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【不動産オーナー向け】賃貸物件の網戸張替は誰負担?

作成者: 稲澤大輔|2025/06/06 23:53:56 Z

賃貸物件の運営において、不動産オーナーの皆様が最も頭を悩ませる問題の一つが修繕費の負担区分です。特に網戸張替については、入居者からの問い合わせが多く、適切な対応が求められる重要な課題となっています。

網戸は日常的に使用される設備でありながら、その修繕費用の負担者について明確な理解を持たれていないオーナー様も少なくありません。適切な判断を行わないと、入居者とのトラブルに発展したり、不必要な費用負担を強いられたりする可能性があります。

本記事では、INA&Associatesとして長年にわたり不動産管理業務に携わってきた経験を基に、賃貸物件修繕費における網戸張替の負担区分について、法的根拠と実務上のポイントを詳しく解説いたします。不動産オーナー負担の範囲を正確に理解し、適切な賃貸経営修繕管理を実現するための指針をご提供いたします。

網戸張替の負担区分に関する基本的な考え方

法的根拠となる原状回復ガイドライン

網戸張替の負担区分を理解するためには、まず国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の内容を把握することが重要です。このガイドラインは、賃貸住宅の退去時における原状回復網戸の扱いについて、明確な指針を示しています。

原状回復ガイドラインでは、修繕費用の負担区分を「入居者の故意・過失による損耗」と「自然損耗・経年劣化」に大別しています。網戸についても、この基本原則が適用されます。具体的には、入居者が故意に破損させた場合や、不適切な使用方法により破損が生じた場合は入居者負担となります。一方、紫外線による劣化や風雨による自然な損耗については、貸主である不動産オーナーの負担となるのが原則です。

しかしながら、網戸の場合は他の設備と異なり、「消耗品」として扱われることが多いという特殊性があります。この点が、網戸張替の負担区分を複雑にしている主要な要因となっています。消耗品として位置づけられた場合、経年劣化による破損であっても入居者負担となるケースが一般的です。

網戸の「消耗品」と「設備」の区分

賃貸契約修繕義務を考える上で、網戸が「消耗品」として扱われるか「設備」として扱われるかは極めて重要な判断基準となります。この区分は、賃貸借契約書の記載内容によって決定されます。

消耗品として扱われる場合、網戸は電球や蛍光灯と同様の位置づけとなり、入居中の交換や修繕は入居者の責任となります。この考え方の背景には、網戸が比較的安価で交換が容易であり、日常的な使用により劣化が進行する性質を持つという理由があります。多くの賃貸物件では、この消耗品としての扱いが採用されています。

一方、設備として扱われる場合は、エアコンや給湯器と同様に、経年劣化による故障や破損については貸主が修繕費用を負担することになります。この場合、入居者の故意・過失による破損のみが入居者負担となります。

契約書記載内容の重要性

賃貸物件維持管理において最も重要なのは、賃貸借契約書における網戸の扱いに関する記載内容です。契約書に「網戸張替えなどの小修繕は賃貸人負担とする」という文言が含まれている場合は、経年劣化による破損であっても貸主負担となります。

逆に、「消耗品の交換は賃借人負担とする」という記載があり、その消耗品の範囲に網戸が含まれている場合は、原則として入居者負担となります。このように、契約書の記載内容が最終的な判断基準となるため、オーナー様は契約書の内容を十分に理解し、必要に応じて見直しを検討することが重要です。

また、契約書に明確な記載がない場合は、一般的な商慣習や地域の慣例に従って判断されることになります。この場合、トラブルを避けるためにも、事前に入居者との間で網戸の扱いについて明確に合意しておくことが推奨されます。

網戸の耐用年数と負担区分の実務

網戸の耐用年数について

網戸耐用年数を正確に理解することは、適切な負担区分を判断する上で不可欠です。網戸の耐用年数は、使用される素材や設置環境によって異なりますが、一般的には以下のような期間が目安となります。

網戸の網部分については、ポリプロピレン製やポリエステル製の場合で5年から8年程度、より耐久性の高いステンレス製の場合で8年から10年程度が標準的な耐用年数とされています。一方、網戸の枠部分(アルミサッシ)については、15年程度の耐用年数が一般的です。

これらの耐用年数は、紫外線による劣化、風雨による損耗、温度変化による材質の変化などの自然要因を考慮して設定されています。特に南向きの窓に設置された網戸は、紫外線の影響を強く受けるため、耐用年数が短くなる傾向があります。

耐用年数と負担区分の関係

不動産管理網戸において重要なのは、耐用年数と負担区分の関係性です。網戸が耐用年数を迎える前に破損した場合と、耐用年数を超えて使用されている場合では、負担区分の考え方が異なります。

耐用年数内での破損については、その原因が入居者の故意・過失によるものか、自然損耗によるものかを慎重に判断する必要があります。例えば、設置から3年程度で網に大きな穴が開いた場合、通常の使用では考えられない損傷であるため、入居者の過失による破損と判断される可能性が高くなります。

一方、耐用年数を超えて使用されている網戸については、経年劣化による破損と判断されるのが一般的です。この場合、契約書で消耗品として扱われていても、貸主負担となるケースが増えています。これは、耐用年数を超えた設備については、入居者に交換義務を課すことが不合理であるという考え方に基づいています。

ケース別負担区分の詳細

実際の賃貸経営修繕において遭遇する具体的なケースについて、負担区分を整理してみましょう。

入居者負担となるケース

入居者の故意による破損は明確に入居者負担となります。例えば、網戸に物をぶつけて破損させた場合、ペットが爪で引っかいて破損させた場合、不適切な清掃方法により網を破損させた場合などが該当します。また、契約書で消耗品として明記されており、耐用年数内での通常使用による劣化についても、入居者負担となることが一般的です。

喫煙による網戸の変色や臭いの付着についても、入居者の使用方法に起因する損耗として、入居者負担となるケースが多くなっています。特に、禁煙物件での喫煙による損耗については、契約違反としても扱われる可能性があります。

貸主負担となるケース

経年劣化による自然な損耗は貸主負担となります。具体的には、紫外線による網の劣化、風雨による自然な損耗、温度変化による材質の劣化などが該当します。また、耐用年数を超えた網戸の交換についても、貸主負担となるのが適切です。

次の入居者確保のために行う網戸張替えについても、原状回復ガイドラインでは貸主負担として明記されています。これは、入居者の入れ替わりに伴う美観の向上を目的とした修繕であり、前入居者の責任ではないという考え方に基づいています。

地震などの自然災害による破損についても、入居者に責任がない損耗として貸主負担となります。また、建物の構造的な問題(例:窓枠の歪みによる網戸の破損)についても、貸主の責任として修繕費用を負担する必要があります。

実務上の対応方法と費用相場

網戸張替の費用相場

網戸張替の費用を適切に把握することは、負担区分を決定する際の重要な判断材料となります。以下の表に、一般的な網戸張替の費用相場をまとめました。

作業内容 費用相場(1枚あたり) 備考
網のみ張替え(DIY) 500円~1,500円 材料費のみ
網のみ張替え(業者依頼) 2,000円~4,000円 出張費・工賃込み
網戸本体交換 8,000円~15,000円 枠も含む完全交換
特殊サイズ・高機能網戸 15,000円~30,000円 防虫・UVカット等

これらの費用相場を踏まえると、網のみの張替えであれば比較的少額であるため、消耗品として入居者負担とすることに合理性があります。一方、網戸本体の交換が必要な場合は、費用が高額になるため、貸主負担とすることが適切なケースが多くなります。

対応フローの確立

不動産管理網戸において、トラブルを未然に防ぐためには、明確な対応フローを確立することが重要です。入居者から網戸の修繕依頼があった場合の標準的な対応手順をご紹介します。

まず、破損状況の確認を行います。可能であれば現地確認を実施し、破損の程度と原因を特定します。写真撮影による記録も重要です。次に、契約書の記載内容を確認し、網戸の扱いが消耗品か設備かを明確にします。

破損原因の判定では、入居者の故意・過失による破損か、経年劣化による自然損耗かを慎重に判断します。判断が困難な場合は、設置時期、使用期間、破損状況などを総合的に考慮します。

負担区分が決定したら、入居者に対して明確に説明を行います。入居者負担の場合は、修繕方法(DIYか業者依頼か)について相談し、貸主負担の場合は速やかに修繕手配を行います。

予防策と長期的な管理方針

賃貸物件維持管理の観点から、網戸に関するトラブルを予防するための対策も重要です。定期的な点検により、網戸の状態を把握し、耐用年数を迎える前に計画的な交換を実施することで、突発的な修繕費用を抑制できます。

入居時の説明において、網戸の適切な使用方法や清掃方法について説明することも効果的です。特に、強風時の取り扱いや、清掃時の注意点について具体的に説明することで、入居者の過失による破損を防止できます。

また、契約書の見直しも定期的に行うことが推奨されます。網戸の扱いについて曖昧な記載がある場合は、明確な条項を追加することで、将来的なトラブルを防止できます。

地域差と物件特性の考慮

網戸張替の負担区分については、地域の商慣習や物件の特性も考慮する必要があります。海岸部や工業地帯など、特殊な環境にある物件では、網戸の劣化が早く進む可能性があります。このような立地条件を考慮して、耐用年数の設定や負担区分の判断を行うことが重要です。

高級賃貸物件では、網戸についても高品質なものが設置されていることが多く、この場合は設備として扱われることが一般的です。一方、学生向けアパートなどでは、コスト重視の観点から消耗品として扱われることが多くなっています。

物件の築年数も重要な要素です。築年数が古い物件では、網戸以外の設備も老朽化が進んでいることが多く、総合的な修繕計画の中で網戸の交換時期を検討することが効率的です。

まとめ

賃貸物件の網戸張替における負担区分は、契約書の記載内容、破損の原因、網戸の耐用年数などを総合的に判断して決定する必要があります。不動産オーナーの皆様には、以下の重要なポイントを押さえていただきたいと思います。

第一に、契約書における網戸の位置づけを明確にすることです。消耗品として扱うか設備として扱うかによって、負担区分が大きく変わります。曖昧な記載は将来的なトラブルの原因となるため、明確な条項を設けることが重要です。

第二に、網戸耐用年数を適切に把握し、計画的な交換を実施することです。耐用年数を超えた網戸については、経年劣化による交換として貸主負担となることが一般的であるため、予算計画に組み込んでおく必要があります。

第三に、破損原因の適切な判定を行うことです。入居者の故意・過失による破損と自然損耗を正確に区別し、公平な負担区分を実現することが、良好な賃貸関係の維持につながります。

賃貸経営修繕において、網戸は比較的小さな設備ですが、適切な管理により入居者満足度の向上と運営コストの最適化を両立できます。INA&Associatesでは、このような細かな管理業務についても、オーナー様の負担軽減と収益性向上を目指したサポートを提供しております。

今後の賃貸物件維持管理においては、網戸を含む各種設備の計画的な更新と、明確な負担区分の設定により、トラブルのない安定した賃貸経営を実現していただければと思います。ご不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1.入居者が勝手に網戸を交換した場合、費用は誰が負担しますか?

入居者が事前の相談なく網戸を交換した場合の費用負担については、契約書の記載内容と交換の必要性によって判断が分かれます。

契約書で網戸が消耗品として扱われており、交換が必要な状態であった場合は、入居者の負担で問題ありません。ただし、事前の相談なく交換を行った場合は、原状回復時に元の仕様に戻すよう求めることも可能です。

一方、まだ使用可能な網戸を入居者の都合で交換した場合は、その費用は入居者負担となります。また、交換した網戸が物件の仕様に適合しない場合は、退去時に適切な仕様への交換を求めることができます。

トラブルを防ぐためには、網戸の交換を行う前に必ず管理会社またはオーナーに相談するよう、契約書に明記しておくことが重要です。

Q2.網戸の一部分だけが破れている場合、全面張替えが必要ですか?

網戸の一部分のみの破損については、破損の程度と範囲によって対応方法が異なります。

小さな穴や部分的な破れの場合は、補修用のテープやパッチを使用した部分修理で対応可能です。この場合の費用は数百円程度であり、消耗品として扱われている場合は入居者負担となることが一般的です。

しかし、破損範囲が広い場合や、複数箇所に破損がある場合は、全面張替えが必要となります。また、部分修理では美観を損なう場合や、修理箇所から更なる破損が拡大する可能性がある場合も、全面張替えが推奨されます。

判断に迷う場合は、専門業者に相談し、修理と張替えの費用対効果を比較検討することが適切です。

Q3.網戸がない物件で、入居者が網戸設置を希望した場合の対応は?

網戸が設置されていない物件で入居者が網戸設置を希望した場合は、設置費用の負担と退去時の取り扱いについて事前に合意しておく必要があります。

入居者負担で設置する場合は、退去時の取り扱いを明確にしておくことが重要です。一般的には、入居者が設置した網戸は退去時に撤去し、原状回復することが求められます。ただし、次の入居者にとって有益な設備である場合は、そのまま残置することも可能です。

貸主負担で設置する場合は、物件の付加価値向上として位置づけ、今後の入居者募集時のアピールポイントとして活用できます。この場合、設置後の維持管理についても貸主責任となります。

いずれの場合も、設置前に書面による合意を取り交わし、後日のトラブルを防止することが重要です。

Q4.高機能網戸(防虫・UVカット等)の場合、負担区分は変わりますか?

高機能網戸については、その機能と設置目的によって負担区分の考え方が変わる場合があります。

物件の標準仕様として高機能網戸が設置されている場合は、通常の網戸と同様に契約書の記載内容に従って負担区分を判断します。ただし、高機能網戸は一般的な網戸よりも高価であるため、設備として扱われることが多くなっています。

入居者の希望により高機能網戸に交換した場合は、その差額分については入居者負担となることが一般的です。退去時には、元の仕様に戻すか、高機能網戸をそのまま残置するかについて協議が必要です。

高機能網戸の耐用年数は一般的な網戸よりも長い場合が多いため、交換時期の判断についても慎重に行う必要があります。

Q5.網戸の清掃は誰の責任ですか?

網戸の日常的な清掃については、入居者の責任となることが一般的です。これは、網戸が居住者の快適性を向上させる設備であり、日常的な使用に伴う汚れの除去は入居者が行うべき管理業務と考えられているためです。

ただし、建物の構造や立地条件により、通常の清掃では除去困難な汚れが付着する場合は、貸主負担での専門清掃が必要となることもあります。例えば、工業地帯での煤煙による汚れや、海岸部での塩害による腐食などが該当します。

退去時の清掃については、通常の使用による汚れは入居者負担、経年による変色や劣化は貸主負担として区別されます。喫煙による変色や臭いの付着については、入居者の使用方法に起因するものとして入居者負担となることが一般的です。

INA&Associates株式会社について

私たちINA&Associates株式会社は、「人財」と「信頼」を経営の核に据え、不動産オーナー様の資産価値向上と安定した賃貸経営をサポートしております。網戸張替を含む各種修繕業務から、入居者管理、収益最適化まで、総合的な不動産管理サービスを提供いたします。

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