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    人口減少社会で資産価値が上がる立地とは?不動産選びの7つのポイント

    本日は、人口減少社会における「価値のある立地」というテーマについて、不動産の専門家として解説いたします。

    日本の総人口は、2025年5月1日時点で1億2,334万人となり、前年同月比で60万人の減少が報告されています。この人口減少という大きな潮流は、不動産市場に多大な影響を与え始めており、多くの方が将来の資産価値に対して不安を感じているのではないでしょうか。

    しかし、人口が減少するからといって、すべての不動産の価値が等しく下落するわけではありません。むしろ、このような社会構造の変化の中で、価値を維持、あるいは向上させる不動産と、そうでない不動産の二極化がより鮮明になります。そして、その価値を左右する最も重要な要素こそが「立地」なのです。

    本記事では、人口減少時代の不動産市場の現状をデータに基づいて解説し、将来にわたって資産価値を維持・向上させるための「価値のある立地」を見極める7つの具体的なポイントを、専門的な視点から分かりやすくご説明します。この記事を最後までお読みいただくことで、将来を見据えた賢明な不動産選びに必要な知識を習得できるでしょう。

    人口減少社会における不動産市場の現状と課題

    人口減少が不動産市場に与える影響を正しく理解するためには、まず日本の人口動態と、それに伴う市場の変化を客観的に把握することが不可欠です。

    日本の人口減少の実態

    総務省統計局の発表によると、日本の総人口は16年連続で減少しており、特に日本人人口は2025年5月時点で前年同月比89万2千人減と、減少幅が拡大しています。さらに深刻なのは、経済活動の中核を担う生産年齢人口(15~64歳)の減少です。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2040年にかけて、多くの地方都市で生産年齢人口が30%以上減少すると予測されています。この人口構造の変化は、特に地方圏において住宅需要の減少に直結し、不動産市場の構造を大きく変えつつあります。

    不動産市場の二極化が進行中

    人口減少は全国一律に不動産価値を下落させるわけではありません。むしろ、不動産市場の二極化を加速させています。一方で、人口流入が続く東京圏などの大都市圏では、旺盛な住宅需要を背景に不動産価格が上昇を続けています。他方で、人口減少が著しい地方圏では、需要の低下により不動産価格の下落が続いています。

    この二極化を象徴するのが、全国で増加の一途をたどる空き家問題です。

    「都市のスポンジ化」とは何か

    近年、都市部においても「都市のスポンジ化」という現象が問題視されています。これは、都市の中心部であるにもかかわらず、空き家や空き地が虫食い状に点在し、まるでスポンジのように隙間だらけになる状態を指します。

    このスポンジ化は、行政サービスの非効率化や生活利便性の低下を招き、ひいては地域全体の魅力を損なうことにつながります。このような状況下で資産価値を維持するためには、将来にわたって「選ばれる」立地を見極める戦略的な視点が不可欠となるのです。

    価値のある立地を見極める7つのポイント

    人口減少社会においても、全ての不動産の価値が下がるわけではありません。むしろ、特定の条件を満たす立地は、その希少性から価値を維持、あるいは向上させる可能性を秘めています。ここでは、資産価値の高い「価値のある立地」を見極めるための7つの重要なポイントを解説します。

    ポイント①交通利便性の高さ

    不動産の価値を測る上で、交通利便性は最も基本的な要素です。特に、最寄り駅からの距離は重要で、一般的に徒歩10分圏内が評価されます。複数の鉄道路線が利用できる駅や、都心部へのアクセスが良好な駅は、通勤・通学の利便性が高いため、安定した需要が見込めます。将来にわたってその価値が大きく変動する可能性は低いと言えるでしょう。

    ポイント②生活サービス施設の充実度

    日々の暮らしに欠かせない商業施設や医療施設、教育施設などが徒歩圏内に充実しているかどうかも、立地の価値を大きく左右します。これらの生活サービス施設が持続的に運営されるためには、一定の商圏人口が必要です。

    施設種別 標準的な商圏人口の目安
    都市型コンビニエンスストア 約3,000人
    食品スーパー(2,000~3,000㎡規模) 1万人~3万人
    ドラッグストア(1,000~1,500㎡規模) 1万人~3万人

    人口が減少する中でも、これらの施設が維持されるだけの人口密度が見込めるエリアは、生活利便性が高く、資産価値も維持されやすいと考えられます。

    ポイント③コンパクトシティ政策との整合性

    現在、日本の多くの自治体では、国土交通省が推進する「コンパクトシティ政策」に基づき、立地適正化計画の策定が進められています。これは、人口減少社会に対応するため、居住エリアや都市機能(商業、医療、福祉など)を特定の区域に集約し、持続可能な都市を形成しようとする計画です。

    この計画では、主に以下の2つの区域が定められます。

    • 都市機能誘導区域:医療施設、商業施設などを集約し、都市の中心的機能を維持するエリア。
    • 居住誘導区域:一定の人口密度を維持し、生活サービスを享受できるよう居住を促すエリア。

    ご自身の検討している不動産が、自治体の定めるこれらの区域内に位置しているかどうかは、将来の資産価値を予測する上で極めて重要な情報です。計画区域内であれば、将来にわたって行政サービスや生活利便性が維持される可能性が高まります。

    ポイント④再開発の有無と将来性

    駅前の再開発や大規模なインフラ整備が計画されているエリアは、将来的に街の魅力や利便性が向上し、不動産価値の上昇が期待できます。再開発によって新たな商業施設が生まれる、道路網が整備されるなど、地域のポテンシャルが高まるからです。自治体の公表する都市計画情報などを確認し、再開発の動向を注視することが重要です。特に、容積率の緩和が伴う再開発では、土地の利用価値が大きく向上する可能性があります。

    ポイント⑤人口密度の維持可能性

    前述の通り、生活サービス施設を維持するためには、一定の人口密度が必要です。立地適正化計画における居住誘導区域は、まさにこの人口密度を維持することを目的としています。人口が希薄化していくエリアでは、店舗の撤退や行政サービスの縮小が起こりやすくなります。将来にわたって安定した人口密度が見込めるかどうかは、その土地の持続可能性を測るバロメーターと言えるでしょう。

    ポイント⑥建物の品質と省エネ性能

    立地だけでなく、建物そのものの品質も資産価値に大きく影響します。特に、2025年度から新築住宅に省エネルギー基準への適合が義務化されるなど、省エネ性能への関心は高まる一方です。現行基準である断熱性能等級4を満たすことはもちろん、将来のスタンダードとなる可能性のある等級5以上の性能を持つ住宅は、資産価値の維持において有利に働きます。また、これは住宅ローン控除の適用条件にも関わってくるため、購入前に必ず確認すべきポイントです。

    ポイント⑦適切な維持管理体制

    分譲マンションであれば管理組合の運営状況、戸建てであれば定期的なメンテナンスの実施など、適切な維持管理がなされているかも資産価値を保つ上で不可欠です。建物の修繕履歴や将来の修繕計画が明確になっているか、また、それらの情報が「住宅履歴情報(いえかるて)」として保管されていると、売却時に有利に働くことがあります。良好な管理状態は、買主にとって大きな安心材料となるからです。

    将来の賃貸需要を見据えた立地選び

    不動産を自己の居住用としてだけでなく、将来的な賃貸資産として捉える視点も、人口減少社会においては極めて重要です。ここでは、将来の賃貸需要を見据えた立地選びの戦略について解説します。

    単身世帯・高齢者世帯の増加トレンド

    日本の総人口は減少していますが、世帯数に目を向けると異なる動きが見られます。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の世帯数は2023年をピークに減少に転じるものの、単身世帯の割合は増加を続け、2040年には全世帯の約4割に達すると予測されています。また、65歳以上の高齢者世帯も同様に増加傾向にあります。

    この世帯構成の変化は、賃貸市場における需要の質的変化を意味します。従来のファミリー層中心の需要から、単身者や高齢者向けのコンパクトな住居への需要シフトが加速していくと考えられます。

    賃貸ニーズの高い間取りと設備

    こうした需要の変化に対応するためには、ターゲット層のニーズに合った間取りや設備を備えることが重要です。単身者や高齢者からは、機能的で管理しやすいコンパクトな住戸が好まれる傾向にあります。

    ターゲット層 推奨される間取り・設備
    単身者 ・ワンルーム、1LDK
    ・インターネット無料設備
    ・宅配ボックス
    ・充実したセキュリティ(オートロック、防犯カメラ)
    高齢者 ・1LDK、2DK
    ・バリアフリー設計(手すり、段差解消)
    ・エレベーター
    ・緊急通報システム
    ・近隣の医療・福祉施設との連携

    これらの設備は、入居者満足度を高め、安定した賃貸経営に繋がります。特に、セキュリティやバリアフリーへの配慮は、今後の賃貸市場において重要な差別化要因となるでしょう。

    賃貸物件として活用する戦略

    将来的に賃貸物件として活用することを見据えるならば、やはり人口が減少しにくい都市部やその近郊で、かつ交通利便性や生活利便性の高い立地を選ぶことが鉄則です。前述した「価値のある立地を見極める7つのポイント」は、そのまま賃貸需要の高い立地の条件と重なります。

    また、高齢化の進展に伴い、訪問介護などの在宅サービスを受けやすい立地も評価が高まります。介護事業所が近隣にあり、サービス提供者がアクセスしやすいエリアは、高齢者にとって安心して暮らせる住環境と言えます。長期的な視点で、こうした社会構造の変化に対応できる立地を選ぶことが、不動産の資産価値を維持・向上させるための賢明な戦略です。

    まとめ-人口減少時代に選ばれる不動産とは

    本記事では、人口減少という大きな社会変動の中で、いかにして資産価値の維持・向上が期待できる「価値のある立地」を見極めるかについて、7つの具体的なポイントを基に解説いたしました。

    交通利便性生活サービス施設の充実度といった従来からの重要な要素に加え、これからの時代は、国や自治体が主導するコンパクトシティ政策との整合性や、再開発の将来性を読み解く視点が不可欠です。また、建物自体の品質維持管理状態も、その価値を長期的に担保する上で欠かせない要素となります。

    人口が減少するからといって、不動産市場全体が悲観的なわけではありません。むしろ、人々が「どこに住みたいか」という選択基準がより明確になり、選ばれる立地とそうでない立地の差が鮮明になる時代です。本記事でご紹介した7つのポイントを羅針盤として、将来を見据えた賢明な不動産選びを実践していただくことが、皆様の大切な資産を守り、育むことに繋がると確信しております。

    不動産の購入や売却は、多くの人にとって人生で最も大きな決断の一つです。ご自身の状況に合わせた最適な選択をするためには、専門家による客観的なアドバイスが非常に有効です。INA&Associates株式会社では、不動産のプロフェッショナルとして、お客様一人ひとりのご状況に合わせた最適なご提案をさせていただきます。不動産に関するお悩みやご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

    よくある質問(FAQ)

    Q1.人口が減少しても、不動産投資は有効な資産形成手段となり得ますか?

    A1.はい、有効です。ただし、立地選定がこれまで以上に重要になります。人口が減少する中でも、都市部への人口集中や単身世帯の増加といったトレンドは続くと予測されています。これらの需要が見込めるエリアで、質の高い物件を選んで投資することができれば、安定した収益と資産価値の維持が期待できます。

    Q2.地方にある不動産は、例外なく価値が下がってしまうのでしょうか?

    A2.必ずしもそうとは限りません。地方であっても、県庁所在地や地域の中心都市で、交通の結節点となっているような場所は、周辺地域からの人口流入が見込めるため、価値が維持されやすい傾向にあります。また、自治体が立地適正化計画の中で「居住誘導区域」に定めているエリアも、将来的な生活利便性の維持が期待できるため、注目に値します。

    Q3.自治体の「立地適正化計画」は、どこで確認できますか?

    A3.各自治体(市区町村)のウェブサイトで公表されています。「(自治体名)立地適正化計画」といったキーワードで検索してみてください。計画図では、都市機能誘導区域や居住誘導区域が色分けして示されていることが多く、ご検討中の物件がどの区域に含まれるかを確認できます。

    Q4.住宅の「省エネ性能等級」とは何ですか?

    A4.「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」の2つで評価される、建物の省エネルギー性能を示す指標です。2025年4月以降に建築確認を受ける全ての新築住宅は、断熱等性能等級4以上、かつ一次エネルギー消費量等級4以上への適合が義務付けられます。等級が高いほど断熱性や省エエネ性能に優れ、光熱費の削減に繋がるだけでなく、資産価値の評価においても有利になります。

    Q5.今ある不動産の資産価値を維持するために、個人でできることは何ですか?

    A5.まずは、適切な維持管理を心がけることが重要です。戸建てであれば定期的な外壁や屋根の点検・補修、マンションであれば管理組合の活動に積極的に参加し、長期修繕計画が適切に実行されているかを確認しましょう。また、リフォームやリノベーションによって、現代のライフスタイルに合った間取りや設備に更新することも、資産価値の維持・向上に繋がります。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター