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    東京の再開発計画:「100年に1度」の大規模都市更新

    東京では現在、「100年に1度」とも称される大規模な都市再開発が進行中です。首都圏の各所でインフラ整備や商業施設の新設、交通アクセスの向上を伴うプロジェクトが次々と計画・進行され、街の景観や機能が大きく変貌しつつあります。

    再開発が進む理由

    東京で多くの再開発が進められている主な理由は以下の通りです:

    1. 国際競争力の強化: アジア諸国の都市が発展する中、東京も「人や企業が集まる街」「物流の拠点となる街」を目指して都市機能を高める必要があります。

    2. 老朽化したインフラの更新: バブル期に建設された古いビルが多く、建て替え時期を迎えています。

    3. 都市防災機能の向上: 災害に強い街づくりを目指し、耐震性の高い建物や広域避難場所の整備を進めています。

    4. 交通インフラの改善: 鉄道駅の再編や新駅設置、歩行者ネットワークの拡充などを通じて利便性を高めています。

    主要再開発エリアの現状と計画

    1. 八重洲・東京駅周辺エリア(千代田区・中央区)

    主要プロジェクト:

    • TOKYO TORCH計画(常盤橋街区再開発): 高さ390mの「Torch Tower」を含む再開発。2028年竣工予定。
    • 東京ミッドタウン八重洲: 2023年に開業済み。
    • TOFROM YAESU(八重洲一丁目東B地区): 51階249mの超高層ビル建設中。2025年度完成予定。
    • 八重洲二丁目中地区再開発: 大規模オフィス・商業ビルと地下バスターミナル整備。2028年度完成予定。
    • 八重洲一丁目北地区再開発: 2032年度完成予定。

    特徴:

    • 東京駅直結の交通利便性を活かした国際ビジネス拠点
    • 巨大バスターミナルによる交通アクセス向上
    • 文化・ホール機能を備えたオフィス街の充実

    2. 日本橋エリア(中央区)

    主要プロジェクト:

    • 日本橋再生計画(第3ステージ): 首都高速道路の地下化と連動した広域開発。
    • 日本橋一丁目中地区: 52階建て超高層ビル建設中。2025~26年頃完成予定。
    • 日本橋室町一丁目地区: 33階建て複合ビル。2028年完成予定。
    • 日本橋一丁目東地区: 超高層ビル2棟。2038年頃まで段階的に開業予定。

    特徴:

    • 「残しながら、蘇らせながら、創っていく」というコンセプト
    • 首都高の地下化による日本橋川沿いの景観回復
    • 歴史的景観と先端都市機能の共存

    3. 虎ノ門・麻布台エリア(港区)

    主要プロジェクト:

    • 麻布台ヒルズ: 高さ330mの「森JPタワー」など3棟のタワー。2023年に開業済み。
    • 虎ノ門ヒルズエリア拡張: 複数のタワーが既に完成。
    • 虎ノ門一丁目東地区第一種市街地再開発事業: 2024年着工。

    特徴:

    • 「緑に包まれ、人と人がつながる広場のような街」をコンセプト
    • 約24,000㎡の緑地整備による持続可能な都市モデル
    • インターナショナルスクールなど国際色豊かな機能

    4. 渋谷駅周辺エリア(渋谷区)

    主要プロジェクト:

    • 渋谷スクランブルスクエア: 東棟は2019年開業済み。中央棟・西棟は2027年度完成予定。
    • Shibuya Sakura Stage(渋谷桜丘口地区): 39階建て複合ビル。2023年竣工、2024年夏全面開業予定。
    • 道玄坂一丁目駅前地区再開発: 2027年竣工予定。

    特徴:

    • 「若者の街」から「成熟した国際都市・クリエイティブシティ」へ
    • 鉄道ターミナルの再編成による乗換動線の改善
    • IT企業の集積による産業構造の変化

    5. 新宿エリア(新宿区)

    主要プロジェクト:

    • 西新宿地区再整備計画: 2040年頃までの長期計画。超高層ビル群の整備。
    • 新宿駅施設再編(グランドターミナル構想): 2030年代半ばまでに新駅ビルや駅前広場を再整備。
    • 新宿駅西口地区再開発: 48階建て高層ビル建設中。2030年頃完成予定。

    特徴:

    • 世界でも有数の巨大ターミナルの近代化
    • 老朽化した高層ビル群の更新
    • 東西の回遊性を高める一体的なまちづくり

    6. 品川・高輪ゲートウェイエリア(港区)

    主要プロジェクト:

    • 品川駅西口地区再開発: 北街区(2025~2030年)、南街区(2025~2036年)。
    • 高輪ゲートウェイシティ: 2024年以降順次開業予定。

    特徴:

    • リニア中央新幹線計画の起点
    • 新駅(高輪ゲートウェイ駅)を中心とした一体開発
    • 国際ビジネス・交流拠点としての機能強化

    7. 晴海・東京湾岸エリア(中央区・江東区)

    主要プロジェクト:

    • HARUMI FLAG(晴海五丁目西地区再開発): 5,632戸の大規模住宅開発。2024年街開き予定。
    • 豊洲セイルパーク(TOYOSU SAIL PARK): 18階97m、15階87mの複合施設。
    • 勝どき東地区第一種市街地再開発事業: B棟は29階約106m。2026年完了予定。

    特徴:

    • 都内最大級の新興住宅地開発
    • BRT(バス高速輸送システム)などの新交通システム導入
    • ウォーターフロントの特性を活かした都市空間の創出

    再開発エリアの将来性と資産価値

    再開発エリアは不動産投資の観点からも注目されています:

    • 資産価値の向上: 周辺道路の整備や新しい商業施設の建設による利便性向上で、資産価値が上がる可能性が高いです。

    • 土地のブランド力向上: 再開発によってエリアのイメージが向上し、長期的な資産価値の維持が期待できます。

    • テナント需要の安定: 最新設備を備えたオフィスビルは国内外企業から高い需要があり、賃料の上昇や空室率の低下が見込まれます。

    ただし、再開発計画が予定通りに進まないリスクや、期待されるほど利便性が向上しない可能性も考慮する必要があります。

    まとめ

    東京の再開発計画は、2020年代から2030年代半ばにかけて段階的に整備・完成していく予定です。「100年に1度」と言われるこの大規模な都市更新により、東京の都市機能は大きく変貌し、国際競争力の向上や生活環境の改善が期待されています。

    これらの再開発は単なる建物の更新だけでなく、都市の防災性向上、文化・商業機能の充実、交通ネットワークの拡充など、多角的な視点から東京の未来を形作る重要なプロジェクトとなっています。

    各エリアには特色ある開発コンセプトがあり、歴史的価値の保全と最先端機能の導入、国際性と地域性の融合など、それぞれに異なる魅力を持った街づくりが進められています。

    東京都都市整備局ホームページでは、再開発が決定した地区名や進捗状況を一覧でチェックできますので、より詳細な情報をお求めの場合はご参照ください。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。