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    不動産投資 vs REIT(不動産投資信託)の違いとは?メリット・デメリットを徹底比較

    不動産投資と不動産投資信託(REIT)は、いずれも不動産を対象とした投資手法ですが、その仕組みや特徴には大きな違いがあります。本記事では不動産投資 vs REITの違いを解説し、それぞれの基本、メリット・デメリットの比較、投資家タイプ別の適性、実践的なアドバイス、さらに最新の市場動向(利回りのトレンド)まで詳しく説明します。「不動産投資 違い」や「REIT 投資 比較」「不動産投資 vs REIT」といったキーワードが気になる方に向けて、専門的な解説をお届けします。

    不動産投資とは何か【基本解説】

    不動産投資とは、マンションやアパート、一戸建て住宅、オフィスビルなどの不動産物件を購入し、賃貸運用や売却によって収益を得る投資手法です。例えば物件を他人に貸して毎月の家賃収入を得たり、将来的に物件を売却して値上がり益(キャピタルゲイン)を狙ったりします。不動産という実物資産を所有するため、購入後は物件の管理や維持が必要になります。具体的には、入居者募集や家賃管理、修繕・リフォーム対応、税金の支払いなど運用上の手間がかかりますが、その分毎月安定したインカムゲイン(家賃収入)を得られる点が魅力です。

    不動産投資では、ローンを活用することでレバレッジ(てこ)を利かせ、大きな規模の投資を行えることも特徴です。自己資金だけでなく金融機関からの融資を受けて物件を購入すれば、少ない自己資金でより高額な不動産を取得できます。賃料収入でローン返済を賄いながら資産形成できるため、長期的な資産運用や老後の年金代わりの収入源として注目されています。実際、老後の安定収入確保や将来的な相続対策として不動産投資を20代・30代から始める人も増えています。

    また、不動産投資の収益源は大きく分けて二つあります。一つはインカムゲインと呼ばれる賃貸収入、もう一つは物件売却時のキャピタルゲインです。不動産市況が好調な時期には物件価格が上昇し、購入時より高く売却できる可能性もあります。ただし長期保有すれば物件の経年劣化による価値下落も生じるため、不動産価格の変動リスクは念頭に置く必要があります。

    不動産投資信託(REIT)とは何か【基本解説】

    REIT(Real Estate Investment Trust、リート)とは、不特定多数の投資家から資金を集め、その資金でオフィスビルや商業施設、住宅など複数の不動産をまとめて取得・運用し、そこから得られる賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。日本語では「不動産投資信託」と呼ばれ、その名の通り信託の仕組みを利用して不動産を証券化しています。投資家はREITの投資口(証券)を購入することで、間接的にさまざまな不動産のオーナーになることができます。

    REITには上場REIT(J-REIT)と非上場REIT(私募リート)があります。上場REIT(J-REIT)は東京証券取引所に上場しており、株式と同様に市場で自由に売買できます。少額から投資可能で、一般の個人投資家でも数万円程度から不動産ポートフォリオに参加できることが特徴です。投資法人という器により複数物件へ分散投資されているため、一つの不動産に直接投資する場合と比べて高い分散効果と専門家による運用のメリットがあります。さらに、REITの多くは利益の90%以上を投資家に分配すると法人税がかからないという制度(税制上の優遇)を活用しており、実際に収益の大半を配当に回すことで高い配当利回りを実現しています。このためREITは高配当商品としても知られています。

    一方、非上場REIT(私募リート)は証券取引所に上場せず特定の機関投資家向けに私募形式で運用されるものです。私募リートは主に機関投資家を対象としており、最低投資金額も数億円規模と大きく、一般の個人が気軽に参加できるものではありません。また市場でリアルタイムに売買できないため流動性は低いですが、その代わり基準価格は保有不動産の鑑定評価額に基づくなど、価格変動が穏やかな傾向があります。本記事では主に一般個人投資家が参加可能な上場REIT(J-REIT)を念頭に、不動産投資との違いを比較していきます。

    不動産投資とREITの主な違い【比較表】

    不動産投資とREITには、所有形態から流動性初期費用運用の手間収益性リスクに至るまでさまざまな違いがあります。以下に主な違いを一覧表で整理します。

    比較項目 現物不動産投資 (直接不動産を購入) REIT投資 (不動産投資信託への出資)
    所有形態 投資家自身が不動産の所有権を持ち、登記上も所有者となる。物件は自分の資産として残る。 投資法人(ファンド)が不動産を所有し、投資家は持分を保有する形。個々の物件の登記名義人にはならない。
    流動性(換金性) 低い(物件の売却には時間と手続きが必要)。不動産売買は流動性が乏しく、すぐに現金化することは難しい。 高い(証券市場でいつでも売買可能)。株式同様に市場価格が常時変動し、必要に応じ短期間で換金できる。
    最低投資額 大きい(数百万円〜数千万円単位の資金が必要)。ローン活用可だが自己資金や与信が求められる。例:都内ワンルームでも約2,000万円以上が目安。 小さい(数万円程度から購入可能)。証券会社を通じて1口単位で投資でき、少額から不動産投資を始められる。
    運用の手間 高い(物件管理が必要)。賃貸運営では入居者対応や物件維持管理、税務手続き等を自ら行うか管理会社へ委託する手間がかかる。 非常に低い(運用はプロに任せる)。投資家は証券を保有するだけで、物件の管理・運営はすべて運用会社が代行する。
    収益源・利回り 家賃収入+売却益。不動産市況や物件選定次第で利回りは変動。都心の住宅系物件では表面利回り5%未満も多く、ローン活用での手残りはさらに減少する場合も。 分配金+売却益。J-REITの分配利回りは概ね3〜5%前後が多い。物件タイプや景気によって変動するが、大型分散ポートフォリオゆえ平均的な水準に収束しやすい。
    主なリスク 空室リスクや家賃滞納リスク、災害リスク。物件が一つの場合、テナントが退去すると収入がゼロになる恐れがある。また金利上昇時はローン返済負担が増す。物件価格下落や流動性の低さもリスク。 市場変動リスク、金利変動リスク。REIT価格は株式市場の影響で変動し元本割れの可能性がある。景気後退で賃料減少や空室増加が起これば分配金が減るリスクも。加えて投資法人の倒産・上場廃止リスクなどファンド自体の信用リスクもある。

    上記の比較から分かるように、不動産投資とREITはそれぞれ異なるメリット・デメリットを持ちます。現物不動産は「自分の資産として不動産を保有できる」「ローンでレバレッジを利かせられる」反面、資金ハードルや管理の手間、流動性の低さといった制約があります。一方REITは「少額・手間なしで複数不動産に投資できる」「流動性が高くすぐ売買できる」という利点がある一方、市場価格の変動による元本割れリスクや、運用を他人(プロ)に任せるがゆえ自分でコントロールできない部分があります。

    たとえば初期費用の面では、現物不動産は物件取得に数百万円単位の自己資金(+ローン)が必要ですが、REITなら証券会社の口座で数万円から買えるため参入障壁は低くなります。流動性の比較でも、現物不動産は売却に数ヶ月~年単位かかるのに対し、REITは株式市場で日々売買でき必要なとき現金化しやすいです。また所有形態についても、直接投資では自分が法律上のオーナーとなり資産が残るのに対し、REIT投資家は不動産そのものではなくファンドの持分を持つ形であり、登記簿に名前が載るわけではありません。こうした違いを踏まえて、自身の資金力や投資目的に合った手法を選ぶことが重要です。

    投資目的・ライフスタイル別:どちらの投資が適しているか

    不動産投資とREITそれぞれに向いている投資家のタイプについて、投資目的やライフスタイルの観点から考えてみましょう。以下に一般的な適性の例を挙げます。

    現物不動産投資に向いている投資家

    • 長期的・安定的な収入を重視する人:毎月の家賃収入という安定収入源を確保したい人に適しています。特に「老後の年金代わり」として長期の不労所得を得たい人にとって、物件からの家賃収入は心強い支えとなります。

    • 税金対策や資産保全を図りたい人:不動産所得が経費(減価償却等)で赤字になれば他の所得と損益通算でき、所得税・住民税を圧縮する効果があります。高収入層で税負担が大きい人や、将来の相続税対策を考える人に不動産投資は有効な手段となりえます。

    • レバレッジを活用して大きな資産形成を目指す人:ローンを組めるのは現物不動産投資の強みです。自己資金以上の物件を取得し資産規模を拡大したい、団体信用生命保険付きローンで生命保険代わりにもしたい(ローン契約者が死亡すれば残債ゼロで不動産が遺族に残る)という人にも向いています。

    • 手間やコストをいとわず資産管理したい人:物件管理には手間がかかりますが、裏を返せば自分で工夫や裁量を発揮できる余地があります。物件の選定からリフォーム、賃料設定まで自分の判断で運用したい人にとって、直接不動産を所有する投資はやりがいがあるでしょう。

    REIT投資に向いている投資家

    • 少額から気軽に不動産投資を始めたい人:まとまった自己資金がなくても数万円から購入できるREITは、不動産投資の入門として適しています。不動産そのものを買うのはハードルが高いが、まずは小口で不動産市場に触れてみたい人に向いています。

    • 流動性を重視し、好きなタイミングで売買したい人:株式同様に市場価格で売買できるため、資金が必要になったらすぐ換金できます。短期的な売買益を狙う人や、市場状況に応じて柔軟にポートフォリオを組み替えたい投資家にはREITの方が適しています。

    • 分散投資でリスクを抑えたい人:REITは一つの投資口で複数の物件に分散投資できるため、個別物件投資よりリスク分散効果が高いです。オフィスや住宅、商業施設、物流施設など様々な用途の不動産にまたがって投資することで、空室リスクや地域偏重リスクを軽減したい人に向いています。

    • 煩雑な管理業務を避けたい人:物件の運営管理はすべてプロに任されるので、投資家自身は運用の手間がかかりません。日常仕事が忙しいサラリーマン投資家や、不動産の専門知識がない初心者でも手間を省いて不動産収益だけ享受したい人にはリートがフィットします。

    以上は一般的な傾向ですが、最終的には投資目的や許容できるリスク、手間のかけ方によって適切な手法は異なります。例えば、「資産の長期的な安定成長」を第一に考える人は現物不動産を好み、「流動性や機動的な運用」を重視する人はREITを選好する傾向があります。一人ひとりの状況に合わせて最適な選択を検討しましょう。

    投資判断に役立つ具体的アドバイス(税制・経済情勢・インフレなど)

    実際に不動産投資またはREITへの投資判断を行う際には、以下のようなポイントにも注意すると良いでしょう。税制面の違いや経済環境、不動産市況の動向を踏まえた戦略が重要です。

    税制面のポイントと戦略

    直接不動産投資の場合、税務上のメリットを活用できる点も見逃せません。物件購入時には減価償却費などを計上できるため、紙上の不動産所得を圧縮して所得税・住民税の負担を軽減できます。特に新築やRC造マンションなど減価償却費が大きい物件では、当初数年は家賃収入より経費が上回り赤字計上による税金対策効果が期待できます。加えて、ローン返済中に契約者が死亡した場合は団体信用保険によりローン残高がゼロになるため、残された不動産は死亡保険金代わりとして機能し、相続人に債務無き資産を残せる利点もあります(相続税評価額も市場価格より低めになる傾向があります)。

    一方、REITの分配金は金融商品からの配当所得として課税されます。日本の上場REIT分配金は基本的に20.315%(所得税+住民税)の源泉徴収がなされ、確定申告すれば配当控除や損益通算の適用も可能です。ただし自分でローンを組んでいるわけではないので金利経費や減価償却といった税金対策スキームは使えません。したがって高額所得者が税優遇を狙って不動産に投資する、という動機はREITには当てはまりません(むしろ金融商品ゆえ増税リスク等は株式投資と共通です)。税制面では、不動産現物投資は経費計上や相続評価引き下げ効果など攻めの税金対策策が取れるのに対し、REITはシンプルに分配金に課税されるという違いがあります。ご自身の税負担状況も考慮して投資手法を検討しましょう。

    経済情勢・金利動向との関係

    経済環境や金利動向も、不動産投資とREITのパフォーマンスに大きな影響を与えます。一般に金利が上昇局面では、どちらの手法にも逆風となり得ますが、その影響の現れ方は異なります。現物不動産の場合、変動金利ローンを利用していれば金利上昇に伴い返済額が増え手取り収益が圧迫されます。また不動産市況も、金利上昇で購入需要が減退すれば価格下落圧力がかかる可能性があります。ただし賃料相場は比較的緩やかに変動するため、不動産価格や家賃の変動は金融市場ほど急激ではない傾向があります。

    REITの場合、金利上昇は二重の意味で価格に影響します。一つはREIT自体が融資を受けて不動産を取得しているため金利コスト増で利益が減る懸念、もう一つは投資家から見て相対的な利回り魅力が低下し売り圧力がかかることです。実際、近年の米国や日本の長期金利上昇局面ではJ-REIT指数が下落し、分配金利回りが上昇する動きが見られました。景気後退局面では、現物不動産では空室増や賃料低下が起きうる一方、REIT市場では景気敏感な投資マインド悪化で売りが先行し価格下落が顕著になるケースもあります。加えて、REIT市場は海外投資マネーの影響も受けやすく、グローバルな金融動向(例:米国金利の変化や為替動向)がJ-REIT価格に波及することも押さえておく必要があります。

    以上を踏まえ、経済情勢に応じた戦略としては、低金利下ではレバレッジを活かした現物不動産拡大を図り、高金利下では無理な借入を控えREITの高利回りを享受するといった柔軟な発想も考えられます。景気が不透明なときは両者への分散投資でバランスを取るのも一策です。

    インフレ耐性と資産防衛

    インフレーション(物価上昇)に対する耐性という観点でも、不動産投資とREITには共通点と差異があります。一般に不動産はインフレに強い資産とされます。物価が上がる局面では土地や建築コストも上昇しやすく、不動産価格自体が物価とともに上がる傾向があるためです。また賃貸契約も物価や市場に応じて更新時に家賃改定が可能なため、緩やかなインフレであれば家賃収入も増加し得ます。したがって現物不動産を保有することは、現金の価値目減りに対するヘッジ手段となり得ます。

    REITも、最終的には実物不動産を裏付け資産としている点でインフレ耐性を備えています。保有物件から得る賃料収入が増えれば分配金も増える可能性があります。ただし注意すべきは、インフレに伴う金利上昇が同時に起きると前述のようにREIT価格にはマイナスに作用しうる点です。つまり、実物不動産そのものの価値はインフレで上がっても、REITのマーケット価格は金利との綱引きで下落する場面もあり得ます。そのため、インフレ局面でのREIT投資では利上げ動向にも目を配る必要があります。総じて言えば、インフレヘッジ資産としては不動産現物がダイレクトに効きやすく、REITは間接的かつ市場要因次第の部分があると言えるでしょう。

    いずれの場合も、インフレが進む局面では借入をしている場合は債務の実質目減り効果が期待できます。固定金利で借入を行って不動産を持っていれば、インフレによって実質的な負債負担が軽減し、資産価値が相対的に増す可能性があります。この点は現物不動産投資の大きな利点です。一方で極端なインフレ・金利急騰は不動産市場やREIT市場に混乱をもたらすリスクもあるため、経済指標や中央銀行の金融政策にも注意を払いましょう。

    最新の市場動向:REIT利回りのトレンドにも注目

    最後に、最新の市場動向としてREITの利回りトレンドについて触れておきます。近年(2020年代前半)の傾向を見ると、J-REIT市場の利回りは上昇基調にあります。これは日本銀行のマイナス金利政策修正や世界的な金利上昇を背景に、REIT価格が軟調に推移したためです。実際、東証REIT指数はコロナ後の一時的な高値を付けた2021年頃から低迷し、2024年末時点ではピーク比▲30%近い下落となりました。その結果、平均分配金利回りは足元で約5%前後の高水準に達しています。これは同時期の東証株式平均配当利回り(約2〜3%)を大きく上回っており、相対的にREITの収益妙味が増している状況です。

    もっとも、利回りが上がっているということは裏を返せば市場がREITに慎重な見方をしているとも言えます。金利上昇による先行き不透明感や、オフィス需要の変化(テレワーク普及による空室率上昇懸念など)が投資家心理に影響し、売り圧力となっている側面があります。専門家の分析によれば、分配金自体は増加基調にあるにもかかわらず価格が下落して利回りが上昇しているため、中長期目線では割安な投資機会との見方もあります。今後の金利動向や経済環境次第でREIT市場が見直されれば価格が持ち直す可能性も考えられます。

    一方、現物不動産市場に目を向けると、日本の住宅系不動産は依然として利回り3〜5%程度の物件が中心で、大幅な利回り変動は起きにくい傾向です。むしろ都市部では不動産価格上昇により表面利回りが低下するケースも散見されます。不動産投資を検討する際は、こうした直接投資物件の利回りREITの利回りを比較し、どちらが自分の期待リターンやリスク許容度に見合うかを判断すると良いでしょう。

    最後に総括すると、不動産投資とREITはいずれも一長一短のある投資手法です。それぞれの違いを正しく理解し、自身の資産状況・目的に合致した方法を選ぶことが大切です。不動産という共通の裏付け資産を活用しながらも、「直接保有して運用益を得るか」「証券化された商品を通じて間接的に収益を得るか」というアプローチの違いが、リスク・リターンや手間のかかり方の差となって現れます。本記事で解説した比較ポイントや最新動向、アドバイスを参考に、ぜひ賢明な投資判断にお役立てください。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター