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(仮称)品川駅街区地区 再開発プロジェクトの最新動向

作成者: 稲澤大輔|2025/05/14 7:45:57 Z

品川駅街区地区の再開発完成予想図。赤枠で囲まれたエリアが開発区域で、左側が北街区、右側が南街区(中央部が南-a区画、右端が南-b区画)に分かれる。

開発の背景

品川駅周辺は羽田空港への玄関口であり、リニア中央新幹線の始発駅設置も予定されるなど、国内外の都市と結ぶ交通結節点として重要性が増しています。国や東京都はこのエリアを「これからの日本の成長を牽引する国際交流拠点」と位置付け、駅と街を一体化して競争力を高めるまちづくりを推進しています。こうした背景のもと、品川駅西側地区の大規模再開発プロジェクト「(仮称)品川駅街区地区」が計画されました。同計画は国家戦略特区の都市再生プロジェクトに指定され、都市基盤の強化と国際競争力向上を図るものです。

プロジェクト概要と計画

「品川駅街区地区」再開発は、JR品川駅の西側に細長く広がる約3.3ヘクタール(33,500㎡)の敷地を対象としています。計画地は北街区と南街区(南-a、南-bの2区画)に分かれており、それぞれ地上28階建て(高さ約150m)クラスの高層棟2棟と、地上9階建ての中層棟1棟を建設する計画です。全体の延べ床面積は約37万4300㎡に及び、東京都心でも最大級の再開発となります。主要用途はオフィスを中心に、商業店舗、ホテルなどの宿泊施設、駅施設、国際水準の会議場・ホール(集会場)、駐車場等の多機能複合施設が導入される予定です。特に南街区にはビジネス協働支援施設やビジネス交流施設(コワーキングスペースやカンファレンス機能など)が盛り込まれ、新たな価値や交流を生み出す拠点と位置付けられています。一方、北街区低層部には品川駅に直結する駅施設や商業施設に加え、日本各地の魅力や地域の歴史文化を発信する情報発信施設が整備される計画で、将来的に開業予定の東京メトロ南北線「(仮称)品川駅」新駅とも接続する見通しです。

街区別の計画概要

  • 北街区(JR東日本担当):敷地面積約1.47ha、延べ床面積約16万5000㎡。地上28階・地下3階建て、高さ約150mの超高層ビルを新設。用途はオフィス主体で、低層部に駅施設・商業施設・情報発信施設を配置予定。

  • 南街区(南-a)(京浜急行電鉄担当):敷地面積約1.73ha、延べ床面積約20万1000㎡。地上28階・地下2階建て、高さ約150mの超高層ビルで、オフィスのほかホテル等宿泊施設や大規模ホール(集会場)等も計画。京急線新駅をビル内部に収容し、駅機能と一体化した構造となります。

  • 南街区(南-b)(京浜急行電鉄担当):敷地面積約0.15ha、延べ床面積約8300㎡。地上9階・地下1階建て、高さ約47mの中規模ビルで、主にオフィス・店舗・駐車場などで構成予定です。

参加企業・行政機関の役割

本事業は東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)と京浜急行電鉄株式会社(京急)の2社が事業主体となり、それぞれ北街区と南街区の開発を担います。鉄道事業者同士の大型再開発協働は珍しく、JRと京急が連携して品川駅周辺の再編にあたる点が注目されます。また、国土交通省は本プロジェクトを「優良な民間都市再生事業計画」として令和7年2月に認定しており、認定事業者(JR東日本・京急)は民間都市開発推進機構による金融支援や税制優遇措置を受けることが可能となりました。この認定は政府が本開発を都市再生に資する重要プロジェクトとみなしたことを意味し、国家戦略特区の枠組みの下で内閣府や東京都も計画策定に関与しています。東京都は都市計画決定や環境アセスメント等の手続きを進め、港区も地元自治体として周辺整備や文化財対応で協力しています。併せて、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が駅周辺の土地区画整理事業を担当し、道路・広場整備では国土交通省や東京都建設局が連携するなど、官民一体で基盤整備が進められています。

開発スケジュール

工期は街区ごとに異なり、段階的な開発が予定されています。まず北街区は2025年度に着工し、2030年度までの完成(2031年3月頃の竣工)を目指します。南街区(南-a)も2025年度に着工しますが、駅機能の移設や段階施工を伴うため長期計画となり、2036年度までの完成(2037年3月頃竣工)というスケジュールが示されています。一方、南街区(南-b)は他の街区完成後の2030年度に着工し、2032年度の完成を予定しています。京急線品川駅の線路付け替え(連続立体交差化)工事と並行して進められるため、南街区ではまず鉄道施設部分の整備を優先し、その後上部の超高層部を建設する段取りとみられます。2027年前後にはリニア中央新幹線の品川開業や京急新線切替が控えており、これらのタイミングに合わせ一部施設の先行供用や駅機能の段階的な切替も検討されるでしょう。最終的な全体竣工は2030年代半ばから後半にかけて完了し、以降順次街開きとなる見通しです。

地域経済・不動産市場への影響

品川駅街区地区の再開発は、周辺地域の経済や不動産市場にも大きな影響を及ぼすと期待されています。まず建設期間中は大規模工事による雇用創出や関連需要が見込まれ、完成後は新たなオフィス・商業空間に国内外から企業や投資が誘致されることで地域経済が活性化すると予測されます。品川は既に複数路線が集まる交通利便性の高さから企業立地の人気があるエリアですが、本プロジェクトによって供給される最新鋭のオフィス空間は、その需要をさらに喚起しうるものです。実際、再開発への期待感から品川エリアの不動産価値は上昇傾向にあり、中古高級マンションの取引価格も近年上昇しているとの指摘があります。一方で、品川・虎ノ門など都心部では大型オフィスの新規供給が相次ぐため競争激化も予想されます。しかし本プロジェクトはリニア新幹線の始発駅上盖開発という希少性や、空港アクセスに優れる立地特性を武器に、国内外の企業誘致で優位に立つとの見方が強いです。専門家は「品川駅周辺の再開発群により、東京のビジネス拠点としての重心が品川にも大きくシフトする可能性がある」としており、新しいオフィス供給は東京全体の国際競争力強化にも寄与すると期待されています。

今後の展望

品川駅街区地区プロジェクトは、周辺の複数開発計画と相まって今後10年超にわたり段階的に街並みを刷新していきます。東側の品川駅東口地区や西側のシナガワグース跡地再開発、高輪ゲートウェイ駅周辺の「Takanawa Gateway City」計画など、品川エリアでは広範囲に再開発が進行中であり、本プロジェクトもそれらと連携した都市づくりが志向されています。2030年代前半にはリニア中央新幹線の開業効果に加え、品川駅への東京メトロ南北線延伸(新駅開業予定)も実現する見込みで、鉄道ネットワークが一段と充実します。これらのインフラ整備と再開発ビル群の完成により、品川は「駅と街がシームレスにつながる国際交流拠点」として生まれ変わるでしょう。将来的にはビジネス・観光の双方で国内外から多くの人々を引き寄せる都市拠点となり、丸の内・新宿など他の都心副都心に匹敵する規模と機能を備えた新しい「顔」として東京を牽引していくことが期待されます。行政・事業者は高輪築堤跡(旧鉄道施設の史跡)など文化財の保存と活用にも配慮しつつ、持続可能な街づくりと地域価値向上を両立させる方針です。今後は発掘調査の進展や社会情勢の変化に応じて計画の調整もあり得ますが、品川駅街区地区の再開発は東京の都市構造を大きく変えるプロジェクトとして着実に歩みを進めており、都市開発や不動産に関心の高い専門層からもその行方に熱い視線が注がれています