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新宿駅西口地区再開発計画の最新動向

作成者: 稲澤大輔|2025/05/11 22:53:42 Z

新宿駅西口エリアでは、大規模な再開発事業が進行中です。この計画は、新宿駅を「新宿グランドターミナル」として再編し、駅と街を一体化させて新宿全体の活性化を図ることを目的としています。具体的には、重層的な歩行者ネットワークの整備や人が滞留できる広場空間の創出、国際競争力を高める都市機能(オフィス・商業・ホテル等)の導入、そして防災性強化・環境負荷低減といった目標が掲げられています。計画の対象エリアは新宿駅西口駅前一帯で、新宿区西新宿一丁目および渋谷区代々木二丁目にまたがる約3.5ヘクタールに及びます。かつてこの地域には小田急百貨店新宿店や京王百貨店新宿店といった大型店が立地していましたが、現在それらは営業を終了し建物の解体・再開発が進められています。

主な事業者と開発の背景

再開発事業は、西口エリアと西南口エリアに大別され、それぞれ異なる事業主体により進められています。西口駅前の小田急百貨店本館跡地を中心とする「新宿駅西口地区開発計画」は、小田急電鉄・東京地下鉄(東京メトロ)・東急不動産の3社による共同事業です。このプロジェクトは都市再生特別措置法に基づく都市再生特別地区に指定されており、2018年に公表された東京都・新宿区の「新宿の拠点再整備方針」に沿って計画が策定されました。一方、新宿駅西南口方面の京王線新宿駅周辺を対象とする「新宿駅西南口地区開発計画」は、京王電鉄とJR東日本が共同で推進するプロジェクトです。こちらも同様に東京都の都市計画決定(2022年11月)を経て進められており、駅ビル・駅前広場を一体的に再編することで西口エリア全体のポテンシャル向上を目指しています。

両計画とも、世界一の乗降客数を誇る新宿駅の結節機能を強化し、ビジネス・観光の拠点として国際的な魅力を高める狙いがあります。東京都と新宿区は「100年に一度」とも称されるこの再開発を通じて、新宿を渋谷など他の都心副都心に劣らない先端的な街へ進化させようとしています。

工事スケジュールと進捗状況

西口地区(小田急側)の再開発は、2022年10月に既存建物の解体工事に着手し、2024年3月に新築工事へ本格的に移行しました。小田急百貨店本館は2022年10月2日をもって営業を終了し、その後順次モザイク通り(2023年3月閉鎖)や新宿ミロード本館(2025年3月閉店)の解体が進められています。現在、地下構造物の撤去や基礎工事が行われており、2029年度末(2029年~2030年頃)の竣工を目標に工事が着々と進行中です。このプロジェクトは2024年6月に国土交通大臣の「優良な民間都市再生事業計画」の認定も受けており、税制優遇など公的支援も活用しながら進められています。

一方の西南口地区(京王・JR側)は、計画を南街区(甲州街道の南側エリア)と北街区(現・京王百貨店のエリア)に分け、まず南街区から着手する段階にあります。南街区では2023年度中の着工、2028年度までの完成を当初予定していましたが、施工体制の調整遅れなどから工期が未定へと見直されました。京王電鉄は2025年3月28日に「2023年度内に着工できておらず、当初2028年度としていた完成時期をいったん未定とする」ことを公表しており、現時点で具体的な再スケジュールは調整中です。ただし南街区の建設予定地では、旧JR新宿ビルや既存商業ビル群の解体工事が既に進められており(2023年4月より着手済み)、基礎工事への準備段階に入っています。南街区の再開発ビル完成後に北街区(京王百貨店やルミネ1がある区画)の建替え工事に取り掛かる計画で、エリア全体の完成は2040年代まで見込まれています。京王百貨店新宿店は当面営業を継続した上で、南街区ビル完成時に一時閉店・解体し北街区の再開発に移行すると見られます。

工事と並行して、駅そのものの改良工事や広場整備も段階的に実施されます。例えば京王線新宿駅では、混雑緩和と乗換動線の改善のためホームを北側に移設し、新たな改札口を設置する工事が進められています。これにより京王線ホームから東京メトロ丸ノ内線への乗換時間短縮や、西口地下広場での人の交錯緩和が図られる予定です。また、西口駅前広場については東京都施行の土地区画整理事業により、従来の車中心のロータリーから歩行者が主役の広場へ再編する計画が進行中です。JR線路上空には東西自由通路となる大規模デッキを新設し、西口と東口を徒歩で行き来できるようにする計画で、北側と南側にそれぞれ「新宿セントラルプラザ」(中央広場)や「新宿テラス」といった公共空間も整備される見通しです。この東西デッキと駅前広場の整備完了は2035年度頃と見込まれており、再開発ビルの完成と前後して新宿駅周辺の回遊性が飛躍的に向上するでしょう。

再開発ビルの構成と特徴

西口地区再開発(小田急側)では、地上48階・地下5階建て、高さ約260m、延床面積約27.9万㎡に及ぶ超高層複合ビルが建設されます。完成すれば都庁ビル(約243m)を上回る新宿でも屈指の高層ビルとなり、新たなランドマークになると期待されています。このビルは低層部1~10階前後に大規模な商業ゾーンを配置し、新宿エリア最大級のショッピング施設となる計画です。中層~上層部には最新仕様のオフィスを導入し、最上階には新宿の街並みを一望できる展望機能や集客性の高い施設が設けられる見通しです。主要用途は商業・業務(オフィス)・駅施設で、地下で東京メトロ丸ノ内線の駅とも直結する計画です。ビル設計は日本設計と大成建設によるJVが担当し、建物構造の耐震性能強化はもちろん、帰宅困難者一時滞在スペースの確保や非常用発電設備の充実など防災機能も盛り込まれています。さらに、建物周辺には緑地やテラスが整備され、環境性能にも配慮した最新の街区が創られます。

西口地区の再開発では、上記メインタワーに加えてもう一棟、比較的小規模なビル(B街区)も建設される予定です。B街区のビルは小田急電鉄が単独で開発する8階建て程度の商業・駅施設棟で、最高高さ約50m、延床約2.8万㎡規模となります。このビルは新宿ミロード方面(小田急線南口付近)に位置し、メインタワー(A街区)とデッキやペデストリアンデッキで接続され、一体的な商業空間を形成する計画です。A街区・B街区両棟とも完成時期は2029年度を予定しています。

西南口地区再開発(京王・JR側)では、先述のとおり南街区北街区の2棟のビルが段階的に建設されます。南街区に計画されているビルは、地上37階・地下6階、高さ約225m、延床面積約15万㎡規模の超高層複合ビルです。主要用途はオフィス、商業、宿泊施設(ホテル)等で、特に上層部には京王グループが手掛ける新ブランドの高級ホテルが入居予定であることが発表されています。低~中層階には店舗や飲食店が入り、JR線・京王線の駅施設ともデッキや地下通路で直結して回遊性を高める計画です。また南街区ビルは甲州街道をまたぐ形でペデストリアンデッキを整備し、新宿駅南口方面(バスタ新宿方面)と西口方面を繋ぐ歩行者動線のハブともなります。

北街区に計画されているビルは、地上19階・地下3階、高さ約110m、延床面積約14.15万㎡規模の高層ビルです。こちらは主に商業施設と宿泊施設(ホテル)で構成され、京王百貨店新宿店およびJR新宿駅の駅ビル(ルミネ新宿1)を建替える形で整備されます。北街区ビルにもホテルが入る計画ですが、南街区との差別化としてビジネス客向けの機能や駅直上の利便性を活かした施設構成になると予想されています。両街区とも地下には駐車場や駅関連施設を備え、歩行者ネットワーク強化のため地下通路や2階レベルのデッキで相互に連携します。設計は日建設計とJR東日本建築設計が共同で担当し、最新の都市型複合ビルとして景観面でも調和の取れたデザインとなる見込みです。

以上のように、西口地区・西南口地区それぞれで巨大な複合ビルが誕生することで、新宿駅西口には260m級と225m級のツインタワーが立ち並ぶ光景が将来的に実現します。駅の東西で超高層ビルがペアでそびえることになり、地上・デッキ・地下で行き交う人々を支える立体的な都市インフラが整備される計画です。

地域経済・不動産への影響

新宿駅西口再開発は、地域経済や不動産市場にも大きな影響を与えると見込まれています。世界有数のターミナル駅である新宿駅を抱える西口エリアは元々巨大な商圏を持ちますが、今回の再開発によってそのポテンシャルがさらに引き出されるでしょう。その経済的波及効果は新宿周辺のみならず広範囲に及ぶと考えられており、新宿駅利用者の多さ(JR新宿駅の1日平均乗車人員は約65万人で日本一)も相まって、再開発の恩恵は東京都内外に広がると期待されています。

まず、オフィス供給増加によるビジネス集積の強化が挙げられます。再開発ビルには最新鋭の大規模オフィスが導入されるため、多くの企業誘致や雇用創出が見込まれます。新宿は元来行政機関や大手企業のオフィスが集積するビジネス街でもありますが、新築オフィスの供給により、スタートアップ企業から国際的な企業まで幅広いビジネスの誘致が期待できます。これにより新宿エリアの就業人口は増加し、ビジネス客の増加による飲食・サービス産業の活性化も進むでしょう。また就業者が増えることで、新宿から郊外への通勤需要にも波及し、広域的に見て住宅マーケットの需要増加(居住ニーズの高まり)につながるとの指摘もあります。

次に、商業・観光分野への波及効果です。西口新ビルに入る大型商業施設は新宿エリア最大級となる見込みであり、国内外からの買い物客・観光客を引き寄せるでしょう。特にインバウンド需要の増加が期待され、新宿を訪れる外国人観光客にとって新たなショッピング・娯楽拠点となり得ます。高層ビル最上部の展望施設や、京王による新ブランド高級ホテルの開業は、新宿の魅力をさらに高め長期滞在者や富裕層観光客の需要を喚起すると考えられます。これら商業・宿泊機能の充実は、新宿駅周辺の地価やテナント賃料にも好影響を与え、不動産価値の向上につながるでしょう。実際、再開発計画の進展に伴い西新宿エリアの地価は上昇基調にあり、専門家からは「成熟した巨大都市・新宿がさらに進化することで不動産投資市場に与える影響は計り知れない」との声も出ています。

さらに、都市のブランド価値向上も見逃せません。超高層ツインタワーや整備された駅前広場・歩行者デッキは、新宿の景観や利便性を大きく改善し、街のイメージアップに直結します。これにより国内外の企業から見た新宿の評価が高まり、国際会議の誘致やスタートアップの集積など「アジア有数のビジネス拠点」としての地位強化も期待されます。東京都は今後、新宿に羽田空港アクセス線(仮称)の乗り入れも計画しており、交通利便性が飛躍的に高まることで、新宿エリア全体の価値向上に拍車を掛けるでしょう。

総じて、新宿駅西口再開発は地域経済の活性化エンジンとなり、不動産価値を押し上げる好材料と捉えられています。その効果は「極めて広範囲に広がる」と専門家も分析しており、完成に近づく今後数年間で新宿エリアは大きな注目を集め続けるでしょう。

今後の展望と注目点

新宿駅西口地区の再開発は長期にわたるプロジェクトであり、今後も段階的な進展が見込まれます。直近の注目点としては、小田急側の超高層ビル建設の進捗があります。2024年に着工した地上48階建てビルは、今後地下躯体工事から地上躯体の建方へと工事が本格化し、2025~2026年頃には新宿の景観にタワークレーンと高層骨組みが姿を見せるでしょう。2027年以降、外装工事や内装工事が仕上げ段階に入り、2029年度のビル完成・開業時には西口一帯の様相が一変していると予想されます。開業時には大型商業施設のグランドオープンが予定され、地域には大きな経済波及効果と話題性がもたらされるでしょう。

一方、京王側の南街区プロジェクトの再始動にも注目です。現在工期未定となっている南街区の高層ビルについて、京王電鉄とJR東日本は施工パートナーの選定や事業計画の精査を進めています。今後、新たな着工スケジュールやビルの正式名称・詳細プランが公表される可能性があります。特に京王の新ホテルブランドのコンセプトや、甲州街道を跨ぐペデストリアンデッキのデザインなどは、再開発のハイライトとして注目を集めるでしょう。南街区の着工時期が定まり次第、2040年代完成予定の北街区を含めた全体計画のロードマップも具体性を帯びてくると考えられます。北街区では京王百貨店やルミネ1の営業終了スケジュール、代替施設の確保など地元への影響も大きいため、段階的な情報発信が行われる見通しです。

行政側の動きとしては、新宿駅東西自由通路(デッキ)と西口駅前広場の整備計画が今後さらに具体化していきます。東京都は2035年度の完成を目標に掲げており、デッキのデザインや広場の詳細(巨大スロープの設置や緑化の方針など)について検討が進められています。新宿駅は東西で高低差がある地形のため、バリアフリーに配慮した勾配緩和策や、雨天時でも快適に歩ける動線計画などが注目されます。報道によれば、西口広場には大階段状の傾斜デッキ(スロープ)を設け、東口方面まで見通せる開放的な空間を創出する案もあるようです。こうした公共空間デザインの詳細発表も、再開発のトピックとして期待されています。

最後に、不透明要素として経済環境や需要動向にも目を配る必要があります。大型再開発プロジェクトは景気やテナント需要の影響を受けやすく、計画段階から長期間を経て完成に至るまでに状況変化が起こり得ます。現時点で新宿エリアのオフィス需要・商業需要は堅調と見られますが、今後の国内景気や国際情勢次第ではテナント誘致戦略の調整も必要になるでしょう。ただ、新宿駅という国内随一の集客力を持つ立地ゆえ、中長期的な視点では依然として高い潜在需要が見込まれます。事業者や行政は柔軟に計画をアップデートしつつ、街づくりの方向性を維持していく方針です。

まとめとして、新宿駅西口地区の再開発計画は2020年代後半から2030年代にかけて順次成果が現れ、街並み・利便性・経済活力のすべてにおいて「新しい新宿」を形作るプロジェクトとなります。世界的にも稀な超高密度ターミナル再開発として、その進捗は国内外から注目を集めており、新宿が今後どのように生まれ変わるか大いに期待されています。引き続き公式発表や工事の動きに目を離さず、新宿の未来図が具体化していく様子を見守りたいところです。