近年、不動産業界では新築物件の建築費が大幅に高騰しており、不動産投資家にとって無視できない状況となっています。建築資材の価格上昇や人件費の増加、さらには世界的な経済環境の変化など、さまざまな要因が絡み合って建築コストが上がり続けています。新築マンションの平均価格はこの数年で急騰し、例えば首都圏では2017年度から2023年度までの6年間で約27.8%も上昇しました。建築費の高騰は不動産市場全体に波及し、投資戦略の見直しを迫っています。
本記事では、新築物件の建築費高騰についてその背景と理由、そして不動産市場への具体的な影響を詳しく解説します。さらに、不動産投資家が今取るべき対応策について考察します。
新築物件建築費高騰の背景と理由
まず、新築物件の建築コストがなぜここまで上昇しているのか、その背景と主な理由を整理します。世界的な供給網の問題から国内の労働環境の変化まで、複数の要因が重なっています。
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資材費の高騰(建築資材価格の上昇): 建築に必要な資材価格が世界的な需給ひっ迫により急騰しています。代表例がウッドショック(世界的な木材不足と価格急騰)です。2021年後半、北米や中国で木材需要が急増した影響で木材価格が高騰し、日本国内の木造住宅の工事費も大きく上昇しました。木材価格はピーク時よりはいくぶん落ち着いたものの、ウッドショック前の水準には戻らず高止まりが続いています。同様にアイアンショックと呼ばれる鉄鋼価格の急騰も発生しました。コロナ禍で一時落ち込んだ鉄の需要が経済回復で急増した結果、供給が追いつかず鉄骨などの価格が跳ね上がっています。また、ロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う国際情勢の不安定化も資材価格高騰に拍車をかけました。木材や金属類の輸入が制限されたり価格が吊り上がったりし、建築資材全般のコスト増要因となっています。さらには半導体不足も見逃せません。一見関係ないように思える半導体ですが、エアコンやエレベーターなど建物の設備機器に不可欠です。米中貿易摩擦やコロナ禍での需要急増により世界的な半導体不足が起き、設備コストが上昇する一因となりました。加えて、燃料価格・エネルギー価格の高騰も資材輸送コストや生産コストを押し上げています(ガソリン代・電気代の上昇やコンテナ海上運賃の高騰など)。そして日本独自の要因として円安(円の為替価値下落)があります。円安になると輸入資材の調達コストが増大し、国内の建築費にも直接影響します。これら複数の要因が複合的に絡み、資材価格はここ数年で急騰しました。その結果、2021年度から2024年3月までのわずか3年間で建築資材コストは全国平均で約18%も上昇しています。
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人件費の上昇(建設労務コストの増加): 労働力不足による人件費高騰も深刻です。建設業界では熟練職人の高齢化と若手人材の不足が進んでおり、一人当たりの人件費(職人の日当や給与)が上がっています。実際に公共工事設計労務単価(公共事業における職人の賃金基準)は2021年3月から2024年3月までの間に約15%上昇しました。これは建設会社にとって労務費負担の増大を意味し、工事全体のコスト押し上げ要因となっています。背景には2024年問題(働き方改革関連法により2024年から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、人手不足が懸念される問題)があります。長時間労働に依存できなくなった業界では、人員を増やす必要がありますが慢性的な人手不足で簡単には補充できず、一人ひとりの労働コストが上がっています。また法定福利費の適正化(建設労働者の社会保険料等を工事原価に適切に組み入れる取り組み)も進みつつあり、従来見えにくかった人件費相当分が適正に計上されることで名目上の工事費が増加する傾向があります。さらに、日本国内では技能実習生など海外人材に依存してきた側面もありますが、コロナ禍で入国制限があった時期には人材確保が一層難しくなりました。総じて、職人不足による人件費アップは建築費高騰の主要因の一つです。
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規制強化や品質向上ニーズ: 建築基準法や省エネ基準の強化もコストに影響します。例えば日本では2025年から住宅の省エネ基準適合が義務化される予定であり、高性能な断熱材や設備の導入が必要になります。安全基準や環境基準が厳しくなること自体は望ましいことですが、その分、高性能資材や最新設備への対応コストがかかります。加えて、顧客ニーズの高度化も無視できません。新築マンションでは防災性能やスマートホーム設備などグレードの高い機能が求められ、それに伴うコスト増も起きています。これら品質向上への対応も建築費を押し上げる背景要因と言えます。
以上のように、建築費高騰の理由は国際的な資源価格の高騰から国内の労働環境や規制の変化まで多岐にわたります。実際、建設費全体の指数を見ると、2015年の水準を100とした場合に2022年には120を超える水準まで上昇しています。特に2021年以降の3年間で建築コストが急上昇しており、現在の建築費はバブル期(1980年代後半)の約2倍近くにも達しているとの指摘もあります。このような急激なコスト増加は不動産開発・投資の前提条件を大きく変化させています。
不動産市場への具体的な影響
建築費の高騰は、新築不動産の開発・販売のみならず、不動産市場全体にさまざまな影響を及ぼしています。ここでは主な影響を整理します。
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新築供給の減少: 建築コストの上昇により、新築物件の着工件数が減少する傾向が見られます。開発業者にとって、建築費が当初計画より大幅に膨らめば採算が合わなくなるため、一部のプロジェクトを延期・中止せざるを得ません。特に、都心部に比べ販売価格を高く設定しにくい郊外エリアでは、建築費高騰が重い負担となり、新築マンションの供給を難しくしています。実際に新築マンションの供給減少はここ数年続いており、その原因は建築費高騰による着工数の減少や工期の長期化にあると指摘されています。建築費が高すぎて事業化できない案件が増えれば、新築住宅全体の市場供給量が落ち込み、需給バランスに影響を及ぼします。政府統計でも、近年の住宅着工戸数は伸び悩んでおり、2022年〜2023年頃には首都圏のマンション新規供給がバブル崩壊直後やリーマンショック直後の水準を下回ったとの報告もあります。新築供給の減少は、不動産市場において売り手市場(供給者側が強い)の状況を生みやすく、価格上昇の一因ともなります。
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新築価格の上昇: 建築費が上がった分、当然ながら新築不動産の販売価格や賃料にも上乗せされます。デベロッパー(開発業者)は利益を確保するため、高騰したコストを販売価格に転嫁せざるを得ません。その結果、新築物件の価格高騰が顕著になっています。実際、首都圏新築マンションの平均価格は2017年度の5,921万円から2023年度には7,565万円へと上昇し、6年間で約27.8%も値上がりしました。東京都区部に限れば同期間で約49%もの上昇率となり、平均価格が1億円を超えています。戸建て住宅についても、同じく過去数年で着実に価格が上がっています。これらの上昇は、地価の値上がりも一因ですが、建築コスト増が大きく影響しています。購入者にとって新築住宅はますます高嶺の花となり、中には購入を諦めるケースや予算縮小を余儀なくされるケースも出ています。また賃貸市場でも、新築アパート・マンションのオーナーは高い建設費を回収すべく初期設定賃料を引き上げる傾向があります。結果として、新築住宅の販売在庫が積み上がったり、賃貸では高すぎる家賃にテナントが敬遠するといった需給ミスマッチが生じる懸念もあります。ただし現状では、新築の希少性が高まっていることもあり、富裕層中心に高額でも新築を求める需要が一定数存在し、高値でも売れている物件もあります。このように建築費高騰は新築不動産価格を押し上げ、市場の二極化(買える人・買えない人の差拡大)を招いています。
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中古市場への波及効果: 新築物件の価格高騰と供給減少は、中古不動産市場を活性化させる要因ともなっています。新築が手が届かないと感じた購入希望者や投資家が、中古物件に目を向けるケースが増えているのです。その結果、首都圏の中古マンション市場は活況を呈しています。例えば東日本不動産流通機構(レインズ)のデータによれば、2025年3月の首都圏中古マンション成約件数は4,991件と前年同月から31.0%増加し、大幅な伸びを示しました。季節要因を差し引いても前年を大きく上回る取引件数であり、中古物件への需要シフトがうかがえます。中古物件の価格もエリアによっては上昇傾向が見られますが、新築に比べれば割安感があるため、実需・投資の両面で関心が高まっています。特に築年数が浅めでコンディションの良い中古マンションや、一戸建てでもリフォーム済みの物件は人気です。投資家にとっても、中古物件は利回り(投資額に対する年間収入の割合)の高さが期待できるケースが多く、魅力的な選択肢となっています。新築物件の表面利回りが建築費高騰で低下する一方、中古物件は取得価格を抑えられる分だけ利回りを確保しやすいためです。このように建築費高騰は中古市場への需要流入を引き起こし、市場構造に変化を及ぼしています。
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建設業界への影響: 建築費高騰は不動産市場だけでなく、建設業界の構造にも影響を与えています。前述のとおり人手不足が深刻化する中、施工キャパシティの逼迫が起きています。ゼネコン(総合建設業者)各社は引き合いのあるプロジェクトすべてを捌ききれず、採算の良い案件や戦略的に重要な案件に絞って受注するようになっています。その結果、マンションデベロッパーが希望しても施工会社が確保できず、工事着手が遅れる例もあります。とりわけマンション建設は手間がかかる割に利益率が相対的に低いと敬遠され、大型再開発やインフラ・工場建設など他分野を優先する動きも出ています。このように建築費の高騰と人材難は、新築住宅供給のボトルネックを生み、市場に長期的な影響を及ぼす可能性があります。一方で、建設業界内では生産性向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)や、省人化工法(プレハブ工法・モジュール工法など)への取り組みも進んでおり、将来的にはコスト抑制につながる期待もあります。しかし現時点では、それら新技術の普及が追いつかず、当面は高止まりする建築費に業界全体が直面せざるを得ない状況です。投資家にとっては、新築開発案件に参画する際に施工会社との協力関係をこれまで以上に重視し、余裕あるスケジュールとコスト見積もりを立てる必要があるでしょう。
以上のように、新築物件の建築費高騰は新築市場の縮小と価格上昇、そして中古市場の活性化という具体的な変化をもたらしています。不動産投資家はこの市場動向を正確に把握し、戦略に反映させることが求められます。
投資家が取るべき対応策
建築費高騰の環境下で、不動産投資家はどのように対応すればよいのでしょうか。短期的な市場変動に翻弄されるのではなく、持続的な成長を目指して戦略を練ることが重要です。以下に、投資家が検討すべき主な対応策を挙げ、一つひとつ解説します。
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中古物件への投資検討: 新築にこだわらず、中古物件への投資を積極的に検討することが有効です。中古物件であれば取得価格が抑えられる分、賃貸に出した際の利回りが新築より高くなるケースが多く見られます。例えば築浅の中古マンションや中古アパートは、新築同様の賃料収入が得られる一方で購入価格は割安のため、投資効率が良好です。さらに中古物件は選択肢が豊富で、自身の投資予算やリスク許容度に合わせて物件タイプ(マンション、一棟アパート、一戸建てなど)を選べるメリットがあります。もちろん中古物件は経年による修繕リスクがありますが、それも織り込んだ上で適切にリフォームやリノベーションを行えば資産価値を高められるでしょう。実際、建築資材高騰への対策として「中古物件を購入してリフォームを活用する方法」が有効だと指摘する声もあります。中古物件投資は、新築至上主義にとらわれない柔軟な発想として、ぜひ検討したい選択肢です。
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リノベーション物件へのシフト: 新築物件の開発そのものを見直し、リノベーション(大規模改修)による価値向上にシフトする戦略も有力です。築年数の経ったビルやマンション、一戸建てを取得し、内外装や設備を一新して付加価値を高める取り組みは、近年「リノベーション物件」として市場で高い評価を受けています。新築を建てるよりも既存ストックを活用する分コストを抑えられるケースが多く、また環境面でも建物の再利用は廃材削減などサステナビリティに資する行動です。リノベーションによって物件の競争力を高めれば、高い入居率や適正な賃料設定が期待できます。例えば、古いマンションを現代風の内装や省エネ設備を備えた住戸に改修すれば、新築に見劣りしない魅力を持たせることが可能です。それでいて総投資額は新築建設より低く抑えられるため、投資採算が合いやすくなります。最近では金融機関もリノベーション融資に積極的で、長期固定金利のローンを活用して手元資金負担を軽減しつつリノベ費用を調達することもできます。建築費が高騰する今、”Scrap & Build”(壊して新築)一辺倒から、“リノベーションによる再生”へと発想を転換することは、投資家にとって有効な戦略となるでしょう。これも中古活用の一形態ですが、特に物件のポテンシャルを見極めて価値を創出する力が求められる点で高度な投資手法とも言えます。信頼できる施工業者や建築士と連携し、適切な改修計画を立てれば、建築費高騰下でも収益性の高いプロジェクトを実現できる可能性があります。
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資金計画の見直しとリスクヘッジ: 建築費が当初計画より膨らむリスクが高まっているため、資金計画(事業計画)の綿密な見直しが不可欠です。具体的には、建築コストや金利動向に対する十分なバッファ(余裕)を見込んだ予算編成を行うことが大切です。新築開発に投資する場合、建築請負契約時点では想定しなかった追加費用が発生する恐れがあります。資材価格のさらなる変動や工期延長による人件費増などを考慮し、イニシャルコストは当初見積もりよりも多めに確保しておく保守的な計画が望ましいでしょう。自己資金と融資のバランスも再検討してください。昨今の低金利環境(住宅ローンや不動産投資ローンの金利が低水準)は資金調達には有利ですが、将来的な金利上昇リスクにも備える必要があります。固定金利型のローンを選択したり、繰上返済の計画を立てておくことで、金利変動によるキャッシュフロー悪化を防ぐことができます。加えて、補助金や減税措置の活用も資金計画上で重要なポイントです。国や自治体は住宅の省エネ化や耐震化促進のため、さまざまな補助金制度や税制優遇(例えば長期優良住宅の認定による税控除など)を用意しています。こうした制度を調査・活用することで、建築費高騰による負担を一部軽減できるでしょう。例えば、東京都の「東京ゼロエミ住宅」助成事業のように、省エネ性能の高い住宅に対して数百万円単位の補助金が出る制度もあります。投資用物件でも条件を満たせば利用可能なケースがあり、省エネ改修補助やZEH補助金(ネットゼロエネルギーハウス補助)などは新築・リノベ問わず検討する価値があります。実際、「省エネ対応の補助金を使って建築コストを抑えつつ資産価値の高い建物を供給することで、安定的な賃貸経営につなげるべきだ」という提言もあります。このように、多角的な資金調達・コスト削減策を講じることで、建築費高騰リスクに対応しましょう。
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長期保有戦略と持続可能な視点: 最後に、投資スタンスとして長期保有を前提とした戦略を採ることが、持続的な資産成長に有効です。建築費が高騰して利回り低下が懸念される局面でも、短期的な売却益を狙うのではなく長期的に賃料収入を得ながら価値向上を図ることで、時間を味方につけることができます。インフレにより将来的に賃料相場が上昇したり物件資産価値が上がれば、初期コストが高くとも長期では十分なリターンを得られる可能性があります。また長期保有を前提とすれば、多少の利回り低下にも耐え得る資金計画を立てやすく、無理のない経営ができます。何より、不動産投資は複利的な成長が期待できるビジネスです。毎年の賃料収入を蓄積・再投資し、物件の維持管理・価値向上に充てることで、資産全体が雪だるま式に成長していきます。短期売買を繰り返すと仲介手数料や譲渡益課税などコストも嵩みますが、長期保有ならそうしたコストも抑えられます。加えて、長期的視野に立つことで市場の一時的な変動に動揺せず腰を据えて運用できます。
長期保有戦略を支える上で重要なのが、持続可能な成長と理念共感の視点です。不動産投資においても、単年度の利益率に一喜一憂するのではなく、事業に関わるすべてのステークホルダー(入居者、取引先、地域社会、従業員、投資パートナーなど)が継続的にメリットを享受できるような運用を心掛けることが大切です。例えば、入居者に長く快適に住み続けてもらうために物件の品質向上や管理体制の充実を図れば、結果的に空室リスクが減り安定収入に繋がります。また、地域コミュニティや環境に配慮した不動産開発は社会的評価を高め、物件のブランド価値向上にも寄与します。最近注目されるESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視する投資)の観点からも、環境負荷の少ない建物や社会課題の解決に資する不動産は高い評価を受けやすく、長期的な資産価値が維持・向上しやすいと言えます。
理念共感とは、投資家自身が大切にする価値観やビジョンを投資を通じて体現し、同じ志を持つパートナーと協調していく姿勢を指します。例えば「良質な住宅を供給して社会に貢献したい」「テナントや居住者の満足度を第一に考える」といった理念を掲げ、それに共感するプロパティマネージャーや建設会社、金融機関と強固な関係を築いていくことです。不動産投資においても人のつながりや信頼が成功の鍵を握ります。持続可能な成長を目指す長期投資家にとって、物件というハード面への投資と同様に、人や理念といったソフト面への投資も重視すべきなのです。建築費高騰という困難に直面する今だからこそ、こうした信念に基づく長期戦略が光ります。
以上4つの対応策は相互に組み合わせることも可能です。例えば、中古物件を購入してリノベーションを施し、省エネ補助金を活用しつつ長期保有するといったアプローチは、その好例でしょう。不動産投資家それぞれの資金力や目標によって最適解は異なりますが、共通して言えるのは柔軟性と長期的視点を持つことの重要性です。
まとめ
新築物件の建築費高騰は、不動産投資を取り巻く環境に大きな変化をもたらしています。資材費や人件費の上昇といった背景から、新築供給減少や価格高騰、中古市場への需要シフトまで、本稿で見てきた通り市場の動きは複雑です。しかし、その変化を正しく理解し対応策を講じれば、投資家にとってピンチをチャンスに変えることも可能です。
まずは現状認識として、建築費高騰が一過性ではなく中長期的な課題であることを踏まえる必要があります。ウッドショックやウクライナ情勢、半導体不足や円安といった諸問題はすぐに解決が見込めず、一部が解消しても他の要因が価格を高止まりさせる可能性があります。人件費の高騰も少子高齢化による構造的な人手不足問題と密接に関連しており、簡単には改善しないでしょう。従って、今後しばらくは新築の建築コストが大幅に下がることは期待しすぎない方が良いかもしれません。むしろ、コスト増を前提として事業計画を立て、その上で利益を出す発想が求められます。
一方で、悲観的な材料ばかりでもありません。建設業界では国を挙げて生産性革命が進められており、将来的にはAIやロボット技術の活用、標準化された建材の量産などでコストを抑える余地も出てくるでしょう。また、不動産テック(PropTech)の発展により、物件のマッチング効率や運営効率が上がれば、投資収益性の向上に寄与する可能性もあります。政府も住宅取得支援策や投資促進策を拡充しています。投資家にとっては、最新の情報にアンテナを張り、使える制度や技術は貪欲に取り入れていく姿勢が大切です。
本稿で提言した中古物件の活用、リノベーションへのシフト、資金計画の再構築、長期保有と理念共感の戦略は、いずれも持続可能な成長に通じる考え方です。短期的な利益だけを追求するのではなく、長期的なビジョンとステークホルダー全員の幸福を見据えた経営姿勢こそが不透明な時代を生き抜くカギとなります。不動産投資も同様で、目先の建築費高騰に動揺するのではなく、長期的な資産形成の視点で物事を捉えましょう。
最後に、投資家へのメッセージとして申し上げます。建築費高騰の荒波は決して小さくありませんが、「ピンチはチャンス」です。環境が変化する局面では、従来とは異なる発想で行動することで新たな収益機会が生まれます。不動産市場は常に循環し進化するものです。いま中古物件やリノベーションに光が当たっているのも、その変化の表れでしょう。重要なのは、確固たる信念と柔軟性を持って舵を取ることです。市場動向を注視しつつも振り回されず、自らの理念(ミッション)に基づいて判断すれば、自ずと進むべき道が見えてきます。持続可能な成長を目指し、共感できるパートナーと協調しながら一歩一歩取り組んでいけば、この困難な時期を乗り越え、将来的に大きな果実を得ることができるでしょう。
建築費高騰という逆風下でも、長期的な視野と適切な対応策を持つ不動産投資家には必ずや道が開けます。未来を見据えた賢明な投資判断によって、皆様の不動産ポートフォリオが持続的に成長し、豊かな成果を生み出すことを心より願っております。