不動産売却をご検討中の方の多くは、「できるだけ高く」「できるだけ早く」という相反する要望をお持ちではないでしょうか。通常の不動産売却では、市場価格で売却できる可能性がある一方、売却完了までに平均3~6か月程度の期間を要することが一般的です。しかし、即時買取 という選択肢を活用することで、わずか7日~1か月程度で売却を完了させることが可能になります。
本記事では、不動産の即時買取の仕組みやメリット・デメリット、専門買取会社の選び方まで、不動産の早期売却を実現するための情報を詳しく解説いたします。資金化を急ぐ方、煩わしい売却手続きを避けたい方に、ぜひご参考いただければ幸いです。
不動産即時買取とは?仲介との違いを理解する
不動産即時買取の基本概念
不動産の即時買取とは、通常の不動産仲介を介した売却方法とは異なり、不動産会社が物件を直接買い取る方法です。一般的な仲介売却では、不動産会社は売主と買主の仲介役に徹し、買主を探す役割を担います。一方、即時買取では不動産会社自体が買主となり、物件を直接購入します。
即時買取の最大の特徴は、その名の通り、素早い取引完了にあります。仲介では買主を探す必要があるため、市場に出してから成約までに時間を要しますが、即時買取では不動産会社との直接取引となるため、査定から売買契約まで迅速に進められるのです。
即時買取と買取保証の違い
混同されがちな「即時買取」と「買取保証」ですが、両者には決定的な違いがあります。
即時買取は、依頼後すぐに不動産会社による買取が行われる方法です。一方、買取保証は、まず通常の仲介販売活動を行い、一定期間内に買主が付かなかった場合にのみ、あらかじめ定めた価格で買取される仕組みです。
比較項目 | 即時買取 | 買取保証 |
---|---|---|
手続きのタイミング | 依頼後すぐに買取 | 一定期間の仲介活動後 |
売却完了までの期間 | 7日~1か月 | 仲介活動期間+買取手続き期間 |
価格の特徴 | 市場価格の70~80%程度で固定的 | 仲介で成約する可能性あり |
仲介と買取の主な違い
不動産売却の主要な方法である「仲介」と「買取」の違いを理解することは、最適な売却方法を選ぶ上で重要です。以下の表で主な違いを比較しました。
比較項目 | 買取 | 仲介 |
---|---|---|
買主 | 不動産会社 | 一般の個人・法人 |
売却期間 | 約1か月 | 3~6か月以上 |
売却価格 | 市場価格の約70~80% | 市場価格の100% |
仲介手数料 | 不要 | 物件価格の3%+6万円+税 |
売却活動の手間 | 少ない | 内覧対応など多い |
確実性 | 高い(確定価格・日程) | 買主次第で変動 |
このように、買取 は価格面では仲介に劣るものの、売却期間の短さと手続きの簡便さが大きな魅力となっています。不動産を早期売却したい場合や、手間をかけずに確実に売却したい場合には、有力な選択肢となります。
即時買取のメリット・デメリット
メリット:早期資金化と手続き簡素化
不動産買取 を選択する最大のメリットは、何といっても売却スピードにあります。仲介での売却が3~6か月以上かかるのに対し、即時買取では最短7日~1か月程度で現金化が可能です。これは、住宅ローンの返済や相続税納付などの期限がある方にとって、非常に有利な点といえます。
また、もう一つの大きなメリットは、仲介手数料が不要なことです。3,000万円の物件では約100万円の仲介手数料が発生するため、この費用削減は大きなメリットといえるでしょう。
さらに、即時買取では売却活動の手間が大幅に削減されます。内覧対応や物件の清掃・整頓といった煩わしい作業が不要になり、忙しい方や遠方にお住まいの方にとっては大きな利点となります。
デメリット:市場価格との差
一方、最大のデメリットは、売却価格が市場価格より低くなる点です。一般的に、即時買取では市場価格の70~80%程度の価格設定となります。この差額は、買取後の不動産会社のリスクヘッジやリフォーム費用、再販までの期間の金利負担などを考慮したものです。
例えば、市場価格3,000万円の物件の場合、買取価格は2,100万円~2,400万円程度となり、約600万円~900万円ほど低くなる可能性があります。そのため、「できるだけ高く売りたい」という方には向かない選択肢といえるでしょう。
即時買取が向いている人・状況
不動産の即時買取は、以下のような方や状況に特に適しています。
早急に資金が必要な方
- 住宅ローンの返済が困難になった方
- 相続税の納付期限が迫っている方(納税期限まで4か月未満)
- 急な資金需要が発生し、早期に現金化が必要な方
- 離婚による財産分与で迅速に処理したい方
売却の手間を省きたい方
- 多忙で内覧対応の時間が取れない方
- 遠方に住んでおり、物件管理が難しい方
- 高齢で売却活動の負担を避けたい方
- 内覧者に自宅を見られたくないプライバシー重視の方
物件の特性上、買取が有利な場合
- 築古・老朽化が進んだ物件
- 再建築不可の物件
- 事故物件など心理的瑕疵がある物件
- 解体が必要な物件(古家付き土地)
- 権利関係が複雑な物件
以下の表で、ご自身の状況が即時買取に向いているかチェックしてみましょう。
チェック項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
3か月以内に資金化する必要がある | ||
内覧対応などの手間を避けたい | ||
確実な売却日程を確保したい | ||
仲介手数料を節約したい | ||
物件の状態があまり良くない | ||
市場価格より2~3割安くても良い |
上記の項目で「はい」が多い場合は、即時買取が適している可能性が高いといえます。
専門買取会社の選び方
物件タイプ別の買取業者選び
不動産買取業者は、得意とする物件タイプがそれぞれ異なります。適切な買取業者の選び方として、まずはご自身の物件タイプに強い業者を選ぶことが重要です。
以下、物件タイプ別におすすめの買取業者をご紹介します。
一戸建て住宅の買取に強い会社
- カチタス - 全国展開で一戸建て買取に特化
マンションの買取に強い会社
- 大京穴吹不動産 - 大規模マンション開発の実績
- インテリックス - 中古マンション再生・再販のパイオニア
土地の買取に強い会社
- 東急リバブル - 土地活用・再開発の実績
- 三井のリハウス - 全国ネットワークで幅広い対応
買取業者選びのポイント
不動産買取業者を選ぶ際には、以下のポイントに注意することで、より高い買取価格や安心なサービスを受けることができます。
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複数社から査定を取る
最低でも3~5社の査定を比較検討しましょう。価格差は数百万円に及ぶこともあります。 -
地域に精通した業者を選ぶ
その地域での買取実績が豊富で、地元の相場に詳しい業者は高値買取が期待できます。 -
買取実績を確認する
年間買取件数や買取事例を確認し、経験豊富な業者を選びましょう。 -
サービス内容を比較する
残置物の撤去対応、引渡し日の柔軟性など、付随サービスも重要です。 -
信頼性・審査を確認する
宅建業免許番号、会社の設立年、口コミ評判などで信頼性を確認しましょう。
不動産即時買取の流れと期間
即時買取の8ステップ
不動産の即時買取を利用する際の一般的な流れと、各段階での注意点を解説します。
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相場調査(1日~1週間)
エリアの買取相場(仲介相場の7~8割程度)を把握します。 -
必要書類の収集(1日~2週間)
身分証明書、実印・印鑑証明、住民票、権利証などを準備します。 -
査定依頼(1日~1週間)
机上査定→訪問査定を複数社に申し込み、査定額を比較します。 -
業者選定(1日)
査定額、買取実績、口コミ評判をもとに1社に絞ります。 -
条件交渉(1日~3日)
買取価格、引渡し日、不用品処分、入金日など詳細条件を決定します。 -
売買契約締結(1日)
契約書を隅々まで確認し、手付金を受け取ります。 -
決済・引渡し(1週間~2週間)
売却額受領、鍵・書類の引渡し、司法書士報酬支払いを行います。 -
確定申告(翌年2月16日~3月15日)
譲渡所得税の申告と納税を行います。
以下の表は、仲介売却と即時買取の期間の違いを比較したものです。
売却ステップ | 仲介売却 | 即時買取 |
---|---|---|
査定・業者選定 | 1~2週間 | 1~2週間 |
売却活動(広告・内覧) | 1~3か月 | 不要 |
買主決定・条件交渉 | 1~2週間 | 1~3日 |
契約締結 | 1日 | 1日 |
決済・引渡し | 1~2か月 | 1週間~2週間 |
合計期間 | 3~6か月以上 | 最短7日~1か月 |
高く買い取ってもらうためのポイント
不動産買取でより高価買取を実現するためのポイントをご紹介します。
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複数社の査定を比較する
競合させることで買取価格が上がる可能性があります。 -
物件タイプに強い業者を選ぶ
得意分野の物件なら高値買取が期待できます。 -
タイミングを見極める
不動産市況が好調な時期を狙うことも効果的です。 -
物件の良い点を伝える
日当たり、設備の良さなど、物件の魅力をアピールしましょう。 -
交渉の余地を残す
最初から最低限の希望価格を伝え、交渉の余地を残しましょう。
まとめ
不動産の即時買取は、スピード重視の売却方法として、多くの方にとって有効な選択肢となります。ここでは、本記事の要点をまとめます。
- 即時買取は不動産会社が直接買主となる売却方法で、最短7日~1か月での売却が可能
- 売却価格は市場価格の70~80%程度だが、仲介手数料が不要で手続きも簡素化
- 急ぎの資金需要がある方、売却の手間を省きたい方に特に適している
- 物件タイプ別に強みを持つ専門買取会社を選ぶことが重要
- 複数社から査定を取り、比較検討することで高価買取の可能性が高まる
これらのポイントを押さえれば、迅速かつ適正な価格での不動産売却が実現できるでしょう。不動産売却は人生の大きな決断です。ご自身の状況に合った最適な売却方法を選び、後悔のない取引をされることをお勧めします。
よくある質問
Q1: 即時買取は本当に最短7日で完了するのですか?
A1: はい、即日査定、翌日契約といった流れで、最短7日程度での売却が可能です。ただし、所有権移転登記などの手続きを含めると、通常は2週間~1か月程度かかることが一般的です。特に急ぎの場合は、その旨を買取業者に伝えるとよいでしょう。
Q2: 買取と買取保証はどう使い分けるべきですか?
A2: 資金化を急ぐ場合は即時買取、時間的余裕がありできるだけ高く売りたい場合は買取保証がおすすめです。買取保証では一定期間(通常3か月程度)は仲介で売り出し、買主が見つからなかった場合のみ買取となるため、市場価格で売れる可能性も残せます。
Q3: 買取価格は交渉できますか?
A3: はい、ある程度の交渉は可能です。特に複数の買取業者に査定を依頼し、各社の査定額を比較して交渉材料にすると効果的です。ただし、市場価格での買取は難しいため、相場の8割程度が現実的な上限と考えておくとよいでしょう。
Q4: 古い物件や状態の悪い物件でも買取してもらえますか?
A4: 多くの専門買取会社は、築古物件や状態の悪い物件、さらには再建築不可物件なども積極的に買取しています。これらの物件は一般の買主からは敬遠されやすいものの、買取業者はリフォームやリノベーションを前提としているため、条件次第では買取可能です。むしろ、このような物件こそ買取が適している場合が多いといえます。
Q5: 事故物件や心理的瑕疵のある物件も買取可能ですか?
A5: はい、多くの買取業者は事故物件や心理的瑕疵のある物件も買取対象としています。一般の買主を探す仲介では非常に困難なケースでも、専門買取会社なら適正価格での買取が期待できます。ただし、事故物件であることは必ず事前に申告しましょう。
参考情報
不動産の即時買取に関するさらに詳しい情報は、以下の公的機関や団体のWebサイトもご参考ください。
- 国土交通省 不動産取引情報提供サイト - 不動産取引価格情報
- 一般財団法人 不動産適正取引推進機構 - 統計データや注意点
- 公益財団法人 不動産流通推進センター - 不動産売却に関する情報
不動産の即時買取をご検討の方は、まずは複数の専門買取会社に無料査定を依頼し、ご自身の物件の相場観を掴むことをおすすめいたします。本記事が、皆様の不動産売却の一助となれば幸いです。

稲澤大輔
INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター