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    沖縄新開発プロジェクト「JUNGLIA(ジャングリア)」概要と不動産市況への影響

    沖縄本島北部、今帰仁村と名護市にまたがる「オリオン嵐山ゴルフ倶楽部」跡地で、全く新しい大型テーマパーク「JUNGLIA(ジャングリア)」の開発が進んでいます。敷地面積は約60ヘクタールにも及ぶ広大なもので、雄大なやんばるの森林に囲まれた立地です。コンセプトは「Power Vacance!!(パワー・バカンス)」。亜熱帯の生態系が残るやんばるの大自然の中で、“本物の興奮”と“本物の贅沢”を融合させた唯一無二のリゾート体験を提供することを目指しています。開業予定日は2025年7月25日と正式に発表されており、まさに目前に迫っています。開発主体はUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)のV字回復を成し遂げた実績で知られる森岡毅氏が率いるマーケティング会社「株式会社刀(かたな)」を中心に、地元企業とも協業した特別目的会社「株式会社ジャパンエンターテイメント」です。本プロジェクトには約700億円もの開発投資が計画されており、沖縄でも例を見ない規模の事業となっています。

    JUNGLIAは「自然×エンターテインメント」をテーマに据えており、園内には22種類以上の最先端アトラクション、沖縄の食材を活かした15のダイニング施設、地域ならではの土産物などを扱う10のショップ、そしてインフィニティ風呂を備えた高級スパ施設など、多彩な設備が整備されます。例えば、ジャングルの中を走る装甲車に乗ってリアルな恐竜に追いかけられるサファリライド(恐竜アドベンチャー)や、森の上空を滑空するジップライン、200m上空まで上昇する熱気球型アトラクションなど、自然の地形と最新技術を融合した体験が目玉です。パーク内には夜間の花火ショーや水上での演出イベントも予定されており、訪れるゲストは昼夜を通じて興奮とリラクゼーションを味わえる設計になっています。また、園内には沖縄の伝統料理から高級食材を用いたグルメまで幅広く提供するレストラン群や、南国の景観を一望できる展望インフィニティプール・スパ「SPA JUNGLIA」も併設される予定です。運営会社ジャパンエンターテイメントの加藤健史CEOをはじめとする経営陣は「沖縄旅行を最高にするために考え尽くされたテーマパークだ」と述べており、沖縄の新しいランドマークとして相応しい内容を備えています。

    沖縄県経済・観光産業への影響

    この「ジャングリア沖縄」は、沖縄観光産業と北部経済振興の“起爆剤”になると大きな期待が寄せられています。政府も本プロジェクトを国家的な地域振興策の一環と位置付けており、2025年1月末に行われた開業日発表の記者会見には異例にも内閣総理大臣(石破茂首相)が出席しました。石破首相は「北部沖縄の開発は日本政府にとって不可欠」と述べ、周辺インフラ整備も含めて全面的に支援する考えを示しています。これは本プロジェクトが単なる民間テーマパークを越え、地域経済活性化の鍵として国レベルでも重視されていることを物語っています。

    経済効果の試算によれば、開業から15年間で約6兆8080億円もの経済波及効果が見込まれるとの研究結果が発表されています。この数字には、パーク運営による直接的な売上だけでなく、観光客の宿泊・飲食・交通費、雇用創出による所得向上、生産誘発効果など広範な要素が含まれています。それだけ本プロジェクトが沖縄全体にもたらすインパクトが大きいということでしょう。実際、沖縄県の公示地価は2025年時点で全用途平均+7.2%上昇と東京に次ぐ全国2位の上昇率を示していますが、その背景には堅調な観光需要拡大とともに北部エリアで進行中の大型観光開発計画への期待が織り込まれているとされています。

    観光産業面では、入域観光客数の大幅な増加旅行消費単価の上昇が予想されます。特に、これまで観光客の多くは本島中南部に集中し、北部地域は「素通り観光」と揶揄される状況でした。恩納村より北の本島北部8市町村に訪れる旅行者は、2024年時点で沖縄県外からの来訪者のうちわずか4人に1人程度というデータもあります。しかしジャングリア開業により、沖縄美ら海水族館を擁する本部町・今帰仁村エリアまで足を延ばす観光ルートが確立され、北部観光の姿は大きく変わると見られます。実際、集客力の高い美ら海水族館(年間入館者数約300万人規模)に加え、同規模クラスのテーマパークが新設されることで、北部地域は沖縄観光の新たな双璧を成すことになります。これにより、従来は日帰りで那覇方面に戻っていた旅行者も北部で宿泊するケースが増え、観光消費が地域内に落ちることで地元経済への貢献が飛躍的に高まるでしょう。

    さらにジャングリアは当初から東アジアの富裕層を主要ターゲットに想定しています。台湾・香港・シンガポールなどから沖縄への直行便で訪れる富裕旅行客に対し、「手付かずの自然+ハイエンド娯楽」という独自の魅力で訴求しようという戦略です。実際、台湾の潜在顧客を対象に行った調査では約7割が「行ってみたい」と回答したとの報道もあり、アジア市場での注目度も高まっています。これら富裕層観光客の来訪は、沖縄県全体の観光単価引き上げにも寄与し、高級ホテルや別荘レンタルなど関連産業への波及も期待できます。

    とはいえ、大型観光開発には課題も伴います。交通インフラへの負荷オーバーツーリズムの懸念も指摘されています。地元では幹線道路の渋滞悪化を心配する声があり、運営会社は県道の右折レーン新設や大規模駐車場の整備、シャトルバス運行計画など対策を説明しています。実際、開業直後にはマイカー・レンタカーで来園する観光客が集中し、許田IC(高速道路北端)以北の一般道で混雑が発生すると予想されます。これに対し、予約制による入場者数の調整や公共交通の拡充、パーク周辺への交通誘導策など、きめ細かな対応が求められます。また環境面でも、やんばるの豊かな生態系への影響を最小限に抑える運営が不可欠です。幸い、今回の開発は既存ゴルフ場跡地の再活用であり、新たな森林伐採を伴わず樹木本数はかえって増加する計画とのことです。このように環境共生型のアプローチを採り、地元住民との対話を重ねながら共存共栄を図ることが、長期的な成功の鍵となるでしょう。

    ジャングリア開業による周辺地域の不動産需要変化

    ジャングリアの誕生は、北部エリアの不動産需要を大きく変貌させる起爆剤になると見込まれます。まず地理的に見て、テーマパーク所在地の今帰仁村・名護市周辺、および隣接する本部町、さらに北部エリアへの玄関口となる恩納村まで、広範囲で不動産市場に波及効果が及ぶでしょう。既に沖縄本島北部では観光開発への期待を背景に地価が上昇基調にあります。2024年の基準地価では、恩納村真栄田地区の住宅地が前年比+29.0%と全国1位の上昇率を記録しました。恩納村はもともと万座毛やリゾートホテル群で人気の観光エリアですが、近年はリゾート移住ブームもあいまって住宅需要が高まり、価格を押し上げています。また同ランキングでは宮古島市の複数地点も上位に入りましたが、これも島内で相次ぐ高級リゾート開発が地価を引き上げているためです。本島北部についても、ジャングリア開業が具体化したここ数年で不動産取引が活発化し、特に商業ポテンシャルの高いエリアを中心に地価上昇が顕著になっています。専門家も「北部や宮古島ではホテルや大規模テーマパークなど大型案件が予定されており、今後も上昇局面が続く見通し」と分析しています。

    恩納村・名護市エリア: 恩納村から名護市にかけての西海岸沿いは、沖縄屈指のリゾートホテル密集地帯です。ここには既存の大型リゾート(ハレクラニ沖縄、カヌチャベイ、マリオット系、ハイアット瀬良垣など)が立地し、ジャングリアへのアクセス拠点としても恵まれています。実際、ジャングリアは複数の既存ホテルと「オフィシャルホテルズ」パートナー提携を結んでおり、恩納~名護エリアのリゾートホテルを宿泊拠点に誘致しています。このため、同エリアではホテル稼働率や客室単価の上昇が見込まれ、収益性向上を期待したホテル物件への投資意欲が高まるでしょう。また、那覇市内とは異なる「暮らすように滞在する」ニーズに応えるため、海沿いのコンドミニアム開発や高級別荘の分譲計画が進む可能性もあります。すでに恩納村では県外からの移住ニーズも強く、北部勤務者やリモートワーカー向けの住宅開発も活発化しています。名護市は北部の中心都市として商業施設や住宅地の需要増が期待され、特に市街地ではスタッフ住宅や長期滞在者向けサービスアパートメントの需要も増加するでしょう。

    本部町・今帰仁村エリア: パーク所在の今帰仁村および水族館を有する本部町は、これまで比較的開発が限定的でした。しかし、ジャングリアと美ら海水族館を軸とした新ゴールデンルートが形成されれば、この周辺が観光の滞在拠点として脚光を浴びます。既に本部町では、町有地に地域産品マーケットやレストランを備えた「道の駅」的観光拠点施設の整備計画が持ち上がっており、「ジャングリア効果」を見据えて2024年度中に基本設計に着手する方針です。具体的には国道449号沿いに「もとぶオアシス(仮称)」という3階建て延床約1600㎡の施設を建設し、年間39万人の利用を見込む計画で、北部振興事業の補助を受け総事業費12億円を投じる予定と報じられています。このように、自治体自ら観光商業施設を整備する動きは、今後民間による周辺開発をさらに呼び込む可能性があります。本部・今帰仁エリアでは、小規模ホテルやペンション、グランピング施設など宿泊施設の新規開業が増えると予想され、土地取得ニーズも高まっています。特にオーシャンビューやパーク近接地など立地の良い土地は、将来的な商業利用を見越した投資対象として注目されるでしょう。また、古民家を改修したカフェ・民泊といった地域資源を活かすビジネスも活況を呈し、不動産の利活用価値が見直される局面となりそうです。

    その他北部地域: 名護市以北のやんばるエリア全域にも波及効果が及ぶでしょう。例えば国頭村・東村といったこれまで観光開発が限られていた地域でも、ジャングリアを訪れた観光客が周遊で立ち寄る可能性があります。やんばる国立公園内の自然観光(トレッキング、カヤック、星空観察等)との連携や、地域の文化体験プログラム開発が進めば、北部一帯で滞在日数を延ばす旅行商品の造成も考えられます。これに伴い、中長期的には北部山間部の土地にも観光拠点用地としての需要が生じる可能性があります。ただし、辺野古を抱える名護市辺野古区周辺など一部地域では米軍基地問題等の要因もあり、地価動向は一様ではありません。全体として北部エリアの地価は上昇傾向にありますが、個別案件の立地条件や規制状況を見極めた投資判断が必要です。

    リゾート開発に伴う地価上昇と新たな需要の可能性

    リゾート開発と不動産市況の関連性について、過去の事例から学べる点が多くあります。ハワイではワイキキに次ぐリゾート開発地域としてオアフ島西部のコオリナ地区が整備されましたが、ディズニーのホテル進出など大型投資に伴い周辺の不動産価格が上昇し、高級コンドミニアムや別荘地の開発が進みました。バリ島でも主要観光地の地価高騰により、近年では「第二のバリ」としてロンボク島など未開発リゾートへの投資が活発化しています。バリ島内では人気エリアの不動産価格が年間7%前後の上昇を続け、地元住民が自分の郷里で土地住宅を買いにくくなる社会問題も指摘されるほどです。実際、デンパサール市では100㎡あたり1億円相当に達する土地もあると報じられ、観光開発が不動産市場に強烈な影響を及ぼす実例といえます。

    沖縄に目を転じると、宮古島が近年これに近い現象を経験しました。大規模リゾートホテルの相次ぐ進出で雇用が生まれ、移住者も増えた結果、住宅地・商業地ともに地価が急騰しています。宮古島市の住宅地公示地価は2024年に前年比+17.9%、商業地も+15.2%と全国トップクラスの伸びを示しました。これにより地元住民の生活コスト上昇や住宅難も懸念されています。同様に、本島北部でもジャングリア開業が引き金となって土地需要が高まり、地価上昇の加速不動産取引の活性化が予想されます。ただし、過熱しすぎた市場は投機的な動きを招きかねず、健全な発展とのバランスが重要です。行政は地域の地価動向を注視し、必要に応じて用途規制や税制面での調整を行うことも検討課題となるでしょう。リゾート開発による恩恵を地域住民と投資家双方が享受し、持続可能な成長につなげるためには、適切な都市計画とコミュニティ利益の還元が不可欠です。

    一方、新たに生じる不動産需要にも注目です。まずホテル・宿泊施設用地の需要増があります。既存ホテルのリブランド・改修や、新規のブティックホテル建設用地への問い合わせが増えるでしょう。特に今帰仁・本部エリアでは、これまで大規模宿泊施設が少なかったため、開発余地が残されています。また別荘・ヴィラ需要も考えられます。ジャングリアで魅力を知った富裕層旅行者が、沖縄北部にセカンドハウスを持つケースも将来出てくるかもしれません。事実、近年沖縄ではコンドミニアムを投資購入し短期貸出する動きや、リモートワーク拠点として長期滞在する富裕層も増えています。やんばるの豊かな自然と娯楽環境が両立するエリアとしてブランド化できれば、不動産の付加価値を高めることにつながるでしょう。さらに商業施設用不動産にも波及します。テーマパーク周辺やアクセス道路沿いでは、飲食店・物販店・レジャー施設など観光客相手の商業開発が見込まれます。それに伴い、小売・サービス業のテナント需要が高まり、ロードサイドの土地や空き物件への投資妙味が増すでしょう。例えば、本部町で計画中の「道の駅」も将来的には商業集積の核となり、周囲への店舗進出や土地取引を誘発する可能性があります。

    投資家視点で注目すべきポイントとリスク要因

    ● 注目エリア(地域別の展望)

    • 恩納村・名護市: リゾートホテルが集中する恩納・名護エリアは引き続き投資適地です。ジャングリア開業後は宿泊需要が増し、ホテル収益が改善する見通しのため、既存リゾートの買収・改装や、新規宿泊施設の開発案件が注目されます。特に名護市は北部の商業ハブであり、テーマパーク関連ビジネスの拠点としてテナント需要が高まる可能性があります。地価は既に上昇していますが、中長期の成長余地に期待して資産保有する投資家も増えるでしょう。

    • 本部町・今帰仁村: パーク周辺の本部・今帰仁はこれから本格的な開発期を迎えるフロンティアです。大型商業施設やホテルの用地取得が本格化する可能性が高く、まとまった土地や利便性高い立地を確保できれば大きな上昇益を得られるチャンスがあります。ただし流動性が中南部ほど高くない点には留意が必要です。行政と連携した町おこし的な事業も視野に、地域と共生するローカル志向の開発コンセプトが成功のカギとなるでしょう。

    • 周辺離島・その他北部: やんばる地域全域や周辺離島(古宇利島など)も副次的に恩恵を受ける可能性があります。観光客の動線が延びれば、従来ノーマークだった地域の不動産にも需要が波及します。例えば古宇利島では既に観光客増により民泊やカフェの開業が相次ぎ、橋のたもとの商業地価が上昇傾向です。こうしたスポットに機敏に着目し、有望物件を確保する眼力が求められます。

    ● 注目物件タイプ・セクター

    • リゾートホテル・宿泊施設: 最大の注目セクターです。大型開発に呼応して国際ブランドホテルの誘致や新規開業計画が予想され、開発用地や既存ホテル売買の案件が増えるでしょう。客室単価上昇が見込めるため投資利回りも改善する可能性があります。コンラッドやフォーシーズンズなど超高級ブランドの進出余地も指摘されており、土地のグレーディングによっては一気に相場が跳ね上がることもあり得ます。

    • 別荘・高級コンドミニアム: 富裕層マーケット向けの別荘地やコンドミニアム開発にも商機があります。沖縄本島ではこれまで別荘分譲は限定的でしたが、北部のブランド化に伴い需要が顕在化する可能性があります。特に外国人富裕層に対しては、長期バケーション滞在用のヴィラやコンドミニアムの販売が考えられます。ハワイのように観光と投資を兼ねた不動産所有モデルが成立すれば、新たな市場が開拓できるでしょう。

    • 商業施設・飲食店舗: 観光客消費を取り込む商業セクターも有望です。テーマパーク関連グッズショップや飲食店のテナント需要が高まり、ロードサイドの商業地価が上昇する可能性があります。特に地元食材を活かしたレストラン、カフェ、土産物店などは観光消費増に直結するため、商業ゾーンの開発に投資する価値があります。小売ディベロッパーにとっては、北部エリアでのアウトレットモール計画なども将来的な検討対象となるかもしれません。

    • 住宅・従業員寮: 観光従事者や移住者の増加に伴い、住宅市場にも影響が及びます。テーマパーク運営スタッフやサービス業従業員向けの社宅ニーズ、UIターンによる一般住宅需要が増えることで、賃貸住宅の稼働率上昇や宅地分譲の機会が出てくるでしょう。過度なリゾート偏重でなく、地域社会を支える住宅供給もバランス良く行われることが望まれ、ここにも行政支援や公民連携の余地があります。

    ● リスク要因と留意点
    大型リゾート開発に投資する際には、以下のようなリスク要因にも十分注意する必要があります。

    • 需要予測の不確実性: テーマパークの集客が計画を下回るリスクは常に存在します。天候要因や世界的パンデミック、国際情勢の変化(例えば訪日観光客数の激減など)は予期しづらく、投資リターンを左右します。過去には、地方のテーマパークで集客低迷により経営破綻した事例(長崎ハウステンボスの初期など)もあります。ジャングリアはマーケティング主導で周到にプランされていますが、それでも過度な楽観は禁物です。事前シミュレーションでは入場制限を設けつつ1日あたり数千人規模の集客を見込んでいるとみられますが、軌道に乗るまでの期間は予断を許しません。

    • オーバーツーリズム・環境規制リスク: 前述のように、地域社会への過剰な観光負荷は反発を招きかねません。道路渋滞や騒音・ごみ問題などが深刻化すると、行政による開発規制や入域制限など思わぬ制約が課される可能性もあります。また環境保全の観点から新規開発に許認可上のハードルが上がるリスクもあります。投資家はESG(環境・社会・ガバナンス)の視点も考慮し、地域との協調や環境配慮型ビジネスを重視することが重要です。

    • 資材高騰・金利上昇によるコスト増: 昨今の建設資材価格の高騰や、人件費上昇は開発コストを押し上げています。実際、ジャングリアでも資材費が想定より3割上昇し、投資計画に不確実性が生じたことが報じられました。また日本銀行の金融政策変更による金利上昇は、不動産投資の調達コスト増加や資産価値への影響を及ぼします。レバレッジを効かせた投資の場合、金利リスクへの備えが欠かせません。堅実な資本計画と出口戦略を描いておくことが求められます。

    • 競合状況の変化: 沖縄では他地域でも新規リゾート計画や大型施設改装が進行中です。仮に類似コンセプトの競合が現れた場合、集客を巡る競争が激化し期待通りの収益が得られない恐れがあります。例えば、将来石垣島や宮古島に大規模テーマパークが誘致される、といったシナリオが無いとは言い切れません。また国内他地域でもテーマパーク拡張計画(USJの新エリアなど)があれば、そちらに話題を奪われるリスクもあります。投資家はマーケットの動向を注視し、柔軟にポートフォリオを調整できる体制が望ましいでしょう。

    • 社会情勢・政策リスク: 沖縄独特の要因として、米軍基地問題や日本政府の防衛政策との絡みも無視できません。北部振興策は基地受入の見返り的意味合いもありましたが、仮に政権交代や政策転換で政府の後押しが変化する可能性もあります。また為替相場の変動によって訪日外国人旅行(インバウンド)の動向が揺れるリスクもあります。グローバル経済や政治の潮流にも目配りしつつ、中長期的視点で投資を判断することが大切です。

    以上のように、チャンスとリスクの両面を把握した上で、適切なタイミングと物件を見極める必要があります。幸いにもジャングリアは官民挙げて支援されるプロジェクトであり、開業に向けた準備も着実に進んでいます。不動産投資家にとっては、この追い風を受けつつも冷静なリスク管理を行うことで、沖縄北部エリアで大きな成果を得ることができるでしょう。

    過去の類似事例に見る沖縄大型開発の影響

    沖縄県内の過去の大型観光開発事例も参考になります。1975年の沖縄国際海洋博覧会(本部町)では、会場跡地が「海洋博記念公園」として再整備され、2002年には世界有数の水族館である美ら海水族館が開館しました。この水族館開業によって、本部半島への観光客が飛躍的に増加し、それまで閑散としていた周辺にホテル進出(例:オリオン本部リゾート&スパの開業)や商業施設の立地が相次ぎました。つまり、大型集客施設の設置がエリア全体の不動産価値を底上げし、新たな投資を呼び込む好循環を生み出したのです。今回のジャングリアも同様に、美ら海水族館と相まって北部観光の双璧となることで、「テーマパーク+水族館+α(自然・文化体験)」という複合観光圏を形成しうるでしょう。

    また、沖縄本島中部のアメリカンビレッジ(北谷町美浜)は、1990年代後半から遊休地を活用して開発されたリゾート商業エリアですが、映画館やアウトレットモール、観覧車などを備えた複合施設がヒットし、周辺の地価を押し上げました。現在では周囲に高層マンションやホテルが林立し、北谷町の主要な収益源となっています。元は米軍基地跡地という特殊要因もありましたが、エンターテインメント性の高い開発が成功した好例です。ジャングリアの場合、より大規模な自然テーマパークという性格上、直接の比較はできないものの、「エンタメによる地域ブランディング」が不動産市場を活性化させる点では共通しています。

    さらに視野を海外に広げると、シンガポールのセントーサ島開発(ユニバーサルスタジオや統合型リゾートの建設)や、中国海南島の高級リゾート開発なども、観光開発が地域不動産市場を飛躍させた例として挙げられます。セントーサ島ではテーマパークとカジノを含む統合リゾート開業後、島内の不動産価格が著しく上昇し、富裕層向け住宅の供給が加速しました。沖縄にはカジノはありませんが、自然資源とテーマパークの組み合わせは世界的にもユニークであり、成功すれば国際的な投資マネーを引き寄せるポテンシャルがあります。

    これらの事例が示すのは、大型開発により「観光地の格」が上がることで長期的に不動産価値が上昇する一方、地域住民の暮らしとの調和バブル的過熱への警戒も必要だということです。沖縄は観光立県であると同時に、そこに暮らす県民の生活の場でもあります。ハワイやバリ島のように「地元住民が地価高騰で住宅取得困難になる」といった問題を避けるためにも、地域と利益を共有しながら発展するモデルを構築することが重要でしょう。具体的には、雇用創出による所得向上やインフラ整備による利便性向上が地域にもたらされるよう、公共と民間が連携することが肝要です。

    おわりに

    「JUNGLIA(ジャングリア)沖縄」は、沖縄北部の経済・不動産市況を塗り替える可能性を秘めた壮大なプロジェクトです。その正式概要から地域への影響、投資機会とリスクまで概観してきましたが、総じて本プロジェクトはチャレンジングでありながら十分な追い風が吹いていると言えます。政府の後押し、森岡氏らトップクラスのプロデュース力、そして世界が注目する沖縄の魅力が三位一体となり、開業後しばらくは北部エリアの発展が加速する公算が大きいでしょう。不動産投資家にとっても、この変革期にうまく参画することで大きな成果を享受できるチャンスです。

    もっとも、投資判断にあたっては上述の通りリスクとリターンを慎重に見極める必要があります。とりわけ初期段階では計画通りにいかない事象も起こり得ます。しかし、長期的視野に立てば沖縄の観光需要は底堅く、仮に景気循環による波があっても再び成長軌道に乗るポテンシャルを備えています。北部振興策の一翼を担うジャングリアは、適切に運営されれば「沖縄版セントーサ」とも言うべき成功例となり、不動産市場にも豊かな果実をもたらすでしょう。投資家としては地域社会とWin-Winの関係を築きつつ、沖縄の未来に貢献するような視点で臨むことが望まれます。

    最後に、本プロジェクトの成否は地域との共存共栄にかかっています。地元の理解と協力を得ながら持続可能な発展を図ることが、結果的に投資の安全性を高め長期利益につながります。沖縄の美しい自然と文化を守り育てながら、新たな観光都市として北部エリアが飛躍することを期待しつつ、不動産投資家としてその歩みに寄り添っていきたいものです。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。