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    無断駐車の対応をどうすれば

    不動産管理や駐車場運営において、無断駐車は深刻な問題の一つです。

    私たちINA&Associatesは全国を対象に不動産管理をしているものとして、日々多くの不動産オーナー様から無断駐車に関するご相談をお受けしています。「自分の駐車場に知らない車が停まっている」「警察に連絡しても対応してもらえない」「どのように対処すれば良いのかわからない」といったお悩みは、不動産管理において避けて通れない課題です。

    無断駐車の問題は、単に迷惑行為というだけでなく、適切な対応を怠ると法的トラブルに発展する可能性があります。一方で、感情的になって不適切な対応を取ってしまうと、逆に法的責任を問われるリスクもあります。

    本記事では、無断駐車に遭遇した際の正しい対応方法から効果的な予防策まで、不動産管理の専門家として培った知識と経験をもとに、実践的なアドバイスをお伝えします。法的根拠を明確にしながら、一般の方にもわかりやすく解説いたします。

    無断駐車の基本的な対応方法

    公道と私有地の違いを理解する

    無断駐車への対応を考える際、まず重要なのは駐車場所が公道か私有地かを明確に区別することです。この違いによって、適用される法律や対応方法が大きく異なります。

    公道での無断駐車は、道路交通法第44条および第45条に基づく違法駐車として扱われます。この場合、警察に通報することで、違反者に対する取り締まりや車両の移動命令が可能です。道路交通法は公共の安全と秩序を維持するための法律であり、警察には積極的な対応義務があります。

    一方、私有地での無断駐車については、道路交通法の適用外となります。駐車場、マンションの敷地内、商業施設の駐車場など、私有地における無断駐車は民事上の問題として扱われ、民法第709条の不法行為に該当します。この場合、警察は「民事不介入」の原則により、積極的な対応を行わないのが一般的です。

    即座に取るべき行動

    無断駐車を発見した際は、感情的にならず冷静に対応することが重要です。以下の手順に従って、段階的に対応を進めてください。

    第一段階:証拠の収集

    まず最初に行うべきは、確実な証拠の収集です。スマートフォンのカメラ機能を使用して、以下の項目を撮影してください。

    車両全体の写真を複数の角度から撮影し、ナンバープレートが明確に読み取れる状態で記録します。撮影時刻が自動的に記録される設定にしておくことで、無断駐車の継続時間を証明する重要な証拠となります。

    駐車位置と周辺環境も併せて撮影し、明らかに駐車禁止区域や他人の専用駐車場であることがわかるような構図で記録してください。看板や標識がある場合は、それらも含めて撮影することで、駐車禁止の意思表示が明確であったことを証明できます。

    第二段階:警察への通報

    私有地であっても、まずは警察に通報することをお勧めします。警察が直接的な対応を行わない場合でも、通報記録が残ることで、後の法的手続きにおいて有効な証拠となります。

    通報時には、「不審車両の報告」として連絡し、車両の詳細情報(車種、色、ナンバープレート)と駐車場所を正確に伝えてください。警察官が現場に来てくれる場合もあり、その際に適切なアドバイスを受けることができます。

    第三段階:警告文の貼付

    証拠収集と警察への通報が完了したら、車両に警告文を貼付します。ただし、この際も法的リスクを避けるため、適切な方法で行う必要があります。

    警告文は、車両を傷つけない方法で、ワイパーに挟むか、サイドミラーに軽く挟む程度に留めてください。車体に直接テープで貼り付ける行為は、器物損壊罪に問われる可能性があります。

    警告文の内容は、感情的な表現を避け、事実を淡々と記載することが重要です。「無断駐車禁止区域への駐車を確認しました。速やかに移動をお願いします。継続する場合は法的措置を検討いたします」といった、冷静で客観的な文面が適切です。

    段階的な対応手順

    無断駐車への対応は、段階的にエスカレーションしていくことが重要です。以下の表に、対応段階と具体的な行動をまとめました。

    段階 対応内容 所要時間 費用 効果
    第1段階 証拠収集・警察通報・警告文貼付 30分程度 無料 軽微な無断駐車には効果的
    第2段階 所有者特定・内容証明郵便送付 1-2週間 3,000-5,000円 法的圧力により移動を促す
    第3段階 弁護士による警告書送付 1週間程度 30,000-50,000円 高い心理的圧力
    第4段階 民事調停申立て 1-3ヶ月 数千円 公的機関による調整
    第5段階 民事訴訟提起 6ヶ月-2年 数十万円 強制執行可能な判決取得

    この表からもわかるように、初期段階での対応が最も費用対効果が高く、多くの場合は第1段階から第2段階の対応で問題が解決します。

    所有者の特定方法

    継続的な無断駐車に対しては、車両の所有者を特定して直接交渉することが効果的です。

    普通自動車の場合

    普通自動車については、最寄りの運輸支局または自動車検査登録事務所において、「登録事項等証明書交付請求」の手続きを行うことで、所有者の情報を取得できます。

    請求には、車両のナンバープレート情報と、請求理由を明記した書面が必要です。無断駐車の場合は「民事訴訟等」を理由として記載することが一般的です。手数料として300円程度が必要となります。

    軽自動車の場合

    軽自動車については、軽自動車検査協会において同様の手続きを行います。普通自動車と比較して、やや手続きが簡素化されている場合があります。

    ただし、これらの情報取得には正当な理由が必要であり、単なる好奇心や嫌がらせ目的での請求は認められません。無断駐車による損害の発生と、所有者との交渉の必要性を明確に説明できることが重要です。

    法的措置と実効性のある対策

    民事上の法的根拠

    私有地での無断駐車は、民法第709条に規定される不法行為に該当します。不法行為とは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為を指し、これにより生じた損害について賠償責任を負うものです。

    無断駐車の場合、土地所有者または正当な使用権者の土地使用権を侵害する行為として位置づけられます。たとえ短時間の駐車であっても、所有者の同意なく他人の土地を使用する行為は、法的には不法行為に該当します。

    この法的根拠に基づき、土地所有者は無断駐車者に対して以下の請求を行うことができます。

    損害賠償請求

    無断駐車により生じた損害について、金銭的な賠償を求めることができます。損害の算定方法としては、近隣の時間貸し駐車場の料金を基準とする方法が一般的です。

    例えば、近隣の時間貸し駐車場が1時間300円の場合、24時間の無断駐車に対しては7,200円の損害が発生したと算定できます。ただし、実際の損害額については、立地条件や駐車場の稼働率なども考慮される場合があります。

    妨害排除請求

    継続的な無断駐車に対しては、車両の撤去を求める妨害排除請求を行うことができます。これは、所有権に基づく当然の権利として認められており、裁判所に申し立てることで強制執行による車両の撤去も可能です。

    損害賠償請求の実際

    無断駐車による損害賠償請求については、近年いくつかの注目すべき判例が出ています。

    大阪地裁の高額賠償事例

    2018年に大阪地裁で言い渡された判決では、約11,166時間にわたる長期間の無断駐車に対して、約920万円の損害賠償が認められました。この事例では、無断駐車者が再三の警告を無視して駐車を継続したことが悪質性の高い行為として評価されました。

    この判決は、無断駐車が単なる軽微な迷惑行為ではなく、重大な財産権侵害として法的に評価されることを示した重要な事例です。

    少額事例での認容

    一方で、大阪地裁では月極駐車場に約40分間無断駐車した事例について、200円の損害賠償請求を認容した判決もあります。この事例は、短時間の無断駐車であっても法的責任が発生することを明確に示しています。

    これらの判例から、無断駐車の期間や悪質性に応じて、適切な損害額の算定が可能であることがわかります。

    内容証明郵便による警告

    所有者が特定できた場合、内容証明郵便による警告書の送付が効果的です。内容証明郵便は、郵便局が文書の内容と送達の事実を証明する制度であり、法的手続きの前段階として重要な意味を持ちます。

    警告書の記載事項

    内容証明郵便による警告書には、以下の事項を明確に記載してください。

    無断駐車の事実関係を客観的に記載し、駐車場所、駐車期間、車両の詳細情報を具体的に明示します。証拠として撮影した写真の存在についても言及し、事実関係に争いの余地がないことを示します。

    法的根拠として民法第709条の不法行為に該当することを明記し、損害賠償請求権の存在を主張します。具体的な損害額についても、算定根拠とともに記載することが重要です。

    今後の対応として、指定期日までの車両撤去と損害賠償の支払いを求め、応じない場合は法的措置を講じる旨を明記します。ただし、脅迫的な表現は避け、冷静で客観的な文面を心がけてください。

    送付後の対応

    内容証明郵便送付後は、相手方からの連絡を待ちます。多くの場合、内容証明郵便の心理的圧力により、自主的な車両撤去や損害賠償の支払いに応じるケースが見られます。

    相手方から連絡があった場合は、冷静に交渉を進めてください。感情的になることなく、事実に基づいた話し合いを行うことが重要です。

    民事調停と民事訴訟

    内容証明郵便による警告に応じない場合は、法的手続きに移行することになります。

    民事調停の活用

    まず検討すべきは、簡易裁判所での民事調停です。民事調停は、裁判官と調停委員が当事者間の話し合いを仲介する制度で、訴訟と比較して費用が安く、手続きも簡素です。

    調停では、双方の主張を聞いた上で、調停委員が妥当な解決案を提示します。無断駐車の事案では、損害賠償額の減額や分割払いなど、現実的な解決策が提示されることが多く、当事者双方にとって納得のいく結果が得られる場合があります。

    民事訴訟の提起

    調停が不調に終わった場合や、相手方が調停に応じない場合は、民事訴訟を提起することになります。訴訟では、証拠に基づいて事実関係を立証し、法的判断を求めます。

    無断駐車の訴訟では、以下の点が争点となることが一般的です。

    無断駐車の事実については、撮影した写真や警察への通報記録などが重要な証拠となります。駐車禁止の意思表示が明確であったかどうかも、看板や標識の設置状況によって判断されます。

    損害額の算定については、近隣駐車場の料金相場や、実際に生じた機会損失などが考慮されます。立証責任は原告側にあるため、十分な証拠の準備が必要です。

    強制執行による車両撤去

    民事訴訟で勝訴判決を得た場合、相手方が任意に履行しない場合は強制執行による車両の撤去が可能です。

    強制執行は、裁判所の執行官が行う法的手続きであり、債務者の意思に関係なく強制的に車両を撤去することができます。ただし、執行費用は債権者の負担となるため、費用対効果を慎重に検討する必要があります。

    撤去された車両は、執行官により適切な場所に保管され、債務者に引き渡し通知が行われます。保管費用についても債務者の負担となりますが、長期間引き取りがない場合の処理方法については、事前に執行官と相談しておくことが重要です。

    予防策と長期的な解決方法

    効果的な看板設置

    無断駐車の最も効果的な対策は、事前の予防です。適切な看板設置により、無断駐車の意図を事前に阻止することができます。

    看板の設置位置と視認性

    看板は、駐車場への進入路から明確に視認できる位置に設置することが重要です。車両の運転者が駐車する前に必ず目にする場所、具体的には進入口の正面や、駐車スペースの手前に設置してください。

    夜間でも視認できるよう、反射材を使用した看板や、LED照明付きの看板を選択することをお勧めします。雨天時でも文字が読み取れるよう、耐候性の高い材質を選ぶことも重要です。

    効果的な文言の選択

    看板の文言は、法的根拠を明確にしつつ、威圧的になりすぎないよう配慮が必要です。以下のような文言が効果的です。

    「無断駐車厳禁発見次第、法的措置を講じます」「私有地につき無断駐車禁止違反者には損害賠償を請求いたします」「防犯カメラ作動中無断駐車は不法行為として対処します」

    これらの文言は、無断駐車が法的問題に発展する可能性を明示することで、心理的な抑止効果を発揮します。

    看板の種類と特徴

    看板の種類 設置費用 耐久性 視認性 移動可能性 適用場面
    立て看板 5,000-15,000円 中程度 高い 可能 一時的な対策
    壁面看板 10,000-30,000円 高い 高い 不可 恒久的な対策
    スタンド看板 8,000-20,000円 中程度 高い 可能 柔軟な配置
    電光看板 50,000-100,000円 高い 非常に高い 困難 高級施設

    初期投資を抑えたい場合は立て看板から始め、効果を確認した上で恒久的な壁面看板に移行することをお勧めします。

    物理的な対策

    看板による警告だけでは効果が限定的な場合、物理的な対策を併用することで、より確実な無断駐車防止が可能です。

    三角コーンとチェーンの活用

    最も手軽で効果的な物理的対策は、三角コーンチェーンの組み合わせです。駐車スペースの入り口にコーンを設置し、チェーンで連結することで、物理的に車両の進入を阻止できます。

    三角コーンは視認性が高く、設置・撤去が容易であるため、必要に応じて柔軟に対応できます。ただし、強風時の転倒や、悪意ある第三者による移動のリスクがあるため、定期的な確認が必要です。

    ポールとゲートの設置

    より恒久的な対策として、固定ポール可動式ゲートの設置があります。これらの設備は初期投資が必要ですが、長期的には最も確実な無断駐車防止策となります。

    可動式ゲートの場合、正当な利用者にはリモコンやカードキーを配布し、利便性を損なうことなく無断駐車を防止できます。設置費用は50万円から200万円程度と高額ですが、大規模な駐車場や継続的な無断駐車被害がある場合は検討に値します。

    フラップ板システム

    近年注目されているのが、フラップ板システムです。これは、駐車スペースに設置された板が車両の重量で下がり、車両が出庫する際に板が上がって車両をロックする仕組みです。

    正当な利用者は事前に料金を支払うか、専用カードで解除することで出庫できますが、無断駐車者は解除料金を支払わない限り出庫できません。初期費用は1台分あたり30万円から50万円程度ですが、確実な無断駐車防止効果があります。

    防犯カメラの設置

    防犯カメラの設置は、無断駐車の抑止効果と証拠収集の両面で有効です。

    抑止効果

    防犯カメラが設置されていることを示すステッカーや看板と併用することで、高い心理的抑止効果を発揮します。多くの無断駐車者は、証拠を残すことを嫌うため、カメラの存在を認識すると駐車を避ける傾向があります。

    証拠収集機能

    実際に無断駐車が発生した場合、防犯カメラの映像は決定的な証拠となります。駐車開始時刻と終了時刻が正確に記録され、損害額の算定や法的手続きにおいて重要な役割を果たします。

    設置時の注意点

    防犯カメラの設置に際しては、プライバシーの保護に十分配慮する必要があります。撮影範囲は自己の敷地内に限定し、隣接する住宅や公道を撮影しないよう調整してください。

    また、個人情報保護法の観点から、撮影していることを明示する看板の設置と、映像データの適切な管理が求められます。録画データの保存期間は1ヶ月程度とし、必要以上に長期間保存しないことが重要です。

    管理体制の強化

    継続的な無断駐車防止には、日常的な管理体制の強化が不可欠です。

    定期巡回の実施

    駐車場の定期巡回を実施し、無断駐車の早期発見に努めてください。巡回頻度は、無断駐車の発生状況に応じて調整しますが、最低でも週2回程度は実施することをお勧めします。

    巡回時には、駐車車両の確認だけでなく、看板や設備の状態もチェックし、必要に応じて修繕や交換を行ってください。

    近隣との連携

    近隣住民や事業者との連携も重要な要素です。無断駐車を発見した際の連絡体制を整備し、迅速な対応が可能な環境を構築してください。

    地域全体で無断駐車防止に取り組むことで、より効果的な対策が可能となります。自治会や商店会などの組織を通じて、情報共有や共同対策を検討することも有効です。

    専門業者の活用

    大規模な駐車場や継続的な問題がある場合は、駐車場管理専門業者への委託も検討してください。専門業者は豊富な経験とノウハウを持ち、効率的な無断駐車対策を提供できます。

    委託費用は月額数万円から数十万円程度ですが、無断駐車による損失や対応にかかる時間を考慮すると、費用対効果の高い選択肢となる場合があります。

    地域特性に応じた対策

    無断駐車の対策は、地域の特性や駐車場の立地条件に応じてカスタマイズする必要があります。

    商業地域での対策

    商業地域では、買い物客による短時間の無断駐車が多発する傾向があります。この場合、時間制限を明示した看板の設置や、短時間利用者向けの有料駐車システムの導入が効果的です。

    住宅地域での対策

    住宅地域では、近隣住民による長時間の無断駐車が問題となることがあります。この場合、近隣住民との話し合いによる解決を優先し、必要に応じて自治会などの仲介を求めることが重要です。

    駅周辺での対策

    駅周辺では、通勤・通学者による終日駐車が問題となります。この場合、物理的な対策と厳格な管理体制の組み合わせが必要となり、専門業者への委託も検討すべきです。

    まとめ

    無断駐車への対応は、感情的にならず段階的かつ法的根拠に基づいた対応を取ることが重要です。

    公道と私有地の違いを理解し、それぞれに適した対応方法を選択してください。公道での無断駐車は警察への通報により解決できますが、私有地では民事上の問題として自ら対応する必要があります。

    証拠収集の重要性を忘れずに、無断駐車を発見した際は必ず写真撮影を行い、警察への通報記録を残してください。これらの証拠は、後の法的手続きにおいて決定的な役割を果たします。

    予防策の実施により、無断駐車の発生を未然に防ぐことが最も効果的です。適切な看板設置、物理的対策、防犯カメラの設置など、複数の対策を組み合わせることで、確実な効果が期待できます。

    法的措置の活用については、内容証明郵便による警告から始まり、必要に応じて民事調停や民事訴訟に進むことで、適切な損害賠償を受けることができます。ただし、費用対効果を慎重に検討し、専門家のアドバイスを求めることをお勧めします。

    次のアクション

    無断駐車でお困りの方は、以下のステップで対応を進めてください。

    1.現状の把握:無断駐車の頻度、時間帯、車両の特徴を記録

    2.予防策の検討:看板設置や物理的対策の導入を検討

    3.管理体制の整備:定期巡回や近隣との連携体制を構築

    4.専門家への相談:継続的な問題については不動産管理の専門家に相談

    INA&Associates株式会社では、不動産管理に関する様々なご相談をお受けしています。無断駐車対策についても、豊富な経験と専門知識をもとに、最適な解決策をご提案いたします。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

    よくある質問

    Q1:警察に通報しても私有地の無断駐車には対応してもらえないのでしょうか?

    A1:確かに私有地での無断駐車については、道路交通法の適用外となるため、警察による積極的な対応は期待できません。しかし、通報することで以下のメリットがあります。

    まず、通報記録が残ることで、後の法的手続きにおいて「適切な手順を踏んだ」ことの証明となります。また、警察官が現場に来てくれる場合もあり、その際に適切なアドバイスを受けることができます。

    さらに、車両が盗難車である可能性や、運転者が何らかの事件に関与している可能性もあるため、「不審車両の報告」として通報することは意味があります。

    ただし、警察による車両の移動や運転者への処罰は期待できないため、並行して民事上の対応を進める必要があります。

    Q2:無断駐車された車両を勝手にレッカー移動させることはできますか?

    A2:絶対に行ってはいけません。無断駐車された車両を所有者の同意なく移動させる行為は、「自力救済」として法的に禁止されています。

    たとえ自分の土地に無断駐車されていても、勝手に車両を移動させると以下の法的リスクがあります。

    器物損壊罪:車両に傷をつけた場合、刑法第261条の器物損壊罪に問われる可能性があります。

    窃盗罪:車両を移動させる行為が、一時的であっても窃盗罪に該当する可能性があります。

    損害賠償責任:移動中に車両が損傷した場合、修理費用等の損害賠償責任を負う可能性があります。

    適切な対応は、民事訴訟により勝訴判決を得た後、裁判所の執行官による強制執行として車両を撤去することです。時間と費用はかかりますが、法的リスクを避けるためには必要な手続きです。

    Q3:無断駐車の看板に「罰金○万円」と書いても法的効力はありますか?

    A3:法的効力はありません。私人が一方的に設定した「罰金」には法的根拠がなく、支払い義務は発生しません。

    ただし、看板の記載内容によっては一定の効果が期待できます。

    効果的な記載例:

    -「無断駐車は損害賠償請求の対象となります」

    -「法的措置を講じます」

    -「近隣駐車場料金相当額を請求いたします」

    これらの記載は、実際の損害に基づく請求であることを示しており、心理的な抑止効果を発揮します。

    避けるべき記載例:

    -「罰金10万円」

    -「違反金5万円」

    -「科料3万円」

    これらの記載は、公的機関のみが科すことができる「罰金」「科料」という用語を使用しており、誤解を招く可能性があります。

    看板の文言は、事実に基づいた内容とし、過度に威圧的な表現は避けることが重要です。

    Q4:損害賠償はどの程度の金額を請求できますか?

    A4:損害賠償額は、実際に生じた損害に基づいて算定されます。一般的な算定方法は以下の通りです。

    時間貸し駐車場料金基準:

    近隣の時間貸し駐車場の料金を基準として算定します。例えば、1時間300円の地域で24時間無断駐車された場合、7,200円の損害となります。

    月極駐車場料金基準:

    長期間の無断駐車の場合、月極駐車場の料金を日割り計算して算定することもあります。月額30,000円の地域で30日間無断駐車された場合、30,000円の損害となります。

    機会損失の考慮:

    実際に駐車場利用者が利用できなかった場合の機会損失も損害として認められる場合があります。

    判例による参考額:

    -40分間の無断駐車:200円(大阪地裁)

    -11,166時間の無断駐車:約920万円(大阪地裁)

    ただし、損害額の立証責任は請求者側にあるため、近隣駐車場の料金調査や、実際の機会損失の証明が必要となります。過大な請求は認められないため、合理的な範囲での請求を心がけてください。

    Q5:マンションの敷地内での無断駐車はどう対応すればよいですか?

    A5:マンションの敷地内での無断駐車は、管理組合や管理会社と連携して対応することが重要です。

    管理組合での対応:

    まず管理組合の理事会に報告し、組合としての対応方針を決定してください。無断駐車対策は共用部分の管理に関わる事項であり、個人で勝手に対応するとトラブルの原因となる可能性があります。

    管理会社の活用:

    管理会社が委託されている場合、無断駐車への対応も業務の一環として依頼できます。管理会社は豊富な経験を持ち、適切な対応方法を提案してくれます。

    住民への周知:

    掲示板や回覧板を通じて、無断駐車禁止の周知を行ってください。来客用駐車場の利用ルールも併せて明確にすることで、トラブルの予防につながります。

    段階的な対応:

    1.警告文の貼付(管理組合名義)

    2.全住民への注意喚起

    3.管理会社による所有者特定

    4.内容証明郵便による警告

    5.法的措置の検討

    マンションでは近隣関係への配慮も重要であり、感情的な対立を避けながら、冷静に問題解決を図ることが大切です。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター