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市街化調整区域とは?メリット・デメリットや将来性を解説

作成者: 稲澤大輔|2025/06/21 10:05:20 Z

不動産投資や住宅購入を検討される際、「市街化調整区域」という言葉を耳にされることがあるでしょう。

この区域の土地は一般的に価格が安く設定されているため、「お得な投資機会では?」と考える方も少なくありません。しかし、市街化調整区域には独特の制約があり、十分な理解なしに購入すると後悔する可能性があります。

本記事では、INA&Associates株式会社が、市街化調整区域の基本的な概念から、メリット・デメリット、将来性まで詳しく解説いたします。不動産取引において適切な判断を下すための参考としてお役立てください。

市街化調整区域の基本概念

都市計画法における位置づけ

市街化調整区域 とは、都市計画法第7条第3項に基づいて指定される区域区分の一つです。法律上の定義では「市街化を抑制すべき区域」とされており、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るために設定されています。

この区域は、市街化区域 と対をなす概念として位置づけられています。市街化区域が「優先的・計画的に市街化を図る区域」であるのに対し、市街化調整区域は積極的な開発を抑制する区域として機能しています。

市街化区域との根本的な違い

市街化区域と市街化調整区域の違いを理解することは、不動産投資において極めて重要です。以下の表で主要な違いを整理いたします。

項目 市街化区域 市街化調整区域
基本方針 市街化を促進 市街化を抑制
建築制限 用途地域に応じた制限 原則として建築禁止
用途地域 13種類の用途地域を指定 原則として指定なし
都市計画税 課税対象 非課税
インフラ整備 優先的に整備 整備は後回し
開発許可 一定規模以上で必要 規模に関わらず原則必要

国土に占める割合と分布

市街化調整区域は、国土の約10.3%を占めており、主に農地や森林などの自然環境を保全する役割を担っています。これらの区域は、農林漁業との健全な調和を図る観点から、関係担当部局との十分な協議を経て指定されています。

市街化調整区域における法的規制

開発行為の制限

市街化調整区域では、開発行為 が原則として禁止されています。開発行為とは、主として建築物の建築や第一種特定工作物の建設を目的とした土地の区画形質の変更を指します。

この制限により、新たに建築物を建てたり、既存建築物を増築することは極めて困難となっています。ただし、以下のような例外的なケースでは開発が認められる場合があります。

  • 一定の農林水産業施設の建設
  • 公益上必要な施設の整備
  • 公的機関による土地区画整理事業
  • 既存建築物の建替(一定範囲内)

都市計画法第34条による許可基準

市街化調整区域で開発行為を行う場合、都市計画法第34条に基づく厳格な審査を受ける必要があります。この条文では、市街化を促進するおそれがなく、かつ市街化区域内で行うことが困難または著しく不適当と認められる開発行為について、例外的に許可する基準を定めています。

具体的な許可基準には以下のようなものがあります。

  1. 第1号該当施設: 日用品店舗、学校、社会福祉施設など
  2. 第2号該当施設: 鉱物資源の採取や処理施設
  3. 第8号該当施設: 危険物貯蔵・処理施設
  4. 第10号該当施設: 地区計画区域内の開発
  5. 第11号該当施設: 条例で指定された区域内の開発
  6. 第12号該当施設: 開発審査会の議を経た開発

建築確認と建築許可

市街化調整区域内で建築物の新築や増改築を行う場合、通常の建築確認に加えて、都道府県知事による建築許可が必要となります。この二重の許可制度により、建築行為は厳格に管理されています。

建築許可の対象となるのは、増改築移転部分の床面積が10平方メートルを超える場合です。また、建築物の用途変更についても、農林漁業用建築物や公益上必要な建築物以外への変更は原則として認められません。

市街化調整区域のメリット

土地価格の優位性

市街化調整区域の最大のメリットは、土地価格の安さ にあります。開発が制限されているため、市街化区域と比較して大幅に安価で土地を取得することが可能です。

この価格差は、投資効率の観点から魅力的に映る場合があります。特に、将来的な規制緩和や区域区分の見直しを期待する投資家にとっては、潜在的な値上がり益を狙える投資対象として注目されることがあります。

税負担の軽減効果

市街化調整区域では、以下の税制上のメリットを享受できます。

固定資産税の軽減: 課税評価額が低く設定されるため、固定資産税の負担が軽減されます。

都市計画税の非課税: 市街化区域では課税される都市計画税が、市街化調整区域では課税されません。この税制上の優遇措置により、土地の保有コストを大幅に削減できます。

以下の表で、税負担の比較を示します。

税目 市街化区域 市街化調整区域
固定資産税 評価額×1.4% 評価額×1.4%(評価額が低い)
都市計画税 評価額×0.3% 非課税
合計税率 最大1.7% 最大1.4%

良好な住環境の確保

市街化調整区域は、自然環境に恵まれた落ち着いた住環境を提供します。建築密度が低く抑えられているため、以下のような環境的メリットがあります。

  • 豊かな自然環境に囲まれた生活
  • 日照条件の良好な土地が多い
  • 交通量が少なく静かな環境
  • 大気汚染や騒音の影響が少ない
  • 広い敷地を確保しやすい

これらの環境的優位性は、都市部の喧騒から離れた生活を求める方にとって大きな魅力となります。

市街化調整区域のデメリット

建築制限による制約

市街化調整区域における最大のデメリットは、厳格な建築制限 です。この制限は、不動産の活用可能性を大幅に制約し、以下のような問題を引き起こします。

建て替えの困難性: 既存建築物が老朽化した場合でも、建て替えには都道府県知事の許可が必要となります。許可基準は厳格であり、建物の規模や用途によっては許可が下りない可能性があります。

増築の制限: 家族構成の変化や事業拡大に伴う増築も、原則として制限されています。10平方メートルを超える増改築には建築許可が必要となり、手続きが複雑化します。

用途変更の制約: 建築物の用途変更についても厳しい制限があり、農林漁業用建築物や公益上必要な建築物以外への変更は困難です。

インフラ整備の遅れ

市街化調整区域では、都市開発が抑制されているため、インフラ整備が後回し にされる傾向があります。具体的には以下のような問題が発生する可能性があります。

上下水道の未整備: 上水道や下水道の整備が不十分な地域が存在し、井戸水や浄化槽に依存する必要がある場合があります。

ガス供給の制限: 都市ガスの供給エリア外となることが多く、プロパンガスに依存する必要があります。

道路整備の遅れ: 道路の舗装や拡幅工事が遅れがちで、アクセス性に問題がある場合があります。

通信インフラの制約: 光ファイバーなどの高速通信インフラの整備が遅れ、インターネット環境に制約が生じる可能性があります。

公共交通機関の不便さ: バスや鉄道などの公共交通機関のアクセスが限定的で、自家用車への依存度が高くなります。

融資・金融面での制約

市街化調整区域の不動産は、金融機関からの評価が低く、融資を受けることが困難 な場合があります。

担保価値の低評価: 建築制限により将来的な活用可能性が限定されるため、担保価値が低く評価されます。

融資条件の厳格化: 金融機関によっては、市街化調整区域の不動産に対する融資を制限している場合があります。

売却時の制約: 将来的に売却を検討する際も、買い手が限定されるため、売却価格や売却期間に影響が生じる可能性があります。

将来性に関する分析

人口減少社会における影響

日本が本格的な人口減少社会に突入する中、市街化調整区域は特に大きな影響を受けると予想されます。

人口流出の加速: 利便性の高い市街化区域への人口集中が進む一方で、市街化調整区域からの人口流出が加速する可能性があります。

地域コミュニティの衰退: 人口減少により、地域コミュニティの維持が困難となり、商業施設や公共サービスの撤退が進む可能性があります。

空き家問題の深刻化: 既存住宅の賃貸利用にも制限があるため、空き家の増加が深刻な社会問題となっています。

立地適正化計画の影響

国土交通省が推進する 立地適正化計画 により、都市機能の集約化が進められています。この計画では、居住誘導区域と都市機能誘導区域を設定し、コンパクトシティの実現を目指しています。

市街化調整区域の多くは居住誘導区域外に位置づけられる可能性が高く、以下のような影響が予想されます。

公共投資の優先度低下: 公共施設の整備や維持管理において、優先度が低下する可能性があります。

資産価値の二極化: 居住誘導区域内の不動産価値が維持・向上する一方で、区域外の不動産価値は大幅に下落するリスクがあります。

地価動向の長期予測

市街化調整区域の地価は、以下の要因により長期的な下落傾向が続くと予想されます。

需要の継続的減少: 人口減少と都市部への集中により、市街化調整区域への需要は継続的に減少すると予想されます。

開発制限による価値制約: 建築制限により土地の活用可能性が限定されるため、投資対象としての魅力が低下します。

インフラ投資の削減: 公共投資の優先順位において後回しにされるため、利便性の向上が期待できません。

以下の表で、将来的なリスク要因を整理します。

リスク要因 影響度 発生時期 対策の可能性
人口減少 既に進行中 限定的
立地適正化計画 2025年以降本格化 計画見直しの可能性
インフラ老朽化 2030年代以降 維持管理費用の増大
空き家増加 既に進行中 利活用制度の整備

投資判断における注意点

購入前の詳細調査

市街化調整区域の不動産を検討される際は、以下の点について詳細な調査を行うことが重要です。

建築可能性の確認: 都市計画法第34条の各号に該当するかどうか、具体的な建築計画について事前に行政機関に相談することが必要です。

インフラ状況の把握: 上下水道、ガス、電気、通信などのインフラ整備状況を詳細に確認し、将来的な整備予定についても調査する必要があります。

周辺環境の変化予測: 立地適正化計画や都市計画マスタープランなどの上位計画を確認し、将来的な土地利用の方向性を把握することが重要です。

専門家との連携

市街化調整区域の不動産取引は複雑な法的手続きを伴うため、以下の専門家との連携が不可欠です。

不動産鑑定士: 適正な価格評価と将来的な価値変動の予測について専門的な意見を求めることが重要です。

都市計画コンサルタント: 開発許可の可能性や手続きの詳細について専門的なアドバイスを受けることが必要です。

税理士: 税制上のメリット・デメリットを正確に把握し、総合的な投資効果を検証することが重要です。

リスク管理の重要性

市街化調整区域への投資は、以下のリスク管理策を講じることが重要です。

分散投資の実施: 市街化調整区域のみに集中投資するのではなく、市街化区域の物件との分散投資を検討することが重要です。

出口戦略の明確化: 将来的な売却や活用方法について、複数のシナリオを想定した出口戦略を事前に検討することが必要です。

定期的な見直し: 法制度の変更や社会情勢の変化に応じて、投資戦略を定期的に見直すことが重要です。

土地活用の可能性

農地転用による活用

市街化調整区域内の農地については、農地転用 の手続きを経ることで、一定の活用が可能となる場合があります。

農地転用には以下の許可区分があります。

許可区分 転用の可能性 主な条件
第1種農地 原則不許可 農業用施設等の例外的場合のみ
第2種農地 条件付き許可 代替地がない場合等
第3種農地 原則許可 市街地に近接する農地

既存建築物の有効活用

既存建築物については、用途変更の制限はあるものの、以下のような活用方法が考えられます。

賃貸住宅としての活用: 既存住宅の賃貸利用については、自治体によって取り扱いが異なりますが、一定の条件下で可能な場合があります。

農業関連施設への転用: 農産物の加工や販売施設への転用は、比較的許可が得られやすい傾向があります。

公益的施設への転用: 地域の公益に資する施設への転用については、行政の支援を得られる可能性があります。

まとめ

市街化調整区域は、土地価格の安さや税負担の軽減、良好な住環境といったメリットがある一方で、建築制限、インフラ整備の遅れ、将来性の不安といった重大なデメリットも存在します。

特に、人口減少社会の進行と立地適正化計画の推進により、市街化調整区域の不動産価値は長期的に下落する可能性が高いと考えられます。

不動産投資や住宅購入を検討される際は、これらのメリット・デメリットを十分に理解し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に判断することが重要です。

INA&Associates株式会社では、市街化調整区域を含む様々な不動産投資案件について、お客様の投資目標とリスク許容度に応じた最適なソリューションを提供しております。市街化調整区域の不動産に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

私たちは、お客様の長期的な資産形成と豊かな生活の実現をサポートするため、専門的な知識と豊富な経験を活かして、最適な不動産投資戦略をご提案いたします。

よくある質問

Q1: 市街化調整区域の土地に住宅を建築することは可能ですか?

A1: 市街化調整区域では原則として住宅の建築は制限されていますが、都市計画法第34条の各号に該当する場合や、自治体の条例により指定された区域内では建築が可能な場合があります。具体的な建築可能性については、事前に行政機関にご相談いただくことをお勧めします。

Q2: 市街化調整区域の不動産は投資対象として適切でしょうか?

A2: 市街化調整区域の不動産投資には、価格の安さというメリットがある一方で、建築制限や将来的な価値下落リスクなどのデメリットも存在します。投資判断においては、これらのリスクを十分に理解し、専門家のアドバイスを受けながら慎重に検討することが重要です。

Q3: 市街化調整区域から市街化区域への編入は可能ですか?

A3: 市街化調整区域から市街化区域への編入は、都市計画の見直し時に検討される場合があります。ただし、編入には厳格な要件があり、土地区画整理事業などの計画的な市街地整備が前提となることが一般的です。編入の可能性については、自治体の都市計画担当部署にご確認ください。

Q4: 市街化調整区域の固定資産税はどの程度安くなりますか?

A4: 市街化調整区域では、固定資産税の課税評価額が市街化区域と比較して低く設定される傾向があります。また、都市計画税が非課税となるため、税負担は大幅に軽減されます。具体的な税額については、物件の立地や規模により異なるため、税理士等の専門家にご相談いただくことをお勧めします。

Q5: 市街化調整区域の不動産を売却する際の注意点はありますか?

A5: 市街化調整区域の不動産売却では、建築制限により買い手が限定される可能性があります。また、金融機関の融資が受けにくいため、現金購入者を中心とした市場となることが一般的です。売却を検討される際は、不動産の専門家に相談し、適切な価格設定と販売戦略を立てることが重要です。