住宅設備の中でも特に重要な役割を果たす給湯器は、私たちの日常生活に欠かせない設備です。毎日のお風呂や洗い物、洗面など、快適な生活を支える給湯器ですが、「いつまで使えるのか」「交換時期はいつなのか」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
不動産業界で長年にわたり多くの物件を扱ってきた経験から申し上げますと、給湯器の寿命 を正しく理解することは、住宅の資産価値維持や安全性確保の観点から極めて重要です。適切な時期に交換を行うことで、突然の故障による生活への支障を避けるだけでなく、エネルギー効率の向上や安全性の確保にもつながります。
本記事では、給湯器の 耐用年数 や 交換時期 の見極め方、さらには交換費用やメンテナンス方法まで、不動産の専門家として培った知識を基に、分かりやすく解説いたします。給湯器の寿命に関する正確な情報を把握し、適切な判断を行うための参考としてお役立てください。
給湯器の寿命・耐用年数の基本知識
設計上の標準使用期間とは
給湯器の寿命を考える際に最も重要な指標となるのが、設計上の標準使用期間 です。これは、メーカーが安全性を考慮して設定した使用期間の目安であり、主要メーカーであるリンナイ、ノーリツなどは一様に 10年 を標準使用期間として設定しています。
この10年という期間は、標準的な使用条件のもとで安全上支障なく使用できる期間として算出されたものです。具体的には、一般的な家庭での使用頻度、設置環境、メンテナンス状況などを総合的に勘案して決定されています。
重要なのは、この期間を過ぎると直ちに使用できなくなるわけではありませんが、経年劣化による部品の摩耗や電装基盤の故障リスクが高まることです。実際に、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の調査によると、2012年から2016年の5年間で、10年以上使用した給湯器による事故が435件発生しており、安全性の観点から適切な時期での点検や交換が推奨されています。
法定耐用年数との違い
給湯器の寿命を語る上で混同されがちなのが、法定耐用年数 との違いです。国税庁が定める給湯器の法定耐用年数は 6年 となっており、これは税務上の減価償却を計算するための基準です。
この6年という期間は、あくまで税法上の規定であり、実際の使用可能年数とは大きく異なります。法定耐用年数は、事業用資産として給湯器を計上する際の減価償却期間を定めたものであり、家庭での実際の使用においては、この期間よりもはるかに長期間の使用が可能です。
不動産投資や賃貸経営を行う際には、この法定耐用年数を理解しておくことが重要ですが、実際の交換計画を立てる際には、メーカーが推奨する10年という期間を基準とすることが適切です。
給湯器の種類別寿命一覧
給湯器の種類によって、耐用年数 には若干の違いがあります。以下の表に、主要な給湯器の種類別寿命をまとめました。
給湯器の種類 | 耐用年数 | 特徴・備考 |
---|---|---|
ガス給湯器(一般的なモデル) | 約10年 | 最も一般的なタイプ、メンテナンス次第で12-15年使用可能 |
電気温水器 | 約10~15年 | 燃焼部分がないため比較的長寿命 |
石油給湯器 | 約8~10年 | 適切なメンテナンスにより15年程度まで延長可能 |
ハイブリッド給湯機(エコキュート等) | 約10年 | 省エネ性能が高いが、電子部品が多く複雑な構造 |
この表からも分かるように、電気温水器は燃焼部分がないため、他の給湯器と比較して長寿命である傾向があります。一方、石油給湯器は燃焼部分の構造上、やや短めの寿命となっていますが、定期的なメンテナンスを行うことで寿命を延ばすことが可能です。
重要なのは、これらの数値はあくまで目安であり、実際の寿命は使用環境や使用頻度、メンテナンスの状況によって大きく左右されることです。特に、気温の変化が激しい地域や日差しの強い場所に設置された給湯器は、機器内部や配管へのダメージが蓄積しやすく、平均よりも早く寿命を迎える可能性があります。
給湯器の寿命を左右する要因
使用環境による影響
給湯器の 寿命 に最も大きな影響を与える要因の一つが、設置環境です。不動産の現場で数多くの給湯器を見てきた経験から申し上げますと、同じ製品であっても設置場所の条件によって寿命に大きな差が生じることがあります。
屋外設置の場合 、直射日光、雨風、温度変化などの自然環境に直接さらされるため、機器の外装や内部部品への負荷が大きくなります。特に、夏場の高温や冬場の低温は、金属部品の膨張・収縮を繰り返し、接続部分の緩みや亀裂の原因となります。また、海岸地域では塩害による腐食が進行しやすく、通常よりも早期の交換が必要になるケースも少なくありません。
屋内設置の場合 でも、換気が不十分な場所や湿度の高い環境では、内部部品の劣化が促進される可能性があります。特に、浴室近くに設置された給湯器は、湿気の影響を受けやすく、電子部品の故障リスクが高まります。
設置場所を選ぶ際には、直射日光を避け、適切な換気が確保できる場所を選択することが、給湯器の長寿命化につながります。既存の設置場所を変更することは困難な場合が多いですが、日除けの設置や周辺の清掃を定期的に行うことで、環境による影響を最小限に抑えることができます。
使用頻度と家族構成
給湯器の 耐用年数 は、使用頻度によっても大きく左右されます。一般的に、家族構成が多いほど給湯器の稼働時間が長くなり、部品の摩耗が早く進行します。
単身世帯 の場合、1日の給湯使用量は比較的少なく、給湯器への負荷も軽微です。このような使用条件では、メーカー推奨の10年を超えて12-15年程度使用できるケースも珍しくありません。
4人家族以上の世帯 では、朝夕の使用時間帯に集中的に給湯器が稼働するため、熱交換器や燃焼部品への負荷が大きくなります。特に、追い焚き機能を頻繁に使用する家庭では、循環ポンプや熱交換器の劣化が早く進行する傾向があります。
また、使用パターン も重要な要因です。短時間で大量のお湯を使用する場合と、少量ずつ長時間使用する場合では、給湯器への負荷の掛かり方が異なります。一般的に、急激な温度変化を伴う使用パターンは、機器への負担が大きく、寿命を短縮させる要因となります。
メンテナンスの重要性
適切なメンテナンスは、給湯器の寿命を大幅に延ばす最も効果的な方法です。定期的な点検と清掃を行うことで、小さな不具合を早期に発見し、大きな故障を未然に防ぐことができます。
日常的なメンテナンス としては、給湯器周辺の清掃、排気口の確認、異音や異臭の有無をチェックすることが重要です。特に、排気口に落ち葉やゴミが詰まると、不完全燃焼の原因となり、安全性に関わる重大な問題を引き起こす可能性があります。
専門業者による定期点検 は、家庭用製品では製造後10年、業務用製品では製造後3年を目安に実施することが推奨されています。点検では、燃焼状態の確認、熱交換器の清掃、安全装置の動作確認などが行われ、潜在的な問題を早期に発見することができます。
点検費用は一般的に1万円から3万円程度ですが、この投資により給湯器の寿命を数年延ばすことができれば、交換費用(15-20万円)と比較して非常に経済的です。また、定期点検により省エネ性能を維持することで、光熱費の削減効果も期待できます。
メンテナンスを怠った場合、本来10年使用できる給湯器が7-8年で故障するケースも多く見られます。逆に、適切なメンテナンスを継続することで、15年以上安全に使用している事例も数多く存在します。給湯器への投資を長期的な視点で考えるならば、定期的なメンテナンスは必要不可欠な要素と言えるでしょう。
給湯器の交換時期を見極めるサイン
故障の前兆症状一覧
給湯器の 交換時期 を適切に判断するためには、故障の前兆となる症状を正しく理解することが重要です。以下の表に、主要な症状とその原因、緊急度をまとめました。
症状 | 原因 | 緊急度 | 対処法 |
---|---|---|---|
異音がする(ボンという音、キーンという音) | 内部部品の摩耗、燃焼不良 | 中 | 専門業者による点検 |
お湯の温度が不安定 | 熱交換器の劣化、制御基板の故障 | 中 | 修理または交換検討 |
水漏れ(配管接続部、本体下部) | 配管の破損、パッキンの劣化 | 高 | 即座に使用停止、業者連絡 |
ガスの臭いがする | ガス漏れ、不完全燃焼 | 最高 | 即座に使用停止、ガス会社連絡 |
点火しにくい、点火しない | 点火装置の故障、ガス供給の問題 | 中 | 専門業者による診断 |
リモコンにエラー表示 | 各種センサーの異常、制御系統の故障 | 中~高 | エラーコードを確認し業者連絡 |
給湯量の減少 | 熱交換器の詰まり、ポンプの劣化 | 低~中 | 清掃またはメンテナンス |
光熱費の急激な増加 | 熱効率の低下、燃焼効率の悪化 | 低 | 使用状況確認、効率測定 |
これらの症状の中でも、特に注意が必要なのは ガスの臭い です。この症状が現れた場合は、直ちに給湯器の使用を停止し、ガス会社に連絡することが必要です。ガス漏れや不完全燃焼は、一酸化炭素中毒や爆発事故につながる可能性があり、生命に関わる重大な危険を伴います。
危険な症状と対処法
給湯器の故障の中でも、特に 安全性 に関わる症状については、迅速かつ適切な対応が求められます。
ガス漏れの兆候 として、ガス臭以外にも以下のような症状があります。給湯器周辺で植物が枯れる、虫が死んでいる、土が盛り上がっているなどの現象が見られた場合は、地中でのガス漏れの可能性があります。このような場合は、火気を一切使用せず、換気を行いながらガス会社に連絡してください。
不完全燃焼の症状 には、黄色い炎(正常は青い炎)、すすの発生、異臭などがあります。不完全燃焼は一酸化炭素を発生させ、知らないうちに中毒症状を引き起こす可能性があります。頭痛、めまい、吐き気などの症状が給湯器使用時に現れる場合は、不完全燃焼を疑い、直ちに使用を中止してください。
水漏れ についても、単なる結露と判断せず、継続的に水が滴る場合は配管の破損を疑う必要があります。水漏れは電気系統への影響や、建物への損害を引き起こす可能性があるため、早急な対応が必要です。
修理か交換かの判断基準
給湯器に不具合が生じた際に最も悩ましいのが、修理で対応するか、交換するかの判断です。この判断には、経済性と安全性の両面から検討することが重要です。
経済性の観点 から考えると、使用開始から8年以上経過している給湯器に故障が発生した場合は、修理よりも交換を検討することが推奨されます。これは、8年を超えた給湯器では、一つの部品を修理しても、他の部品が連鎖的に故障する可能性が高く、結果的に修理費用が嵩むためです。
修理費用の目安 は、軽微な部品交換で1-3万円、熱交換器の交換で5-10万円程度となります。新品の給湯器交換費用が15-20万円程度であることを考慮すると、修理費用が10万円を超える場合は交換を検討する方が経済的です。
安全性の観点 では、10年を超えた給湯器については、修理よりも交換を強く推奨します。古い給湯器では、修理によって一時的に機能が回復しても、安全装置の劣化や制御系統の不安定化により、予期しない事故のリスクが高まります。
また、部品の供給状況 も重要な判断要素です。製造終了から10年以上経過した機種では、交換部品の入手が困難になる場合があります。部品が入手できない場合は、修理自体が不可能となるため、必然的に交換が必要となります。
省エネ性能の向上 も交換を検討する理由の一つです。10年前の給湯器と最新機種では、エネルギー効率に20-30%の差があることも珍しくありません。年間のガス代が5万円の家庭であれば、新しい給湯器に交換することで年間1-1.5万円の光熱費削減が期待でき、10年間で10-15万円の節約効果が見込めます。この節約効果を考慮すると、交換費用の一部を相殺することができ、経済的なメリットも大きくなります。
給湯器交換にかかる費用
機能別交換費用相場
給湯器の 交換費用 は、機能や性能によって大きく異なります。2024年から2025年にかけての最新の市場調査に基づく費用相場を以下の表にまとめました。
機能・タイプ | 費用相場(工事費込み) | 特徴・備考 |
---|---|---|
給湯専用(16号) | 5.2万円~8万円 | 基本機能のみ、単身・2人世帯向け |
給湯専用(20号) | 6万円~9万円 | 一般的な家庭向け |
給湯専用(24号) | 7万円~10万円 | 大家族向け、同時使用に対応 |
給湯+追い焚き(20号) | 9.7万円~15万円 | 最も一般的な選択 |
給湯+追い焚き(24号) | 11万円~17万円 | 大家族向け追い焚き対応 |
エコジョーズ(20号) | 11.8万円~20万円 | 省エネタイプ、ランニングコスト削減 |
エコジョーズ(24号) | 13万円~22万円 | 高効率・大容量タイプ |
追い焚き+暖房機能付き | 15万円~26万円 | 床暖房対応、高機能タイプ |
ハイブリッド給湯機 | 20万円~35万円 | 最新省エネ技術搭載 |
この表からも分かるように、号数 (給湯能力)が大きくなるほど価格が上昇し、機能 が多くなるほど費用も高くなります。一般的な4人家族であれば、20号の給湯+追い焚き機能付きが最も適しており、費用相場は10-15万円程度となります。
エコジョーズ は従来型と比較して初期費用は高くなりますが、ガス使用量を約15-20%削減できるため、年間のランニングコストを考慮すると長期的には経済的です。年間ガス代が6万円の家庭であれば、エコジョーズにより年間1万円程度の節約が期待でき、10年間で約10万円の光熱費削減効果があります。
工事費用の内訳
給湯器交換の総費用は、本体価格 と 工事費用 に分けられます。工事費用の内訳を理解することで、適正な価格での交換が可能になります。
基本工事費用 (3-6万円)には以下の作業が含まれます。既存給湯器の取り外し、新しい給湯器の設置、ガス配管の接続、給水・給湯配管の接続、電気配線の接続、試運転・動作確認、既存機器の処分費用などです。
追加工事が必要なケース では、さらに費用が発生します。配管の延長や変更(1-3万円)、電気工事(コンセント増設等、1-2万円)、排気筒の交換や延長(1-2万円)、設置台の交換や補強(1-3万円)、壁の補修や塗装(1-2万円)などが該当します。
特に、古い給湯器からの交換 では、配管の規格変更や設置場所の補強が必要になることが多く、追加工事費用として5-10万円程度を見込んでおく必要があります。
リモコンの交換 も重要な要素です。既存のリモコンが新しい給湯器に対応していない場合は、リモコンの交換(2-5万円)が必要になります。最新のリモコンでは、省エネ運転の設定や故障診断機能など、利便性が大幅に向上しているため、同時交換を検討することをお勧めします。
費用を抑えるポイント
給湯器交換費用を抑えるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
業者選びのコツ として、複数の業者から見積もりを取得することが基本です。同じ機種でも業者によって10-20%の価格差が生じることは珍しくありません。ただし、極端に安い見積もりには注意が必要で、工事品質や保証内容を十分に確認することが重要です。
適切な時期での交換 も費用削減につながります。給湯器が完全に故障してからの緊急交換では、業者の選択肢が限られ、割高な費用を支払うことになりがちです。故障の前兆が現れた段階で計画的に交換することで、複数の業者を比較検討する時間を確保できます。
補助金制度の活用 も見逃せません。自治体によっては、省エネ型給湯器の設置に対して補助金を支給している場合があります。エコジョーズやエコキュートなどの高効率給湯器では、5-10万円の補助金が受けられることもあり、実質的な負担を大幅に軽減できます。
機種選択の最適化 により、過剰な機能を避けることも重要です。家族構成や使用パターンに適した号数と機能を選択することで、無駄な費用を削減できます。例えば、2人世帯であれば16号で十分であり、24号を選択する必要はありません。
既存設備の活用 も費用削減のポイントです。配管や電気設備が新しい給湯器に対応している場合は、これらを流用することで工事費用を抑えることができます。事前の現地調査で既存設備の状況を確認し、活用可能な部分を明確にしておくことが重要です。
また、メーカーの型落ち品 を選択することで、本体価格を20-30%削減できる場合があります。最新機種と型落ち品の機能差は軽微であることが多く、コストパフォーマンスを重視するなら有効な選択肢です。
給湯器を長持ちさせるメンテナンス方法
日常的なお手入れ
給湯器の 寿命 を最大限に延ばすためには、日常的なお手入れが欠かせません。適切なメンテナンスにより、10年の標準使用期間を12-15年まで延長することも可能です。
外装の清掃 は最も基本的なメンテナンスです。給湯器の外装に付着したほこりや汚れは、放熱効率を低下させ、内部温度の上昇を招きます。月に1回程度、乾いた布で外装を清拭し、通気口周辺のほこりを除去してください。水を直接かけることは避け、湿った布を使用する場合は電源を切った状態で行うことが重要です。
排気口の点検 も重要な日常点検項目です。排気口に落ち葉、鳥の巣、ゴミなどが詰まると、排気不良による不完全燃焼の原因となります。特に秋季は落ち葉の詰まりが多発するため、週に1回程度の点検を心がけてください。排気口から白い煙(水蒸気)が出ることは正常ですが、黒い煙や異臭がする場合は直ちに使用を停止し、専門業者に連絡してください。
配管周辺の確認 では、水漏れの有無をチェックします。給湯器本体下部や配管接続部に水滴が付着していないか、定期的に確認してください。結露による水滴は正常ですが、継続的に水が滴る場合は配管の損傷を疑う必要があります。
リモコンの動作確認 も日常点検に含めるべき項目です。温度設定の変更、運転・停止の操作、エラー表示の有無などを定期的に確認し、異常があれば早期に対処することで大きな故障を防ぐことができます。
定期点検の重要性
専門業者による定期点検 は、給湯器の安全性と性能を維持するために不可欠です。家庭用製品では製造後10年、業務用製品では製造後3年を目安に実施することが推奨されています。
点検内容 には以下の項目が含まれます。燃焼状態の確認では、炎の色や形状、燃焼音などをチェックし、正常な燃焼が行われているかを確認します。熱交換器の清掃では、内部に蓄積したススや汚れを除去し、熱効率の維持を図ります。安全装置の動作確認では、過熱防止装置、立ち消え安全装置、排気閉塞検知装置などの動作を確認し、安全性を確保します。
配管系統の点検 では、ガス配管、給水配管、給湯配管の接続状況や漏れの有無を確認します。電気系統の点検では、制御基板、センサー類、配線の状況を確認し、電気的な不具合を早期発見します。
点検費用 は一般的に1万円から3万円程度ですが、この投資により以下のメリットが得られます。故障の早期発見により、大規模な修理を回避できます。定期的な清掃により、省エネ性能を維持できます。安全装置の確認により、事故リスクを最小化できます。適切なメンテナンスにより、給湯器の寿命を延長できます。
点検記録の保管 も重要です。点検結果を記録として保管することで、給湯器の状態変化を把握し、適切な交換時期を判断する材料となります。
季節ごとの注意点
給湯器のメンテナンスでは、季節ごとの特有の注意点があります。
冬季の凍結対策 は最も重要な季節対応です。気温が氷点下になる地域では、配管内の水が凍結し、配管破裂の原因となります。凍結予防として、給湯器に内蔵された凍結予防ヒーターが正常に動作するよう、電源を切らないことが重要です。長期間使用しない場合は、配管内の水を抜く「水抜き」作業を行ってください。
凍結が発生した場合 の対処法も理解しておく必要があります。蛇口をひねってもお湯が出ない場合は凍結の可能性があります。この場合、自然解凍を待つか、配管にタオルを巻いてぬるま湯をかけて解凍してください。熱湯をかけることは配管破裂の原因となるため避けてください。
夏季の高温対策 では、直射日光による機器への影響を最小化することが重要です。可能であれば日除けを設置し、給湯器周辺の温度上昇を抑制してください。また、夏季は使用頻度が減少するため、月に1回程度は動作確認を行い、長期間の不使用による不具合を防いでください。
梅雨季の湿気対策 では、高湿度による電気系統への影響に注意が必要です。給湯器周辺の換気を良好に保ち、湿気の滞留を防いでください。屋内設置の場合は、除湿器の使用も効果的です。
台風・強風時の対策 では、飛来物による損傷を防ぐため、給湯器周辺の物品を固定または撤去してください。また、停電時の対応として、復電後は給湯器の動作確認を行い、異常がないことを確認してから使用を再開してください。
秋季の落ち葉対策 では、排気口や吸気口への落ち葉の侵入を防ぐため、こまめな清掃が必要です。特に、給湯器周辺に樹木がある場合は、週に1回程度の点検を行ってください。
これらの季節対応を適切に行うことで、給湯器への環境負荷を最小化し、長期間にわたって安全で効率的な運転を維持することができます。メンテナンスは一見面倒に感じられるかもしれませんが、給湯器の寿命延長と安全性確保のために欠かせない投資と考えるべきでしょう。
まとめ
給湯器の 寿命 と 耐用年数 について、不動産業界での豊富な経験を基に詳しく解説してまいりました。重要なポイントを改めて整理いたします。
給湯器の標準的な寿命は10年 です。これは主要メーカーが設定する設計上の標準使用期間であり、安全性を考慮した推奨交換時期となります。ただし、適切なメンテナンスと良好な使用環境により、12-15年程度まで寿命を延ばすことも可能です。
種類別の耐用年数 では、電気温水器が10-15年と最も長く、石油給湯器が8-10年とやや短めですが、ガス給湯器は約10年が標準的です。法定耐用年数の6年は税務上の規定であり、実際の使用年数とは大きく異なることも重要な知識です。
交換時期の判断 においては、8年ルールを基準とし、使用開始から8年以上経過した給湯器に故障が発生した場合は交換を検討することが経済的です。特に、ガスの臭いや異音、温度の不安定などの症状が現れた場合は、安全性の観点から早急な対応が必要です。
交換費用 は機能により5万円から35万円程度の幅がありますが、一般的な家庭では15-20万円程度が相場となります。エコジョーズなどの省エネ型給湯器は初期費用が高くなりますが、長期的なランニングコスト削減効果を考慮すると経済的な選択となります。
メンテナンスの重要性 は強調してもしすぎることはありません。日常的な清掃と定期的な専門点検により、給湯器の寿命を大幅に延ばすことができ、安全性も確保できます。年間1-3万円程度のメンテナンス費用は、交換費用と比較して非常に経済的な投資です。
住宅設備としての給湯器は、私たちの快適な生活を支える重要な設備です。適切な知識を持って計画的にメンテナンスと交換を行うことで、安全で経済的な給湯環境を長期間維持することができます。
給湯器の状態に不安を感じられた場合は、専門業者による点検を受けることをお勧めいたします。早期の対応により、より安全で快適な住環境を実現していただければと思います。
よくある質問
Q1. 給湯器の寿命は何年ですか?
A1. 給湯器の寿命は種類により異なりますが、一般的には 約10年 が目安となります。ガス給湯器は約10年、電気温水器は10-15年、石油給湯器は8-10年程度です。ただし、使用環境や頻度、メンテナンスの状況により、この期間は前後します。適切なメンテナンスを行うことで、12-15年程度まで寿命を延ばすことも可能です。
Q2. 交換時期の判断基準は何ですか?
A2. 8年ルール を基準とすることをお勧めします。使用開始から8年以上経過した給湯器に故障が発生した場合は、修理よりも交換を検討してください。また、異音、温度の不安定、水漏れ、ガスの臭いなどの症状が現れた場合は、使用年数に関わらず専門業者による診断を受けることが重要です。特にガスの臭いがする場合は、安全性の観点から即座に使用を停止してください。
Q3. 修理と交換、どちらが良いですか?
A3. 判断基準は 使用年数と修理費用 です。8年未満で修理費用が5万円以下であれば修理を、8年以上経過している場合や修理費用が10万円を超える場合は交換をお勧めします。また、10年を超えた給湯器については、安全性の観点から交換を強く推奨いたします。最新の給湯器は省エネ性能が向上しており、光熱費削減効果も期待できます。
Q4. 交換費用の相場はいくらですか?
A4. 給湯器の 交換費用相場 は、機能により大きく異なります。給湯専用タイプは5-8万円、給湯+追い焚き機能付きは10-15万円、エコジョーズなどの省エネタイプは12-20万円程度が目安です。工事費用込みの総額で考え、一般的な家庭では15-20万円程度を予算として考えておくことをお勧めします。複数の業者から見積もりを取得し、適正価格での交換を心がけてください。
Q5. メンテナンスの頻度はどの程度ですか?
A5. 日常的なメンテナンス は月1回程度、専門業者による点検 は家庭用で10年、業務用で3年を目安に実施してください。日常メンテナンスでは、外装の清掃、排気口の確認、異音や異臭のチェックを行います。専門点検では、燃焼状態の確認、熱交換器の清掃、安全装置の動作確認などが行われます。点検費用は1-3万円程度ですが、給湯器の寿命延長と安全性確保のために重要な投資です。

稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター