日本の住宅市場において、築20年を超える「築古物件」が6割以上を占める時代が到来しました。多くのオーナー様が「古くなった物件の価値が下がる一方だ」「空室対策に悩んでいる」といった共通の不安を抱えているのではないでしょうか。しかし、私たちは市場の変化を正しく理解し、適切な戦略を講じることで、築古物件は新築以上に魅力的な"高収益資産"へと生まれ変わる可能性を秘めていると考えます。
本記事では、不動産の専門家である私、INA&Associates株式会社が、築古物件でも高く貸せる物件の共通点を徹底解説します。データに基づいた市場分析から、費用対効果の高いリノベーション手法、そして実際の賃貸経営成功事例まで、具体的かつ実践的な情報を提供します。この記事を最後までお読みいただくことで、皆様が所有する物件の潜在価値を最大限に引き出し、安定した賃貸経営を実現するための道筋が見えるはずです。
築古物件が"お宝"に変わる時代背景
築古物件の現状:データで見る市場動向
総務省統計局が公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年時点で日本の住宅総数に占める築20年以上の物件の割合は64%に達しています。この事実は、もはや築古物件が例外ではなく、市場の"マジョリティ"であることを明確に示しています。この背景には、1990年代の住宅大量供給と、その後の新規供給数の減少という構造的な要因が存在します。市場に存在する物件が必然的に年を重ね、築古化が進行しているのです。
なぜ今、築古物件が注目されるのか?
一方で、私たちはこの築古化という現象を、悲観的に捉える必要はないと考えています。むしろ、これは新たなビジネスチャンスの到来を意味します。近年の資材価格や人件費の高騰は、新築物件の価格を押し上げ、結果として不動産投資の利回り改善を困難にしています。このような市場環境において、相対的に価格がこなれた築古物件を、リノベーションによって再生させる手法が、より現実的で高い収益性を生む選択肢として注目されているのです。
さらに、現代の入居者の価値観は多様化しています。画一的な新築物件よりも、リノベーションによって独自の個性や味わいが加えられた物件を積極的に選択する層が確実に増えています。これは、入居者ニーズが「新しさ」という単一の価値基準から、「自分らしい暮らしの実現」へとシフトしていることの表れと言えるでしょう。
高く貸せる築古物件に共通する「3つの条件」
長年の経験から、私たちは高く貸せる築古物件には明確な共通点があることを見出しました。それは、「立地力」「リノベーション」「管理体制」という3つの条件です。これらを個別に最適化するのではなく、三位一体で戦略的に高めていくことが不可欠です。
条件1:圧倒的な「立地力」
不動産の価値を決定づける最も普遍的かつ強力な要因は「立地」です。この原則は、築古物件において揺らぐことはありません。むしろ、建物自体の魅力が経年により相対的に低下する分、立地の持つ重要性はさらに増します。
駅から徒歩10分以内であることは基本条件ですが、それに加えてスーパーマーケットやコンビニエンスストア、病院、公園といった生活利便施設の充実度が、入居者の評価を大きく左右します。また、将来的な都市計画や再開発の動向を常に把握し、エリア全体の将来性を見極めるマクロな視点も、長期的な資産価値の維持向上には不可欠です。
条件2:時代に合わせた戦略的「リノベーション」
高く貸せる築古物件は、例外なく時代に合わせた適切なリノベーションが施されています。ここで重要なのは、単なる「原状回復」に留まらないという点です。入居者の潜在的なニーズを的確に捉え、競合物件にはない「付加価値の創造」を目指す必要があります。特に、キッチンやバスルームなどの水回り設備は、入居者が最も重視するポイントの一つであり、リフォームの中でも特に費用対効果の高い投資対象と言えます。
投資対象 | 具体的なリノベーション内容 | 期待される効果 | 費用の目安 |
---|---|---|---|
水回り | システムキッチンへの交換、ユニットバスの刷新、温水洗浄便座、独立洗面台の設置 | 入居者満足度の飛躍的向上、特に女性入居者の獲得に繋がりやすい | 50万円~200万円 |
内装 | 無垢材フローリングへの変更、デザイン性の高いアクセントクロスの採用、間接照明の導入 | 物件の差別化、デザイン性の向上による内覧時の印象アップ | 30万円~100万円 |
設備 | 無料Wi-Fiの導入、宅配ボックスの設置、モニター付きインターホンへの交換 | 利便性の向上、セキュリティ強化による安心感の提供 | 10万円~50万円 |
条件3:信頼を生む「物件管理」体制
どんなに優れた立地で、素晴らしいリノベーションを施したとしても、日々の物件管理が疎かでは入居者の満足は決して得られません。共用部の清掃は行き届いているか、ゴミ出しのルールは遵守されているか、設備の不具合に迅速に対応してくれるか。こうした一見地味な管理業務の積み重ねこそが、物件への信頼と愛着を育み、結果として長期入居へと繋がるのです。
オーナー様ご自身で管理する「自主管理」と、専門の管理会社に委託する「管理委託」、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の状況に合った最適な管理体制を構築することが、安定経営の礎となります。
比較項目 | 自主管理 | 管理委託 |
---|---|---|
コスト | 管理委託費が不要なため、キャッシュフロー上有利 | 家賃収入の5%前後の管理委託費が発生 |
手間 | 入居者募集、クレーム対応、清掃、トラブル対応など全て自身で行う必要 | 専門会社が煩雑な業務を代行 |
専門性 | 法改正への対応や専門的なトラブル解決には相応の知識と経験が必要 | 蓄積された専門的なノウハウとネットワークを活用できる |
おすすめ | 物件が近隣にあり、賃貸経営に時間を十分に割けるオーナー様 | 遠隔地のオーナー様、複数の物件を所有するオーナー様、本業が多忙な方 |
リノベーション戦略
理論だけでなく、実際の成功事例から学ぶことは非常に重要です。
成功のポイント | 解説 |
---|---|
明確なターゲット設定 | 「誰に貸したいか」を具体的にイメージし、そのペルソナに響く物件作りを徹底する。 |
選択と集中 | 全てを新しくするのではなく、ターゲットのニーズを最優先に考え、投資の優先順位を決定する。 |
費用対効果の検証 | 投下資本が家賃アップによって何年で回収できるか、具体的なシミュレーションを行う。 |
専門家の活用 | 設計や施工は、築古物件の再生実績が豊富なリフォーム会社やデザイナーに相談する。 |
まとめ:築古物件を"高収益資産"に変えるために
本記事で解説してまいりましたように、築古物件を高く貸すためには、「立地」「リノベーション」「管理」という3つの要素を、三位一体で最適化していく経営視点が不可欠です。物件が本来持つポテンシャルを最大限に引き出し、時代の入居者ニーズに合わせてその価値を磨き続けること。これこそが、これからの賃貸経営における成功の鍵であると、私たちは確信しております。
古いからと諦めるのではなく、戦略的に価値を創造することで、皆様の物件は市場で選ばれる"高収益資産"へと変貌を遂げるでしょう。
INA&Associates株式会社では、これまで数多くの築古物件の再生を手掛けてまいりました。物件のポテンシャル診断から、最適なリノベーションプランのご提案、そして信頼できる管理体制の構築まで、ワンストップでサポートいたします。ご所有の物件に関するお悩みや、不動産投資に関するご相談がございましたら、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。お客様一人ひとりの状況に合わせた、最適なソリューションをご提案いたします。
よくある質問(Q&A)
Q1:リノベーション費用はどのくらい見ておけば良いですか?
A1:規模や内容によって大きく変動しますが、ワンルームで50万円~300万円、ファミリータイプで200万円~800万円程度が一般的な目安となります。しかし、重要なのは予算ありきで考えるのではなく、家賃アップや入居率改善によって、その投資が現実的に回収可能かどうかを事前に詳細にシミュレーションすることです。
Q2:築何年までなら投資対象になりますか?
A2:法定耐用年数(木造22年、鉄骨造34年、RC造47年)は、あくまで税法上の減価償却の基準であり、建物の物理的な寿命を示すものではありません。建物のコンディションは、これまでの管理状況によって大きく異なります。適切な修繕・メンテナンスが継続的に行われていれば、法定耐用年数を大きく超えた物件であっても、十分に優良な収益物件となり得ます。重要なのは築年数という数字そのものではなく、建物の構造躯体の状態や給排水管の劣化状況などを、専門家が正しく診断することです。
Q3:空室が埋まらない場合、まず何から手をつけるべきですか?
A3:まずは「なぜ空室なのか」という原因を客観的に分析することが全てのスタート地点です。家賃は周辺相場から乖離していないか、物件の魅力がインターネットの広告媒体上で入居希望者に十分に伝わっているか、内覧時の室内の印象はどうかなど、多角的に原因を探ります。その上で、家賃の調整、広告写真の撮り直し、リフォームの実施など、最も費用対効果の高い対策から講じていくことが重要です。
Q4:良いリフォーム会社や管理会社の選び方を教えてください。
A4:実績が豊富であることはもちろんですが、それ以上に、こちらの要望を丁寧にヒアリングし、専門家としての知見に基づいた積極的な提案をしてくれる会社を選ぶことが重要です。複数の会社から相見積もりを取り、担当者の対応や提案内容、見積もりの透明性を比較検討することをお勧めします。また、私たちのような不動産コンサルティング会社にご相談いただければ、厳しい基準をクリアした信頼できるパートナー企業をご紹介することも可能です。
Q5:売却(出口戦略)も考えておくべきですか?
A5:はい、賃貸経営は「出口戦略」まで含めて計画することが極めて重要です。将来的に売却する際の想定価格や市場のタイミングを考慮しながら、リノベーションへの投資額を決定する必要があります。不動産市況やご自身のライフプランの変化に柔軟に対応できるよう、常に最適なタイミングで売却できる準備をしておくことが、不動産投資を成功に導く賢明なアプローチです。

稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター