不動産を購入する際や建物を建築する計画を立てる際に、必ず確認しなければならない重要な指標が「容積率」です。この容積率は、土地に対してどれだけの大きさの建物を建てられるかを決める基準となり、不動産の価値や活用方法に大きく影響します。
容積率とは、簡単に言えば「敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合」を示すものです。この数値によって、その土地にどれだけの規模の建物が建てられるかが決まります。例えば、100㎡の土地で容積率が200%であれば、延べ床面積200㎡までの建物を建てることができます。
本記事では、不動産取引や建築計画において欠かせない「容積率」について、その意味から計算方法、用途地域との関係、不動産価値への影響まで、専門家の視点から分かりやすく解説します。これから不動産購入や建築を検討されている方はもちろん、不動産投資をお考えの方にも役立つ情報をお届けします。
容積率の基本知識
容積率の定義と意味
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す数値です。建築基準法で定められたこの指標は、都市計画において土地の合理的な利用と適正な建築密度を確保するために重要な役割を果たしています。
容積率は次の計算式で求められます。
容積率(%) = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100
ここで言う延べ床面積とは、建物の各階の床面積を合計したものです。例えば、1階が80㎡、2階が80㎡の2階建て住宅であれば、延べ床面積は160㎡となります。敷地面積が100㎡であれば、容積率は160㎡÷100㎡×100=160%と計算されます。
容積率は、その土地にどれだけの大きさの建物を建てられるかを示す重要な指標であり、不動産取引や建築計画において必ず確認すべき項目です。
容積率と建ぺい率の違い
容積率と混同されやすい概念に「建ぺい率」があります。両者は似ているようで異なる概念ですので、明確に区別することが重要です。
建ぺい率は「敷地面積に対する建築面積(建物の水平投影面積)の割合」を示します。つまり、土地に対して建物が平面的にどれだけの面積を占めるかを表す指標です。一方、容積率は建物の総床面積(立体的な大きさ)に関する指標です。
例えば、同じ敷地面積100㎡の土地に、1階部分が50㎡の平屋建てと、1階・2階ともに50㎡の2階建ての建物を建てる場合を考えてみましょう。
- 平屋建て:建ぺい率50%、容積率50%
- 2階建て:建ぺい率50%、容積率100%
このように、建ぺい率は同じでも容積率は異なる場合があります。建ぺい率は主に日照や通風、防災性の確保を目的としているのに対し、容積率は人口密度や都市環境の調整を目的としています。
容積率が定められている目的
容積率が法律で定められている主な目的は、都市の過密化を防ぎ、良好な住環境を維持することにあります。容積率の制限がなければ、限られた土地に過度に大きな建物が建てられ、日照や通風の問題、交通渋滞、インフラへの過剰な負荷など、様々な都市問題が発生する恐れがあります。
また、容積率は地域ごとの特性に合わせて設定されています。商業地域では高い容積率が設定され、高層ビルの建設が可能になっている一方、住居地域では比較的低い容積率が設定され、静かで落ち着いた住環境が保たれるようになっています。
このように、容積率は単なる建築制限ではなく、計画的な都市開発と良好な生活環境の維持を両立させるための重要な都市計画ツールなのです。
項目 | 容積率 | 建ぺい率 |
---|---|---|
定義 | 敷地面積に対する延べ床面積の比率 | 敷地面積に対する建築面積(建物の水平投影面積)の比率 |
計算式 | 容積率(%) = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100 | 建ぺい率(%) = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100 |
規制対象 | 建物の総床面積(立体的な大きさ) | 建物の水平投影面積(平面的な大きさ) |
目的 | 人口密度や都市環境の調整 | 日照・通風・防災性の確保 |
緩和条件 | 総合設計制度、特定街区制度など | 角地、防火地域内の耐火建築物など |
容積率の計算方法
基本的な計算式
容積率の計算は、基本的には非常にシンプルです。先ほど紹介した計算式「容積率(%) = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100」に従って計算します。しかし、実際の計算では様々な要素を考慮する必要があります。
まず、敷地面積については、一般的には登記簿上の面積を使用しますが、前面道路に一部が含まれる場合など、実際の計算で使用する敷地面積が異なることがあります。特に、建築基準法第42条第2項に該当する道路(いわゆる「2項道路」)に接している場合は、道路中心線から2mの部分は敷地面積から除外して計算する必要があります。
延べ床面積の算出方法
延べ床面積は、建物の各階の床面積の合計です。ただし、すべての部分が延べ床面積に算入されるわけではありません。建築基準法施行令第2条第1項第3号に基づき、以下のような部分は延べ床面積に算入されない場合があります。
- バルコニーの一部(床面積の1/2以内で、かつ2m以下の部分)
- ポーチ(屋根があっても壁がない場合)
- パイプスペース(一定の条件を満たす場合)
- 吹き抜け(上部階の床がない部分)
- 共同住宅の共用廊下・階段(一定条件下で緩和あり)
また、地下室については自治体や条件によって扱いが異なります。一般的には容積率の計算に算入されないことが多いですが、自治体によっては一部算入される場合もあります。
計算に含まれない部分
容積率の計算において、建物のすべての部分が延べ床面積に含まれるわけではありません。これは、生活の質を向上させる要素を持つ部分については、一定の範囲で容積率の計算から除外することで、より良い住環境の実現を促進するためです。
例えば、バルコニーは住環境の質を高める重要な要素ですが、その全てを容積率に算入すると、バルコニーの設置が抑制される可能性があります。そのため、一定の条件を満たすバルコニーは容積率の計算から除外されています。
また、エレベーターシャフトや機械室など、建物の機能を支える設備スペースについても、一定の条件下で容積率の計算から除外される場合があります。これにより、必要な設備の設置が容積率によって制限されることを防いでいます。
このように、容積率の計算には様々な例外規定があり、これらを正確に理解することが、土地の最大限の活用につながります。
敷地面積 | 延べ床面積 | 容積率計算 | 結果 |
---|---|---|---|
100㎡ | 200㎡ | 200㎡ ÷ 100㎡ × 100 | 200% |
150㎡ | 300㎡ | 300㎡ ÷ 150㎡ × 100 | 200% |
200㎡ | 300㎡ | 300㎡ ÷ 200㎡ × 100 | 150% |
300㎡ | 600㎡ | 600㎡ ÷ 300㎡ × 100 | 200% |
用途地域と容積率の関係
用途地域ごとの容積率制限
用途地域とは、都市計画法に基づいて定められる地域区分で、住居、商業、工業などの用途に応じて13種類に分類されています。それぞれの用途地域には、建築できる建物の種類だけでなく、容積率の上限も定められています。
例えば、静かな住環境を保つ第一種低層住居専用地域では、容積率の上限は50%~200%程度に抑えられています。一方、商業活動が中心となる商業地域では、容積率の上限が1300%に達する場合もあります。
用途地域ごとの容積率の上限は、その地域の特性や都市計画の方針に基づいて設定されています。住居系地域では低く、商業系地域では高く設定されるのが一般的です。
前面道路幅による容積率の制限
用途地域で定められた容積率とは別に、前面道路の幅員によっても容積率が制限されることがあります。これは、建物の規模と道路の幅員のバランスを取り、交通渋滞や災害時の避難経路確保などの問題を防ぐためです。
前面道路幅による容積率の制限は、以下の計算式で求められます。
前面道路幅員による容積率制限 = 前面道路幅員(m) × 係数 × 100(%)
ここでの係数は、住居系地域では0.4、その他の地域では0.6が適用されます。例えば、幅員6mの道路に接する商業地域の場合、6m × 0.6 × 100 = 360%となります。もし都市計画で定められた容積率が400%であっても、前面道路幅による制限が360%であれば、実際に適用される容積率は360%となります。
このように、実際に適用される容積率は、用途地域で定められた容積率と前面道路幅による制限のうち、より小さい方の数値となります。そのため、土地の活用を検討する際には、用途地域だけでなく前面道路の幅員も重要な確認ポイントとなります。
用途地域 | 建ぺい率 (%) | 容積率 (%) |
---|---|---|
第1種低層住居専用地域 | 30、40、50、60 | 50、60、80、100、150、200 |
第2種低層住居専用地域 | 30、40、50、60 | 50、60、80、100、150、200 |
田園住居地域 | 30、40、50、60 | 50、60、80、100、150、200 |
第1種中高層住居専用地域 | 30、40、50、60 | 100、150、200、300、400、500 |
第2種中高層住居専用地域 | 30、40、50、60 | 100、150、200、300、400、500 |
第1種住居地域 | 50、60、80 | 100、150、200、300、400、500 |
第2種住居地域 | 50、60、80 | 100、150、200、300、400、500 |
準住居地域 | 50、60、80 | 100、150、200、300、400、500 |
近隣商業地域 | 60、80 | 200、300、400、500 |
商業地域 | 80 | 200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300 |
準工業地域 | 50、60、80 | 100、150、200、300、400、500 |
工業地域 | 50、60 | 100、150、200、300、400 |
工業専用地域 | 30、40、50、60 | 100、150、200、300、400 |
容積率の緩和条件
総合設計制度
容積率には様々な緩和制度が設けられており、その代表的なものが「総合設計制度」です。これは、一定規模以上の敷地で、公開空地(一般に開放された空地)を設けることを条件に、容積率の割増を受けられる制度です。
総合設計制度を利用すると、通常の容積率に対して最大1.5倍程度まで緩和される場合があります。例えば、通常の容積率が400%の地域で、総合設計制度を適用すると600%程度まで緩和される可能性があります。
この制度は、都市環境の改善に貢献する建築計画を促進するためのものであり、公開空地の設置によって歩行者空間の確保や都市の緑化に寄与することが求められます。
特定街区制度
「特定街区制度」は、良好な市街地環境の形成を目的とした制度で、特定の街区において容積率などの建築規制を緩和するものです。この制度が適用されると、通常の容積率を超えた建築が可能になります。
特定街区に指定されるためには、広場や公園などの公共空間の整備、優れたデザインの建築物の建設など、都市環境の向上に貢献する計画であることが求められます。特定街区内での容積率は個別に設定され、周辺環境との調和を図りながら、より高度な土地利用が可能になります。
その他の緩和措置
容積率の緩和には、総合設計制度や特定街区制度以外にも、様々な制度があります。
「高度利用地区」は、土地の合理的かつ健全な高度利用を図るための地区で、容積率の最高限度と最低限度が定められます。この地区内では、通常の用途地域による容積率を超えた建築が可能になる場合があります。
「再開発等促進区」は、市街地再開発事業等の促進を目的とした制度で、この区域内では容積率などの建築規制が緩和されることがあります。
「地区計画」は、地区の特性に応じたまちづくりのための計画で、この計画の中で容積率の緩和が定められることがあります。
これらの緩和制度は、単に建物を大きくするためのものではなく、都市環境の改善や地域の特性に応じたまちづくりを促進するためのものです。そのため、緩和を受けるためには、公共空間の整備や良好な景観形成など、都市環境への貢献が求められます。
緩和制度 | 概要 | 緩和率の例 | 適用条件 |
---|---|---|---|
総合設計制度 | 公開空地を設けることで容積率を緩和 | 最大1.5倍程度 | 一定規模以上の敷地で公開空地を確保 |
特定街区制度 | 良好な市街地環境の形成を目的とした制度 | 個別に設定 | 特定街区に指定された区域内 |
高度利用地区 | 土地の合理的かつ健全な高度利用を図る | 個別に設定 | 高度利用地区に指定された区域内 |
再開発等促進区 | 市街地再開発事業等の促進を目的とした制度 | 個別に設定 | 再開発等促進区に指定された区域内 |
地区計画 | 地区の特性に応じたまちづくりのための計画 | 個別に設定 | 地区計画が定められた区域内 |
容積率と不動産価値の関係
容積率が不動産価値に与える影響
容積率は不動産の価値に大きな影響を与える要素の一つです。一般的に、容積率が高い土地ほど、より大きな建物を建てることができるため、土地の利用価値が高くなり、価格も高くなる傾向があります。
特に商業地域や駅前などの利便性の高いエリアでは、容積率の違いが土地価格に直接反映されることが多いです。例えば、同じ立地条件で容積率が400%の土地と800%の土地があれば、後者の方が2倍の床面積を確保できるため、土地の価値も高くなります。
ただし、容積率が高ければ必ず価値が高いというわけではありません。住宅地などでは、むしろ適度な容積率で良好な住環境が保たれている地域の方が、居住用不動産としての価値が高い場合もあります。
投資判断における容積率の見方
不動産投資において、容積率は重要な判断材料の一つです。投資用不動産を検討する際には、現在の建物が容積率をどの程度消化しているかを確認することが重要です。
例えば、容積率400%の土地に、容積率200%しか消化していない建物が建っている場合、将来的に建て替えによって床面積を増やせる可能性があります。これは、その不動産の潜在的な価値を示すものと言えるでしょう。
また、容積率の緩和が見込まれる地域や、再開発が計画されている地域では、将来的に不動産価値が上昇する可能性があります。そのため、都市計画の動向も含めて容積率を評価することが、長期的な投資判断には重要です。
容積率の活用事例
容積率を最大限に活用した不動産開発の事例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 複合用途開発: 商業施設とオフィス、住宅を組み合わせた複合ビルの開発。高い容積率を活かして、様々な用途の床面積を確保することで、収益性を高めています。
- 高層マンション: 都心部の限られた土地で、高い容積率を活かして多くの住戸を供給する高層マンション開発。効率的な土地利用によって、一戸あたりのコストを抑えることができます。
- 容積率移転: 一部の地域では、歴史的建造物の保存などを目的として、使用していない容積率を別の敷地に移転できる制度があります。これにより、保存すべき建物は残しながら、別の場所で高度利用が可能になります。
これらの事例からわかるように、容積率は単なる規制ではなく、創造的な不動産開発のための重要な要素と言えるでしょう。容積率を理解し、適切に活用することで、不動産の価値を最大化することができます。
容積率の調べ方
役所での調査方法
容積率を正確に調べる最も確実な方法は、その土地が所在する市区町村の都市計画課や建築指導課などで直接確認することです。役所では、都市計画図や用途地域図を閲覧することができ、対象となる土地の用途地域や容積率を確認できます。
役所で調査する際には、対象となる土地の住所や地番がわかる資料(登記簿謄本や公図など)を持参すると、スムーズに調査できます。また、前面道路の幅員による容積率の制限や、その他の建築規制についても同時に確認することをお勧めします。
なお、一部の自治体では、窓口での調査だけでなく、建築確認申請前の事前相談も受け付けています。複雑な条件がある場合や、容積率の緩和を検討している場合には、こうした事前相談を利用するとよいでしょう。
インターネットでの調査方法
近年は、インターネットを通じて容積率を調べることも可能になっています。多くの自治体では、公式ウェブサイト上で都市計画情報を公開しており、地図上で用途地域や容積率を確認できるシステムを提供しています。
また、国土交通省が運営する「国土数値情報ダウンロードサービス」では、全国の用途地域データを無料で取得できます。ただし、これらのオンライン情報は最新の状態に更新されていない場合もあるため、重要な判断を行う際には、役所での確認も併せて行うことをお勧めします。
民間の不動産情報サイトでも、物件情報の一部として容積率が掲載されていることがありますが、これらの情報は参考程度にとどめ、正確な情報は公的機関で確認するようにしましょう。
不動産会社への相談
不動産の購入や活用を検討している場合、不動産会社に相談することも容積率を調べる有効な方法です。特に、その地域に精通した不動産会社であれば、容積率だけでなく、実際の土地活用の可能性や制限についても専門的なアドバイスを受けることができます。
不動産会社に相談する際には、単に容積率の数値だけでなく、前面道路幅による制限や、容積率の緩和可能性、周辺の開発動向なども含めて総合的に相談するとよいでしょう。また、複数の不動産会社に相談することで、より多角的な視点からアドバイスを得ることができます。
ただし、不動産会社から得た情報も、最終的には公的機関で確認することをお勧めします。特に重要な取引や大規模な開発を検討している場合は、建築士や不動産鑑定士などの専門家に相談することも検討しましょう。
まとめ
容積率は、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す重要な指標です。この記事では、容積率の基本的な意味から計算方法、用途地域との関係、不動産価値への影響まで、幅広く解説しました。
容積率の主なポイントをまとめると以下のようになります。
- 容積率の基本: 容積率は「延べ床面積÷敷地面積×100」で計算され、建物の立体的な大きさを規制します。建ぺい率が平面的な規制であるのに対し、容積率は立体的な規制です。
- 用途地域との関係: 容積率は用途地域ごとに上限が定められており、住居系地域では低く、商業系地域では高く設定されています。
- 前面道路幅の影響: 前面道路の幅員によっても容積率が制限されることがあり、実際に適用される容積率は、用途地域による上限と前面道路幅による制限のうち、小さい方となります。
- 緩和条件: 総合設計制度や特定街区制度など、一定の条件を満たすことで容積率が緩和される制度があります。
- 不動産価値への影響: 容積率は不動産の価値に大きく影響し、特に商業地域などでは容積率の高さが土地価格に直接反映されることがあります。
- 調査方法: 容積率は役所での直接確認が最も確実ですが、インターネットや不動産会社を通じても調べることができます。
不動産取引や建築計画を進める際には、容積率を正確に把握し、その土地の持つ可能性を最大限に活かすことが重要です。特に、前面道路幅による制限や容積率の緩和可能性など、単純な数値だけでなく、様々な要素を総合的に検討することをお勧めします。
INA&Associatesでは、不動産の専門家として、容積率を含む建築規制の調査や、それを踏まえた最適な土地活用のご提案を行っております。不動産の購入や活用でお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1: 容積率と建ぺい率はどちらが重要ですか?
容積率と建ぺい率はどちらも重要であり、一方だけを重視するものではありません。建ぺい率は建物の水平方向の広がりを制限し、日照や通風、防災性の確保に関わる指標です。一方、容積率は建物の総床面積を制限し、人口密度や都市環境の調整に関わる指標です。
建物の用途や計画内容によって、どちらがより制約となるかは異なります。例えば、広い敷地に低層の建物を建てる場合は建ぺい率が、狭い敷地に高層の建物を建てる場合は容積率が、より重要な制約となることが多いです。
不動産取引や建築計画においては、両方の指標を確認し、計画に与える影響を総合的に判断することが重要です。
Q2: 容積率の制限を超えて建築することはできますか?
原則として、容積率の制限を超えて建築することはできません。ただし、以下のような例外的なケースがあります。
- 既存不適格建築物: 建築当時は適法だったが、その後の法改正により現在の基準に適合しなくなった建物は、一定の条件下で増築などが認められる場合があります。
- 緩和制度の適用: 総合設計制度や特定街区制度など、一定の条件を満たすことで容積率が緩和される制度があります。
- 特例措置: 耐震改修や省エネ改修など、公益性の高い目的のための増築については、容積率の特例が認められる場合があります。
これらの例外を除いては、容積率の制限を超える建築は認められず、違反した場合は是正命令や罰則の対象となる可能性があります。容積率の制限を超える建築を検討する場合は、必ず事前に行政や建築士に相談することをお勧めします。
Q3: 既存不適格物件とは何ですか?
既存不適格物件とは、建築当時は建築基準法などの法令に適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更により、現在の基準には適合しなくなった建築物のことです。例えば、建築後に容積率の上限が引き下げられた場合、その建物は既存不適格物件となる可能性があります。
既存不適格物件は、現状のままであれば違法ではなく、使用し続けることができます。ただし、増築や改築、大規模な修繕などを行う場合には、原則として現在の基準に適合させる必要があります。
ただし、一定の条件を満たす場合には、既存不適格部分をそのままにして増築などが認められる特例もあります。例えば、増築部分が既存不適格部分と分離されている場合や、増築後も全体として不適格の程度が拡大しない場合などです。
既存不適格物件を所有している場合や購入を検討している場合は、将来の増改築の可能性も含めて、専門家に相談することをお勧めします。
Q4: 容積率の計算で地下室は含まれますか?
一般的に、地下室は容積率の計算に含まれないことが多いですが、自治体や条件によって扱いが異なります。建築基準法施行令第2条第1項第3号によれば、地階の住宅や老人ホーム等の用途に供する部分の床面積は、当該床面積の1/3を容積率の計算に算入するとされています。
ただし、多くの自治体では、地下室の容積率算入を緩和する条例を設けており、完全に算入しない場合や、一定の条件を満たせば算入しない場合があります。例えば、東京都の一部地域では、地下室の一部または全部を容積率の計算から除外する「地下室緩和制度」が適用されています。
地下室の容積率算入については、地域によって扱いが大きく異なるため、具体的な計画を立てる際には、その土地が所在する自治体の建築指導課などで確認することをお勧めします。
Q5: 容積率が低い土地と高い土地、どちらが良いのでしょうか?
容積率が低い土地と高い土地のどちらが良いかは、土地の用途や目的によって異なります。一概にどちらが優れているとは言えません。
容積率が高い土地のメリット:
- より大きな建物を建てられるため、土地の利用効率が高い
- 賃貸や分譲など、収益性を重視する場合に有利
- 商業施設やオフィスビルなど、床面積を多く必要とする用途に適している
容積率が低い土地のメリット:
- 周辺環境が良好で、静かな住環境が期待できる
- 日照や通風などの住環境要素が確保されやすい
- 低層の戸建住宅などを建てる場合、容積率の制限が問題になりにくい
土地選びの際には、容積率だけでなく、立地条件、周辺環境、交通アクセス、将来の開発計画など、様々な要素を総合的に判断することが重要です。また、同じ容積率でも、前面道路の幅員や角地かどうかなどの条件によって、実際に建てられる建物の大きさは変わってきます。
不動産購入や土地活用を検討する際には、専門家のアドバイスを受けながら、自分の目的に最も適した土地を選ぶことをお勧めします。
INA&Associatesでは、容積率を含む不動産に関するご相談を承っております。専門的な知識と豊富な経験を活かし、お客様の不動産活用をサポートいたします。詳しくは当社ウェブサイトをご覧いただくか、お電話またはメールにてお問い合わせください。

稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター