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(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクトとは

作成者: 稲澤大輔|2025/05/15 7:10:41 Z

住友不動産ホームページより引用

神奈川県横浜市中区の北仲通北地区で進められている大規模複合開発事業「(仮称)北仲通北地区A1・2地区プロジェクト」は、みなとみらい線「馬車道」駅前に位置する再開発計画です。計画地は横浜市新市庁舎に隣接し、桜木町駅からも徒歩圏内にあります。本プロジェクトは地上40階・地下2階、高さ約150m規模の超高層ビル1棟の建設を中心とし、2023年4月に着工、2026年11月末の竣工を予定しています。所在地は横浜市中区北仲通6丁目付近で、敷地面積は約9,302㎡に及びます。

開発の目的と都市計画の詳細

本計画地を含む北仲通北地区一帯は、みなとみらい21地区と関内地区という横浜都心部の新旧拠点をつなぐ結節点として位置づけられており、国際交流拠点の形成が目標とされています。都市計画制度上は「北仲通北再開発等促進地区」に指定され、周辺景観との調和や高度利用が図られています。地区計画では建築物の高さ制限を通常31mまでとする一方、一定条件を満たす場合には本計画地のような区域で最高150mまでの超高層建築を誘導する方針が定められました。また、当初600%だった容積率の最高限度は計画変更により750%に緩和されており、公開空地や業務機能の整備などと引き換えに大規模建築を可能としています(※横浜市 都市計画素案より)。国土交通省も本プロジェクトを「優良な民間都市再生事業計画」に認定しており、金融支援・税制特例の適用対象とすることで民間主導のまちづくりを後押ししています。この認定計画では、高水準の宿泊施設(ホテル)やMICE誘致可能な大型宴会場と、ハイグレードな住宅を整備することで新たな国際ビジネス交流拠点を創出することが掲げられました。さらに、ペデストリアンデッキや水際線(運河沿い)プロムナード、広場空間の整備によって地区全体の回遊性・景観性を高め、観光客や市民が集い賑わう魅力的な街区を形成する計画です。

参画企業・コンソーシアムの構成

本プロジェクトは民間ディベロッパーを中心に推進されています。事業主(建築主)は住友不動産株式会社と株式会社大和地所であり、この2社が共同で開発をリードしています。ホテル部分の所有・運営については、ヒルトン社のラグジュアリーブランド「コンラッド・ホテルズ&リゾーツ」が横浜初進出し、大和地所と運営受託契約を締結しました。一方、住宅部分は住友不動産の超高級賃貸レジデンスブランド「ラ・トゥール」がこれも横浜初進出として導入されます。設計者には大手設計事務所の久米設計が起用され、超高層複合ビルの意匠・構造設計を担当しています。施工はスーパーゼネコンの鹿島建設(横浜支店)が担い、安全・高品質な建設工事を進めています。このほか、プロジェクトマネジメント・企画調整役としてユーエスアイ・エンジニアリング社も参画しており、官民連携面では横浜市が都市計画調整やインフラ整備で協力する体制です。国からの認定も受けていることから、金融機関や関係行政も含めた広範なコンソーシアム体制で事業が推進されています。

開発スケジュールと現在の進捗状況

本計画は2023年4月30日に着工し、約3年半の工期を経て2026年11月30日の竣工を目指しています。既に2023年時点で基礎工事・地下躯体工事に着手しており、2024年にはタワー躯体が地上へと立ち上がり始めました。2025年現在、建物は中高層階まで構築が進み、外観も徐々にその姿を現しつつあります。今後は最上部まで鉄筋コンクリート造の躯体を構築し、外装カーテンウォールの取り付けや内部設備工事を経て竣工へと向かいます。2027年の開業に向けテナントフィットアウト等も予定されており、スケジュール通りに進めば2027年にはホテル「コンラッド横浜」及び高級賃貸「(仮称)ラ・トゥール横浜」がグランドオープンする運びです。なお、本再開発事業に並行して地区内では他区画の再開発(B-1地区等)も進んでおり、2027年までに北仲通北地区全体でのまち開き完了が見込まれています。

計画されている施設構成

完成予定の超高層ビルには、ホテル、住宅、商業施設、駐車場といった複数の用途が盛り込まれます。具体的な構成としては、低層階(1~16階)にラグジュアリーホテル「コンラッド横浜」が入り、約360室規模の客室やレストラン・バー、スパ、フィットネス、そして国際会議や大規模宴会にも対応可能な約360㎡のボールルーム(宴会場)などが設けられる予定です。高層階(18~40階)には住友不動産の高級賃貸マンション「(仮称)ラ・トゥール横浜」が入居し、総戸数は約184戸、専有面積100㎡超の大型住戸を中心としたラインナップとなります。これらホテルと住宅のエントランスはそれぞれ分離され、1階部分にホテル車寄せ・居住者用車寄せを配置する計画です。また低層部には店舗区画も設けられ、飲食店や物販店などが入居して地域住民や宿泊客に利便サービスを提供すると想定されます。地下2階には大容量の駐車場が整備され、自家用車・観光バスの収容に対応します。併せて、防災拠点機能や非常用発電設備の確保など、災害時に地域を支える設計も織り込まれています。

交通アクセスと周辺環境への整合

住友不動産ホームページより引用

交通アクセス面では、本プロジェクトの立地は恵まれています。地下に直結するみなとみらい線「馬車道駅」からは徒歩2分という至近距離であり、横浜駅方面やみなとみらい地区への地下鉄移動が便利です。JR根岸線・横浜市営地下鉄ブルーラインが乗り入れる桜木町駅へも徒歩5分程度と近接し、同駅からペデストリアンデッキ等を経由して本施設2階へアクセスできる動線整備が進められています。具体的には、横浜市庁舎2階デッキから本ビル2階にペデストリアンデッキで直結させる計画で、これにより馬車道駅まで道路に降りずに行き来可能となる見込みです。この歩行者デッキは大岡川河岸の遊歩道とも連携し、北仲通北地区内を回遊しやすくすることで周辺環境との一体性を高めます。周辺には横浜市役所(新市庁舎)や商業施設「横浜ワールドポーターズ」、歴史的建造物が立ち並ぶ関内・馬車道エリアなどがあり、本プロジェクトはそれらと調和しつつ利便性を向上させる役割を果たします。例えば海側(運河沿い)には公開広場が整備され、周辺の汽車道プロムナードや運河パークと視覚的・空間的につながる設計となっています。交通結節機能にも配慮されており、桜木町駅前のバスターミナルから市庁舎デッキを経て本施設へ、さらには馬車道駅・関内方面へと人の流れがシームレスにつながる新たな導線が形成される予定です。

地元経済や不動産市場への影響

「コンラッド横浜」と「ラ・トゥール横浜」の誘致により、北仲通北地区は横浜屈指の高級ホテル&住宅エリアとしてブランド力が向上すると期待されています。国際級ホテルの開業は富裕層観光客やビジネス出張者を呼び込み、周辺の飲食・小売業への波及効果やMICE誘致による経済効果が見込まれます。高級レジデンスについても、みなとみらい地区の眺望を享受できる希少な立地ということで国内外の富裕層からの需要が高く、分譲ではなく賃貸募集ながらプレミアムな賃料水準が予想されます。実際、同じ北仲通地区内で先行して供用された超高層タワーマンション「ザ・タワー横浜北仲」の場合、2017年の販売時に最多価格帯6,600万円だった住戸が現在中古市場で1.5億円近くに値上がりしており、新プロジェクトの住宅も資産価値上昇が見込まれます。また、当該地区の商業地地価も上昇傾向にあります。横浜市中区北仲通エリアの最新基準地価は1㎡あたり105万円と報告されており、前年比で+12.78%の大幅上昇を示しました。これは新市庁舎整備や北仲通地区の一連の再開発進展が評価されている表れであり、本プロジェクトの着工も地価を押し上げる要因の一つとなっています。総じて、本プロジェクトにより横浜都心・臨海部の魅力度と国際競争力が高まり、企業誘致や観光客増加による地域経済の活性化、不動産市場の活況化が期待されていると言えるでしょう。

設計・建築上の特筆すべき特徴

本プロジェクトの建築デザインは、横浜の新たなランドマークとなり得る存在感と周辺景観への配慮を両立させています。外観ファサードはガラスを多用したモダンな意匠で、港町横浜の開放的な空と海を映し込むデザインとなる予定です。低層部には歴史ある馬車道エリアの景観になじむ色調・素材が用いられ、高層部は未来志向の洗練されたタワーデザインで横浜ランドマークタワーから関内地区へ緩やかに連なるスカイラインを形成します。特に同地区内の他の再開発棟(B-2・B-3地区のタワーマンション群など)と並び立つ姿は圧巻で、みなとみらいの高層ビル群と肩を並べる新たな横浜の顔になるとの期待もあります。計画段階で公表された完成予想図に対しては近隣住民や建築関係者からも注目が集まっており、外構デザインや公開空地の配置にも細やかな配慮がなされている点が評価されています。例えば、海側広場にはベンチや緑地が配置され憩いの空間が演出されるほか、建物と運河沿いプロムナードとの間には視線を遮らないガラス手摺やセットバックが採用され、開放感ある水際景観を実現します。さらに、環境面では最新の省エネ設備や再生可能エネルギーの活用、防災面では免震構造の採用や非常用備蓄の充実など、持続可能で安全な街づくりへの工夫も凝らされています。これらの特色により、本プロジェクトは横浜の歴史と未来をつなぐ象徴的建築として、国際港都・横浜の景観と賑わいに大きく寄与することが期待されています。