INA online

不動産投資初心者が陥りやすい失敗と防止する6つの重要ポイント

作成者: 稲澤大輔|2025/04/25 1:00:00 Z

近年、不動産投資は将来の安定収入や資産形成手段として注目され、初心者の参入も増えています。低金利や年金不安を背景に、「持続的な副収入が得られるなら…」と考える方も多いでしょう。しかし、不動産投資は決して簡単な道ではありません。初心者ゆえの知識不足や準備不足から失敗してしまうケースも少なくないのです。

実際、不動産情報サイトの調査によれば「不動産投資で失敗したことがある」人は全体の約40.7%にも上ります。さらにその主な失敗要因を見ると、「空室が埋まらない」(約36%)や「修繕・維持費など予想外の出費」(約31%)が上位を占め、高値づかみ(約30%)や需要の低い立地の購入(約16%)も続いています。つまり、多くの初心者は空室リスクやコスト管理、物件選定でつまずいているのです。

不動産投資で一度失敗すると、毎月のキャッシュフローが赤字となり自分の財布から補填し続ける羽目になったり、誰にも買い手のつかない物件を抱えて管理の負担に苦しんだりと、取り返しのつかない状況になりかねません。そうしたリスクを避けるには、事前に典型的な失敗パターンを知り、対策を講じておくことが重要です。本記事では、不動産投資初心者がよく陥る失敗の具体例と、それを未然に防ぐために知っておくべき6つの重要ポイントを解説します。誠実さと長期的視野を持って学ぶことで、持続可能な成長につながる安全な第一歩を踏み出しましょう。

よくある失敗の具体例

不動産投資の初心者にありがちな失敗には、いくつかパターンがあります。以下に代表的な例を挙げます。

  • 収支計画の甘さによる資金繰り悪化: 楽観的に家賃収入だけを当てにしてローンを組んだ結果、空室や予期せぬ出費で毎月赤字になってしまうケース。例えば「空室期間はゼロだろう」「修繕費も当面かからないだろう」と都合よく見積もり、実際には空室や修繕で手出しが発生する…といった具合です。

  • 立地重視の欠如による空室リスク: 表面利回りの高さにつられて需要の低いエリアや駅遠物件を購入し、入居者がつかず空室が長期化するケース。利回り60%など極端に高い数字に飛びついたものの一度も入居者が現れなかった、という極端な失敗例も報告されています。

  • サブリース契約の誤解: 「家賃保証付きだから安心」とサブリース契約物件を安易に買ってしまい、契約後に保証家賃の減額や打ち切りを通知されるケース。初心者には「空室リスクがなく楽」と映るサブリースですが、後述するように注意点を理解していないと痛手を被ります。

  • 不動産会社の言うことを鵜呑みにする: 業者に「今だけの好条件物件です」などと勧められるまま購入し、後から聞いていなかったリスクが判明するケース。物件の欠点や将来のリスクを自分で精査せずに契約してしまうと、想定外の出費に悩まされることになります。実際、不動産会社は売買仲介手数料など利益のため良い情報しか提供しない場合もあるため、「なぜそんな良物件が売りに出ているのか?」と疑問を持ち冷静に判断する姿勢が重要です。

  • 運用目的や戦略の不明確さ: 購入当初に「老後の年金代わり」など目的を掲げていても、目先の利益や営業トークに流されて当初の方針と合わない物件を買ってしまうケース。戦略なき投資は迷走を招き、結局思うような成果が得られずに物件を手放すことになりかねません。

以上のような失敗は決して特異な例ではなく、初心者であれば誰もが陥り得る可能性があります。しかし裏を返せば、事前にこれら典型的な失敗要因を知り対策をとれば、失敗確率を大きく下げられるということでもあります。次章では、初心者がこれらの失敗を未然に防ぐために押さえておくべき6つのポイントを、ひとつひとつ詳しく解説します。

初心者が失敗を防ぐための6つの重要ポイント

綿密な収支計画を立てリスクに備える

不動産投資では、収支計画(キャッシュフロー計算)の甘さが命取りになります。毎月の家賃収入からローン返済や管理費・税金などを差し引き、手元に残る金額を正確に把握しておかなければなりません。物件価格以外にも登記費用や仲介手数料、保険料など様々な経費が発生します。さらに、空室や家賃滞納が発生すれば収入はゼロになり、ローン返済分がまるごと自己負担となるリスクも考慮が必要です。

例えば月々65,000円の家賃収入を見込んで購入した物件でも、半年後に空室が出て次の入居者が見つかるまで7ヶ月もかかれば、その年の実質利回りは当初予定の7.8%から2.6%まで落ち込み、不足分を給与から補填せざるを得なくなります。こうした最悪ケースのシミュレーションを行い、空室期間や修繕費用の発生、金利上昇なども織り込んだ計画を準備しましょう。手残りがギリギリの計画ではなく、余裕を持った収支シミュレーションを組むことが大切です。その上で、手元資金には常に数ヶ月分のローン返済や経費をまかなえる予備を確保し、想定外の事態にも耐えられる財務基盤を整えておきます。

物件の立地と需要を最優先に考慮する

不動産の格言に「立地が全て」というものがあります。それほど立地条件と周辺需要のリサーチは重要です。初心者はつい「利回り○%」という数字の高さや物件価格の安さに目を奪われがちですが、高利回りには理由があります。多くの場合、それは駅から遠い、需要の少ないエリアにある、築古で空室リスクが高いといった要因です。実際、失敗理由のトップは「空室の長期化」であり、裏を返せば「入居者が付きにくい物件を選んでしまった」ことを意味します。

先述のように、県境の駅徒歩20分という条件のワンルームを購入したケースでは、入居付けに苦戦して長期空室となり、当初想定の収入を大幅に下回りました。また、アンケートでも「需要の低い場所を買ってしまった」**ことが失敗要因として挙げられています。このように、賃貸需要の見込みが低い場所に物件を持つことは大きなリスクです。

防ぐためには、物件選定時に周辺の賃貸需要を徹底調査しましょう。最寄り駅からの距離や沿線の人気、周辺の人口動向や開発計画、競合物件の空室率などを確認します。また「自分が借り手だったら住みたいと思うか?」という目線で立地を評価することも有効です。立地条件が悪ければ、どんなに物件自体が良くても運用はうまくいきません。立地と需要に妥協しないことが、長期安定経営への近道です。

3. サブリース契約の仕組みとリスクを正しく理解する

初心者に人気の「サブリース(家賃保証)契約」ですが、そのメリットだけを信じ込むのは危険です。サブリースとは不動産管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、オーナーに一定の家賃を支払う契約形態です。一見「空室リスクがなく安心」に思えますが、現実には以下のようなリスクがあります:

  • 保証家賃の減額リスク: 契約時に約束された家賃が将来一方的に引き下げられる可能性がある。

  • 契約打ち切りリスク: サブリース会社の都合で契約自体が更新されず、突然家賃収入が途絶える場合がある。

  • 割高物件を掴まされるリスク: 「保証があるから安心」と油断していると、実勢価格より高い物件を売りつけられてしまうことがある。

  • 会社倒産のリスク: サブリース業者が経営不振や倒産に陥れば、家賃保証は絵に描いた餅となってしまう。

特に初心者は上記リスクを十分理解しないまま安易にサブリース契約を結び、「聞いていなかった」とトラブルになるケースが後を絶ちません。実際、初心者はサブリースのデメリットをよく知らずに甘い収支計画を立てて失敗したり、悪質業者に割高物件を押し付けられたりしがちだと指摘されています。

サブリースそのものが悪いわけではありませんが、契約内容を細部まで把握し、自分でもリスクシミュレーションした上で判断することが重要です。家賃保証額や見直し条項、契約解除条件などを確認し、不明点は遠慮なく質問しましょう。「空室リスク軽減」の裏側に潜むリスクも踏まえた上で、必要なら通常の管理委託も含め比較検討することをおすすめします。安易に「楽だから」と飛びつかず、冷静にメリット・デメリットを理解した上で意思決定してください。

4. 十分な調査(デューデリジェンス)と自己学習を怠らない

不動産投資は**「自分自身で物件の良し悪しを見極める目」が求められる投資**です。初心者の中には専門用語や法制度が難しく感じられ、「プロに任せれば大丈夫だろう」と詳細な調査を疎かにしてしまう人もいます。しかし、購入前の情報収集や物件のデューデリジェンス不足こそが多くの失敗の原因となっています。成功者は皆、購入前に徹底的に調べ尽くしてリスクを洗い出しています。

まず、気になる物件があれば自分でも現地を訪れましょう。広告や担当者の話だけでは分からない環境要因(周辺の雰囲気、騒音や臭い、交通量、近隣施設の状況など)をチェックします。物件の築年数や構造、過去の修繕履歴も重要なポイントです。可能であれば専門家に建物診断を依頼し、将来的な修繕の必要性や費用感を把握すると安心です。

また、役所で法規制や権利関係の確認も行いましょう。用途地域や再建築の可否、未登記の増改築がないか、借地権や抵当権の有無など、法律面のリスクも調査が必要です。さらに賃貸中の物件であれば、現在の入居者の状況(家賃滞納の履歴や契約内容)も確認し、引き継ぐリスクを評価します。

情報収集は一朝一夕にはいきませんが、最近は書籍や専門サイト、セミナーなど学習機会も豊富です。信頼できる情報源から基礎知識をコツコツと学び、自ら判断できる目を養うことが大切です。「何から始めたらいいか分からない」という初心者の方も多いですが、まずは小さなことでも自分で調べ、疑問点を潰していく姿勢が、後々大きな失敗を防いでくれるでしょう。

5. 信頼できる専門家・業者を選び客観的な助言を得る

不動産投資は自己責任の事業ですが、信頼できるパートナーの存在が成功率を大きく高めます。初心者ほど業界の裏を見抜くのは難しいため、誠実な専門家のサポートを得ることが有効です。ただし、不動産業界には残念ながら悪徳業者も少なくないのが実情です。儲け優先で顧客の利益を二の次にする会社に当たってしまうと、平気で割高で不良な物件を掴まされる事例も後を絶ちません。したがって、「誰から買うか」は「何を買うか」以上に重要と言えます。

まずは複数の不動産会社に相談し、比較検討することを心がけましょう。一社だけの話を鵜呑みにせず、他社にも当たってみることで、提示された物件やシミュレーションが妥当かどうか客観的に判断できます。他社を回る中で、自分の投資方針や希望を丁寧に聞き取り、親身になって提案してくれる担当者がいれば、その人は貴重なパートナー候補です。

信頼できる業者を見極めるポイントとして、例えば以下の点をチェックすると良いでしょう。

  • 提案された収支シミュレーションは現実的か(甘すぎないか)。

  • 物件のデメリットも含めて透明性の高い情報提供をしてくれるか。

  • 強引な営業や契約の急かし方をしてこないか。

  • 質問に対して誠実かつ専門的な知識に基づく回答をしてくれるか。

こうした視点で担当者や会社の姿勢を見れば、自ずと信用できる相手かどうかが見えてきます。自分一人で判断が難しい場合、不動産コンサルタントやファイナンシャルプランナーなど第三者の専門家にセカンドオピニオンを求めるのも有効です。大切な資産形成ですから、信頼のおけるプロの知見もうまく活用し、リスクを客観的に評価しましょう。

6. 誠実さと長期的視野を持った持続可能な投資を心がける

最後に、初心者の方にぜひ持っていただきたいのが誠実さと長期的視野を持った投資マインドです。不動産投資は短期で大儲けするような性質のものではなく、長期にわたってコツコツと資産を育てていく 「持続可能な成長」 を目指す営みです。目先の利益や節税効果だけに飛びつくのではなく、10年先、20年先を見据えて戦略を立てましょう。

例えば、「節税になるから」と新築ワンルームマンションを買っても、家賃下落や空室リスクで結局キャッシュフローが出なければ本末転倒です。税金対策はあくまで副次的なものであり、投資の目的は安定した家賃収入(キャッシュフロー)を得ることにあります。たとえ減価償却で一時的に節税できても手元にお金が残らなければ意味がありません。常に「実利(現金が増えるか)」の視点で判断しましょう。

また、長期的視野を持つということは、物件や入居者に対して誠実に向き合うことでもあります。入居者はオーナーにとって大切な「お客様」です。快適な住環境を提供し、誠意ある対応を心がければ、長く住んでもらえる可能性が高まり結果的に安定収入につながります。物件設備のメンテナンスを怠らず、必要な修繕やリフォームは適切に行う。家賃設定も強気にしすぎず、市場に見合った水準に保つ。こうした健全な運営姿勢の積み重ねが信頼関係を生み、空室リスクの低減や資産価値の維持につながっていきます。

さらに、不動産投資では銀行や管理会社、入居者など多くの人との関係性が関与します。金融機関への返済を滞りなく行い、契約上の責任を果たしていくことは言うまでもなく、どんな場面でも誠実なコミュニケーションを心がけてください。信頼は一朝一夕に築かれるものではなく、日々の積み重ねが重要です。誠実さをもって長期的な信頼関係を築けば、不動産投資という事業の基盤が揺るぎないものとなり、将来的なトラブルも減らすことができます。

初心者が持つべき視点と持続可能な投資への心構え

不動産投資で成功するために大切なのは、事前準備と長期的な視野、そして揺るがない基本姿勢です。初心者のうちはわからないことだらけかもしれません。しかし、本記事で述べたような代表的な失敗要因を知り、その対策となる6つのポイント(綿密な計画、立地重視、契約理解、調査徹底、信頼できるパートナー選び、長期的視野と誠実さ)を意識して行動すれば、致命的な失敗はかなりの確率で防げるはずです。

特に、目先の損得に振り回されず長期的な安定を優先する視点を持つこと、そして関わる人々(顧客である入居者や取引業者など)との信頼関係を大切にする姿勢は、持続可能な投資を実現する上で欠かせません。短期的なブームや派手さに惑わされず、地道に知識と経験を積み重ねていくことで、不動産投資は10年後20年後にわたってあなたにもたらしてくれる果実を育んでくれるでしょう。

初心者である今こそ、誠実さと学ぶ姿勢を持って慎重に一歩ずつ踏み出してください。そうすれば、不動産という大きな資産を扱う投資でも決して怖がる必要はありません。適切な備えをした上で挑めば、不動産投資は失敗を避けて成功率を高めることができる健全な資産運用となり得ます。本記事の内容を参考に、将来の豊かさと成長につながる持続可能な不動産投資への第一歩を踏み出していただければ幸いです。