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    【不動産オーナー向け】洗濯機置き場設置で賃料はあがるか?

    不動産オーナーの皆様にとって、空室対策と賃料の最適化は永続的な課題です。特に昨今の賃貸市場では、入居者のライフスタイルの変化に対応した設備の充実が、物件の競争力を大きく左右する要因となっています。

    その中でも注目を集めているのが室内洗濯機置き場の設置です。従来、ベランダや屋外に設置されることが多かった洗濯機置き場ですが、現在では入居者の必須設備として認識されるまでに重要度が高まっています。

    本記事では、INA&Associatesとして数多くの不動産オーナー様とお取引させていただいた経験を基に、洗濯機置き場設置が賃料に与える具体的な影響について詳しく解説いたします。設置費用から投資回収期間、さらには成功事例まで、データに基づいた分析をお届けし、皆様の投資判断の一助となることを目指しています。

    洗濯機置き場設置が賃料に与える影響

    人気設備ランキングでの位置づけ

    2024年最新の賃貸物件人気設備ランキングにおいて、室内洗濯機置き場は単身者向け・ファミリー向け物件の両方で第2位にランクインしています。これは「この設備がなければ入居が決まらない」という必須設備としての認識が、入居者の間で急速に高まっていることを示しています。

    特に注目すべきは、単身者向け物件における順位の上昇です。従来は3位であった室内洗濯機置き場が2位に上昇したことは、若年層を中心とした入居者のライフスタイルの変化を如実に表しています。現代の入居者は、洗濯機を屋外に設置することに対して強い抵抗感を持っており、「外に洗濯機は置きたくない」「室外だと壊れやすい」といった声が多数寄せられています。

    以下の表は、2024年の人気設備ランキングを示しています。

    順位 単身者向け ファミリー向け
    1位 エアコン エアコン
    2位 室内洗濯機置き場 室内洗濯機置き場
    3位 TVモニター付きインターホン TVモニター付きインターホン
    4位 独立洗面台 追い焚き機能
    5位 バス・トイレ別 バス・トイレ別

    この結果から明らかなように、室内洗濯機置き場は現在の賃貸市場において、エアコンに次ぐ重要度を持つ設備として位置づけられています。

    具体的な賃料アップ事例

    実際の市場データを分析すると、室内洗濯機置き場の設置による賃料への影響は顕著に現れています。弊社が関与した事例では、ワンルームマンションにおいて洗濯機置き場を室内に設置したことで、月額賃料が1.2万円アップした実績があります。

    また、別の事例では、築年数の経過により賃料の下落圧力が強まっていた物件において、室内洗濯機置き場の設置により3,000円から5,000円の賃料下落を防止することができました。これは、設備の充実により物件の競争力が向上し、市場相場を維持できたことを意味しています。

    地域別の傾向を見ると、都市部では特に効果が高く、単身者向け物件が多いエリアでは平均して月額3,000円から8,000円の賃料アップが実現されています。一方、ファミリー向け物件では、洗濯機置き場の設置と併せて脱衣所の新設や洗面台の交換を行うことで、より大幅な賃料アップが期待できます。

    以下の表は、物件タイプ別の賃料アップ効果をまとめたものです。

    物件タイプ 平均賃料アップ額
    ワンルーム 3,000円~8,000円
    1K・1DK 5,000円~10,000円
    ファミリー向け 8,000円~15,000円

    入居率への影響

    賃料アップ以上に重要な効果として、入居率の向上が挙げられます。室内洗濯機置き場の設置により、内見数が平均して30%から50%増加し、空室期間が平均2ヶ月短縮されるという調査結果があります。

    特に注目すべきは、入居者属性の向上です。室内洗濯機置き場を備えた物件には、より安定した収入を持つ入居者からの申し込みが増加する傾向があります。これは、現代的な設備を重視する入居者層が、一般的により高い支払い能力を有していることと関連しています。

    洗濯機置き場設置の費用対効果分析

    設置費用の詳細

    室内洗濯機置き場の設置費用は、物件の構造や既存設備の状況により大きく変動しますが、一般的には10万円から25万円程度で実施可能です。この費用には、洗濯機パンの設置、給水・排水配管工事、電気工事、および必要に応じた床や壁の補修工事が含まれます。

    費用の内訳を詳しく見ると、以下のような構成になっています。

    工事項目 費用相場 備考
    洗濯機パン 1万円~3万円 サイズ・材質により変動
    給水配管工事 3万円~5万円 既存配管からの距離による
    排水配管工事 4万円~7万円 排水経路の複雑さによる
    電気工事 1万円~2万円 コンセント設置・配線工事
    床・壁補修 1万円~3万円 既存状況による
    施工費・諸経費 2万円~5万円 業者により変動
    合計 12万円~25万円 平均15万円程度

    費用に大きく影響する要因として、既存の給排水管の位置が挙げられます。キッチンや浴室から近い場所に設置する場合は費用を抑えることができますが、離れた場所に設置する場合は配管工事が複雑になり、費用が増加する傾向があります。

    また、マンションの場合は管理組合の承認が必要な場合があり、工事内容によっては追加の手続きや費用が発生する可能性があります。事前に管理会社や管理組合への確認を行うことが重要です。

    投資回収期間の計算

    設置費用に対する投資回収期間を具体的に計算してみましょう。先ほどの事例を基に、異なるシナリオでの回収期間を算出します。

    シナリオ1:ワンルーム物件(賃料アップ5,000円の場合)
    -設置費用:15万円
    -月額賃料アップ:5,000円
    -投資回収期間:15万円÷5,000円=30ヶ月(2.5年)

    シナリオ2:1K物件(賃料アップ8,000円の場合)
    -設置費用:18万円
    -月額賃料アップ:8,000円
    -投資回収期間:18万円÷8,000円=22.5ヶ月(約1.9年)

    シナリオ3:空室期間短縮効果を含む場合
    -設置費用:15万円
    -月額賃料アップ:5,000円
    -空室期間短縮による効果:12万円(2ヶ月分)
    -実質投資回収期間:(15万円-12万円)÷5,000円=6ヶ月

    このように、空室期間の短縮効果を含めて考えると、投資回収期間は大幅に短縮されます。特に空室が長期化している物件では、設置による即効性の高い効果が期待できます。

    費用対効果を高めるポイント

    投資効果を最大化するためには、以下のポイントを考慮することが重要です。

    1.設置場所の最適化
    家事動線を考慮し、脱衣所や洗面所近辺への設置が理想的です。入居者の利便性が向上することで、より高い賃料設定が可能になります。

    2.他の設備との組み合わせ
    洗濯機置き場の設置と同時に、独立洗面台の設置や脱衣所の新設を行うことで、相乗効果により更なる賃料アップが期待できます。

    3.適切なタイミング
    退去時のリフォーム工事と合わせて実施することで、工事費用を削減し、空室期間を最小限に抑えることができます。

    4.地域特性の考慮
    単身者が多いエリアでは特に効果が高いため、物件の立地特性を踏まえた投資判断が重要です。

    5.長期的な視点
    設備投資は一度行えば長期間にわたって効果が持続するため、短期的な回収期間だけでなく、10年、20年といった長期的な収益性も考慮に入れることが大切です。

    以下の表は、投資回収期間と長期的な収益性を示しています。

    投資回収後の期間 累積収益効果(月額5,000円アップの場合)
    3年目 18万円(設置費用15万円を回収後3万円の利益)
    5年目 42万円
    10年目 102万円
    15年目 162万円

    このように、長期的に見ると非常に高い投資効果が期待できることがわかります。

    設置時の注意点と成功のポイント

    設置に必要な条件

    室内洗濯機置き場の設置を成功させるためには、給水・排水・電気の3つの条件を満たす必要があります。これらの条件を事前に確認し、適切な計画を立てることが重要です。

    給水条件
    洗濯機への給水には、適切な水圧と安定した水量が必要です。既存の給水管から分岐させる場合、配管の口径や水圧を確認し、必要に応じて増圧ポンプの設置を検討する必要があります。特に高層階の物件では、水圧不足により洗濯機が正常に動作しない可能性があるため、事前の水圧測定が不可欠です。

    排水条件
    排水については、洗濯機からの排水を適切に処理できる排水経路の確保が必要です。既存の排水管への接続が困難な場合は、新たな排水経路の構築が必要になり、費用が大幅に増加する可能性があります。また、排水管の勾配や容量も重要な要素であり、専門業者による詳細な調査が推奨されます。

    電気条件
    洗濯機の電源として、専用のコンセント(15A以上)の設置が必要です。既存の電気容量で対応可能かどうかを確認し、必要に応じて分電盤の増設や配線工事を行います。特に古い物件では、電気容量が不足している場合があるため、電気工事士による事前調査が重要です。

    以下のチェックリストを参考に、設置条件を確認してください。

    確認項目 チェックポイント 対応方法
    給水 水圧・水量・配管位置 水圧測定・配管調査
    排水 排水経路・勾配・容量 排水テスト・配管調査
    電気 電気容量・配線・コンセント位置 電気容量調査・配線計画
    構造 床の強度・防水性 構造調査・防水工事
    法規制 建築基準法・管理規約 法令確認・管理組合承認

    設置工事の流れ

    適切な工事手順を踏むことで、工期の短縮と品質の確保を両立できます。一般的な工事の流れは以下の通りです。

    1.事前調査・設計(1週間)
    専門業者による現地調査を実施し、給排水・電気の条件を詳細に確認します。この段階で設置場所の最終決定と工事内容の詳細設計を行います。

    2.管理組合・近隣への説明(1週間)
    マンションの場合は管理組合への工事届出を行い、近隣住民への工事説明を実施します。工事期間中の騒音や振動について事前に説明することで、トラブルを防止できます。

    3.材料調達・準備(3日)
    洗濯機パンや配管材料、電気部材などの調達を行います。品質の高い材料を選定することで、長期的な耐久性を確保できます。

    4.配管・電気工事(2-3日)
    給排水配管工事と電気工事を実施します。この段階では、将来のメンテナンスを考慮した施工が重要です。

    5.仕上げ工事(1日)
    床や壁の補修、洗濯機パンの設置を行います。美観にも配慮した仕上げにより、入居者の満足度を高めることができます。

    6.動作確認・引き渡し(半日)
    実際に洗濯機を設置して動作確認を行い、問題がないことを確認してから引き渡しを行います。

    よくある失敗例と対策

    過去の事例から、以下のような失敗パターンが見受けられます。これらを事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

    失敗例1:設置場所の選定ミス
    家事動線を考慮せずに設置場所を決定した結果、入居者にとって使い勝手が悪く、期待した効果が得られないケースがあります。

    対策:
    入居者の生活パターンを想定し、洗面所や脱衣所からの動線を重視した設置場所の選定を行います。また、可能であれば複数の候補地を検討し、最適な場所を選択します。

    失敗例2:費用の見積もり不足
    事前調査が不十分で、工事開始後に追加工事が必要になり、予算を大幅に超過するケースがあります。

    対策:
    複数の専門業者から詳細な見積もりを取得し、予備費として20%程度の余裕を見込んだ予算計画を立てます。また、契約時に追加工事の条件を明確に定めておきます。

    失敗例3:入居者ニーズとのミスマッチ
    物件の立地や入居者層を考慮せずに設置した結果、実際の需要と合わないケースがあります。

    対策:
    周辺の競合物件の設備状況や入居者の属性を事前に調査し、ターゲットとなる入居者層のニーズに合致した設備投資を行います。

    失敗例4:メンテナンス計画の不備
    設置後のメンテナンス計画が不十分で、長期的な維持管理に問題が生じるケースがあります。

    対策:
    設置時に将来のメンテナンスを考慮した施工を行い、定期点検の計画を策定します。また、入居者への使用方法の説明も重要です。

    これらの対策を講じることで、洗濯機置き場設置の成功確率を大幅に向上させることができます。特に、事前の調査と計画に十分な時間をかけることが、プロジェクト成功の鍵となります。

    まとめ

    室内洗濯機置き場の設置は、現在の賃貸市場において極めて効果的な投資戦略の一つです。本記事で検証した通り、適切に実施された場合の投資効果は以下のように総括できます。

    賃料アップ効果
    月額3,000円から15,000円の賃料アップが期待でき、物件タイプや立地により効果は変動します。特に単身者向け物件では高い効果が見込まれます。

    空室対策効果
    内見数の30-50%増加と空室期間の平均2ヶ月短縮により、機会損失の大幅な削減が可能です。

    投資回収期間
    一般的に1.5年から4年程度で投資回収が可能であり、長期的には非常に高い収益性を実現できます。

    市場競争力の向上
    人気設備ランキング2位の設備を導入することで、物件の市場競争力が大幅に向上し、より質の高い入居者の獲得が期待できます。

    次のアクション
    洗濯機置き場設置をご検討の不動産オーナー様は、まず物件の現状調査から始めることをお勧めします。給排水・電気の条件確認、設置場所の検討、複数業者からの見積もり取得を行い、投資計画を策定してください。

    INA&Associatesでは、不動産オーナー様の収益最大化をサポートするため、設備投資に関するコンサルティングサービスも提供しております。物件の特性に応じた最適な投資戦略の策定から、信頼できる施工業者のご紹介まで、トータルでサポートいたします。

    よくある質問

    Q1.設置費用の相場はどのくらいですか?

    A1.一般的な設置費用は10万円から25万円程度です。ただし、既存の給排水管の位置や物件の構造により、さらに費用が変動する場合があります。費用の内訳は、洗濯機パン代、給排水配管工事、電気工事、床・壁補修工事、施工費などです。正確な費用を把握するためには、複数の専門業者から詳細な見積もりを取得することをお勧めします。

    Q2.どのような物件に設置効果が高いですか?

    A2.特に効果が高いのは、単身者向けの物件(ワンルーム、1K、1DK)です。都市部の駅近物件や学生・若年社会人が多いエリアでは、より高い効果が期待できます。また、築年数が経過し競争力の低下が懸念される物件では、設備の現代化により大幅な競争力向上が見込まれます。ファミリー向け物件でも効果はありますが、他の設備(追い焚き機能、独立洗面台など)との組み合わせにより、より高い効果を実現できます。

    Q3.設置工事にはどのくらいの期間がかかりますか?

    A3.一般的な工事期間は、事前調査から完成まで約2週間程度です。内訳は、事前調査・設計に1週間、管理組合への届出・近隣説明に1週間、実際の工事に2-3日程度です。ただし、配管工事が複雑な場合や管理組合の承認に時間がかかる場合は、さらに期間が延びる可能性があります。入居者がいる場合は、工事期間中の生活への影響を最小限に抑えるため、事前の十分な説明と調整が重要です。

    Q4.既存入居者がいる場合の対応方法は?

    A4.既存入居者がいる場合は、工事の必要性と入居者のメリットを丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。工事期間中の騒音や水道の一時停止について事前に通知し、可能な限り入居者の生活に配慮したスケジュールを組みます。また、工事完了後は入居者にとっても利便性が向上することを強調し、協力を求めます。場合によっては、工事期間中の家賃減額や一時的な代替住居の提供を検討することも必要です。

    Q5.設置後のメンテナンスは必要ですか?

    A5.定期的なメンテナンスにより、設備の長寿命化と入居者満足度の維持が可能です。年1回程度の給排水配管の点検、洗濯機パンの清掃、電気系統の確認を行うことをお勧めします。また、入居者に対して適切な使用方法を説明し、トラブルの予防に努めることが重要です。メンテナンス費用は年間1-2万円程度を見込んでおけば十分です。適切なメンテナンスにより、設備の耐用年数を延ばし、長期的な投資効果を最大化できます。


    本記事の記載内容は2024年12月時点の情報に基づいており、市場状況や法令の変更により内容が変わる場合があります。投資判断は各オーナー様の責任において行っていただきますようお願いいたします。

    稲澤大輔

    稲澤大輔

    INA&Associates株式会社 代表取締役。大阪・東京・神奈川を拠点に、不動産売買・賃貸仲介・管理を手掛ける。不動産業界での豊富な経験をもとに、サービスを提供。 「企業の最も重要な資産は人財である」という理念のもと、人財育成を重視。持続可能な企業価値の創造に挑戦し続ける。 【取得資格(合格資格含む)】 宅地建物取引士、行政書士、個人情報保護士、マンション管理士、管理業務主任者、甲種防火管理者、競売不動産取扱主任者、賃貸不動産経営管理士、マンション維持修繕技術者、貸金業務取扱主任者、不動産コンサルティングマスター