東京都ホームページより引用
飯田橋駅東地区では、地区面積約0.7haにおよぶ大規模な第一種市街地再開発事業が進行中です。本プロジェクトは、地上26階・地下2階建て、高さ約130mの複合施設を中心とする再開発で、延床面積約46,565㎡という規模感を持ちます。総事業費は約367億円にのぼり、2026年度の竣工を目指しています。
建物構成と用途別フロア計画
清水建設株式会社ホームページより引用
再開発の中心となる高層棟のフロア構成は、低層部に商業施設と公益施設、中高層部にオフィス、上層部に住宅を配置する垂直的な複合利用が特徴です。特にオフィスフロアは各階約1,400㎡超という効率的な貸付面積を確保し、現代のワークスタイルに対応した設計となっています。
具体的なフロア構成を見ると:
- 地下2階〜地下1階:駐車場、設備関連施設
- 1階:商業施設、エントランス、貫通通路
- 2階〜3階:商業施設、公益施設
- 4階〜15階:オフィスフロア
- 16階〜26階:住宅(約180戸の予定)
特に注目すべきは、1階の貫通通路です。JR線と東京メトロ東西線の駅を結ぶ新たな動線として機能し、敷地内を24時間通行可能な公共的空間として整備されます。これにより、駅の東西を行き来する際の移動効率が大幅に向上します。
都市基盤整備の具体的内容
本事業では、建物の建設だけでなく、周辺の都市基盤整備も並行して実施されます。具体的には:
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道路拡幅と無電柱化
- 特別区道千第288号:幅員8.0mに拡幅
- 特別区道千第290号:幅員11.0mに拡幅
- 両道路とも無電柱化を実施し、景観向上と災害時の安全確保を図る
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公共広場の整備
- 面積約296㎡の公共広場を新設
- JR飯田橋駅東口前に滞留空間を創出し、人々の交流拠点として機能
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地下歩行者ネットワーク
- 東京メトロ東西線の地下コンコースと直結
- 地下広場を約500㎡整備し、災害時の一時避難場所としても活用
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バリアフリー動線の強化
- エレベーターとエスカレーターを新設し、地上・地下間の縦移動をスムーズに
- 誰もが利用しやすいユニバーサルデザインを導入
事業経緯と今後のスケジュール
本プロジェクトは長期にわたる検討と準備を経て実現に至っています:
- 2006年12月:飯田橋三丁目7番地域の将来を考える会発足
- 2010年6月:飯田橋駅東地区市街地再開発協議会設立
- 2013年7月:飯田橋駅東地区市街地再開発準備組合設立
- 2021年6月:都市計画決定
- 2022年10月:飯田橋駅東地区市街地再開発組合設立
- 2023年度:権利変換計画認可および新築工事着工
- 2026年度:竣工予定
現在は着工段階にあり、今後は建物の基礎工事、躯体工事へと進み、2026年度の竣工を目指して工事が進められています。
地域課題解決に向けた具体策
駅混雑の緩和対策
飯田橋駅東口では、特に朝夕のラッシュ時に東京メトロ東西線の出入口付近で著しい混雑が発生しています。本再開発では、この問題に対して複数の対策を講じています。
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地下出入口の拡張
- 現在の東西線出入口を約1.5倍に拡張
- コンコース空間を約300㎡拡大し、滞留スペースを確保
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新たな地上-地下接続動線
- 複数の縦動線(エスカレーター、エレベーター)を設置
- ピーク時の人流を分散させる設計
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歩行者シミュレーション分析
- 再開発前後の歩行者流動を予測分析
- 混雑発生箇所を特定し、設計に反映
防災機能の強化
本地区は千代田区の防災計画において「地域防災拠点」に位置づけられており、災害時の安全確保が重要課題です。
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一時滞在施設の整備
- 地下広場を災害時の一時滞在施設として整備
- 約500人収容可能な空間設計
- 72時間対応の非常用電源を確保
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防災備蓄倉庫の設置
- 建物内に約200㎡の防災備蓄倉庫を設置
- 飲料水、非常食、簡易トイレなどを備蓄
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情報発信拠点の整備
- 災害時の情報発信・収集拠点を1階に整備
- デジタルサイネージや無線LANアクセスポイントを設置
環境配慮と持続可能性
環境への配慮も本プロジェクトの重要テーマです。具体的には:
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緑化計画
- 敷地内緑化率約20%を確保
- 屋上庭園、壁面緑化を含む立体的な緑化計画
- 東京都の「緑化計画書制度」の基準を上回る緑化率
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省エネルギー対策
- ZEB Ready(Nearly ZEB)相当の省エネ性能を目指す
- 太陽光発電パネルの設置(約50kW)
- 最新の高効率設備機器の採用
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雨水利用システム
- 屋上で集水した雨水を中水として再利用
- トイレ洗浄水や植栽の灌水に活用
周辺エリアとの連携と波及効果
飯田橋駅周辺の総合的再開発計画との関係
本事業は「飯田橋駅周辺基盤整備計画」の一環として位置づけられています。飯田橋駅周辺では複数の再開発プロジェクトが進行中であり、それらと連携した総合的なまちづくりが進められています。
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飯田橋駅中央地区との連携
- 目白通りを挟んで隣接する「飯田橋駅中央地区」との歩行者ネットワークの整備
- デッキレベルでの接続検討
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富士見二丁目3番地区再開発との相乗効果
- 駅西口で進行中の「富士見二丁目3番地区再開発」(地上21階建て複合施設)との来街者の回遊性向上
- 東西両プロジェクトによる駅周辺の一体的な活性化
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JR飯田橋駅改良事業との調整
- JR飯田橋駅のホーム移設工事と連動した出入口整備
- 駅東西の回遊性向上を図るための連携
経済波及効果と雇用創出
本再開発事業は地域経済への波及効果も期待されています:
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雇用創出効果
- 建設工事による一時的雇用:約2,000人
- 施設開業後の常時雇用:約1,500人(オフィス、商業施設等)
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地域経済活性化
- 商業施設誘致による新たな消費創出:年間約30億円
- オフィスワーカーによる周辺消費:年間約10億円
- 固定資産税等の税収増加:年間約5億円
テナント構成と公共施設計画
商業施設のゾーニング計画
複合施設の低層部(1階〜3階)には約5,000㎡の商業施設が計画されています。
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1階:飲食・物販ゾーン
- 駅直結の立地を活かした利便性の高い店舗構成
- カフェ、ベーカリー、コンビニエンスストアなど日常利用型の店舗
- 貫通通路沿いに開放的なファサードを持つ店舗配置
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2階:サービス・クリニックゾーン
- 医療クリニックモール(内科、歯科、眼科等)
- 金融機関、生活支援サービス
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3階:飲食・カルチャーゾーン
公益施設の導入計画
公益施設として、以下の機能が計画されています:
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子育て支援施設
- 面積約500㎡の認可保育所(定員60名)
- 一時預かり施設
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コミュニティスペース
- 地域住民・ワーカー・来訪者が利用できる多目的スペース
- イベントやセミナーに対応可能な可変型レイアウト
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行政サービス窓口
オフィス・住宅の特徴
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オフィス仕様
- 無柱空間による効率的なレイアウト(約1,400㎡/フロア)
- 天井高2.8m、OAフロア100mm
- 最新のIoT技術を活用したスマートオフィス対応
- BCP対応(72時間の非常用発電機能)
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住宅ユニット
- 約180戸の都市型住宅(1LDK〜3LDK)
- 16階以上の高層階に配置し、良好な眺望を確保
- 住民専用ラウンジ、フィットネススペースを設置
- 免震構造の採用による高い耐震性能
再開発のイノベーティブな取り組み
デジタル技術の活用
本プロジェクトでは、先進的なデジタル技術を積極的に導入しています:
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BIM(Building Information Modeling)の全面活用
- 設計から施工、運営までのBIMによる一元管理
- 3Dモデルを用いた住民・権利者への分かりやすい説明
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スマートビルディング化
- センサーネットワークによる空調・照明の自動制御
- 顔認証システムによるセキュリティ強化
- モバイルアプリによる各種施設予約・利用
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デジタルツイン構築
- 建物・設備の稼働状況をリアルタイムでデジタル化
- 予測保全による維持管理コストの削減
公民連携による広場運営
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エリアマネジメント組織の設立
- 再開発組合から派生する形でエリアマネジメント組織を設立
- 施設所有者、テナント、行政が参画する官民連携体制
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広場活用プログラム
- 季節イベント(春の桜祭り、夏の納涼祭等)
- 平日ランチタイムのマルシェ
- 休日の文化・芸術イベント
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収益還元モデル
- 広場での収益事業(キオスク出店等)による自主財源確保
- 維持管理費用への充当システム構築
まとめ - 飯田橋駅東地区再開発がもたらす都市の進化
飯田橋駅東地区再開発は、単なる建物の更新を超え、都市機能の高度化と人々の生活の質向上を両立させる先進的な事業です。駅直結の利便性を持ちながら、防災機能を強化し、環境にも配慮した持続可能な都市空間の創出を目指しています。
特に注目すべきは、地上・地下の歩行者ネットワークの整備による回遊性の向上です。これにより、駅周辺の混雑緩和だけでなく、飯田橋エリア全体の活性化につながる効果が期待されます。オフィス、住宅、商業、公益施設が融合した複合施設は、多様な都市活動を一体的に支える拠点となるでしょう。
2026年の竣工に向けて着実に進む本プロジェクトは、飯田橋の新たなランドマークとなり、都心における再開発のモデルケースとなる可能性を秘めています。私たちはこれからも、都市の未来を見据えた持続可能なまちづくりに貢献していきたいと考えています。