INA Wealth Vision|Japan Luxury Realty Group

富裕層とは?

作成者: 稲澤大輔|2025/06/06 14:13:12 Z

近年、日本における富裕層の世帯数は着実に増加しており、2023年には過去最高の165万世帯に達しました。

しかし、「富裕層」という言葉を耳にしても、具体的にどのような基準で定義されているのか、どのような特徴を持つのかを正確に理解している方は多くありません。

本記事では、INA&Associates株式会社の代表取締役として、日々超富裕層のお客様と接している私の経験を踏まえ、富裕層の定義から投資行動、特に不動産投資における特徴まで、解説いたします。

資産形成を目指す方や、富裕層向けビジネスに関わる方にとって、有益な情報をお届けします。

富裕層の定義と分類

野村総合研究所による富裕層の定義

日本において最も権威ある富裕層の定義は、野村総合研究所が提示している基準です。

同研究所では、世帯が保有する純金融資産保有額に基づいて、以下の5つの階層に分類しています。

純金融資産とは、預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険などの金融資産の合計額から、不動産購入に伴う借入などの負債を差し引いた金額を指します。

つまり、単純に金融資産を多く保有していても、負債が多ければ富裕層には分類されません。

階層 純金融資産保有額 2023年世帯数
超富裕層 5億円以上 11.8万世帯
富裕層 1億円以上5億円未満 153.5万世帯
準富裕層 5,000万円以上1億円未満 403.9万世帯
アッパーマス層 3,000万円以上5,000万円未満 1,307万世帯
マス層 3,000万円未満 4,213万世帯

この分類において、一般的に「富裕層」と呼ばれるのは、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の世帯です。

5億円以上を保有する世帯は「超富裕層」として、さらに上位の階層に位置づけられています。

富裕層と準富裕層の境界線

準富裕層は、純金融資産保有額が5,000万円以上1億円未満の世帯を指します。

この階層は、富裕層への移行を目指す層として注目されており、適切な資産運用により富裕層入りを果たす可能性が高い層でもあります。

準富裕層から富裕層への移行は、単純な資産の増加だけでなく、投資に対する考え方や行動パターンの変化を伴います。

準富裕層の段階では、まだ給与所得が主な収入源である場合が多いですが、富裕層になると投資収益や事業収益の比重が高まる傾向があります。

国際的な富裕層の定義

日本の定義と比較するため、国際的な富裕層の基準についても触れておきます。

世界的な調査機関では、主な居住用不動産、収集品、消費財、および耐久消費財を除き、100万ドル以上の投資可能資産を所有する世帯を富裕層として定義することが一般的です。

現在の為替レートを考慮すると、100万ドルは約1億5,000万円程度となり、日本の基準よりもやや高い水準となっています。

これは、各国の経済状況や生活コストの違いを反映したものと考えられます。

日本の富裕層の現状とデータ

富裕層世帯数の推移と増加要因

野村総合研究所の最新調査(2025年2月発表)によると、2023年における日本の富裕層世帯数は153.5万世帯、超富裕層世帯数は11.8万世帯となり、合計165.3万世帯に達しました。

これは2021年の148.5万世帯から11.3%の増加を示しており、調査開始以来の最高値を記録しています。

この増加の背景には、複数の要因が考えられます。

第一に、株式市場の好調な推移があります。2023年は特に株価の急騰により、リスク性資産の資産価値が大きく増加しました。

富裕層・超富裕層は一般的にリスク性資産の保有比率が高いため、この恩恵を大きく受けることとなりました。

第二に、円安の進行により外貨建て資産の実質的価値が増加したことも要因の一つです。

富裕層の多くは国際分散投資を行っており、外貨建て資産を一定程度保有しています。

円安局面では、これらの資産の円換算価値が上昇し、純金融資産の増加に寄与しました。

第三に、相続による資産移転の増加も見逃せません。

高齢化社会の進展に伴い、戦後復興期から高度経済成長期にかけて資産を築いた世代から、その子世代への資産移転が活発化しています。

適切な相続対策を講じた富裕層の資産が、次世代に引き継がれることで、富裕層世帯数の増加に貢献しています。

地域別分布と特徴

富裕層の地域分布を見ると、東京都への集中が顕著です。

総務省統計局の「2019年全国家計構造調査」によると、2人以上世帯の家計資産総額(平均)が最も高いのは東京都で約4,700万円となっています。

これに神奈川県(約3,790万円)、愛知県、埼玉県が続きます。

東京都における家計資産総額の高さは、給与水準の高さに加え、不動産価格の高騰が大きく影響しています。

特に都心部の住宅や商業用不動産は、継続的な価格上昇により、保有者の資産価値を押し上げています。

一方で、地方においても富裕層は存在しており、特に地方の事業オーナーや医師、弁護士などの専門職において富裕層が形成されています。

地方の富裕層は、東京圏と比較して不動産コストが低いため、相対的に金融資産の比重が高い傾向があります。

年齢別の富裕層分布

年齢別に富裕層の分布を見ると、50代から60代にかけてピークを迎える傾向があります。

これは、キャリアの頂点期における高い所得と、長期間にわたる資産形成の成果が結実する時期であることを反映しています。

30代で富裕層に達する世帯は極めて少なく、金融広報中央委員会の調査によると、3,000万円以上の金融資産を保有している30代世帯は全体の2.2%に過ぎません。

一方、40代では4.9%に増加し、50代以降でさらに比率が高まります。

この傾向は、資産形成における時間の重要性を示しています。

複利効果を活用した長期投資や、キャリア形成に伴う所得の増加が、富裕層への道筋を形成していることがわかります。

富裕層の特徴と投資行動

事業オーナーとしての特徴

野村総合研究所の調査によると、日本の富裕層の約3分の1が事業オーナーです。

これは、富裕層形成における事業経営の重要性を示しています。

事業オーナーは、給与所得者と比較して収入の上限がなく、事業の成長とともに資産を大幅に増加させる可能性があります。

事業オーナーである富裕層は、ビジネスや市場の動向に精通しており、その知識を個人の資産運用にも活用しています。

彼らは単に預貯金として資産を保有するのではなく、株式、債券、投資信託などの金融商品への投資を積極的に行います。

また、事業オーナーは事業資金と個人資産の明確な分離を行い、リスク管理を徹底しています。

事業リスクと投資リスクを分散することで、総合的な資産の安定性を確保しています。

投資行動の特徴

富裕層の投資行動には、一般的な投資家とは異なる特徴があります。

第一に、長期的な視点での投資を重視します。

短期的な市場の変動に一喜一憂することなく、10年、20年といった長期スパンでの資産形成を目指します。

第二に、分散投資を徹底しています。

株式、債券、不動産、オルタナティブ投資など、複数の資産クラスに分散することで、リスクを軽減しながら安定的なリターンを追求します。

第三に、専門家の活用を積極的に行います。

ファイナンシャルプランナー、税理士、弁護士、不動産コンサルタントなど、各分野の専門家と連携し、最適な投資戦略を構築します。

リスク管理への取り組み

富裕層は、資産の保全を最優先に考えています。

大きなリターンを追求するよりも、まず資産を減らさないことを重視します。

このため、投資判断においては慎重なデューデリジェンスを行い、リスクとリターンのバランスを慎重に検討します。

また、富裕層は経済情勢の変化に敏感であり、インフレリスクや為替リスクに対する備えも怠りません。

実物資産である不動産や貴金属への投資により、インフレヘッジを図ることも一般的です。

新たなトレンド:「いつの間にか富裕層」

近年注目されているのが、「いつの間にか富裕層」と呼ばれる新しい層の出現です。

これは、従来の富裕層とは異なる特徴を持つ層で、主に40代後半から50代の一般会社員が該当します。

「いつの間にか富裕層」は、従業員持株会や確定拠出年金、NISA枠の活用を通じて、運用資産が1億円を超えたケースが多く見られます。

彼らは給与収入の範囲内でこれまでと変わらない生活スタイルを維持しており、金融資産が増えても金融機関との付き合いはこれまでと変わらないという特徴があります。

この層は、富裕層以上の世帯の1〜2割程度を占めていると推察されており、今後の富裕層マーケットにおいて重要な位置を占めると考えられます。

富裕層向け不動産投資の特徴

不動産投資が富裕層に人気の理由

富裕層の不動産投資は、その特徴的な投資行動の一つとして注目されています。

国土交通省の調査によると、世帯年収が800万円以上になると不動産投資経験者の割合が大幅に増加し、金融資産1億円以上の世帯では、不動産投資経験ありの割合が経験なしの約4倍に達しています。

富裕層が不動産投資を選ぶ理由は多岐にわたります。

第一に、ミドルリスク・ミドルリターンの投資特性があります。

株式投資のような高リスク・高リターンでもなく、預金のような低リスク・低リターンでもない、バランスの取れた投資として位置づけられています。

第二に、不労所得の獲得が可能です。

適切な物件を選択し、管理会社に業務を委託することで、オーナー自身が積極的に関与することなく、継続的な賃料収入を得ることができます。

これは、本業に集中しながら資産を増やしたい富裕層にとって魅力的な特徴です。

第三に、節税効果が期待できます。

不動産投資では、減価償却費や各種経費を計上することで、所得税の軽減が可能です。

また、相続税対策としても有効で、現金を不動産に換えることで相続税評価額を圧縮できます。

第四に、レバレッジ効果を活用できます。

富裕層は金融機関からの信用が高いため、有利な条件での融資を受けることが可能です。

自己資金に借入金を加えることで、投資規模を拡大し、より大きなリターンを狙うことができます。

富裕層が選ぶ不動産投資物件

富裕層の不動産投資において人気が高いのは、一棟物件です。

マンションやアパートを一棟丸ごと所有することで、複数の居室からの賃料収入を得ることができ、空室リスクを分散できます。

また、建物全体を所有することで、管理の自由度が高く、長期的な資産価値の向上を図ることも可能です。

区分タワーマンションも富裕層に人気の投資対象です。

都市部の好立地にあるタワーマンションは、ブランド力が高く、安定した賃貸需要が期待できます。

また、将来的な売却時においても、流動性が高く、キャピタルゲインを狙うことも可能です。

商業用不動産への投資も、富裕層の選択肢の一つです。

オフィスビルや店舗などの商業用不動産は、住宅用不動産と比較して利回りが高い傾向があります。

ただし、テナントの信用力や立地の将来性など、より専門的な知識が必要となります。

不動産投資における富裕層の戦略

富裕層の不動産投資戦略は、単純な収益追求だけでなく、総合的な資産戦略の一環として位置づけられています。

彼らは、不動産投資を通じて以下の目標を達成しようとします。

ポートフォリオの分散効果を狙います。

株式や債券などの金融資産とは異なる値動きをする不動産を組み入れることで、全体のリスクを軽減します。

インフレヘッジとして活用します。

不動産は実物資産であるため、インフレ時には価格が上昇する傾向があります。

長期的なインフレリスクに対する備えとして、不動産投資を位置づけています。

相続対策として活用します。

現金を不動産に換えることで相続税評価額を圧縮し、次世代への資産移転を効率的に行います。

事業承継対策として活用する場合もあります。

事業オーナーである富裕層は、事業用不動産を所有することで、事業の安定性を高めるとともに、将来の事業承継をスムーズに進めることができます。

富裕層向け不動産投資の注意点

富裕層の不動産投資においても、注意すべき点があります。

第一に、税制改正のリスクです。

不動産投資に関する税制は定期的に見直されており、節税効果が変更される可能性があります。

第二に、金利変動リスクです。

融資を活用した不動産投資では、金利上昇により収益性が悪化する可能性があります。

固定金利の活用や、金利上昇時の対策を事前に検討しておくことが重要です。

第三に、流動性リスクです。

不動産は株式などと比較して流動性が低く、売却に時間がかかる場合があります。

急な資金需要に対応できるよう、適切な現金比率を維持することが必要です。

第四に、管理の手間です。

不動産投資では、物件の維持管理、テナント対応、修繕などの業務が発生します。

管理会社への委託により負担を軽減できますが、完全に手離れするわけではありません。

まとめ

富裕層とは、野村総合研究所の定義によると純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の世帯を指し、2023年時点で153.5万世帯が該当します。

超富裕層と合わせると165.3万世帯となり、過去最高を記録しています。

富裕層の特徴として、約3分の1が事業オーナーであり、長期的視点での投資、分散投資の徹底、専門家の積極的活用などが挙げられます。

近年は「いつの間にか富裕層」という新しい層も出現し、富裕層マーケットの多様化が進んでいます。

不動産投資においては、ミドルリスク・ミドルリターンの特性、不労所得の獲得、節税効果、レバレッジ効果などの理由から富裕層に人気があります。

一棟物件や区分タワーマンションが主な投資対象となっており、ポートフォリオの分散効果やインフレヘッジ、相続対策としても活用されています。

富裕層への道のりは決して平坦ではありませんが、適切な資産形成戦略と長期的な視点を持つことで、実現可能な目標です。

INA&Associates株式会社では、富裕層・超富裕層の皆様の資産形成と不動産投資をサポートしております。

資産運用や不動産投資についてご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q1. 富裕層になるためには年収はどの程度必要ですか?

富裕層の定義は純金融資産保有額であり、年収の基準はありません。

ただし、一般的に富裕層の多くは高い年収を得ています。

重要なのは年収の高さよりも、収入に対する支出の割合を抑え、余剰資金を適切に投資することです。

年収1,000万円でも支出が多ければ富裕層にはなれませんし、年収500万円でも計画的な資産形成により富裕層を目指すことは可能です。

Q2. 富裕層と準富裕層の違いは何ですか?

純金融資産保有額の違いです。

準富裕層は5,000万円以上1億円未満、富裕層は1億円以上5億円未満となります。

金額の違いだけでなく、投資行動や金融機関との関係性にも違いがあります。

富裕層になると、プライベートバンキングなどの専門的な金融サービスを利用できるようになり、より高度な資産運用が可能になります。

Q3. 不動産投資は富裕層でなくても始められますか?

はい、不動産投資は富裕層でなくても始めることができます。

ただし、富裕層は金融機関からの信用が高いため、より有利な条件での融資を受けることができ、投資の選択肢も広がります。

一般の方でも、適切な物件選択と資金計画により、不動産投資を通じて資産形成を図ることは可能です。

Q4. 富裕層向けのプライベートバンキングとは何ですか?

プライベートバンキングとは、富裕層向けに特化した金融サービスです。

専属のプライベートバンカーが顧客の資産管理、運用、相続対策、税務アドバイスなどを総合的にサポートします。

一般的な銀行サービスとは異なり、個別対応が基本で、顧客のニーズに応じたオーダーメイドのサービスを提供します。

Q5. 富裕層になるための具体的なステップを教えてください。

富裕層になるための基本的なステップは以下の通りです。

まず、家計の収支を把握し、支出を最適化して余剰資金を確保します。

次に、確保した資金を長期的な視点で投資に回します。

株式、債券、不動産など複数の資産クラスに分散投資を行い、リスクを管理しながら資産を増やします。

また、専門家のアドバイスを受けながら、税務対策も含めた総合的な資産戦略を構築することが重要です。