INA Wealth Vision|Japan Luxury Realty Group

なぜ中国・韓国・台湾の資本が日本不動産を選ぶのか?地政学的優位性と投資環境を徹底解説

作成者: 稲澤大輔|2025/11/22 0:49:46 Z

近年、中国、韓国、台湾といったアジアの国・地域から日本の不動産市場へ多額の資本が流入しています。特に、地政学的な観点 から日本の不動産が「安全資産」として再評価されていることは、見過ごせない潮流です。本記事では、INA&Associates株式会社が、なぜ今アジア資本が日本を目指すのか、その地政学的な背景と経済的なメリットを、専門家の視点から解説いたします。

アジア資本による日本不動産投資の現状

まず、アジア資本による日本不動産投資がどれほど活発化しているか、具体的なデータから見ていきましょう。特に台湾や韓国からの投資は、近年目覚ましい伸びを見せています。

投資規模の拡大

台湾の大手不動産仲介である信義グループの日本法人は、2024年の取扱高が700億円に達し、前年比で20%増加しました。また、東急リバブルの台湾法人も、過去10年間のインバウンド取引で累計約580億円を取り扱うなど、その勢いはとどまるところを知りません。

韓国からの投資も同様に急増しています。韓国企画財政部データによると、2024年通年の対日不動産取得送金額は3,920万ドルで、2023年の約1,310万ドルの約3倍・過去最高。中国からは、2025年7月には中国本土から約8〜9兆円規模の資本流出があったとされており、その行き先の一つとして日本を含む先進国不動産市場が投資家から注目されています。

投資対象の傾向

これらの投資家が好むのは、主に東京都心部、大阪、京都といった国際的に知名度の高いエリアです。物件種別としては、流動性が高く管理しやすいマンションが安定した人気を誇ります。また、近年では1億円を超える高価格帯の物件への問い合わせが増加しており、富裕層による大型投資が活発化していることがうかがえます。

投資目的も多岐にわたります。留学生の親が子供の住居用に購入するケース、純粋な資産運用目的、セカンドハウスとしての利用、さらには投資経営ビザ取得のための購入など、多様なニーズが存在します。

国・地域 投資規模(年間) 主な投資目的 人気エリア
台湾 700億円(2024年) 資産分散、留学生向け 東京、大阪、京都
韓国 3,600万ドル(2024年1-11月) 資産保全、投資 東京都心部
中国 増加傾向 資産逃避、長期保有 東京、大阪

中国・韓国・台湾が日本を選ぶ地政学的理由

では、なぜ彼らは自国や他の国ではなく、日本を選ぶのでしょうか。その根底には、各国・地域が抱える特有の地政学的課題と、それと対比される日本の「安定性」があります。

日本の政治的安定性と社会秩序

日本は、アジア地域において際立って政治的・経済的に安定 しています。頻繁な政権交代がありながらも、法治国家としての基盤は揺るがず、不動産政策が突如として大きく変更されるリスクは極めて低いと言えます。この「予測可能性の高さ」は、長期的な資産運用を考える投資家にとって、何物にも代えがたい魅力です。

加えて、世界トップクラスの治安の良さや整備された社会インフラも、資産の安全性を担保する重要な要素となっています。日本の犯罪率は主要先進国の中でも極めて低く、不動産が物理的に損なわれるリスクも最小限に抑えられています。また、自然災害に対する対策や建築基準も厳しく、耐震性の高い建物が多いことも、投資家に安心感を与えています。

各国・地域が抱える地政学的課題

一方で、中国、韓国、台湾はそれぞれ異なる地政学的リスクを抱えています。これらのリスクが、自国からの資本流出と、安全な避難先としての日本への投資を後押ししているのです。

台湾の地政学リスク

台湾の投資家にとって最大の懸念は、中国との関係悪化に起因する地政学リスク です。国際的に不安定な立場に置かれていることから、有事の際に備えて資産を海外へ分散させる動きが活発化しています。日本は地理的に近いだけでなく、文化的な親和性も高いため、資産の避難先として有力な選択肢となっています。

台湾の投資家は、日本、米国、カナダ、オーストラリアなど複数の国に資産を分散させていますが、その中でも日本は飛行時間が短く、頻繁に訪問できるという地理的優位性があります。また、親日的な国民性も相まって、心理的なハードルが低いことも投資を後押ししています。

韓国の政治・経済環境

韓国では、不動産価格の急騰と、それに対応するための不動産政策の頻繁な変更が投資家の不安を煽っています。特に、多住宅所有者に対する重課税などの規制強化は、国内での不動産投資の魅力を大きく損なわせています。予測が難しく、安定した資産形成が困難な国内市場を避け、より安定した日本の市場に目を向けるのは、合理的な判断と言えるでしょう。

韓国の不動産市場は、政府の政策によって価格が冷温湯を繰り返しており、投資家にとって極めて予測が困難な状況です。ある時期には不動産価格を抑制するために規制が強化され、別の時期には市場活性化のために規制が緩和されるという、一貫性のない政策運営が続いています。このような環境下では、長期的な資産形成の計画を立てることが難しく、海外への投資に目を向けるのは自然な流れです。

中国の政治的不安と経済の停滞

中国では、政府による突然の規制強化など、政治的な不確実性 が常に付きまといます。加えて、近年の深刻な不動産不況は、多くの投資家に資産価値の毀損という厳しい現実を突きつけました。恒大集団や碧桂園に代表される大手デベロッパーの経営危機は、国内不動産市場への信頼を大きく揺るがし、より安全な投資先を求めて海外へ資本を移動させる「資産逃避」の動きを加速させています。

中国の不動産市場では、2023年に不動産販売面積が2021年のピークから約60%も減少しました。また、地方政府の財政も土地売却収入の減少により10年ぶりの低水準となっており、市場全体が深刻な不況に陥っています。不動産は中国人の資産形成の中心であったため、価格下落は家計の純資産を大きく減少させ、消費や投資意欲を抑制する悪循環を生み出しています。

項目 東京 台北 ソウル 北京・上海 香港
政治的安定性
不動産政策の安定性
外国人所有権 完全所有可 完全所有可 制限あり 制限あり 完全所有可
建物品質・耐震性 非常に高い

日本不動産投資の経済的メリット

地政学的な安定性に加え、現在の経済状況がもたらすメリットも、アジア資本を日本に引き寄せる大きな要因です。

円安による割安感

現在の歴史的な円安は、海外投資家にとって日本の不動産を極めて割安にしています。例えば、数年前であれば1億円だった物件が、自国通貨建てで見ると7,000万円~8,000万円程度で購入できる計算になります。世界の主要都市と比較しても、東京の不動産価格はまだ割安感があり、この円安が続く限り、海外からの投資意欲は衰えないでしょう。

2024年には円の価値が38年ぶりの最低水準まで下落し、為替差益の期待感も投資ブームを後押ししました。香港やロンドンといった世界的に有名な都市と比較しても、東京の住宅価格水準はかなり割安であるという調査結果も出ています。

安定した利回りと収益性

日本の不動産、特に東京の賃貸市場は、旺盛な需要に支えられており、安定した利回り が期待できます。東京の平均利回りは約3.5〜4%、台北は約2%前後とされており、東京の方がインカム利回り面で有利です。香港も名目上の利回りは3〜4%台ですが、価格水準や運営コストを踏まえると投資妙味は限定的と見られるケースもあります。これは、不動産価格が高騰している一方で、家賃がそれに追いついていないためです。安定したインカムゲインを求める投資家にとって、日本の市場は非常に魅力的です。

また、日本の不動産はインフレヘッジとしても有効です。物価上昇に伴い不動産の資産価値も上昇する傾向にあり、現預金のように価値が目減りするリスクが低いのです。さらに、家賃も物価上昇に連動して上昇する傾向があるため、インフレ下においても安定したキャッシュフローを確保できます。

都市 賃貸利回り 価格水準 賃貸需要
東京 3-4% 中程度 非常に高い
台北 1-2% 高い 中程度
ソウル - 非常に高い 中程度
北京・上海 1-2% 高い 中程度
香港 非常に低い 極めて高い 高い

不動産制度の優位性

日本の不動産制度は、海外投資家にとって非常に有利な条件を備えています。外国人であっても日本人と全く同じ条件で土地・建物の所有権を完全に取得できる 点は、世界的に見ても特筆すべき点です。また、不動産取引の透明性が高く、情報開示が徹底されているため、安心して取引に臨むことができます。

特に台湾とは、以下の表のように税制の名称や仕組みに類似点が多く、投資へのハードルを下げています。台湾の投資家にとって、日本の不動産取引制度は理解しやすく、親しみやすいものとなっています。

税目 日本 台湾
印紙税 印紙代 印花税
不動産取得税 不動産取得税 契税
固定資産税 固定資産税 房屋税
都市計画税 都市計画税 地価税

さらに、日本の建築基準は世界でも最も厳格な部類に入り、特に耐震性については他国の追随を許しません。台湾も地震が多い地域であるため、耐震性の高さは投資判断において重要な要素となっています。台湾では青田売り(プレビルド販売)でトラブルが続出し、共用部や専有部の品質が当初の説明と大きく異なるケースが多いのに対し、日本ではそのようなリスクが極めて低いことも評価されています。

各国・地域の不動産市場が抱える問題

アジア各国・地域の不動産市場が抱える構造的な問題も、日本への投資を後押ししています。

中国の不動産危機

中国の不動産市場は、2020年代に入ってから深刻な危機に直面しています。恒大集団や碧桂園といった大手デベロッパーの経営破綻は、市場全体への信頼を失墜させました。2024年末時点で、不動産価格の下落は止まらず、地方政府の財政も土地売却収入の減少により悪化の一途をたどっています。

未完成のまま放置された高層ビルが各地に点在し、購入者は資金を失うだけでなく、住む場所も得られないという悲惨な状況に陥っています。このような状況下で、中国人投資家が国内不動産への投資を避け、より安全な日本の不動産に資金を振り向けるのは当然の帰結と言えます。

韓国の不動産市場の課題

韓国では、ソウルの江南圏を中心とした不動産価格の高騰が、一般的な所得水準では手が届かないレベルにまで達しています。政府は多住宅者への重課税などの規制で価格抑制を図っていますが、これが逆に投資家の国内市場離れを招いています。

10億ウォン台(約1億円)でソウルで良い物件を探すのは容易ではありませんが、同じ金額でより国際的な都市である東京で住居用マンションを購入できるという点が、韓国人投資家の心を動かしています。

台湾の不動産市場の問題

台湾では、台北の不動産価格が高騰しており、一般の給与所得者では購入が困難な状況です。また、青田売り(プレビルド販売)でのトラブルが頻発しており、デベロッパーの説明と実際の仕上がりに大きな乖離があるケースが多く報告されていま。

共用部や専有部の品質が当初の約束よりも大幅に低下していることが少なくなく、購入者の不満が高まっています。このような品質面での不安がない日本の不動産は、台湾人投資家にとって安心して投資できる対象となっています。

日本不動産が「安全資産」として評価される理由

これらの要因を総合すると、日本の不動産が「安全資産」として高く評価される理由が明確になります。

インフレヘッジとしての有効性

現在の世界経済における最大の懸念事項の一つがインフレです。物価が上昇し、現金の価値が実質的に目減りする状況下で、資産をどう守るかが問われます。ここで、現物資産である不動産がインフレヘッジとして非常に有効な手段となります。

インフレ時には物価と共に不動産の資産価値も上昇する傾向にあります。現預金のように価値が目減りするリスクが低く、資産保全効果が期待できます。また、物価上昇に伴い家賃も上昇する傾向にあるため、インフレ下においても安定したキャッシュフローを確保できます。さらに、不動産投資では金融機関からのローンを利用するケースが多いですが、インフレによってお金の価値が下がると、借入金の返済負担が実質的に軽減されるというメリットもあります。

相続・節税対策としての活用

日本の不動産は、相続税評価額が現金や有価証券よりも低く評価される傾向にあるため、相続税対策として非常に有効です。また、不動産所得は他の所得と損益通算が可能であり、減価償却費などの経費を計上することで、所得税や住民税の節税効果も期待できます。

これらの税制上のメリットは、長期的な資産形成を考える富裕層にとって、大きな魅力となっています。特に、世代を超えた資産の承継を考える際に、不動産は現金よりも有利な選択肢となるケースが多いのです。

まとめ:地政学的優位性が生み出す日本不動産の価値

これまで見てきたように、中国・韓国・台湾の資本が日本を目指す背景には、単なる経済的なリターンだけではない、地政学的な安定性 という極めて重要な要素が存在します。自国が抱える政治的・経済的な不確実性をヘッジするための「安全資産」として、日本の不動産が選ばれているのです。

日本の不動産市場は、政治的安定性、社会秩序の良さ、透明性の高い取引制度、厳格な建築基準、そして外国人にも開かれた所有権制度という、多層的な魅力を備えています。これらの要素が複合的に作用し、アジア資本を引き寄せる強力な磁場を形成しているのです。

この流れは、円安という追い風も受け、今後さらに加速していく可能性があります。日本の不動産が持つ「安定性」という価値は、世界が不確実性を増す中で、ますます輝きを増していくことでしょう。

INA&Associates株式会社では、海外投資家の皆様の多様なニーズにお応えするため、個別のコンサルティングから物件のご紹介、ご購入後の管理まで、ワンストップでサポートしております。日本の不動産投資にご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。私たちは、お客様の大切な資産を守り、増やすお手伝いをさせていただきます。

よくある質問

Q1. 外国人でも日本の不動産を自由に購入できますか?

はい、可能です。日本では、国籍による不動産所有の制限はなく、日本人と全く同じ権利(所有権)を取得できます。ただし、購入後に財務大臣への報告が必要となる場合があります。また、永住権の有無に関わらず不動産を購入できますが、住宅ローンを利用する場合は、永住権の有無や勤務状況などが審査の対象となります。

Q2. 中国・韓国・台湾の投資家が特に好むエリアはどこですか?

東京都心部(港区、渋谷区、千代田区など)、大阪市中心部、そして国際的な観光地である京都が特に人気です。これらのエリアは、資産価値の安定性と流動性の高さが評価されています。また、留学生が多い地域や、交通の便が良い駅近物件も人気があります。

Q3. 日本の不動産投資の利回りは他のアジア諸国と比較してどうですか?

表面利回りだけを見ると、東南アジアの新興国などの方が高い場合があります。しかし、日本の不動産は、空室率の低さ、賃料の安定性、そして何より資産価値の保全性といった点で優れており、リスク調整後のリターンでは非常に魅力的であると言えます。東京の3~4%という利回りは、台北や中国主要都市の1~2%と比較しても優位性があります。

Q4. 地政学リスクが高まると日本の不動産価格はどうなりますか?

アジア地域など、他の国・地域で地政学リスクが高まった場合、相対的に安全な日本へ資金が流入し、不動産価格が上昇する要因となる可能性があります。日本の不動産は「有事の際の安全な逃避先」としての側面も持っています。実際に、中台関係の緊張や韓国の政策不安が高まった時期に、日本への投資が増加する傾向が見られます。