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横浜市「関内駅前地区第一種市街地再開発事業」の概要と最新状況

作成者: 稲澤大輔|2025/04/29 7:46:50 Z

横浜市中区のJR関内駅周辺で「関内駅前地区第一種市街地再開発事業」と呼ばれる大規模な都市再開発プロジェクトが進められています。同事業は関内駅北口および南側(港町地区)にまたがる駅前エリア約2.2ヘクタールを対象とし、「国際的な産学連携」と「観光・集客」をテーマに、新たな街づくりを目指すものです。駅前に高速バスや観光バスが発着できる交通広場を新設し、駅前道路の歩行者空間化など基盤インフラを整備する計画で、グローバル企業の本社機能や研究開発拠点の誘致、高度な賃貸住宅や商業施設の整備によって国内外から人々を呼び込む拠点形成を図ります。この再開発により関内駅前地区は国際性と活気あふれる都市拠点へと生まれ変わる見通しです。なお、隣接する旧横浜市庁舎街区でも別途再開発事業(横浜市旧市庁舎街区活用事業)が進行中で、本事業と合わせ関内駅前には合計3棟の高層複合ビルが建設される計画です。

計画内容

関内駅前再開発事業では、駅北口側の「北口地区」と駅南東側の「港町地区」という2つの街区に分けて再開発が行われ、それぞれに高層複合ビルが建設される予定です。主な計画概要は以下のとおりです。

  • 北口地区(約0.8ヘクタール): 地上21階・地下1階建て、高さ約120メートル、延べ床面積約33,700平方メートル規模の高層ビルを建設予定です。オフィス(業務)機能や共同住宅(約150戸)、商業施設、駐車場などで構成されます。

  • 港町地区(約1.4ヘクタール): 地上32階・地下2階建て、高さ約170メートル、延べ床面積約97,000平方メートル規模の超高層ビルを建設予定です。こちらもオフィス機能や住宅(約90戸)、商業施設を備えるほか、エンターテインメント性の高いナイトライフ拠点やミュージアム(文化施設)等の導入も計画されています。駐車場や業務支援機能(ビジネス支援施設)も整備され、国際的な産学連携を支える拠点ともなる見込みです。

両地区とも駅前の一等地を活用し、オフィス・住宅・商業が一体となった複合施設を整備することで昼夜を問わず人の集まる魅力的な空間を創出します。また再開発に合わせて、駅前には高速バスターミナルとなる交通広場歩行者専用道路の整備が計画されており、公共交通の利便性と歩行者の回遊性向上が図られます。これら公共空間の充実により、安全で快適な駅前動線が確保される予定です。

進捗状況

このプロジェクトは長年にわたり検討が重ねられてきました。平成25年(2013年)に地元でまちづくり協議会が発足し、平成30年11月には港町地区で市街地再開発準備組合が設立、令和4年11月には北口地区でも準備組合が設立されました。こうした準備を経て令和6年(2024年)5月24日付で横浜市による都市計画決定が告示され、再開発事業が本格的に動き出しています。

その後、港町地区では令和7年4月25日付で正式に市街地再開発組合(施行主体)が設立認可されました。北口地区についても現在、組合設立に向けた認可手続きが進行中です。今後の予定としては、2025年度(令和7年度)内に権利変換計画の認可を得て既存建物の解体工事に着手し、2026年度に新築工事に着工、2029年度の竣工を目指すスケジュールが示されています。現在(2025年春時点)、事業主体による詳細計画の策定や権利者との調整が進められており、解体準備に入る段階です。再開発区域内では着工に向けた動きが本格化してきており、駅前の景観にも今後変化が現れる見通しです。

再開発による地域への影響

本再開発事業により、関内駅前エリアの都市機能と景観は大きく向上すると期待されています。新設される複合施設群は国内外から多様な人材や来訪者を呼び込み、駅前に賑わいを創出するとともに、周辺地域への人の流れを促す拠点となります。オフィス誘致によるビジネス拠点強化や研究開発拠点の整備は、横浜都心部における産業競争力の向上に寄与し、地域経済の活性化につながると見られます。加えて、都心居住を促進する住宅機能の導入により、夕夜間も人のいる「暮らしのある都心」が形成され、地域コミュニティの継続性や防犯面の向上にも寄与すると考えられます。

交通面でもポジティブな影響があります。新たな交通広場の整備により、これまで分散していた高速バスや観光バスの乗降が駅前で集約され、公共交通の結節点としての利便性が高まります。駅前広場と歩行者専用道路によって歩行者動線が最適化されるため、徒歩移動がしやすくなり安全性も向上します。これにより駅と周辺施設間の回遊がスムーズになり、関内地区全体の回遊性(歩きやすさ・周遊しやすさ)の向上が期待できます。さらに、高層ビル群の整備に合わせて景観や防災機能も近代化され、快適で安心できる都市環境が整備される見込みです。

一般消費者にとってのメリット

関内駅前再開発は、地域住民や利用者に様々な利点をもたらします。まず住環境の向上です。老朽化した建物が刷新され、高規格な耐震・防災性能を備えた新築のオフィス・住宅が供給されます。これにより、都心部でも安心して暮らせるハイグレードな住まいが得られ、職住近接のライフスタイルを希望する人々にとって魅力的な居住環境が提供されます。緑地やオープンスペースの創出、歩行者空間の拡充によって、駅前とは思えない開放的で快適な街並みが形成されることも期待できます。

次に利便性の向上が挙げられます。駅前に直結する商業施設が整備されるため、買い物や飲食など日常の利便サービスが身近になります。新設されるナイトライフ拠点やエンターテインメント施設、ミュージアムなどは、地域住民にとって身近に楽しめる娯楽・文化の場となります。イベントや観光客の誘致により街に活気が生まれ、市民もそれらを享受できるでしょう。また、高速バス乗り場の新設によって遠距離移動(空港アクセスや他都市への旅行)が便利になる利点もあります。駅前の動線改善により雨天時でも快適に移動できるなど、日常生活の質が全体的に底上げされる見込みです。

全体として、関内駅前地区第一種市街地再開発事業は、ビジネス・居住・観光の各側面で横浜都心部の価値を高め、一般消費者にとっても暮らしやすく訪れやすい魅力あるまちづくりに貢献するものです。横浜市は本事業を通じ、関内地区を「駅前にふさわしい玄関口」として再生させる考えであり、今後の工事の進展と完成後のまちの姿に大きな注目が集まっています。