不動産オーナーの皆様が賃貸物件の管理を専門業者に委託する際には、「管理委託契約」を締結することになります。これは物件の賃貸経営において、オーナーと管理会社双方の役割や業務範囲、費用負担などを明確に取り決める重要な契約です。契約内容を十分に理解しないまま締結してしまうと、後々のトラブルにつながりかねません。本記事では管理委託契約の目的や重要性から、業務範囲、手数料、解約条件、責任分担、トラブル事例、そして信頼できる管理会社の選び方まで、締結前に確認すべきポイントを網羅的に解説します。契約に臨むオーナーの方が安心して管理会社に任せられるよう、ぜひ参考にしてください。
管理委託契約の目的は、不動産オーナーが賃貸物件の管理業務を専門の管理会社に委託し、その内容や条件を双方で明文化することにあります。契約書によって「どんな業務を誰が担うのか」をはっきりさせることで、役割分担の認識違いを防ぎ、安定した賃貸経営を実現することが可能です。管理会社は賃貸経営におけるパートナーとも言われ、空室対策や物件管理、収支管理など日々の課題解決に貢献してくれます。プロに任せることでオーナー自身の業務負担が大きく軽減され、時間や労力を他の重要な業務に充てられるというメリットもあります。
重要性としては、何よりトラブル防止の観点が挙げられます。管理委託契約書の内容に沿って実際の管理業務が行われるため、契約内容を十分に把握し合意しておけば後日の紛争を未然に防ぐことができます。逆に契約内容の理解不足は思わぬ失敗や損失を招くリスクがあります。例えば近年では、賃貸住宅管理業法の施行により、契約締結前に管理会社が業務内容や費用など重要事項を記載した書面で説明することが義務付けられました。これはオーナーと管理会社の認識齟齬を減らし、健全な賃貸経営をサポートするための制度です。こうした法律面の整備も進んでいることからも、管理委託契約の重要性が増していると言えるでしょう。
管理会社に委託できる業務は多岐にわたりますが、大きく分けると「賃貸借契約の代理業務」と「物件自体の管理業務」に分類できます。契約ではどの範囲まで業務を委託するかを決めることになり、委託範囲が広がるほど管理手数料も高くなるのが一般的です。以下に主な管理業務の例を挙げます。
入居者募集・選定:新たな入居者を募集し、広告活動や内見対応、入居審査を行います。希望する入居者が見つかったら、オーナーに代わって賃貸借契約を締結する代理業務も含まれます。
入居者対応全般:入居中のクレーム対応や各種問い合わせ対応、近隣トラブルの窓口対応など、入居者とのコミュニケーション業務です。24時間対応の緊急連絡サービスを提供する管理会社もあります。
家賃管理(集金・滞納督促):毎月の家賃・共益費等の集金代行や、入居者が滞納した場合の督促業務を行います。契約内容によっては、滞納発生時に保証会社との連携や法的手続き支援まで含まれる場合もあります。ただし滞納督促については会社ごとに対応が異なるため、誰がどこまで行うかを事前に明確にしておく必要があります。
建物・設備の維持管理:建物共用部の定期清掃や設備点検、消耗品の補充、故障対応など物件の日常管理です。エレベーターや給排水設備の法定点検、消防設備点検など専門業者への手配も委託できます。また必要に応じて修繕工事の手配・立ち会いも行います。
契約更新・解約対応:入居期間満了時の契約更新手続き(更新契約書の取り交わし、更新料の受領など)や、退去申請を受けた際の解約手続きを代行します。退去立ち会いでは、室内の損耗状況を確認し、原状回復工事の範囲を判断します。
原状回復・リフォーム手配:入居者退去後の原状回復工事や必要なリフォームの手配を行います。工事費用はオーナー負担になるのが一般的ですが、契約によって管理会社が代わりに手配し、後ほど費用請求する形になります。この際、費用が相場とかけ離れて高額になりトラブルとなるケースも報告されています。不安な場合は事前におおよその費用感を確認したり、必要に応じてオーナー自身で業者手配できる旨を契約に盛り込むことも一案です。
収支報告・各種手続き:毎月の家賃収支報告書の作成や、オーナーへの送金業務、年度末の収益計算資料の提供なども含まれます。物件に関する行政手続き(例えば消防計画の届出等)を代行する場合もあります。
業務範囲は契約によって自由に設定できますが、重要なのは「何を任せて、何を自分で行うのか」を明確にすることです。 オーナー自身が近隣に住んでいて清掃だけは自分でできるという場合は、家賃管理や入居者対応のみを委託する一部委託も可能です。その場合、管理会社への委託料(管理手数料)は抑えられますが、反対にフルパッケージで任せる場合(入居者募集から日常管理、解約対応まで一括で委託)には手数料は高めになります。最近では「一般管理契約(=管理委託契約)」と、管理会社が物件を一括借上げして一定の賃料を保証する「サブリース契約」を選べる場合もあります。サブリース契約ではオーナーは空室リスクを負わず毎月定額収入を得られる反面、契約内容によっては一定期間賃料支払い免除(免責期間)が設けられていたり、退去時の原状回復費用が全てオーナー負担になるなどの特約があるケースがあります。サブリースは通常の管理委託契約とは条件が大きく異なるため、利用する場合は特に契約書の細部まで確認し、不明点は契約前に交渉・確認しておくことが大切です。
管理手数料とは、管理会社に業務を委託する対価としてオーナーが支払う費用のことです。一般的な相場は月額家賃収入の約5%前後と言われています。例えば家賃10万円の物件であれば月々5,000円程度が目安となります。ただし、この割合は委託する業務範囲や物件の規模・種別によって変動します。一部の業務だけ委託する場合は3%程度に抑えられるケースもありますし、逆に広範囲の業務や手厚いサービスを含む場合は7〜10%程度になることもあります。特殊なケースではありますが、サービス内容によっては10%超となる例や、サブリース契約では実質的な手数料が15〜20%相当になる場合もあります。
手数料の計算方法についても確認が必要です。多くの管理会社では「月額賃料 × 手数料率」で計算しますが、「共益費(管理費)を含むか否か」が会社によって異なります。一般的にオフィスビル等では賃料部分のみに料率を乗じ、アパートやマンションでは賃料+共益費に対して料率を乗じるケースが多いとされています。共益費分にも手数料がかかるかどうかでオーナーの手取りが変わりますので、契約前にしっかり確認しましょう。
管理手数料に含まれる内訳(サービス内容)もチェックポイントです。同じ5%の手数料でも、その中に含まれるサービス範囲は管理会社により様々です。通常、前述したような家賃集金やクレーム対応、定期点検といった日常管理業務は手数料に含まれます。一方で、以下のような業務は別途費用となることが一般的なので注意が必要です。
新規入居者募集にかかる費用:物件が空室になった際、入居者募集の広告料や不動産仲介会社への仲介手数料(成功報酬)が発生します。法律上、仲介手数料は賃料1ヶ月分+消費税が上限と定められていますが、これをオーナー側が負担するケースが多いです(入居者とオーナー双方から半月分ずつ徴収といった形もあります)。
契約更新時の手数料:入居者が契約を更新する際に支払う更新料について、管理会社が更新手続き代行する場合は更新料の○%を手数料として受け取る契約もあります。例えば更新料1ヶ月分のうち何割を管理会社が取るかは契約次第ですので、更新時の取り決めも把握しておきましょう。
修繕・清掃等の実費:日常的な小修繕や退去時清掃費用などは発生ごとに実費精算となります。管理会社が業者手配をした場合、その見積内容や手数料上乗せの有無も事前に確認しておくと安心です。
その他のオプション費用:24時間緊急対応サービスや定期報告書の郵送費、家賃保証オプションなど、会社によってはオプション扱いで費用が追加となるサービスもあります。
以上のように、管理手数料の「率」だけでなく、「何の対価としてのいくらなのか」を明確にすることが大切です。契約前には、手数料に含まれる業務と含まれない業務の内訳について詳細な説明を受けるようにしましょう。特に募集時の広告料負担や滞納発生時の対応費などはトラブルになりやすいポイントですので、曖昧な場合は契約書に明記してもらうか書面で確認しておくと安心です。
管理委託契約を結ぶ際は、契約期間および解約条件についてもしっかり確認しておく必要があります。契約期間は1年毎の更新や自動更新ありの2年契約など様々ですが、一般に中途解約に関する取り決めが契約書に盛り込まれているのが通常です。例えば「解約したい場合は○ヶ月前までに書面で通知すること」や、「契約期間内にオーナー都合で解約する場合は違約金として管理料○ヶ月分を支払う」等の条項が定められているケースがあります。実際、大手管理会社の契約書でも「3ヶ月前予告」で解約可能とする規定がよく見られます。そのため、途中解約する場合に何ヶ月前通知が必要か、違約金の有無と金額は必ず確認すべき事項です。
解約時の注意点としては、以下のポイントを押さえておきましょう。
解約の手続き方法:解約意思の通知方法(書面やメールなど)や通知先、契約終了までの手順を確認します。多くの場合は内容証明郵便など書面での通知が要求されますので、口頭連絡だけで済ませないように注意します。
解約予告期間の順守:契約書に定められた予告期間(例:3ヶ月前)の起算日を把握し、逆算して計画的に解約通知を行いましょう。予告期間に満たない解約は違約金の対象となる可能性があります。
違約金・費用負担:上記のように違約金条項がある場合、解約時に所定の費用を支払う必要があります。一般的には直近○ヶ月分の管理手数料相当額や賃料○ヶ月分といった形です。交渉によっては違約金なしで解約可能な柔軟な契約にしてもらえる場合もありますが、契約前に要望しておかなければ契約後に変更するのは困難です。
契約期間満了時の扱い:契約期間が満了した際に自動更新となるのか、再度契約を締結し直す必要があるのかも確認しましょう。自動更新の場合、オーナーから明示の解約通知をしない限り契約が継続してしまうので注意が必要です。
入居者への影響:管理契約を解約して他社に変更する際は、現在入居中の方への案内や、敷金・鍵などの引き継ぎも問題なく行われるよう手配が必要です。解約後も既存入居者の契約自体はオーナーと入居者の間で継続しますので、新しい管理会社への連絡先変更通知や、旧管理会社が預かっていた金銭(敷金や未収家賃)があればきちんと清算・引継ぎするようにしましょう。
契約時にはなかなか「解約」の話を切り出しづらいかもしれませんが、万一管理会社に不満を感じた場合に円滑に契約を終了できるかは健全な賃貸経営にとって重要です。後々「話が違う」と感じても身動きが取れない事態を避けるため、解約条件についても最初にしっかり確認し、納得した上で契約を締結するようにしてください。
賃貸管理においては、オーナーと管理会社それぞれに役割と責任があります。この責任分担を明確にし、契約書にしっかりと明文化しておくことがトラブル防止の鍵です。
管理会社の主な責任には、先述の委託業務範囲にもとづく日常管理の遂行があります。例えば家賃滞納が発生した場合の初期対応(電話や督促状による催促)について管理会社が行うことになっていれば、それを適切に実施する責任がありますし、入居者から設備故障の連絡を受けたら迅速に対応策を講じる義務があります。また毎月オーナーへ賃料を送金する際に正確な会計処理を行うことや、必要に応じて管理報告をすることも責任の一部です。
一方、オーナーの主な責任としては、物件の適法性を保つための措置や費用負担が挙げられます。建物や設備の経年劣化に伴う大規模修繕費や、災害保険への加入、不動産所得に対する税金の申告納税などはオーナーの責任範囲です。管理会社に委託しているからといって、物件オーナーとしての法的責任(借主に安全な居住環境を提供する義務など)まで免れるわけではありません。例えば建物の構造上の欠陥や老朽化による事故が起これば、基本的にはオーナーが責任を問われます。そのため、管理会社から重大な不具合報告を受けた際には迅速に修繕に対処するなど、オーナー側も果たすべき責任があります。
これら双方の責任範囲を事前に取り決め、契約書に明示しておくことが大切です。責任の所在があいまいだと、「この対応は管理会社がやると思っていた」「いや契約にないのでオーナー対応だと思った」という食い違いが生じかねません。実際に、家賃滞納者への督促対応についてお互いに相手任せだと勘違いし、いざ滞納が起こってから対応が遅れて揉めた例もあります。こうした事態を避けるために、契約書には細かい事項もできるだけ盛り込み、口頭の約束事は作らないようにしましょう。にもあるとおり、結局トラブル時には契約書の記載内容が判断基準となります。つまり、契約書に書かれていないことは主張できなくなる可能性が高いのです。大事なことほど契約書に明記し、曖昧な点は事前に確認・修正してから署名押印することが肝要です。
なお、2021年の法改正(賃貸住宅管理業法の施行)により、管理受託契約を締結する前には管理会社からオーナーに対し重要事項の書面説明が義務化されました。この書面には契約の相手方や有効期間、管理業務の内容・実施方法、報酬に関する事項(管理費用)や契約解除に関する事項などが記載されます。重要事項説明自体は有資格者でなくとも行えますが、法律に基づき事前説明が行われるということは、それだけ契約内容の理解が重要だということです。提供された重要事項説明書や契約書案は面倒がらずによく読み込み、不明点は遠慮なく質問しましょう。責任分担についても、もし記載が不足していると感じたら追加してもらうくらいの姿勢で望むと良いでしょう。
ここでは、管理委託契約を巡って実際に起こりがちなトラブル事例と、その防止策となるチェックポイントを紹介します。契約前にこれらを確認しておけば、多くの問題は未然に防ぐことができます。
家賃滞納対応の勘違い:契約で滞納発生時の対応を決めていなかったために、オーナーは管理会社が督促してくれると思い込んでいた一方、管理会社は督促業務はオーナー自身が行うものと認識していたというケースです。この食い違いにより督促が行われず滞納が長期化し、双方の信頼関係が崩れる結果となりました。
原状回復費用をめぐるトラブル:退去後の原状回復工事を管理会社に一任していたところ、提示された修繕費用が相場より高額に感じられオーナーが不信感を募らせた例です。管理会社指定の業者による工事であったため「不当に高いのではないか」と揉めてしまいました。
管理契約の解除トラブル:管理会社の対応に不満があり契約解除を申し出たものの、契約書の定めにより賃料3ヶ月分の違約金を請求された事例があります。特に、空室が埋まらない・連絡が取りづらい等の理由で他社に乗り換えを検討した際に発生しやすいトラブルです。
サービス範囲外の対応:手数料の安さに惹かれて契約したが、細かく見ると管理会社が対応しない業務が多かったというケースです。例えば夜間の緊急対応や定期巡回が契約に含まれておらず、結局オーナー自身が対応せざるを得なくなった、といった不満が生じました。
報告不足による不信:管理会社からの報告が滞りがちで、入居者から直接クレームを聞かされるまでトラブルに気付かなかったという例です。契約書で定めた業務報告の頻度が守られず、オーナーとして物件の状況を把握できない状態となり問題になりました。
上記のようなトラブルを防ぐには、契約締結前のチェックとコミュニケーションが欠かせません。以下のポイントを確認しましょう。
契約書と重要事項説明書を熟読する:当たり前に聞こえるかもしれませんが、まず契約書の条項を一通り理解することが第一歩です。特に業務範囲(何を任せるか)、手数料と各種費用負担、契約期間と解約条件、緊急対応や滞納対応の方針といった点は入念に確認します。少しでも不明確な記載や疑問点があれば、その場で管理会社に質問し、必要であれば契約書に追記・修正してもらいましょう。書面に残らない口約束は後で証明できないため避けるべきです。
業務フローを具体的にイメージする:各種トラブルを想定し、「○○の事態になったら誰が何をするのか」を具体的にシミュレーションしてみます。例えば「入居者から水漏れ連絡があったら?」「滞納が○日発生したら?」など想定し、その対応が契約上どうなっているかをチェックします。不明なら「この場合は御社が対応してくれますか?」と事前に確認し、対応してくれるなら契約書に明記してもらいましょう。
費用発生時の承認プロセスを決める:修繕費用などオーナー負担の費用が発生する場合、事前にオーナーへ見積報告・承認を得ることを契約に盛り込むことも重要です。一定金額以上の出費はオーナーの事前承諾が必要と定めておけば、「知らないうちに高額な費用を請求された」という事態を避けられます。
解約条件を交渉する:解約に関する条項は雛形どおりでなくても構いません。オーナーに不利な長期縛りや過大な違約金がある場合、契約前の交渉で緩和してもらえないか打診することも検討しましょう。優良な管理会社であれば、オーナーの不安に寄り添い柔軟に対応してくれる可能性があります。どうしても納得できない条件の場合は、契約を見送る決断も必要です。
連絡体制を確認する:緊急連絡先や担当者の連絡方法、報告の頻度など、コミュニケーション体制についても事前に確認しておきます。契約書とは別に運用上の取り決めになる部分ですが、信頼関係を築く上で重要です。夜間や休日の緊急時に対応可能か、担当者不在時のバックアップ体制はあるかなどを聞いておきましょう。
以上のチェックポイントを押さえておけば、大半のトラブルは事前に回避することができます。万一、契約後に「話が違う」と感じる事態が起きても、契約書に基づき冷静に対処できるでしょう。
最後に、信頼して任せられる管理会社を選ぶためのポイントについて解説します。優秀な管理会社はオーナーの良きパートナーとなり、賃貸経営の成功に大きく寄与してくれます。選定にあたっては以下の点に注意しましょう。
複数社を比較検討する:管理会社によってサービス内容や手数料、得意分野が異なるため、一社に絞らず複数社の提案を比較することが重要です。実際、「複数社の比較・検討は必須です」と指摘する専門家もいます。地域密着の会社、大手全国チェーン、それぞれメリット・デメリットがありますので、最低でも2~3社の話を聞いてみましょう。
賃貸住宅管理業者としての登録:2021年の法改正以降、一定規模以上の管理戸数を扱う業者は国土交通大臣への登録が義務付けられています(賃貸住宅管理業者登録制度)。信頼性の観点からは、この登録業者であるかを一つの目安にすると良いでしょう。登録業者であれば契約前の重要事項説明が義務化されるなど、一定のルール下で業務を行っている証でもあります。
実績や得意分野の確認:候補となる管理会社がどの程度の実績を持ち、どんな物件タイプを得意としているかを確認します。例えばアパート一棟の管理が得意な会社もあれば、区分マンション1室から丁寧に対応してくれる会社もあります。自分の物件と合った実績を持つ会社だと安心です。また、入居率(空室対策力)やクレーム対応の評判なども可能な範囲で情報収集すると良いでしょう。知人の紹介やオーナー仲間の口コミがあれば参考にしてください。
提案内容の丁寧さ:初回相談や見積もり提案の段階で、こちらの質問に丁寧に答えてくれるか、契約内容について詳しく説明してくれるかといった姿勢も重要な判断材料です。誠実な会社であれば、デメリットも隠さず伝えてくれるものですし、契約書の雛形も事前に見せてくれるでしょう。逆に不明点をはぐらかしたり、「大丈夫ですよ」と具体策なく安心させようとする会社は注意が必要です。
手数料の安さだけで選ばない:費用は気になる点ですが、管理手数料が極端に安い場合は要注意です。手数料が安い分だけサービス内容が限定されていたり、オーナーに予期せぬ負担が回ってくる可能性があります。実際、「手数料の安さだけでなく管理内容の範囲を確認することが大切です。安い契約では委託できる範囲が限られたり、予期せぬ責任がオーナーに発生したりする可能性があります」と指摘されています。適正な相場に見合ったサービスを提供している会社を選ぶようにしましょう。複数社の提案を比べれば、不自然に安すぎる条件には気付きやすくなるはずです。
契約条件の柔軟性:候補の管理会社が提示する契約条件(解約条項や手数料率など)にも目を向けてください。他社と比べて不利な条件ばかりの場合、契約後に不満が募る可能性があります。条件交渉に応じてくれるかどうか、その柔軟性も信頼できる会社かを見極めるポイントです。
以上の点を踏まえ、総合的に判断して管理会社を選定しましょう。管理会社は長期的に付き合うパートナーですから、短期的な損得よりも信頼関係や相性を重視することが成功の秘訣です。契約前に些細なことでも質問や要望を伝え、その対応ぶりを見ることで会社の姿勢が見えてきます。納得と安心の上で契約を締結し、大切な不動産を託せる管理会社と出会えるよう、慎重に比較検討してください。
管理委託契約は、不動産オーナーにとって賃貸経営の土台となる非常に重要な契約です。契約締結前に目的と重要性を理解し、委託する業務範囲や手数料の相場・内訳、解約条件、双方の責任分担を余すところなく確認しておくことで、契約後のトラブルを大幅に減らすことができます。また、実例に学んでよくあるトラブルを未然に防ぐチェックポイントを押さえ、信頼できる管理会社選びを行うことも安定経営の秘訣です。
契約書には細かな点まで明記し、不明点は必ずクリアにしてから署名することが肝心です。「契約書を確認することでトラブルは避けられる」ものです。プロの管理会社に任せるメリットを最大限享受するためにも、本記事で解説したポイントを参考に、納得のいく管理委託契約を締結してください。これから賃貸管理を委託するオーナーの皆様が、安心して物件を任せられ、賃貸経営がより良いものとなることを願っています。