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    2025年、東京を変貌させる主要再開発プロジェクト

    東京23区各地で進行中の大規模再開発プロジェクトが、都市景観と不動産市場に新たな活力をもたらしています。2025年はその集大成として、多機能型の超高層ビル群や複合施設が相次いで開業・竣工し、ビジネス拠点や居住環境が大きく様変わりする見込みです。以下では、再開発の対象エリアプロジェクト名事業主体施設計画(住宅・商業・オフィス等)完成予定時期、および特徴的なポイントについて、主要プロジェクトをニュース記事形式でまとめます。

    品川・高輪ゲートウェイシティ(JR品川開発プロジェクト第I期)

    「高輪ゲートウェイシティ(仮称)」パース(外観イメージ) 画像提供:JR東日本

    東京の玄関口・品川エリアでは、JR東日本主導による「高輪ゲートウェイシティ」開発が進行中です。再開発区域はJR山手線新駅「高輪ゲートウェイ駅」周辺の旧車両基地跡(港区港南・芝浦・高輪・三田付近)に及び、敷地全体で南北約1.6kmにも及ぶ都内最大級の開発と言われます。第I期計画では駅前にツインタワーの複合棟(THE LINK PILAR 1)が建設され、オフィス・商業施設・ホテル・カンファレンス(MICE)などを収容します。2024年度末の2025年3月27日に街開き(まちびらき)を迎える予定で、同時に高輪ゲートウェイ駅も全面開業します。他の棟として、31階建ての複合棟II(THE LINK PILAR 2)や文化発信拠点となる文化創造棟、44階建ての住宅棟が順次建設され、2026年春にグランドオープン(全体完成)を迎える見通しです。本プロジェクトの特徴は、新駅直結の利便性に加え、江戸時代の鉄道遺構「高輪築堤」の一部保存や、最新技術を活用したスマートシティ機能を備える点です。開発コンセプトは「Global Gateway」であり、空港へのアクセス利点を活かし国際ビジネス交流拠点を目指す持続可能な街づくりとなっています。

    虎ノ門・麻布台ヒルズ(虎ノ門・麻布台地区再開発)

    港区虎ノ門~麻布台エリアでは、森ビル株式会社が中心となって進めてきた再開発「麻布台ヒルズ」が2023年11月24日に開業しました。同プロジェクトは「アークヒルズ」と「六本木ヒルズ」の中間に位置する約8.1haの敷地を対象に、オフィス高級ホテル高層住宅(約1,400戸)、商業施設(約150店舗)、国際学校文化施設など多彩な機能を備えた“垂直都市”を創出するものです。中核となる麻布台ヒルズ森JPタワーは地上64階・高さ約330mに及び、現在日本で最も高い超高層ビルとして存在感を放ちます。森JPタワー低層部には大規模商業ゾーン、中層部には先進的オフィス、最上部にはラグジュアリーホテル(アマン系列)が入居し、高層ビルと多機能施設を融合させた「コンパクトシティ」の象徴です。隣接して地上54階・地上53階の住宅タワー2棟(レジデンスA・B)を配置し、街の中心には約6,000㎡の緑豊かな中央広場を設けることで、“都会のオアシス”と呼べる環境を実現しています。事業主体は森ビルのほか地権者や企業で構成する再開発組合で、国家戦略特区の認定を受けたプロジェクトとして東京都の国際都市機能強化にも資する取り組みです。麻布台ヒルズはオフィス就業者約2万人、居住者約3,500人を受け入れる大街区となり、東京の磁力向上に寄与するランドマークとなっています。

    渋谷・桜丘「Shibuya Sakura Stage」(渋谷駅桜丘口地区再開発)

    渋谷駅西南側の桜丘町エリア(渋谷駅桜丘口地区)では、東急不動産を中心とする再開発プロジェクト「渋谷サクラステージ (Shibuya Sakura Stage)」が進み、2023年11月に施設が竣工、2024年中頃までに段階的に開業しました。敷地面積約2.6ヘクタールに及ぶ渋谷最大級の再開発で、39階建ての「SHIBUYAタワー」と30階建て「SAKURAタワー」を中核に、低層棟や広場を含む複合施設を整備しています。主要用途は大規模なオフィス(駅周辺再開発では最大面積)、渋谷駅直結では唯一となる高層住宅(サービスアパート含む)、保育施設、商業店舗(約1.5万㎡に約90店)など多岐にわたり、「働く・遊ぶ・暮らす」の全てが揃うエリアの創出がテーマです。事業主体は再開発組合(東急不動産他)で、再開発前は雑居ビルやライブハウスが立ち並んでいた地区を最先端のビジネス・生活拠点へ刷新しました。本プロジェクトの特徴として、渋谷駅との回遊性向上策が挙げられます。再開発に合わせてJR渋谷駅新南改札口が移設新設され、同施設と駅東側を結ぶ自由通路や国道246号線下の連絡地下通路が新たに整備されました。これにより東西の人の流れが劇的に改善し、開業後に桜丘エリアの歩行者数が着工前比約1.43倍に増加するなど、街全体の回遊性と賑わい創出に寄与しています。渋谷サクラステージは、IT企業の大型オフィス誘致(例:Google日本法人の新拠点入居)でも注目され、渋谷の「100年に一度の大改造」のラストピースの一つと位置付けられています。

    浜松町・芝浦「BLUE FRONT SHIBAURA」(芝浦一丁目プロジェクト)

    東京湾岸部の浜松町~芝浦エリアでは、JR東日本野村不動産が共同で手掛ける大規模再開発「ブルーフロント芝浦 (BLUE FRONT SHIBAURA)」が進行中です。旧東芝ビルディング(浜松町ビル)の建替事業として企画されたもので、区域面積約4.7haの敷地に高さ約230mの超高層ツインタワーを建設し、約10年かけて街区全体を開発する計画です。南側の1棟目となる「タワーS」は地上43階建てで、オフィス商業施設ホテル・(一部)住宅を含む複合ビルとなります。竣工は2025年2月、商業ゾーンは同年9月開業予定で、高層部35~43階には日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント東京」(全217室)が2025年7月に開業予定です。北側の2棟目「タワーN」も含めた全体開業は2030年度を見込みます。本プロジェクトの特徴は、ウォーターフロントの立地を活かして都心と湾岸をつなぐ交流拠点を目指している点です。敷地周辺の芝浦運河には舟運拠点を整備し、さらに浜松町駅方面と竹芝・芝浦エリアを結ぶ長大な歩行者デッキ「グリーンウォーク」を設置することで、浜離宮恩賜庭園など水辺の景観と緑を感じられる回遊動線を創出します。既に2025年3月には浜松町駅南口から本街区南側までのデッキ区間が開通しており、今後北口側や竹芝方面まで延伸予定です。こうした交通・環境インフラの充実により、職住近接のスマートシティとして湾岸エリアの価値向上とビジネス拠点機能の強化が図られています。

    日本橋一丁目中地区再開発(日本橋エリア)

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    千代田区・中央区の都心東部では、日本橋エリアで多数の再開発が計画・進行されています。その中でも注目されるのが、三井不動産・野村不動産をはじめとする組合施行の「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」です。日本橋川沿いの約3.0haに及ぶ広大な区域を対象とし、オフィスホテル住宅商業MICEビジネス支援施設という6つの用途から成る日本橋最大級の複合開発となります。中心には地上52階・高さ約284mの超高層ビル(C街区、メインタワー)がそびえ、上層部に高級ホテルと高層住宅、中層以下に大規模オフィスと商業施設、会議場等を配置する計画です。低層部・高層部それぞれにスカイガーデン(空中庭園)を設け、東京の歴史的中枢である日本橋において水辺と空に開かれた都会のオアシス空間を創出します。竣工予定は2026年3月末で、既に2021年末に着工済みです。本プロジェクトは、日本政府が推進する国際金融拠点の形成にも呼応しており、羽田空港へ約30分という立地優位性と相まって世界からヒト・モノ・情報を呼び込むハブ機能が期待されています。また、老朽化した首都高速の地下化(別途計画)に合わせて日本橋川沿いに広場空間を整備する構想もあり、伝統と革新が共存する街づくりの象徴となるでしょう。三井不動産は本事業のほかにも、周辺で「日本橋二丁目地区」「日本橋室町三丁目地区」など複数の再開発を計画しており、日本橋全体で段階的な街並み刷新が進んでいます。

    主な再開発プロジェクト比較一覧

    最後に、上述した主要プロジェクトの概要を一覧表にまとめます(※完成予定時期は現時点の公表計画に基づきます)。

    エリア(プロジェクト名) 事業主体 主な用途 完成・開業予定 特徴的ポイント
    品川・高輪(高輪ゲートウェイシティ) JR東日本(品川開発プロジェクト) オフィス、商業、ホテル、住宅、MICE施設等 2025年3月街開き(全体2026年春予定) 新駅直結の国内最大級再開発。国際交流拠点・スマートシティ
    虎ノ門・麻布台(麻布台ヒルズ) 森ビル 他(再開発組合) オフィス、商業、ホテル、住宅、学校、文化施設等 2023年11月開業 日本一高い330m超高層棟含む。大規模中央広場と緑地
    渋谷・桜丘町(渋谷サクラステージ) 東急不動産 他(再開発組合) オフィス、商業、住宅(サービスアパート)、生活支援施設等 2023年11月竣工※2024年7月全テナント開業 駅直結ツインタワー。新改札・デッキ整備で回遊性向上
    浜松町・芝浦(ブルーフロント芝浦) JR東日本・野村不動産 他 オフィス、商業、ホテル、住宅 タワーS:2025年竣工全体:2030年度予定 230mツインタワー。湾岸と都心を繋ぐ歩行者デッキ整備
    日本橋一丁目(日本橋一丁目中地区再開発) 日本橋一丁目中地区再開発組合(三井不動産・野村不動産 他) オフィス、商業、ホテル、住宅、MICE 等 2026年3月竣工予定 284m・52階の日本橋最高層ビル。国際金融拠点形成

    各プロジェクトはいずれも東京の都市機能強化と不動産価値向上に直結する重要案件です。不動産に関心を持つビジネスパーソンや投資家にとって、これら再開発の進捗はオフィス需給動向や地域価値の指標となるでしょう。引き続き、東京では2025年以降も八重洲・日本橋地区の超高層複合ビル建設(東京ミッドタウン八重洲開業や東京駅前「Torch Tower」計画など)、新宿駅周辺の大改造計画などが控えており、都市再編の流れは2030年頃まで続く見通しです。東京がグローバル都市として進化し続ける中、最新プロジェクト動向の把握は今後の投資戦略において不可欠と言えるでしょう。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。