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北小金駅南口東地区第一種市街地再開発事業 ー 歴史ある松戸市の新たな都市開発プロジェクト

作成者: 稲澤大輔|2025/05/02 15:00:00 Z

千葉県松戸市にあるJR常磐線「北小金駅」南口エリアで進められている「北小金駅南口東地区第一種市街地再開発事業」は、歴史と文化を持つ地域の魅力を保ちながら、現代的な都市機能を整備する注目のプロジェクトです。本事業は松戸市初の組合施行による市街地再開発となり、2025年度の着工、2028年度の竣工を目指して進められています。本記事では、この再開発事業の背景、計画概要、そして地域への影響について詳しく解説します。

地域の歴史と現状

小金宿としての歴史的背景

北小金地区は、江戸時代から水戸街道の宿場町「小金宿」として栄えた歴史ある地域です。現在も駅を中心に南北に本土寺や東漸寺などの歴史資源が点在し、緑豊かな環境が保たれています。下総台地一帯には幕府の軍馬育成のための牧場「小金牧」が整備され、小金宿には野馬奉行も置かれるなど、江戸期から重要な位置づけがなされていました。

現在の課題

一方で、現在の北小金駅南口東地区は、住みやすいコミュニティがある反面、以下のような課題を抱えています:

  1. 狭あい道路が多く、消防車や救急車が通行できないなど防災・安全面での問題がある
  2. 老朽化した建物が多く、土地の有効活用がなされていない
  3. 駐車場などの低未利用地が散在している
  4. ゆったりとしたオープンスペースや憩いの場が不足している

松戸市によれば、このような課題を解決するため、松戸市では初めての組合施行による市街地再開発事業が計画されました。

再開発事業の概要

事業の目的

本事業は主に以下3つの課題解決を目指しています:

  1. 防災性の向上: 緊急車両の通行を確保し、災害時の安全を確保
  2. オープンスペースの創出: 約1,000㎡の広場を整備し、地域の憩いの場を提供
  3. 快適な住環境の整備: 高層マンションと商業施設の複合開発による居住環境の充実

これらを通じて、「まちの快適さ・暮らしやすさの向上」を図ることが主な目的です

事業計画の詳細

  • 施行者: 北小金駅南口東地区市街地再開発組合
  • 施行地区: 松戸市小金字天王脇、東平賀字向台及び字仲通並びに小金きよしヶ丘一丁目の各一部
  • 施行地区面積: 約0.9ヘクタール
  • 事業施行期間: 令和5年度(2023年度)から令和10年度(2028年度)まで
  • 参加組合員: 野村不動産株式会社、株式会社長谷工コーポレーション
  • 総事業費: 約16,957百万円(消費税含む)

建物計画

再開発事業では、2つのエリアに分けて建物が整備されます:

  1. 北敷地:

    • 地上20階、高さ約60m(59.99m)
    • 鉄筋コンクリート造
    • 延床面積約21,830㎡
  2. 南敷地:

    • 地上15階、高さ約45m(44.73m)
    • 鉄筋コンクリート造
    • 延床面積約10,110㎡

両敷地を合わせて、住宅379戸(予定)、商業施設、駐車場等が整備される計画です。

屋外空間の整備計画

本事業では、建物だけでなく周辺の屋外空間も充実させる計画があります:

  • 区画道路中央線と南敷地の間に約1,000㎡の広場を整備
  • 施設建築敷地と道路境界の間に約2mの歩道状空地を設け、道路の歩道部分と一体化した快適で安全な歩行者空間を形成
  • 北敷地と南敷地を区画道路中央線で分割

事業の進捗状況とスケジュール

これまでの経過

北小金駅南口東地区の再開発は長年にわたり検討されてきました:

  • 平成9年(1997年): 法定再開発事業を目指し、「北小金駅南口・東地区街づくり研究会」が組織化
  • 平成30年(2018年): 民間事業者を事務局とした「北小金駅南口東地区市街地再開発協議会」設立
  • 令和2年7月(2020年7月): 「北小金駅南口東地区市街地再開発準備組合」設立
  • 令和4年9月(2022年9月): 都市計画決定
  • 令和5年8月(2023年8月): 組合設立認可
  • 令和7年1月(2025年1月): 事業計画変更認可(第1回)
  • 令和7年2月(2025年2月): 権利変換計画認可

今後のスケジュール

  • 令和7年度(2025年度): 着工(解体工事含む)
  • 令和8年4月15日〜令和10年10月31日(2026年4月15日〜2028年10月31日): 建築工事期間
  • 令和10年度(2028年度): 竣工予定
  • 事業完了期限: 令和11年3月31日(2029年3月31日)松戸市3

地域への影響と期待される効果

防災性の向上

現在の北小金駅南口東地区には狭あい道路が多く、緊急車両の通行が困難な状況です。再開発により、道路が整備され、災害時の避難経路や救助活動がスムーズに行えるようになります。また、老朽化した建物が耐震性の高い新しい建物に建て替えられることで、地域全体の防災性が向上します。

都市環境の改善

約1,000㎡の広場が整備されることで、地域住民の憩いの場が生まれるとともに、都市のヒートアイランド現象の緩和にも寄与します。また、歩道状空地の整備により、歩行者にとって安全で快適な通行空間が確保されます。

地域経済の活性化

商業施設の整備により、地域の商業機能が強化され、新たな雇用創出や経済活動の活性化が期待されます。また、379戸の住宅が供給されることで、地域人口の増加や多様な世帯の流入が見込まれますPR TIMES7

歴史と現代の融合

本事業は、歴史ある「小金宿」としての地域特性を生かしながら、現代的な都市機能を整備する計画です。高層マンションや商業施設といった現代的な建物と、歴史的な寺院や緑地が共存する新しい街並みが形成されることで、地域の魅力がさらに高まることが期待されます。

おわりに

北小金駅南口東地区第一種市街地再開発事業は、松戸市初の組合施行による市街地再開発として、地域の歴史と文化を尊重しながら、現代的な都市機能を整備する意欲的なプロジェクトです。2025年度の着工、2028年度の竣工を目指して進められており、完成後は北小金地区の防災性の向上、オープンスペースの創出、快適な住環境の整備が実現する見込みです。

この再開発が完成すれば、歴史ある「小金宿」としての魅力を保ちながら、より安全で快適な都市空間が創出され、地域住民の生活の質向上につながるでしょう。今後の事業の進捗に注目が集まります。