INA Wealth Vision|Japan Luxury Realty Group

富裕層の究極の資産防衛術「ファミリーオフィス」とは?

作成者: 稲澤大輔|2025/10/08 1:42:45 Z

企業のオーナー経営者や代々続く資産家の皆様にとって、築き上げた資産をいかにして守り、次世代へと円滑に承継していくかは、経営戦略そのものと言えるほど重要な課題です。金融機関から様々な提案を受ける中で、「ファミリーオフィス」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、その実態は日本ではまだ広く知られておらず、謎に包まれた存在と感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、INA&Associates株式会社として多くの富裕層のお客様の資産課題に向き合ってきた専門家の視点から、「ファミリーオフィス」の全貌を解き明かします。単なる資産運用に留まらない、一族の永続的な繁栄を実現するための究極の仕組みについて、具体的な機能や設立のメリットを交えながら、平易かつ専門的に解説します。資産10億円の壁を越え、未来を見据えた資産保全と事業承継を実現するための羅針盤として、ぜひご一読ください。

ファミリーオフィスとは何か?

ファミリーオフィスとは、特定の富裕層一族の資産を包括的に管理・運用し、世代を超えた承継を支援するために設立されるプライベートな組織です。その目的は、単に資産を増やすことだけではありません。一族が共有する理念や価値観といった「無形資産」を守り、社会貢献活動や次世代の教育まで含めた、一族全体の永続的な繁栄を支えることにあります。

一般的に、純金融資産で100億円を超えるような超富裕層が主な対象とされますが、その本質は資産規模の大小よりも、一族の資産と事業をいかにして次世代に繋いでいくかという長期的な視点にあります。

プライベートバンク、資産管理会社との違い

ファミリーオフィスは、富裕層向けのサービスとして知られるプライベートバンクや、節税対策で設立される資産管理会社とはその役割が明確に異なります。それぞれの違いを理解することが、ファミリーオフィスの本質を掴む第一歩です。

比較項目 ファミリーオフィス プライベートバンク 資産管理会社
主目的 一族資産の永続的な保全・承継 金融資産の運用・最大化 節税、資産の保有・管理
対象資産 金融資産、不動産、事業、無形資産(理念等) 金融資産(株式、債券など) 株式、不動産など
意思決定 顧客である一族が主体 金融機関が主体 経営者が主体
収益構造 顧客(一族)への貢献 手数料(フィー)ビジネス 資産運用益、節税効果
関係性 一族のパートナー、執事 金融商品の提供者 資産の「器」

上記のように、プライベートバンクが金融商品の売買による資産増加を主眼とするのに対し、ファミリーオフィスは顧客である一族の利益を唯一の目的とします。また、資産管理会社が個別の資産を管理する「器」であるのに対し、ファミリーオフィスはそれらを統括し、一族全体の未来を設計する「司令塔」としての役割を担うのです。

なぜ今、日本でファミリーオフィスが注目されるのか

欧米ではロックフェラー家やカーネギー家など、歴史的な富豪一族がファミリーオフィスを設立し、何世代にもわたって資産と事業を承継してきた実績があります。一方で、日本ではこれまでファミリーオフィスの普及が進んできませんでした。

その背景には、日本のファミリービジネスが事業規模の拡大よりも現状維持を重視する傾向にあったことや、国民性として資産運用よりも預金を重視する考え方が根強いことなどが挙げられます。しかし、近年、この状況は大きく変化し、富裕層の間でファミリーオフィスへの関心が急速に高まっています。

深刻化する事業承継と相続の問題

最大の要因は、世界最高水準にある日本の相続税です。最高税率は55%に達し、十分な対策を講じなければ、事業承継の際に自社株や不動産といった重要な資産を売却せざるを得ない状況に陥りかねません。これにより、経営権が不安定化したり、先代から受け継いだ大切な資産が失われたりするケースが後を絶たないのです。

また、相続を巡る親族間の争い、いわゆる「争続」も深刻な問題です。こうした事態を未然に防ぎ、円滑な資産承継を実現するための包括的な解決策として、ファミリーオフィスに白羽の矢が立っています。

富裕層の資産規模拡大

株式会社野村総合研究所の調査によれば、日本の富裕層(純金融資産1億円以上)および超富裕層(同5億円以上)の世帯数は増加傾向にあり、その純金融資産総額も拡大しています。資産規模が大きくなるほど、その管理・運用は複雑化し、個人の力だけで対応するには限界があります。この資産規模の拡大が、専門家集団による高度な管理体制(ファミリーオフィス)への需要を押し上げているのです。

ファミリーオフィスの具体的な機能

ファミリーオフィスが提供するサービスは多岐にわたります。それはまさに、一族のあらゆる資産と活動を網羅する「総合コンシェルジュ」と言えるでしょう。主な機能を以下の表に整理します。

機能分類 具体的なサービス内容
資産管理・運用 ・ポートフォリオ全体の戦略策定と管理
・株式や債券などの伝統的資産への投資
・不動産、プライベートエクイティなどのオルタナティブ投資
・リスク管理とパフォーマンス分析
相続・事業承継 ・相続税評価額の試算と納税資金対策
・遺言書の作成支援、信託制度の活用
・事業承継計画の策定と実行支援
・後継者の育成プログラム
税務・法務 ・一族全体のタックスプランニング
・各種申告業務の代行
・法務関連の契約書作成・レビュー
・コンプライアンス体制の構築
一族のガバナンス ・ファミリー憲章(家訓)の策定
・定期的なファミリー会議の運営
・フィランソロピー(社会貢献活動)の企画・管理
・次世代への金融リテラシー教育

これらの機能を、弁護士、会計士、税理士、金融の専門家などが連携して提供することで、一族の資産と理念を盤石な体制で守り抜きます。

まとめ:一族の未来を創造する究極の資産保全戦略

本記事では、富裕層のための究極の資産保全・承継の仕組みである「ファミリーオフィス」について解説しました。ファミリーオフィスは、単なる資産運用のための組織ではなく、一族の価値観や理念といった無形資産を含めたすべてを次世代へと受け継ぎ、その永続的な繁栄を目指すための「プライベートな司令塔」です。

プライベートバンクや資産管理会社とは一線を画し、完全に顧客である一族の利益のために機能するその仕組みは、複雑化する経済環境や厳しい税制から大切な資産を守り抜くための最も有効な選択肢の一つと言えるでしょう。特に、事業承継という大きな課題を控えるオーナー経営者の皆様にとっては、検討に値する戦略です。

世代を超えて受け継がれてきた事業と資産、そして一族の誇りを未来永劫守り抜くために、ファミリーオフィスという選択肢を真剣に考えてみてはいかがでしょうか。

よくある質問

Q1.資産が10億円に満たない場合、ファミリーオフィスのサービスは利用できませんか?

A1.複数の富裕層で一つのファミリーオフィスを共同利用する「マルチファミリーオフィス(MFO)」という形態があります。MFOであれば、比較的低い資産規模からでも高度な専門サービスを受けることが可能です。まずは専門家にご相談ください。

Q2.ファミリーオフィスは、金融庁の規制対象ではないのですか?

A2.投資運用業の登録が必要となるケースもありますが、自己資産の運用を目的とする場合など、多くは規制の対象外となります。しかし、適切なリーガルチェックのもとで組織を設計することが極めて重要です。

Q3.設立にはどのくらいの費用がかかりますか?

A3.完全に一族専用のシングルファミリーオフィスを設立する場合、専門スタッフの人件費やインフラ費用で年間数千万円から数億円のコストがかかることもあります。マルチファミリーオフィスであれば、コストを抑えることが可能です。

Q4.不動産を主軸とした資産構成ですが、相談に乗ってもらえますか?

A4.もちろんです。優れたファミリーオフィスは、金融資産だけでなく不動産にも精通しています。INA&Associates株式会社は不動産の専門家集団として、お客様の資産構成に最適な保全・承継戦略をご提案いたします。