東京駅日本橋口周辺で進む「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」は、国際金融拠点の形成と日本橋川沿いの水辺空間整備を目指す大規模プロジェクトです。2024年12月10日に起工式が行われ、南北2街区での段階的な整備が進んでいます。本記事では、この再開発事業の概要、特徴、今後の展望について詳しく解説します。
「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」は、東京都中央区八重洲一丁目に位置し、JR東京駅日本橋口と日本橋川に隣接するエリアで進められている再開発プロジェクトです。
東京都都市整備局によると、事業は南北2街区に分けて実施されます。南街区には地上44階建ての超高層ビルが建設され、北街区には日本橋川沿いの水辺空間と連続する低層の商業施設が整備される計画です。
この再開発事業は、長年にわたる検討と準備を経て進められています:
南街区には、東京駅日本橋口周辺の象徴となる超高層複合ビルが建設されます:
特筆すべきは、6~9階に配置される長期滞在型宿泊施設「SEN/KA TOKYO by The Crest Collection(センカ東京 by クレストコレクション)」です。これはシンガポールのアスコット社が展開する最上位ラグジュアリーブランドの日本初進出となるもので、92室の客室を備え、2029年度下半期の開業が予定されています。
北街区には、日本橋川沿いの水辺空間を活かした低層施設が整備されます:
北街区は、首都高速道路の地下化に伴い整備される日本橋川沿いの水辺空間と連続した施設となり、地域の新たな交流拠点として機能することが期待されています。
この再開発事業は、単なる建物の建て替えを超えた多面的な目的を持っています。東京建物株式会社によると、主な特徴として以下が挙げられます。
これらの特徴は、「日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021」に基づいており、地域全体の都市再生と国際競争力強化を目指すものです。
八重洲一丁目北地区は、中央区が策定した「日本橋川沿いエリアのまちづくりビジョン2021」において重要な位置づけを与えられています。このビジョンでは、日本橋川沿いのエリア全体を、歴史と伝統を背景にしながらも新たな創造性と活力を生み出す「日本橋川交流拠点」として再生することを目指しています。
具体的に、八重洲一丁目北地区は東京駅と日本橋方面を結ぶ玄関口として位置づけられ、周辺の再開発プロジェクトと連携しながら、水辺空間を活かした魅力あるまちづくりを進める重要なエリアとして認識されています。
本再開発事業は、首都高速道路日本橋区間の地下化事業と密接に関連しています。首都高速道路株式会社が進める日本橋区間地下化事業は、日本橋川上空の高架を地下化し、江戸時代からの歴史的景観を取り戻すとともに、水辺空間を活かした新たなまちづくりを目指すものです。
地下化工事は2035年、高架の撤去は2040年度の完了が予定されており、八重洲一丁目北地区の北街区は、この地下化に伴って整備される日本橋川沿いの水辺空間と一体となる計画です。
八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業は、「東京駅前3地区再開発」と呼ばれる大規模な再開発計画の一環として進められています。この3地区再開発には、既に完成した「東京ミッドタウン八重洲」や、建設中の「八重洲一丁目東地区」、「八重洲二丁目中地区」が含まれます。
特に注目すべきは、これら3地区の地下空間に整備される「バスターミナル東京八重洲」で、完成時には合計20バースを有する日本最大級の高速バスターミナルとなる予定です。これにより、東京駅前の交通結節機能が大幅に強化されることになります。
2024年12月10日に起工式が行われ、南街区での建設工事が本格的に始まっています。既存建物の解体はほぼ完了し、基礎工事の段階に入っています。
本事業は単独のプロジェクトではなく、周辺の再開発事業や都市計画と密接に連携しています:
これらの連携により、地域全体の魅力と利便性が向上することが期待されています。
南街区(2029年度竣工予定)と北街区(2032年度竣工予定)の完成後、この地区は以下のような特徴を持つエリアとなる見込みです:
特に、首都高速道路の地下化が完了する2040年頃には、日本橋川上空が開放され、より開放的で潤いのある都市環境が実現する予定です。
本再開発事業は、国際金融都市としての東京の競争力強化に貢献することが期待されています。高度金融人材サポート施設の設置や、国際的なビジネス環境の整備により、金融関連企業や人材の集積を促進します。
日本橋川沿いの歴史的景観を取り戻しつつ、最先端の都市機能を導入することで、歴史と未来が融合した独自の都市空間を創出します。これは日本の伝統的な文化を尊重しながら、国際的な都市として発展する東京の姿を象徴するものです。
コージェネレーションシステムの導入や地域冷暖房施設のネットワーク化、災害時の帰宅困難者受け入れスペースの整備など、環境と防災に配慮した取り組みが組み込まれています。これらは持続可能な都市づくりに向けた重要な取り組みです。
「八重洲一丁目北地区第一種市街地再開発事業」は、東京駅日本橋口周辺における重要な再開発プロジェクトです。国際金融拠点の形成、日本橋川沿いの水辺空間整備、東京駅と日本橋を結ぶ歩行者ネットワークの構築など、多面的な目的を持ち、地域全体の魅力と機能の向上を目指しています。
2024年に着工し、2029年から2032年にかけて段階的に完成する予定の本事業は、首都高日本橋区間地下化事業とも連携しながら、歴史と未来が融合した新たな都市空間を創出することになるでしょう。東京の国際競争力強化と持続可能な都市づくりに貢献する、注目すべきプロジェクトです。