近年、サラリーマンの副収入や老後資金対策としてワンルームマンション投資が注目されています。初期費用を抑えて始めやすく、「年収〇〇万円でも可能」「節税になる」などと宣伝されるため、不動産投資初心者にも人気があります。しかし一方で、インターネットや専門家からは「ワンルームマンション投資はやめろ」「初心者にはおすすめできない」といった声も多く聞かれます。実際、国民生活センターへの相談では、20代の若年層からの投資用マンションに関する相談が2013年度の160件から2018年度には405件と2.5倍に増加しており、多くの人が契約後に後悔している実態がうかがえます。本記事では、なぜワンルームマンション投資が「やめろ」と言われるのか、失敗しやすいリスクや問題点を詳しく解説します(空室リスク、家賃下落、修繕費用増加、出口戦略の難しさ等)。また新築ワンルームと中古ワンルームの違いやサブリース契約・過剰な営業勧誘の社会問題、実際の失敗事例や専門家・公的機関の見解も紹介します。初心者の方はリスクと現実を正しく理解して、ご自身の判断で投資を行うようにしてください。
ワンルームマンション投資の代表的なリスクとデメリット
ワンルームマンション投資には一見手軽で安定収入が得られる魅力がありますが、実際には以下のような代表的リスクが存在します。初心者が十分に理解せずに始めると失敗につながりやすい点を確認しましょう。
空室リスクによる家賃収入ゼロの可能性
ワンルームマンションは単身者向けの小規模物件であるため、空室になりやすいというリスクがあります。特に学生や単身赴任者が多い地域では、卒業や転勤などライフイベントで退去が発生しやすく、入居者の入れ替わりが頻繁です。そのため、一度空室になると次の入居者が見つかるまで家賃収入が途絶えてしまいます。ローン返済や管理費・固定資産税などの支出は続くため、空室期間が長引くと赤字を被る可能性があります。実際、不動産投資の失敗理由として「空き室が続いた」が上位に挙がっており、家賃収入ゼロの打撃が大きいことが分かります。空室リスクを低減するには立地選びが重要ですが、初心者には見極めが難しく、収益悪化の大きな要因となりえます。
家賃下落による収益悪化のリスク
賃貸経営では築年数の経過に伴い家賃が下落していく点にも注意が必要です。一般的にワンルームマンションの賃料は年間約1%ずつ下落すると言われ、築3~10年までは年約2.2%、10~20年では約0.9%、20年以降は約0.7%というペースで徐々に下がっていく傾向があります。つまり、新築購入直後から賃料は下落の一途をたどり、当初想定していた収入が得られなくなるリスクが高いのです。購入時点で収支がトントンあるいは僅かでも赤字の場合、家賃が下がるにつれて収支はさらに悪化する一方です。特に新築ワンルームは販売価格が高い分、最初から利回りが低く設定されているため、家賃下落による影響でローン返済や経費を差し引いた実質収支がマイナスに転落しやすいと言えます。家賃下落リスクは長期保有する上で避けられないため、楽観的な収支シミュレーションは禁物です。
修繕費用・維持費の増加による負担
物件の築年数が経過すれば建物の老朽化が進み、それに伴い修繕費用や維持管理費の負担が増加します。ワンルームマンションでも定期的な大規模修繕(外壁補修や設備交換など)は避けられず、毎月支払う修繕積立金も将来的に値上げされる可能性があります。築古物件になるほど新しい物件に比べて競争力が低下し、入居者募集の際にリフォームや設備更新が必要になるケースも多くなります。こうした経年劣化によるコスト増は収益を圧迫し、想定利回りを大きく下げる要因です。また、購入当初は故障しなかった設備(給湯器やエアコン等)の交換費用も、築年が進むにつれて発生してきます。初心者の中には「区分所有なので修繕費は大した負担でない」と考える方もいますが、ワンルーム投資でも設備故障時の実費負担や管理費・税金といった維持費は確実に発生します。その結果、「思った以上に費用がかかって赤字になった」という失敗談も多く、経年による費用増加リスクは軽視できません。
流動性の低さと出口戦略の難しさ
不動産投資では将来物件を売却(出口)して利益確定や損切りをする場面もありますが、ワンルームマンションは売却時に買い手を見つけにくいという流動性の低さの問題があります。特に地方都市や人気エリアでない物件ほど市場での需要が限られ、適正価格で売却できない可能性が高まります。ワンルームは居住用としてファミリー層には向かず、主な購入希望者は投資家に限られるため、市況の影響を受けやすくなります。また、新築で購入した場合でも、購入直後から中古物件扱いとなり資産価値が大きく下落します。新築ワンルームは「買った瞬間に20〜30%値下がりする」とも言われ、売却しようにもローン残高が物件価値を上回りオーバーローン状態で手放せないケースもあります。このように出口戦略が立てにくい点もワンルーム投資のリスクであり、長期的に資金が拘束されてしまう可能性があります。いざという時に柔軟に資産処分できないことから、「流動性の低さ」は初心者にとって大きなデメリットと言えるでしょう。
新築ワンルームと中古ワンルームの違い・問題点
一口にワンルーム投資と言っても、「新築マンション」と「中古マンション」では事情が異なります。それぞれにメリットもありますが、投資効率やリスク面の問題点が指摘されています。
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新築ワンルームの問題点: 新築物件は最新の設備や高い入居需要が見込める反面、物件価格が割高に設定されています。販売会社の利益が上乗せされているため、表面利回りは低く(都心新築で3〜4%程度が平均)、ローンを組んで購入すると当初から手取り収支がほとんど残らないこともあります。さらに前述のとおり購入直後から資産価値が急落しやすく、売却しようにも購入価格を大きく下回る値でしか買い手がつかないケースが多々あります。営業トークでは「新築なので空室リスクが低い」「設備保証がある」と強調されますが、それ以上に価格面のデメリットが大きく、長期保有を前提にしても投資効率が悪い傾向があります。また、新築販売時に提案される「〇年間家賃保証」のサブリース契約も注意が必要です(詳細は後述)。このように、新築ワンルームは初心者にとって魅力的に映るものの、実際には割高な買い物となり失敗しやすい点に留意すべきです。
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中古ワンルームの問題点: 中古物件は新築に比べて価格が安く表面利回りは高め(都心中古で4〜5%程度)に見えるため、一見有利に思えます。実際、「新築より中古を選ぶ方が家賃下落率が緩やかで安定運用しやすい」という指摘もあります。しかし中古の場合でも空室リスクは依然として存在し、築年数が古い分だけ設備の故障や修繕コストがかさみやすいデメリットがあります。また築古ワンルームだと金融機関からの融資が付きにくく、購入時に自己資金を多めに用意する必要がある場合もあります。加えて、築年数が一定以上経過したマンションでは、将来的に建物の建て替え問題(老朽化による取り壊しや大規模修繕の是非)など不動産そのもののリスクも無視できません。中古物件ならではの注意点として、管理状態の見極めも重要です。過去の修繕履歴や管理組合の運営状況によっては、後々予想外の出費が発生する可能性があります。総じて、中古ワンルームは新築より価格面のハンデは少ないものの、空室・老朽化リスクへの対策や融資条件のハードルなど、初心者には判断が難しいポイントが多いと言えます。
どちらの場合でも、「新築なら大丈夫」「中古なら安心」と単純に考えるのは危険です。
サブリース契約の落とし穴と過度な営業勧誘の問題
ワンルーム投資を語る上で、サブリース契約(家賃保証)と過剰な営業勧誘に関する社会問題にも触れておく必要があります。これらは投資スキーム自体の問題というより、取り巻く業界慣行として初心者が巻き込まれがちなトラブルです。
サブリース契約(家賃保証)の注意点
「空室でも○○社が家賃を保証」といった一括借り上げ(サブリース)契約は、一見オーナーにとって魅力的に映ります。確かに一定期間は家賃収入が約束され、管理の手間も省けるメリットがあります。しかし近年、このサブリースを巡って賃料減額トラブルが多発しています。契約時に高めの保証賃料を提示しておきながら、数年後に「空室が増えた」「市場賃料が下がった」等の理由で一方的に減額を求められるケースや、最悪の場合、契約解除を突き付けられるケースも報告されています。実際、国民生活センターの相談事例でも「家賃収入を保証すると説明されたが、実際は保証に期限があり途中で打ち切られて収支が赤字になった」という失敗談が紹介されています。サブリース業者が倒産したり経営不振に陥れば、家賃どころか契約そのものが無効化し、オーナーは突然収入を失うリスクさえあります。こうした事態を防ぐため、2020年にはいわゆる「サブリース新法」が施行され、業者に対し将来の賃料変動リスクを書面で説明する義務が課されました。消費者庁も「契約内容や賃料減額リスクを十分理解した上で契約すべき」と注意喚起しています。サブリース契約は決して「空室保証=安心」ではなく、保証内容の限界やリスクを織り込んだ冷静な判断が必要です。
過度な電話・訪問勧誘と悪質販売業者
ワンルームマンション投資のもう一つの社会問題は、強引な勧誘営業です。電話や訪問で執拗に契約を迫られたり、深夜にまで営業連絡が続くといった悪質な事例が後を絶ちません。国土交通省も「最近、投資用マンション販売に関する執拗な電話勧誘の苦情が増えている」として公式に注意喚起を行っています。宅地建物取引業法では、不確実な将来利益を断定的に謳う行為(例:「絶対に儲かる」「元本保証」など)や、相手が断っているのに勧誘を継続する行為は違法とされています。しかし現実には法令を無視したセールストークや勧誘が横行しており、特に知識の浅い初心者が餌食になりがちです。「今契約しないと損」「年収◯◯万円なら誰でも大家になれます」といった甘い言葉で契約を急かされ、その場で冷静な判断ができず契約してしまったという相談も数多く寄せられています。例えば、ある事例では営業担当に飲食店へ呼び出され、契約するまで帰してもらえず高額なマンションを買わされてしまったケースも報告されています。このような悪質業者は一部ではありますが、初心者には見分けにくいものです。対策として、不動産業者の免許番号を確認したり、勧誘がしつこい場合は所在地の自治体や国土交通省に通報するといった手段も有効です。大切なのは、「儲け話」に安易に飛びつかず、一旦持ち帰って専門家や公的機関に相談する冷静さです。消費者庁や国民生活センターも、少しでも不審に感じたら契約しない・相談するよう繰り返し呼びかけています。初心者の方は強引な営業トークに惑わされず、自ら十分な情報収集を行った上で判断することが何より重要です。
利回りの実態:低い収益性と投資効率の悪さ
ワンルームマンション投資は、「不労所得で安定収入」「ローリスクで長期的に家賃収入が得られる」と宣伝されることがあります。しかし実際の利回り(収益率)は決して高くなく、その投資効率には疑問が残ります。
まず、表面利回り(年間家賃収入÷物件価格)で見ても平均はそれほど高くありません。東京都心部の場合、新築ワンルームで平均3〜4%程度、中古でも4〜5%程度が一般的な目安とされています。地方ではもう少し利回りが上がるケースもありますが、その分空室リスクも高まります。表面利回り5%前後ということは、自己資金で購入しても年5%の投資収益に留まる計算です。さらに実際にはここから管理費・修繕積立金、固定資産税、火災保険料などの経費が差し引かれ、実質利回り(手取りベースの利回り)は3%台に落ち着くことも珍しくありません。これは例えば他の金融商品(株式配当や社債利回りなど)と比べても決して高い数字ではなく、むしろリスクに見合ったリターンが得られていない可能性があります。
また多くの初心者はフルローン(自己資金ほぼ0)で購入しますが、その場合は毎月の家賃収入からローン金利分も差し引かれます。現在の低金利下でもローン金利1〜2%程度はかかるため、実質利回りからさらに差し引くと手元に残る純利益はごく僅かです。先述のように少しでも空室が出たり家賃が下がったりすれば、たちまち赤字に転落してしまいます。一方で投資家自身は数千万円規模の借金リスクを負っているわけですから、リスクとリターンが見合わない状態と言えます。
さらに節税効果の過信にも注意が必要です。営業マンが「減価償却で節税できます」「生命保険代わりになります」といった触れ込みをすることがあります。しかし区分マンションは建物価格割合がそれほど高くなく減価償却費を多く計上しにくいため、所得税の圧縮効果(節税効果)は小さいのが実情です。仮に減価償却で赤字計上して所得税還付を受けたとしても、それは本業収入で損失補填しているに過ぎず、本末転倒と言えます。実際、先述したようにワンルーム投資の収益性が低すぎるために「税金の還付で赤字を埋め合わせる」という状態になってしまい、後から後悔する投資家もいます。金融庁も「投資用不動産の取得者は、それが不動産賃貸業という事業であることを認識し、長期的な収支計画の妥当性やリスクをよく検討することが重要」と指摘しています。利回りばかりに注目して安易に飛びつくのではなく、純利益ベースで見た投資効率やリスク管理の重要性を強調しています。
総じて、ワンルームマンション投資はローリターン・ミドルリスクの投資と言えます。決して「初心者向きの手堅い投資」ではなく、実態を知らずに始めると効率の悪い運用になりがちです。
失敗事例から学ぶ現実と専門家の見解
実際にワンルームマンション投資で失敗した人は少なくありません。ある調査では、不動産投資の経験者のうち約4割が「失敗したことがある」と回答しています。失敗の理由として多かったのは「想定以上に費用がかかった」「物件が値上がりしなかった」「空室が続いた」などであり、まさに前述したリスクが現実化したケースが多数です。以下に、よくある失敗事例を紹介します。
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事例① 毎月の持ち出し発生で後悔: ある投資家Hさんは知人の紹介で都心の新築ワンルームを数戸購入しました。年収2000万円超と高所得だったため「減価償却による節税で赤字(不足分)をカバーできる」と営業担当に言われ、その場では納得して契約したそうです。しかし蓋を開けてみると、やはり収益性は低く家賃収入だけではローン返済に足りない状況となり、毎月十数万円もの持ち出し(自己負担)が発生。しかも期待していた節税効果も僅かで、とうてい赤字補填には追いつかないことに気づきました。Hさんは「営業マンの言葉を鵜呑みにしたことを後悔している」と語っており、現在は物件を見直しキャッシュフローが黒字になる投資への組み換えを行ったとのことです。この事例は、高所得者ですらワンルーム投資では赤字が出る現実を示しており、節税目的の安易な購入が危険であることを物語っています。
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事例② 投資額に見合わない低収益: 別の投資家Kさんは「これだけ資金を投じても利益が少なすぎるのではないか」と不安になり、物件購入後に改めて情報収集を始めました。その結果、やはりワンルーム投資は想定以上に経費がかかり利回りが低すぎること、出口で大きな値上がり益も見込めないことを知り愕然としたと言います。Kさんは最終的に早期売却も検討しましたが、ローン残債との兼ね合いもあり思うようにいかず、身動きが取れなくなってしまったそうです。このように「割に合わない」と感じて撤退を考えるケースも少なくありません。
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事例③ 複数購入で借金が膨らみ身動きが取れない: 「ワンルームは少額で始められる」と聞いて次々に物件を買い増した結果、総額で億単位の借入を抱えてしまったOさんという投資家もいます。家賃収入はローン返済に消え、手元に残らないばかりか、空室発生時には自己資金から補填せざるを得ない状況です。物件を売却しようにも借金の方が多く残ってしまい簡単には整理できず、まさに「不動産ローン地獄」となっています。これは極端な例に思えますが、複数のワンルームをローンで購入するスキーム自体は営業上よく使われる手法であり、知らずにリスクを重ねてしまう人も存在します。
こうした失敗事例から学ぶべき教訓は、事前のリスク理解と収支計画の甘さが命取りになるということです。専門家の中には「ワンルームマンション投資はおすすめしない」と明言する方もいます。
また、公的機関も注意を促しています。前述のように国民生活センターや消費者庁は若年層を中心に被害が増えている実態を報告し、金融庁も安易な借入による投資に警鐘を鳴らしています。つまり、「ワンルーム投資は初心者でも安全」という売り文句とは裏腹に、実際は多くの人が失敗や後悔を経験しているのです。
まとめ:慎重な判断が必要
以上、「ワンルームマンション投資はやめろ」と言われる主な理由を解説しました。空室リスク・家賃下落・修繕費増大・出口の難しさといった収支悪化のリスクから、新築・中古それぞれの問題点、サブリース契約や悪質勧誘といった社会的な注意点まで、初心者が知っておくべきポイントは多岐にわたります。確かにワンルーム投資は少額から始められる魅力的な投資法に映りますが、その裏には今回挙げたような数々のデメリットが潜んでいます。
不動産投資は決して楽に儲かるものではなく、小さなワンルームであっても「賃貸業」という事業を営むことに他なりません。その自覚なしに勧誘トークを鵜呑みにして始めれば、高い確率で失敗してしまうでしょう。特に不動産投資初心者の方は、「やめろと言われる理由」を真摯に受け止め、メリットだけでなくリスクやコストまで含めた総合的な判断をすることが大切です。どうしても興味がある場合でも、一度立ち止まって専門家に相談したり、他の投資商品とも比較検討してみることをおすすめします。大切な資産を守るためにも、安易なワンルームマンション投資は避け、慎重な判断を心掛けましょう。