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みなとみらい21中央地区60・61街区の最新開発情報

作成者: 稲澤大輔|2025/05/03 15:00:00 Z

横浜みなとみらい21中央地区のラストピースとなる60・61街区で、教育・業務・商業・宿泊・文化機能を融合した官民連携の大規模再開発が2026年着工、2029年グランドオープンを目指して動き出します。Kアリーナ横浜と連動した歩行者テラスやミュージアムの整備により、街全体に新たな交流と価値が創出されます。

地区の位置と都市計画上の指定

横浜市西区みなとみらい6丁目2番1ほかに位置するみなとみらい21中央地区60・61街区は、横浜駅東側の臨海部再開発エリア「みなとみらい21」の中央地区内における最後期の大規模開発用地です。面積は約2.3万㎡で、北側に大型音楽アリーナ「Kアリーナ横浜」を含む公開空地「ミュージックテラス」、東側に「横浜アンパンマンこどもミュージアム」が隣接しています。都市計画上、本街区は商業地域に指定されており、建ぺい率80%・容積率600%の制限内で開発可能です。横浜市が公募時に定めた条件では、文化・商業・業務機能を中心とした複合用途開発とし、住宅などの居住機能は導入不可とされています。さらに観光・エンターテインメント性のある展示・体験型施設(ミュージアム等)を開発区域面積の25%以上に設けることが求められ、街のにぎわい創出に資する計画とするよう条件付けられました。

開発事業者・参画企業

横浜市は令和5年(2023年)4月から本街区の事業者公募を行い、令和6年2月に開発事業予定者を決定しました。選定されたのは以下の4者による共同企業体で、共同で特定目的会社「MM60・61特定目的会社(TMK)」を設立し事業を推進します。

  • ケン・コーポレーション株式会社(東京都港区) – 隣接するKアリーナ横浜やミュージックテラスの開発事業者であり、本計画でも商業施設開発等を担当。

  • SMFLみらいパートナーズ株式会社(東京都千代田区) – 三井住友ファイナンス&リース(SMFL)の戦略子会社。不動産共同開発事業の中核を担い、資金・事業運営面で主導。

  • 鹿島建設株式会社(東京都港区) – 大手ゼネコン。設計・施工など技術面を担当し、安全で先進的な建築計画を推進。

  • 学校法人岩崎学園(横浜市神奈川区) – 横浜市内に専門学校を複数運営する学校法人。西街区に設置予定の専門学校施設の運営主体。

4社は2025年1月31日に横浜市と基本計画協定を締結し、同年2月20日に土地売買契約を締結して正式に本街区の開発事業者となりました。官民連携の強力な布陣でプロジェクトが進められています。

建物用途と規模

本プロジェクトでは、街区を東西2棟に分けて開発する計画です。東棟と西棟からなる大型複合施設で、双方あわせた延床面積は約154,000㎡に及びます。各棟の用途と規模の概要は次のとおりです。

  • 西棟(西街区):地下1階・地上13階建て、延床約25,000㎡。学校法人岩崎学園が運営する専門学校が入居予定で、教育施設として利用されます。

  • 東棟(東街区):地下1階・地上26~27階建ての高層棟、延床約130,000㎡。オフィス(事務所)を中心に、低層部には商業施設、高層部に国内外からのゲストをターゲットとしたホテル、そして子どもから大人まで楽しめる展示型ミュージアムなど、多機能施設が組み合わされます。

※住宅機能は含まれておらず、業務・商業・観光・文化に特化した構成です。東棟の詳細なフロア構成は今後協議により決定していくものの、大規模オフィスフロアとホテルフロア、ミュージアム施設が一体となった横浜でも有数の規模のビルになる見込みです。

完成予定時期・スケジュール

事業スケジュールは概ね以下のとおり計画されています。2026年3月1日に着工、2028年8月に西棟竣工、2029年2月に東棟竣工予定で、2029年中のグランドオープンを目指します。2024年~2025年にかけて設計・行政手続き等を進め、2026年の工事着手後約3年間で両棟の建設を完了させる計画です。現時点では2029年の開業を公式に掲げており、今後細かな工期調整が行われる可能性はあるものの、市の期待するスケジュールでプロジェクトが進行しています。

開発コンセプト・デザイン・特徴

本計画のコンセプトは、多様な都市機能を「リンク(連携)」させた新たな交流拠点の創出です。プロジェクト名(仮称)「リンケージテラス (Linkage Terrace) プロジェクト」にも表れているように、東西2棟の間に人々が行き交い憩うことのできる歩行者通路(テラス)と広場空間を配置し、街区内外をつなぐ開かれた都市空間を形成します。西棟の教育機能・東棟の業務・商業・宿泊・文化機能が一体となることで、文化・商業・教育が融合した新たな都市空間を創出することが狙いです。敷地を縦断する歩行者通路沿いに大小2つの広場を設け、隣接するミュージックテラス(Kアリーナ横浜の公開空地)と一体的なエリアマネジメントを行う計画で、イベント等を通年で開催できる賑わい空間とします。こうしたデザインにより、街区全体を「エンターテインメント街区」として完成させ、多様なコミュニティの発祥の地となることを目指しています。

建物デザイン面では、高層の東棟と中層の西棟という対照的なボリュームを持ちながら、低層部に設けられる公開空地やテラスが周辺施設と調和するよう工夫されています。公開された完成イメージを見ると、東棟はガラスを多用した先進的なファサードに歴史的意匠を織り交ぜた低層部を持ち、横浜らしいモダンとクラシックの調和を意識したデザインとなっています。西棟は白を基調とした個性的な外観デザインが特徴で、教育・文化施設にふさわしいランドマーク性を備えています。なお、この計画は国土交通大臣から優良な民間都市再生事業計画に認定されており、複合用途施設と多様なオープンスペースの整備による賑わい創出や周辺歩行者ネットワーク強化といった都市デザイン上の価値が評価されています。認定を受けたことにより、金融支援や税制上の特例措置といった優遇も受けられるため、計画の実現性が一層高まっています。

周辺エリアとの関係(アクセス・連携)

本街区は周辺の主要施設や交通結節点とも密接に関連しています。隣接するKアリーナ横浜(収容約2万人規模)を中心としたミュージックテラスとは歩行者デッキや広場で一体化し、イベント時の人の流れや日常の回遊動線をスムーズにつなぎます。また東側には子ども向けテーマ施設である横浜アンパンマンこどもミュージアムがあり、本計画のミュージアム施設との相乗効果でファミリー層の回遊性向上も期待されます。周辺には既にオフィス・商業・観光施設が集積していますが、本街区の開発により観光客・学生・就業者・周辺住民など多様な人々が集う新たな賑わい拠点が誕生し、エリア全体の活性化が図られます。

交通アクセスの面では、みなとみらい線「新高島駅」から徒歩圏内に位置し、横浜駅東口からも徒歩約10~15分程度でアクセス可能です(歩行者デッキ等の整備により更なる短縮の可能性あり)。国交省の認定理由にも挙げられたとおり、本計画は周辺の歩行者ネットワークの強化に資するものとされ、既存のペデストリアンデッキ網や地下通路との接続改善が見込まれます。完成すれば、桜木町・臨港パーク方面から横浜駅方面へ至る人の流れの中間に位置する重要な結節拠点となり、周辺施設との回遊性が飛躍的に高まるでしょう。

不動産投資・資産価値の観点からの注目ポイント

みなとみらい21中央地区60・61街区の開発計画は、不動産投資や資産価値の面でも非常に注目されています。

まず、本プロジェクトは官民連携による大規模複合開発であり、国の都市再生事業認定を受けている点が投資妙味の一つです。優良事業計画の認定に伴い、事業主体である特定目的会社は低利融資や税制優遇措置などの支援を受けられるため、開発リスクの低減や事業収益性の向上が期待できます。こうした制度的後押しは、本事業の資産価値形成にプラスに働く要因です。

次に、複数用途を組み合わせた分散型の収益構造も投資観点で評価できます。オフィス賃貸収入、ホテル・商業テナント収入、専門学校の安定運営による収入など、多様な収益源を持つことで景気変動や市場リスクを分散できます。特に専門学校(教育施設)はテナントとして長期安定需要が見込まれ、オフィスについてもみなとみらいエリアは近年企業進出が相次ぎ空室率も低水準で推移する傾向にあるため、高機能オフィスへのテナント需要は堅調と考えられます。ホテルについても、横浜は国際観光都市であり隣接する音楽アリーナでのコンサートやイベント開催時には宿泊需要が見込まれるため、高稼働率が期待できるでしょう。こうした用途混在による相乗効果は資産価値の下支え要因となります。

さらに、立地のプレミアム性も資産価値を高めます。本街区は大型集客施設であるKアリーナ横浜に隣接し、周辺には複数の観光・商業スポットが揃う好立地です。このエリア自体が「エンターテインメント街区」として完成することで、横浜都心部の新たなランドマークとなり、国内外からの注目を集めるでしょう。横浜市も本事業によって「さらなるにぎわい創出や街の活性化」が期待できると発表しており、周辺不動産マーケットにも波及効果が及ぶ可能性があります。事実、近隣では62街区の「Harbor Edge」計画(高級ホテル&水族館)など大型投資プロジェクトが進行しており、みなとみらい21地区全体で資産価値が向上する好循環が生まれつつあります。

最後に、本事業への参画企業を見ると強力なバックボーンがある点も安心材料です。SMFLという金融大手が中期経営計画で不動産共同開発を新たな柱に掲げ参画していることからも、この開発への意欲と期待の大きさがうかがえます。また建設大手の鹿島が施工を担うことで確実な品質確保が見込まれ、デベロッパーのケン・コーポレーションは既に隣接地で実績を上げているため、ノウハウの継承による事業成功可能性が高まります。これらはプロジェクトの信用力を高め、投資家やテナント企業から見ても魅力的なポイントとなっています。

以上のように、みなとみらい21中央地区60・61街区の開発は都市計画的な価値はもちろん、投資・資産価値の面から見ても将来性の高いプロジェクトと言えます。横浜の都心臨海部再開発の掉尾を飾る大型案件として、今後の進捗と完成後の波及効果に大きな期待が寄せられています。