険」への加入や、独自の保証制度が設けられており、中古物件にありがちな「見えない部分の不安」が解消されている点も大きなメリットです。

    メリット 具体的な内容
    品質・デザイン性 プロによるリノベーションで、新築同様の美しい内装と機能的な設備
    経済合理性 新築に比べて割安な価格で購入でき、リフォーム費用も不要
    安心感 事前の詳細な物件調査と、瑕疵保険や保証による購入後のリスク軽減
    即時性 完成済みのため、契約から引き渡しまでがスムーズで、すぐに入居可能

    デメリット:自由度と選択肢の制約

    多くのメリットがある買取再販物件ですが、購入を検討する際にはいくつかの注意点も理解しておく必要があります。

    主なデメリットは、リノベーションの自由度が低いことです。既にリノベーションが完了しているため、買主様がご自身の好みに合わせて間取りや内装、設備を自由に選ぶことはできません。「自分だけのこだわりの空間を創りたい」という方にとっては、物足りなさを感じる可能性があります。また、市場に出回る物件数は新築や一般的な中古物件に比べてまだ限られているため、希望のエリアで常に見つけられるとは限らない点も、デメリットと言えるかもしれません。しかし、プロがデザインした質の高い空間を効率的に手に入れたいと考える方にとっては、これらの点は大きな問題にはならないでしょう。

    市場動向と将来性

    不動産買取再販事業は、単なる一過性のブームではなく、日本の社会構造の変化と密接に結びついた、将来性の高い市場として成長を続けています。その背景と今後の展望について解説します。

    拡大を続ける買取再販市場

    近年の買取再販市場は、目覚ましい成長を遂げています。株式会社矢野経済研究所の調査によれば、中古住宅買取再販の市場規模(成約戸数)は、2015年の約24,300戸から、2022年には約41,000戸へと大幅に拡大しました。2023年には42,000戸に達すると予測されており、さらに2030年には50,000戸規模にまで成長すると見込まれています。このデータは、買取再販というビジネスモデルが、一過性のトレンドではなく、住宅市場に確固たる地位を築きつつあることを明確に示しています。

    買取再販市場規模(成約戸数)
    2015年 24,300戸
    2022年 41,000戸
    2023年(予測) 42,000戸
    2030年(予測) 50,000戸

    出典:株式会社矢野経済研究所「中古住宅買取再販市場に関する調査(2023年)」

    この市場拡大の背景には、いくつかの複合的な要因が存在します。第一に、新築住宅の建築コスト上昇に伴う価格高騰です。これにより、住宅購入希望者の目が、相対的に価格が手頃な中古住宅へと向いています。第二に、国内の住宅ストック、つまり既存の住宅総数が増加し続けており、中古住宅の流通を促進する必要性が高まっていることです。国もこの流れを後押ししており、買取再販事業者が中古住宅を取得する際の不動産取得税を軽減する特例措置などを設けて、市場の健全な発展を支援しています。

    なぜ今、買取再販が求められるのか

    現代の日本社会が抱える構造的な課題が、買取再販事業の必要性を高めています。少子高齢化や人口減少に伴い、全国的に空き家が増加していることは、皆様もご存知の通りです。これらの空き家を放置すれば、地域の景観や治安の悪化に繋がります。買取再販事業は、こうした社会問題に対する有効な解決策の一つです。事業者が空き家を買い取り、リノベーションを施して再生することで、新たな住まいとして市場に還流させ、地域の活性化に貢献することができるのです。

    また、人々の価値観の多様化も、買取再販市場の追い風となっています。画一的な新築住宅よりも、リノベーションによって個性的で質の高い空間を実現した中古住宅を好む層が増えています。買取再販物件は、こうした「自分らしい暮らし」を求める現代のニーズに応える選択肢として、その存在感を増しているのです。私たちINA&Associates株式会社も、単に物件を再生するだけでなく、その土地の特性や時代のニーズを捉え、新たな価値を創造する「人財投資」の一環として、この事業に真摯に取り組んでいます。

    まとめ

    本記事では、不動産買取再販事業について、その仕組みからメリット・デメリット、市場の将来性に至るまで、多角的な視点から解説いたしました。最後に、本記事の要点を改めて整理します。

    不動産買取再販とは、不動産会社が中古物件を直接買い取り、リノベーションによって価値を高めてから再販売する事業モデルです。

    売主様のメリットは、「迅速な現金化」「仲介手数料不要」「契約不適合責任の免責」など、時間的・経済的・精神的な負担を大幅に軽減できる点にあります。一方で、売却価格は市場価格より低くなる傾向があります。

    買主様のメリットは、「新築同様の美しい物件を割安な価格で手に入れられる」ことです。品質と価格のバランスに優れた、賢い住宅購入の選択肢と言えます。ただし、デザインの自由度は限定されます。

    市場は拡大傾向にあり、空き家問題の解決や中古住宅流通の活性化に貢献する、社会的意義の大きな事業として、今後もその重要性は増していくと予測されます。

    不動産の売却や購入は、多くの方にとって人生で幾度とない重要な決断です。従来の「仲介」という選択肢に加えて、「買取再販」という手法があることを知っていただくことで、皆様の選択肢はより豊かになります。ご自身の状況や価値観、優先順位を明確にし、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解した上で、最適な方法を選択することが、後悔のない不動産取引を実現する鍵となります。

    私たちINA&Associates株式会社は、お客様一人ひとりのご状況に真摯に寄り添い、不動産のプロフェッショナルとして、そしてお客様の未来を共に考えるパートナーとして、最善のご提案をさせていただきます。不動産に関するお悩みやご相談がございましたら、どのような些細なことでも、どうぞお気軽にお声がけください。

    よくある質問(Q&A)

    Q1.査定を依頼したら、必ず売却しなければなりませんか?

    A1.いいえ、そのようなことは一切ございません。査定は、お客様がご所有の不動産の価値を把握し、売却を検討するための判断材料としてご活用いただくためのものです。提示された査定価格にご納得いただけない場合は、もちろん売却をお断りいただけます。売却を強要することは決してございませんので、どうぞご安心の上、お気軽にご相談ください。

    Q2.どのような物件でも買い取ってもらえますか?

    A2.基本的には、マンション、戸建て、土地など、さまざまな種別の不動産が買取の対象となります。しかし、建物の状態が著しく悪い場合や、法律上の制限が厳しい物件、地方の一部エリアなど、弊社の事業エリアや再生計画との兼ね合いで、買取が難しいケースもございます。まずは物件の情報を拝見し、買取の可否を判断させていただきますので、お気軽にお問い合わせいただければと存じます。

    Q3.買取価格はどのようにして決まるのですか?

    A3.買取価格は、複数の要素を総合的に評価して算出されます。まず、近隣の類似物件の取引事例や市場の動向から「再販時の想定価格」を割り出します。そこから、物件を再生するために必要な「リノベーション費用」、販売活動にかかる「広告宣伝費や諸経費」、そして弊社の事業としての「利益」を差し引いた金額が、お客様への買取提示価格となります。私たちは、透明性の高い査定を常に心がけております。

    Q4.仲介と買取再販、どちらを選ぶべきか迷っています。

    A4.どちらの方法が最適かは、お客様が何を最も優先されるかによって異なります。「時間をかけてでも、少しでも高く売りたい」というご希望が最も強い場合は「仲介」が適している可能性が高いです。一方で、「早く、確実に、手間をかけずに現金化したい」「将来的なリスクを避けたい」という場合は「買取再販」が非常に有効な選択肢となります。それぞれのメリット・デメリットをご理解いただいた上で、ご自身のライフプランに合った方法をお選びいただくことが重要です。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター