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【プロが解説】横浜投資用不動産で失敗しない物件選びのポイント

作成者: 稲澤大輔|2025/05/24 23:10:28 Z

横浜市は首都圏を代表する大都市として、投資用不動産において魅力的な市場特性を持っています。東京都心からの良好なアクセス、多様なエリア特性、そして継続的な再開発プロジェクトにより、安定した投資環境を提供しています。

横浜の不動産投資市場の特徴として、特に注目すべきは アクセス利便性の高さ です。JR各線、私鉄、市営地下鉄が集中する交通ハブとして、通勤・通学・観光の拠点となっています。また、みなとみらい地区をはじめとする 活発な再開発プロジェクト が進行中であり、エリア価値の向上が期待できます。さらに、開港以来の歴史を持つ 国際都市としての魅力 も投資メリットの一つです。

市場動向として、2024年の横浜不動産市場レポートによると、オフィス空室率は一部地区で改善が見られ、賃料も徐々に回復傾向にあります。住宅用不動産についても、特に単身世帯をターゲットとしたワンルームマンションの需要は堅調で、利回りは東京23区よりも若干高い水準を維持しています。

投資用不動産を検討する際には、エリアごとの特性と今後の発展可能性を見極めることが重要です。本記事では、横浜市内の投資適性エリアの分析と、失敗しない物件選びのポイントを詳しくご紹介します。

横浜市の不動産市場最新動向

地価・賃料・利回りの現状

横浜市の不動産市場は、エリアによって異なる特徴と動向を示しています。横浜市が発表している「地価水準・賃料・利回り動向レポート」によると、主要ビジネス地区の状況は次のようになっています。

オフィス空室率:

  • 横浜駅西口・きた西口地区: 3.63%(前回調査時3.75%から若干低下)
  • 関内地区: 3.71%(需給均衡点5%を下回り安定)
  • 新横浜駅北口地区: 8.49%(大型解約の影響で上昇)
  • みなとみらい21中央地区: 10%超(大型新規供給の影響)

賃料動向:

  • 横浜駅周辺: 横ばいもしくは緩やかな上昇
  • 関内地区: 概ね横ばい
  • 新横浜駅北口: 当面横ばい
  • みなとみらい: 弱含みの横ばい

投資利回り: 横浜市内の取引利回りは、投資家の強気姿勢を反映して全体的に低下傾向にあります。これは、市場の好転と将来的な成長期待を示すものと言えるでしょう。

再開発プロジェクトの進行状況

横浜市内では複数の大型再開発プロジェクトが進行中であり、これらは不動産価値に大きな影響を与えています。

みなとみらい21地区: 臨海部の開発が最も活発で、高層ビルやホテル、商業施設の建設ラッシュが続いています。2024年には「横浜シンフォステージ」など大規模ビルが竣工し、新規供給量は約3.1万坪に達する見込みです。2025年は一旦落ち着きますが、2026年以降も開発は継続する計画です。

横浜駅周辺地区: 「国際都市の玄関口」にふさわしい街づくりを目指し、駅ビルや商業施設、オフィスビルの再整備が進んでいます。特に西口エリアは利便性の高さから賃貸需要が安定しており、投資適性が高いエリアとして注目されています。

関内・馬車道エリア: 歴史的建造物と最新施設が共存するエリアとして、ビジネス機能と観光機能の両面から発展が進んでいます。企業集積地であることから、単身者向け物件の需要が高い特徴があります。

エリア 開発特性 投資適性 利回り期待値
みなとみらい21 大型新規開発中心 高(将来性) 3.5%~4.5%
横浜駅周辺 再整備・機能強化 高(安定性) 4.0%~5.0%
関内・馬車道 既存更新・観光融合 中~高 4.5%~5.5%
新横浜 交通結節点強化 4.5%~6.0%

投資エリア別分析と特徴

みなとみらい地区

みなとみらい地区は、横浜の中でも特に注目度の高い投資エリアです。その投資ポイントは次の通りです。

メリット:

  • 観光客需要を活かした短期賃貸ニーズが見込める
  • 高所得層向けの高級賃貸マンションの需要が安定している
  • 継続的な再開発により、将来的な資産価値上昇が期待できる
  • 企業オフィス集積によるビジネス需要が堅調

注意点:

  • 初期投資コストが高い傾向にある(資金計画の綿密な検討が必要)
  • 新規供給の増加による一時的な空室率上昇リスクがある
  • 物件によっては過度な値上がりにより利回りが低下している場合も

横浜駅周辺

横浜駅周辺は、安定した賃貸需要が見込めるエリアとして評価されています。

メリット:

  • JR・私鉄・地下鉄など多路線が集中し、都心へのアクセスが良好
  • 駅近物件は空室リスクが低く、安定した収益が期待できる
  • 商業施設やオフィスの集積により、単身者用物件需要が堅調
  • エリア全体の空室率が低く、安定した賃料水準を維持

注意点:

  • 競争率が高いため、物件の立地や設備面での差別化が重要
  • 再開発に伴う一時的な周辺環境の変化に注意が必要
  • 築古物件は将来的な大規模修繕費用を考慮した収支計画が重要

関内・馬車道エリア

関内・馬車道エリアは、オフィス街としての側面と観光地としての魅力を併せ持つエリアです。

メリット:

  • 企業集積によるビジネスマン向け単身物件の需要が高い
  • 観光地へのアクセスが良く、観光客向け短期賃貸の展開も可能
  • 歴史的な建築や街並みの魅力が、特定層からの需要を生み出す
  • 横浜駅やみなとみらいに比べて物件価格がやや抑えめ

注意点:

  • エリア内での立地による賃料格差が大きい
  • 築年数の古い物件が多く、リノベーションコストの検討が必要
  • 地価の上昇が進んでおり、物件選定に慎重な判断が求められる

金沢区・八景島周辺

横浜市内でもやや郊外に位置する金沢区・八景島周辺は、異なる投資特性を持っています。

メリット:

  • 他エリアに比べて物件価格が手頃で、初期投資を抑えやすい
  • 自然環境を好むファミリー層向け物件の需要が安定している
  • 観光地(八景島シーパラダイスなど)への近接性による需要も
  • 利回りが比較的高めに設定できる可能性がある

注意点:

  • 都心部と比較すると、利便性を求める層には訴求力が弱い
  • 将来的な資産価値上昇は都心部ほど期待できない場合も
  • エリア内でも駅からの距離や周辺環境により価値に差が出やすい

失敗しない物件選びの7つのポイント

1. エリア特性と将来性の見極め

投資用不動産選びの最初のステップは、エリアの特性と将来性を見極めることです。

チェックポイント:

  • 人口動態(増加傾向にあるか、単身世帯の比率は高いか)
  • 交通利便性(主要駅へのアクセス時間、乗換回数)
  • 再開発計画(今後5~10年の都市計画や大型プロジェクト)
  • 生活利便施設の充実度(商業施設、医療機関、公共施設等)
  • 災害リスク(ハザードマップでの浸水想定区域等の確認)

横浜市では特に、みなとみらい地区や横浜駅周辺の再開発動向を確認することが重要です。これらの再開発は周辺不動産の価値向上につながる可能性が高いためです

2. 物件の需要と供給バランスの分析

投資成功の鍵は、需要と供給のバランスを正確に把握することです。

チェックポイント:

  • エリア内の空室率(5%以下が望ましい)
  • 新規供給計画(大量供給があると競争激化の可能性)
  • 賃料相場の推移(上昇傾向か下落傾向か)
  • 競合物件の数と質(差別化ポイントはあるか)

3. 入居者ターゲットの明確化

物件選びの際は、想定入居者層を明確にすることが重要です。

チェックポイント:

  • 単身者向け:駅近、コンパクト設計、セキュリティ重視
  • ファミリー向け:適切な広さ、教育施設へのアクセス、静かな環境
  • 法人需要:交通利便性、周辺オフィス状況、商業施設の充実度
  • 外国人需要:多言語対応、国際的な環境、空港アクセス

横浜市内では、単身者向け物件の需要が特に高いとされています。横浜市の生産年齢人口(15〜64歳)は今後減少傾向にあるものの、単身世帯数は増加傾向にあり、賃貸需要は安定的に推移すると予測されています。

4. 利回り計算と収支シミュレーション

投資判断の基本となる利回り計算と収支シミュレーションを適切に行うことが不可欠です。

表面利回りと実質利回り:

項目 計算方法 横浜市平均値
表面利回り 年間家賃収入÷物件価格×100 4%~6.5%
実質利回り (年間家賃収入-諸経費)÷物件価格×100 3.0%~4.5%

収支シミュレーションのポイント:

  • 空室率を適切に見積もる(エリアの平均空室率を参考に)
  • 管理費・修繕費などの諸経費を計上(年間収入の20~30%程度)
  • 固定資産税・都市計画税などの税金コスト
  • 将来的な大規模修繕費用の積立

横浜市内のワンルームマンションの利回りは、立地によって差がありますが、表面利回りで4%~6.5%程度、実質利回りでは3.0%~4.5%程度が一般的です。利回りが著しく高い物件(7%以上)は、立地や建物状態に問題がある可能性があるため注意が必要です東仲コラム

5. デューデリジェンスの徹底

投資用不動産の購入前には、デューデリジェンス(詳細調査)を徹底して行うことが失敗を防ぐ重要なステップです。

チェックポイント:

  • 物件の法的調査(所有権、抵当権、境界確認等)
  • 建物の物理的調査(建物診断、設備状況、修繕履歴等)
  • 賃貸契約の確認(賃料推移、入居者属性、滞納状況等)
  • 周辺環境調査(嫌悪施設の有無、将来的な環境変化予測等)

特に中古物件の場合は、建物の耐震性や設備の老朽化状況を専門家に調査依頼することをお勧めします。表面的には問題なく見えても、隠れた欠陥が後々大きな修繕費用として表れる可能性があるためです。

6. 物件の差別化ポイントの見極め

競合物件が多い横浜市内で安定した入居率を確保するには、物件の差別化ポイントを見極めることが重要です。

差別化要因:

  • 立地優位性(駅からの徒歩分数、視認性の良さ等)
  • 設備の充実度(宅配ボックス、オートロック、防犯カメラ等)
  • 間取りの効率性(無駄のないレイアウト、収納スペースの確保等)
  • インテリアのクオリティ(デザイン性、素材の質感等)
  • IT対応(高速インターネット、スマートロック等)

横浜市内の単身者向け物件では、特に「セキュリティ」「IT環境」「収納スペース」が重視される傾向にあります。これらのニーズに対応した設備を備えることで、競合物件との差別化が図れます。

7. 信頼できる管理会社の選定

不動産投資の長期的な成功には、信頼できる管理会社の存在が欠かせません。

選定基準:

  • 横浜市内での管理実績と知見
  • 入居者対応・クレーム処理の迅速さ
  • 空室時のリーシング能力
  • 修繕・メンテナンス体制の充実度
  • レポーティングの質と頻度

特に横浜市内のような競争が激しい市場では、地域特性を熟知した管理会社を選ぶことで、入居率の維持や適切な賃料設定などの面でメリットが得られます。

失敗事例から学ぶリスク回避策

立地調査不足による失敗

事例: みなとみらい地区の再開発エリア近くという好立地を強調された物件を購入したが、実際は大規模工事の影響で長期間騒音問題が発生し、入居者確保が困難になったケース。

回避策:

  • 現地訪問は必ず平日・休日の異なる時間帯で複数回実施する
  • 周辺の開発計画を市の都市計画課や不動産会社で詳細確認する
  • 工事計画がある場合は、完了時期と影響範囲を正確に把握する

収支計画の甘さによる失敗

事例: 表面利回りの高さだけに注目し物件を購入したが、実際は築年数が古く修繕費が嵩み、また空室期間が想定より長引いたことで、キャッシュフローがマイナスになったケース。

回避策:

  • 表面利回りだけでなく実質利回りで判断する
  • 築年数に応じた修繕積立金を適切に計上する
  • エリア平均より高めの空室率でシミュレーションを行う
  • 最低5年間の収支計画を作成し、資金繰りを検証する

入居者ニーズの見誤りによる失敗

事例: 広めのファミリー向け物件を購入したが、単身者の多いエリア特性との不一致により入居者確保が難しく、賃料を大幅に下げざるを得なくなったケース。

回避策:

  • エリアの世帯構成と需要動向を事前に調査する
  • 同エリアの賃貸募集状況を継続的にチェックする
  • 物件タイプとエリア特性の整合性を検証する
  • 複数の不動産会社から需要予測を聞き比較する

建物の品質問題による失敗

事例: 見た目や価格の安さで判断し中古物件を購入したが、入居後に断熱性や防音性の問題が発覚し、入居者からのクレームが多発。結果として早期退去や評判低下を招いたケース。

回避策:

  • 購入前に建物診断を専門家に依頼する
  • 耐震基準(新耐震基準以降が望ましい)を確認する
  • 設備の更新状況と今後のメンテナンスコストを試算する
  • 同じ建物内の他の部屋の状況も可能な限り確認する

管理会社選定ミスによる失敗

事例: 管理手数料の安さだけで管理会社を選定したが、入居者対応が不十分で評判を落とし、結果的に空室率上昇と賃料下落を招いたケース。

回避策:

  • 管理手数料だけでなくサービス内容を詳細に比較する
  • 既存の管理物件を可能であれば見学する
  • 入居者対応の具体的な体制と実績を確認する
  • 複数オーナーからの評価を聞く機会を設ける

まとめ:横浜で成功する投資戦略

横浜市での不動産投資を成功させるためには、以下の点が特に重要です。

  1. エリア特性の把握 横浜市内各エリアの特徴と将来性を理解し、投資目的に合ったエリア選択を行う

  2. 需要と供給のバランス分析 現在の空室率や今後の供給計画を踏まえ、安定した需要が見込めるエリア・物件を選定する

  3. ターゲット層の明確化 入居者ターゲットを明確にし、そのニーズに合った物件選びとリノベーションを実施する

  4. 適切な収支計画 表面利回りだけでなく、実質利回りと長期的なキャッシュフローを重視した投資判断を行う

  5. 徹底したデューデリジェンス 法的・物理的・経済的観点から物件の詳細調査を行い、隠れたリスクを発見する

  6. 差別化戦略 競合物件との差別化ポイントを明確にし、安定した入居率と適正賃料を維持する

  7. 管理体制の構築 地域特性を熟知した信頼性の高い管理会社と連携し、長期的な資産価値を維持向上させる

横浜市の不動産投資市場は、東京23区に比べて利回りがやや高めであることや、再開発による将来的な価値向上が期待できることから、適切な物件選びを行えば魅力的な投資先となります。特に現在は、2024年以降の再開発計画が多く進行中であり、市場の将来性に注目が集まっています。

失敗を避け、安定した収益を得るためには、「安さ」や「見た目の良さ」だけで判断せず、本記事でご紹介したポイントに基づいた総合的な判断を行うことが重要です。また、不動産投資はあくまでも長期的な視点で取り組むべきものであり、短期的な値上がり益を狙うのではなく、着実なキャッシュフローを重視した投資戦略が成功への道と言えるでしょう。

よくある質問

Q1: 横浜市内で投資に最適なエリアはどこですか?

A: 投資目的によって最適なエリアは異なります。安定した収益を求めるなら横浜駅周辺、将来的な資産価値の上昇を期待するならみなとみらい地区、初期投資額を抑えて高い利回りを求めるなら関内・馬車道エリアがおすすめです。いずれのエリアも駅近物件が需要が高く、空室リスクが低い傾向にあります。

Q2: 区分所有とアパート一棟、どちらが横浜では有利ですか?

A: 初期投資額や運用の手間を考えると、横浜市内では区分所有(特に駅近のワンルームマンション)が始めやすい投資対象です。表面利回りは区分所有で4~5%、一棟物で5~7%程度ですが、一棟物は管理の手間やリスク分散の観点で経験が求められます。投資初心者は区分所有から始め、経験を積んでから一棟物へステップアップするのが一般的です。

Q3: 横浜の中古物件と新築物件、投資としてはどちらがおすすめですか?

A: 両者にメリット・デメリットがあります。新築物件は初期修繕コストが少なく入居者確保が容易ですが、価格が高く利回りは低めです。中古物件は価格が比較的安く利回りが高い傾向がありますが、修繕費用や空室リスクの見極めが重要です。初心者であれば管理しやすい新築、経験者で物件を見る目がある方は利回りの高い中古が向いているでしょう。

Q4: マンション投資における横浜市と東京23区の違いは何ですか?

A: 主な違いは、①物件価格(横浜市は東京23区より20~30%程度安い傾向)、②利回り(横浜市は0.2~0.5%程度高い傾向)、③賃料水準(東京23区の方が高い)、④将来性(横浜市は再開発による発展余地が多い)などが挙げられます。投資予算や重視する要素によって選択することをおすすめします。

Q5: 横浜市内の物件で特に注意すべき立地条件はありますか?

A: 横浜市内では特に坂の多いエリアや駅から徒歩15分以上かかる物件は賃貸需要が弱い傾向があります。また、臨海部では津波・高潮リスク、丘陵部では土砂災害リスクがあるエリアもあるため、ハザードマップの確認が必須です。さらに、工場や線路に近接する物件は騒音問題で競争力が低下する可能性があります。これらのリスク要因を考慮した立地選定が重要です。

参考情報

  • 横浜市都市整備局「地価水準・賃料・利回り動向レポート」(令和6年4月1日時点) 【出典】横浜市