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    クラウド型不動産管理システムで進む不動産管理DX

    近年、国を挙げたDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の流れの中で、不動産業界にもデジタル化の波が押し寄せています。紙やエクセル中心だった不動産管理業務も、クラウド型の不動産管理システムを活用することで大きく様変わりしつつあります。クラウド上で物件情報や入居者データ、契約情報、家賃収支などを一元管理でき、煩雑な作業の多くが自動化されることで、業務効率化と正確性向上が期待できます。本記事では、賃料管理や収支報告の自動化、情報の可視化、コミュニケーションの迅速化といった観点から、不動産オーナー様にとってクラウド型管理システムがもたらすメリットをわかりやすく解説します。さらに、実際の導入事例や日本国内で提供されている主要なクラウド型不動産管理システムもご紹介いたします。

    賃料管理や収支報告の自動化による業務効率化

    賃貸経営において毎月発生する家賃の請求・入金管理や収支報告は、オーナー様にとって時間と手間のかかる仕事です。クラウド型の不動産管理システムを導入すれば、こうした賃料管理業務を大幅に効率化・自動化できます。例えば、一度物件や契約者のデータを登録しておけば、請求書や送金明細などの各種書類作成時にそのデータが自動反映されるため、二重入力の手間が省けます。システムによっては家賃滞納の自動通知機能も備わっており、入金遅れが発生した際には自動で督促連絡が行われるため、オーナー様ご自身が催促の連絡をする必要も減ります。実際に、ある中小の管理会社では家賃入金確認や滞納管理をシステムで自動化し、関連作業時間を約40%削減することに成功しました。これはオーナー様にとっても大きな時間節約につながります。

    また、収支報告業務もクラウド化で効率化します。従来は管理会社から毎月の収支報告書が郵送されてくるのを待ったり、自らエクセルで収支計算する必要がありましたが、クラウドシステムなら日々の入出金データから月次収支報告書を自動作成できます。グラフなどで視覚的にわかりやすく収支状況を示してくれるため、オーナー様は内容を一目で把握可能です。紙での郵送も不要になるため、郵送準備や発送にかかる事務手間・コストも省けます。こうした自動化により、ヒューマンエラーの削減やデータ誤記入の防止にも効果的です。手作業に起因する入力ミスが減り、帳簿の整合性も保たれるため、経営数字の正確性が向上します。結果として、オーナー様は経理業務に費やしていた時間を他の重要な業務や戦略立案に充てることができるようになります。

    情報の一元管理と可視化で実現する透明性向上と意思決定支援

    クラウド型不動産管理システムは、物件情報から契約内容、家賃の入出金履歴、修繕履歴に至るまで、関連情報をすべて一元管理します。これによりオーナー様は自分の不動産ポートフォリオの状況をリアルタイムに把握でき、経営状況の「見える化」が進みます。例えば、どの物件で今月家賃が未入金か、年間の収入・支出推移はどうか、空室はどの物件に何戸あるか、といった情報をダッシュボードで即座に確認できます。情報がタイムリーに可視化されることで不動産経営の透明性が高まり、オーナー様にとっても安心材料となります。実際に、クラウド化によって複数店舗間でリアルタイムな情報共有を可能にし、迅速な対応力向上につなげた企業もあります。

    オーナー様向けのクラウド管理システムでは、家賃収入や支出内訳、空室率などの重要指標がグラフ化され、いつでもどこでも確認できます。例えば、ある個人オーナー様はシステム上で物件ごとの収支を細かく分析できるようになった結果、経営の課題点を把握して対策を講じることで収益改善に成功しました。このようにデータが蓄積・可視化されることで、客観的な数値に基づいた意思決定が可能になります。さらに、近年ではシステムにAI分析機能を組み込み、意思決定支援に活用する例も出てきています。例えば、AIによる賃料査定機能を備えたサービスでは、最新の市場相場やトレンドデータをもとに適正賃料の提案を受けることができます。

    迅速なコミュニケーションによる信頼関係の強化

    オーナー様と物件管理会社、あるいはオーナー様と入居者とのコミュニケーションも、DXによって格段に円滑化されています。クラウド型の不動産管理システムには多くの場合、チャット機能や通知機能が統合されており、従来は電話や郵送で行っていた連絡事項もオンライン上で素早くやり取りできます。例えば、管理会社からオーナー様への連絡事項(賃貸契約の更新確認や修繕の承諾依頼など)は、システムを通じて即座に通知され、オーナー様はスマホやPC上でワンクリックで承諾・返信が可能です。これまで郵送書類をやり取りしていた手間がなくなり、その都度の対応負荷が軽減されます。実際に、クラウドシステム上で報告書をオンライン共有し、チャットでやり取りを完結できるようにした結果、オーナー様は都合の良い時間に情報を確認・返信できるようになり、管理会社側も電話連絡の不達や折り返し待ちといった無駄を減らせた例があります。コミュニケーションの記録がすべてクラウド上に残るため、「聞いていない」「言った言わない」の行き違いも防止でき、双方の信頼関係向上にもつながります。

    入居者対応においても、DX化がスピードアップをもたらしています。入居者は専用の入居者アプリやWEBポータルを通じて、設備の不具合報告や質問を気軽に送信でき、管理側はすぐに対応状況をフィードバックできます。営業時間外でもチャットボットや自動応答で初動対応が可能な仕組みを取り入れている管理会社もあり、これにより夜間や週末の入居者からの問い合わせにも即座に対応できるようになっています。こうした迅速なコミュニケーション体制は入居者満足度の向上につながり、結果的にオーナー様の物件の長期安定運用(入居者の定着や空室減少)にも寄与します。

    オーナー様にとっての主なメリット

    以上見てきたように、最新の不動産管理システム導入によるDX化は、不動産オーナー様に多くのメリットをもたらします。ここで改めて主な利点を整理します。

    • 業務時間の大幅削減と生産性向上: 賃料管理や帳簿作成といった事務作業が自動化されることで、オーナー様自身が費やす時間は大幅に減少します。管理会社がDX化している場合も、担当者の残業削減や人手不足解消につながり、結果的にオーナー様へのサービス品質向上に跳ね返ってきます。

    • 透明性の向上と信頼関係の強化: クラウド上でデータがリアルタイムに共有されることで、オーナー様はご自身の資産状況を常に把握できます。収支や契約に関する情報がオープンになることで、「何が起きているか分からない」といった不安が解消され、管理会社との信頼関係も深まります。データがクラウドに保存され履歴も残るため、情報の抜け漏れや紛失も防げます。実際に「データの一元管理により経営の透明性が向上した」と評価する声も弊社のお客様にもあり、DX化はオーナー様と管理会社の双方に安心感をもたらします。

    • 的確な経営判断のサポート: システム上に蓄積されたデータやレポート、さらにはAI分析結果は、オーナー様の意思決定を力強く支援してくれます。リアルタイムの業績データを見ながら、物件ごとの収益性を比較検討したり、賃料水準の見直しをデータに基づいて判断したりできるようになります。例えば、空室が続く物件に対して適正賃料をAI査定機能で算出し、早期にテコ入れする判断が下せるかもしれません。蓄積データから将来の収支予測を立てることも容易になるため、長期的な資産運用計画にも役立ちます。DX化によって「勘と経験」に頼っていた経営から脱却し、データに基づく戦略的な賃貸経営への転換が図れる点は大きなメリットです。

    • コスト削減とコンプライアンス強化: クラウド活用によりペーパーレス化が進むことで、郵送費や印刷費などのコスト削減にもつながります。また、システムが常に最新法令にアップデートされていれば、契約書式の改定や重要事項説明の電子化など法改正への対応もスムーズです。人的ミスの減少と相まって、トラブル防止やコンプライアンス順守の強化につながる点も見逃せません。万一システム障害や災害が発生しても、クラウド型ならデータは安全にバックアップされており業務継続性が高いという利点もあります(オンプレミスに比べ長時間止まるリスクは低いとされています)。

    主要なクラウド型不動産管理システム(国内)

    最後に、日本国内で提供されている主要なクラウド型不動産管理システムをいくつかご紹介します。いずれも不動産管理業務の効率化に役立つよう設計されたものです。自社で導入を検討する際や、管理会社に提案する際の参考にしてみてください。

    • いえらぶCLOUD(株式会社いえらぶGROUP) – 賃貸・売買仲介から物件管理まで不動産業務全般をカバーするオールインワン型クラウドシステム。導入実績は12,000社以上にのぼり、多彩な機能を備えています。ホームページ作成やポータルサイト連携、顧客管理、電子契約機能まで充実しており、業務効率化と集客力強化の両面で貢献します。

    • いい生活賃貸管理クラウド(株式会社いい生活) – 不動産業界向けクラウドサービス大手の一つで、物件管理から賃貸借契約、入出金管理まで包括的にサポートするシステムです。1,500社以上の法人に導入されており、その使いやすさと多機能性が評価されています。法改正へのアップデート対応などサポート体制も整っており、安心して利用できます。

    • 賃貸革命10(日本情報クリエイト株式会社) – 全国で約5,000社(4,941社)に導入されている人気の賃貸管理システムです。賃貸仲介業務から管理業務まで一貫対応でき、物件情報・契約内容・家賃データを一元管理して業務効率化を実現します。誰にでも使いやすいインターフェースと充実したサポートも魅力で、中小の不動産会社から高い支持を得ています。 

    自社の規模やニーズに合わせて、最適なシステムを選定するとよいでしょう。導入にあたっては費用対効果はもちろんですが、操作のしやすさやサポート体制、そして自社の業務フローとの適合性が重要です。場合によっては段階的な導入や従業員研修を行いながら、無理なくDX化を進めることをおすすめします。

    おわりに

    クラウド型不動産管理システムを活用した不動産管理業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、その効率化・自動化の効果とオーナー様にもたらすメリットを中心に解説してきました。賃料管理や収支報告の自動化による時間短縮、データの可視化による透明性向上と意思決定支援、そしてコミュニケーション迅速化による信頼関係強化など、DX化の恩恵は多岐にわたります。実際の導入事例でも、業務時間の大幅削減や収益性の改善といった成果が報告されており、これはオーナー様にとって見逃せないポイントです。

    不動産テックの発展により、かつては手間と経験に頼っていた不動産管理が、誰でも扱える使いやすいクラウドサービスへと進化しています。DX化により生まれた時間的・精神的なゆとりは、オーナー様が本来注力すべき戦略的な業務や物件価値向上策に振り向けることができます。言い換えれば、最新の不動産管理システムは単なる業務効率化ツールに留まらず、オーナー様の経営パートナーとして意思決定を支える存在になりつつあるのです。

    これから不動産管理のDXを進めたいとお考えのオーナー様は、本記事で紹介したメリットや事例を参考に、ぜひ身近なところからデジタル化に踏み出してみてください。最初は小さな一歩でも、継続的にDXを推進することで、将来的には大きな成果(時間短縮、収益向上、リスク低減など)となって返ってくることでしょう。忙しい日々の業務が少しでも楽になり、不動産経営がより安心で透明なものになるよう、適切なクラウド型管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。きっとその効果を実感していただけるはずです。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター