大宮駅は埼玉県内で最多の1日利用者数を誇り、JR東日本、東武鉄道、埼玉新都市交通の3社が運営する12路線が乗り入れる首都圏有数のターミナル駅です。新幹線・在来線合わせて、東北・山形・秋田・北海道の東北系統と上越・北陸の上越系統の計6新幹線路線に加え、多数の在来線が接続し、埼玉県の交通の要衝となっています。この交通利便性の高さから、SUUMOが実施した「住みたい街ランキング2025 首都圏版」では横浜に次ぐ第2位を獲得し、注目を集めています。
大宮駅グランドセントラルステーション化構想(GCS構想)
この恵まれた立地条件と高い人気を背景に、さいたま市は「大宮駅グランドセントラルステーション化構想(大宮GCS構想)」を2018年に策定しました。この構想は、駅前広場を中心とした交通基盤整備、駅周辺街区のまちづくり、乗換改善等を含めた駅機能の更なる高度化を三位一体で推進するものです。目標は、東日本の玄関口としての拠点性を高め、交通の結節点としての機能を強化することにあります。実際、大宮駅周辺では現在複数の再開発プロジェクトが進行中または完了しており、都市基盤整備と民間開発が連携した街づくりが進んでいます。
主要再開発プロジェクト一覧
エリア | プロジェクト名/街区 | 主な用途構成 | 規模(階数・延床面積) | 着工・竣工予定 | 特筆事項 |
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東口 | 大門町3丁目中地区 再開発 | オフィス・商業・金融機関・駐車場 | 地下1/地上21階(最高約100m)延床 約4万㎡ | 2025年度着工 2028年度竣工予定 |
ハイグレードオフィス、低層に銀行・商業、歩行者広場・防災機能 |
東口 | 大宮門街(おおみやかどまち) | 公共ホール・商業 | 地下1/地上17階 | 2020着工 2022竣工済 |
市民会館〈レイボックホール〉を核とする文化複合施設 |
西口 | 第3-A・D地区 再開発 | 住宅(タワー約230戸)・オフィス・商業・駐車場 | 住宅棟 地上27階・地下2階 業務棟 地上21階・地下2階 延床 約8.5万㎡ |
2025年度着工予定(見直し中) 2027年度竣工予定(遅れあり) |
屋内通路「まちなかガレリア」・広場「まちなかプレイス」整備 |
西口 | 第3-B地区(大宮スカイ&スクエア) | 住宅・オフィス・商業・公共 | 住宅棟 28階/業務棟 13階 | 2021着工 2024年5月竣工済 |
分譲タワー完売、隣接道路拡幅により交通環境改善 |
西口 | 桜木駐車場用地活用事業(桜木PPJ) | 商業・オフィス・フィットネス・結婚式場・駐車場 | 5棟構成(延床 3万㎡超) | 2025年4月15日着工 2027年春竣工予定 |
コンセプト「Omiya Well-being Station」・鉄道車両展示「電車ひろば」 |
大宮駅東口では、駅近接地の「大門町3丁目中地区」において大規模再開発事業が進行中です。約0.6ヘクタールのこの地区は、老朽建築物や低未利用地が多く、都市計画道路の整備停滞や狭隘な道路事情により回遊性が低下していました。そこで、土地の高度利用による大規模複合ビル建設が計画され、2023年12月の都市計画決定を経て具体化しています。
地下1階・地上21階建て(最高約100m)の高層棟には、オフィス、銀行、商業施設、駐車場が計画されています。今後は2025年度の工事着手、2028年度の工事完了を目指すスケジュールが示されています。低層部には銀行店舗や商業フロア、緑豊かなオープンスペースが設けられ、上層部は環境性能に優れたオフィスとする計画です。「ウォーカブルなまちづくり」や防災機能の強化にも配慮された先導的プロジェクトとなっています。
東口ではすでに「大宮門街(おおみやかどまち)」と称する再開発ビルが2022年に完成し、市民ホール等の公共施設と商業施設が稼働中です。大門町3丁目計画はその隣接地における都市機能強化の取り組みとなります。
西口エリアの再開発計画
大宮駅西口周辺でも大規模開発が並行して進められています。駅西側の「大宮西口第3地区」は複数のブロック(A~E)に区分され、このうち第3-A・D地区で市街地再開発事業が計画されています。老朽木造建物の密集やオープンスペース不足、狭い道路と複雑な交差点などの課題に対応するため、約9,500㎡の敷地に商業・業務・住宅・駐車場からなる大規模複合再開発が予定されています。
住宅は約230戸のタワーマンション(地上27階建て)、業務棟は21階建てのオフィスビルとなり、商業フロア約8,000㎡や駐車場約400台分も含めた延べ床面積約85,000㎡規模の計画です。敷地内には歩行者が通り抜け可能な「まちなかガレリア」(屋内通路)やイベントスペース「まちなかプレイス」も整備される予定です。この再開発は当初2025年度の着工、2027年度の完成を目指していましたが、現在はスケジュールの見直しが行われています。
一方、西口第3-B地区の再開発事業はすでに完了し、地上28階建ての住宅棟「大宮スカイ&スクエア ザ・タワー」と地上13階建ての業務・公益棟「大宮サクラスクエア」が建設され、2024年5月に竣工しました。7月には商業ゾーン(サクラスクエア・モール)が開業しています。この再開発に合わせ、駅西口北側では都市計画道路「桜木1号線・2号線」の新設や周辺道路の拡幅整備が行われ、2024年7月には同再開発ビル周囲の道路が暫定開通しました。従来の狭い道路は大きく拡張され、新たな五差路交差点が整備されるなど交通環境も改善されています。
さらに西口から徒歩10分ほど離れた桜木町三丁目の旧市営駐車場用地では、JR東日本と大和ハウスグループによる「桜木駐車場用地活用事業(桜木PPJ)」が2025年4月15日に着工しました。敷地面積約1.8万㎡に商業棟、オフィス棟、駐車場棟、フィットネス棟、MICE対応の結婚式場棟という5棟構成の複合施設を建設するもので、2027年春の竣工を目指しています。開発コンセプト「Omiya Well-being Station」のもと、新たなビジネス・文化・ライフスタイル拠点の創出を目指します。"鉄道のまち大宮"の特色を活かした「電車ひろば」の整備や、新幹線を活用した物産輸送サービスによる各地の食文化を繋ぐイベントなども計画されています。
交通インフラ整備と都市機能の強化
各再開発と連動して、駅周辺の交通インフラ整備も進められています。西口第3-B地区では新設道路の開通により駅北側の道路ネットワークが強化され、第3-A・D地区では「まちなかガレリア」や歩道状空地の整備によって歩行者の回遊性向上が図られる予定です。東口においても駅前広場と周辺道路の再編が検討されており、歩行者と車両の動線分離やバス・タクシー乗降場の機能向上が課題となっています。
大宮GCS構想では、鉄道事業者と連携して駅構内に新たな東西自由通路(延長約260m×幅員15m)を整備する計画や、老朽化した東武野田線(東武アーバンパークライン)大宮駅の改良(1面2線から2面3線に増強して橋上化)なども含まれています。これにより将来的には東西口の回遊性向上と各交通モードの乗り換え円滑化が期待されます。
地域経済への影響と不動産価値の展望
一連の再開発ラッシュは、大宮エリアの地域経済に多面的な好影響をもたらすと見込まれます。大型オフィス供給により企業ニーズを地元に呼び込み、雇用創出や関連ビジネス誘致の効果が期待されます。新たな商業施設や交流拠点の開業は来街者を増やし消費を喚起し、「鉄道の街」としての観光資源にも新たな魅力が加わることになります。
不動産市場においては、再開発による大宮駅周辺の不動産価値の底上げが見込まれます。大宮区の地価水準は市平均を大きく上回る水準で推移し、駅近辺の再開発タワーマンションも高い人気を集めています。良質な住宅ストックの拡大と交通利便性のさらなる向上により、「住みたい街」としての評価がますます高まることが予想されます。
まとめ
大宮駅周辺の再開発事業は、鉄道結節点としての強みを最大限に活かした都市再生プロジェクトと言えます。駅を中心とした高度な都市機能集積により、ビジネスと居住の両面で魅力ある街づくりが進んでいます。都市開発と公共インフラ整備が両輪で進む大宮駅周辺は今後も発展が続くと見られ、2028年頃までに複数の再開発が完了すれば、「東日本の玄関口」にふさわしい新しい姿が現れることでしょう。